モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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ようやく100話到達です。
ここまで続けられたのも、読んでくださる皆様のおかげです。
ありがとうございます。

200とか300とか続けていらっしゃる作者さん、本当にすごい……。

ゆっくり進んできたソウジの話も、折り返しが過ぎています。
もう少しお付き合いいただけると、嬉しいです。


100村のピンチを救いましょう。②

セツヒトさんが帰郷した。

とは言っても近くにある村、アヤ村にだけど。

 

セツヒトさんは歩いて向かうそうだ。

何でも山道を突き抜けたほうが早く行けるのだとか。

 

……そんな裏技ができるのはあなただけですよ!!

とは言わなかった。

そう、俺は女性を傷つけない人間。

ジェントルメェン。

 

 

残された俺たち……俺とハイビスさんは、それはもうギクシャクしてしまっている。

何故かって?

……セツヒトさんの爆弾発言のせいだよ!!

 

 

『二人っきりだよー?』

『だよー?』

『だよー?』

 

 

これである。

頭の中でエコーで繰り返される声。

 

……意識するなと言われても。

 

目の前にいるのだ。

女性が。

超絶美人さんが。

ワサドラじゃ人気ナンバーワンの花形受付嬢、ハイビスさんが。

 

今日だって、受付嬢の制服の上に白いモッコモコのコート。

白い布地に金髪が、最高に映えていらっしゃる。

 

こんなんどんな男でも余裕でイチコロだろう……。

……だが!

俺は女性を傷つけない人間。

ジェントルメェン。

 

 

「そ、ソウジさん。それでは、行きましょうか。」

「は、はい。いきましょうね!!」

 

 

オレたちは、それはもうウルトラギクシャクしながら、ログハウスを出た。

ギルドに向かうだけなのに、やたらと緊張してしまう。

 

 

「そ、ソウジさん!きょ、今日もいい天気ですね!」

「そうですね!……すんごい曇ってますけど……。」

「えぇ!?……あ、ホントだ……。」

 

 

すごい顔をして空を見上げるハイビスさん。

思わず笑ってしまう。

 

 

「……ぷっ……ははははは!」

「えっ!?えっ!?」

 

 

ハイビスさんが俺以上にテンパっていたからか。

……なんか少し落ち着いてきた。

 

 

「はー笑った……ハイビスさん。」

「は、はい!?」

「……やめましょう、これじゃ俺たち、疲れるだけです。いつも通り、やりましょうよ。」

「……それも……そうですね。」

「はい……それに俺、紳士なので。……信じてはもらえないかも知れませんが。」

「いえ……信じますよ。むしろ、信じ切れるからこそ、ダメだというか……?」

「ダメなんですか!?」

「い、いえ!……ととととにかく!ギルドに行きましょうね!」

 

 

雪道の中、いつもと違う二人だけの出勤。

俺もハイビスさんも、そこからはいつも通りに話すことにした。

 

セツヒトさんがいなくても、なんとかなるかなぁ……などと。

 

考えていたのが甘かった。

 

事件は夜に起こった。

 

 

* * * * * *

 

 

今日はセツヒトさんもいないということで、小型のクエストを受けることにした。

野生のポポの肉を納品するというものである。

 

とは言っても、やることはただの討伐。

俺はポポを狩猟し、回収班が肉体をそのままギルドまで輸送するのである。

いつだか、疲労困憊の中、アオアシラを解体した思い出が蘇る。

 

すっごく大変だったなぁ……。

 

というわけで、慎重にクエストを選んでみた、というわけである。

結果は上々。午後までに目標の10体を倒すことができた。

 

野生のポポは、比較的大人しい性格である。

狩ること自体はそこまで難しくない。

群れで移動していることが多いのだが、一頭を仕留める間に他のポポは逃げてしまう。

なので、追いかけっこになるのだが……注意点が一つ。

 

実はたまに、ポポの中にガムートの子供が紛れ込んでいる事がある。

間違えてその群れを襲ってみたらどうなるか。

 

答えは簡単。

怒り狂った巨体のガムートが、「うちの子に何しとんじゃコラァ!!」と突っ込んでくるのである。

これは怖い。

 

群れを遠くから観察し、慎重に狩猟対象を見極めなければならない。

……万が一を考えると、上位クエストに分類されているのも頷ける内容である。

今回は何とかなったが、できればやりたくないクエストだな……と狩猟中に思ってしまった。

 

やり切ったけど。

 

 

 

ギルドに完了報告をしたら、いつものように素材の分配の話に。

これまたいつものようにハイビスさんにお願いしていると。

いつもとは違うことが起きた。

 

 

「ソウジさん……ポポノタンが余っているそうですよ……!」

「な、なんですって!?」

「シッ!小さい声で!……先ほど回収班の方から聞きまして……狩猟したソウジさんに少し分けてはどうかと言われまして……!」

「ま、マジっすか……!」

 

 

ひそひそ声で話す、俺とハイビスさん。

それもそのはず、ポポノタンは超希少部位の肉。文字通り、ポポの舌。

一回だけ、村長さんのお裾分けをもらったことがあるが……まぁうまかった。

 

美味かった。マジで。

タレとか塩とかいらない。

そのままいけた。

タレ付きの肉を先に網に乗せるとかされたら殺意が湧くレベルで、美味かった。

 

それが本日、頂けるのかもしれない、というのだ。

……っ是非!いただきたい!!

 

 

「ハイビスさん……ぜひ、お願いします……!」

「はいっ……!伝えておきますね……!」

「今日は焼肉です……!」

「……!(ニッコリ)」

 

 

超満面の笑み。

……美人のいい笑顔って、すげえわ。破壊力。

 

ひそひそ声で、話を続ける。

 

 

「でも……何でポポノ……例のお肉が余ったんですか?」

「何でも、ポポの狩猟クエストを受けた方が今日は多かったらしいですよ?それでダダ余りになっても仕方がないよな、って……回収班と解体班の方かおっしゃっておりました。」

「なるほど……美味しいお肉にありつけるなら、ありがたいですねぇ……。」

「えぇ……今夜が楽しみです……!」

 

 

今夜が楽しみとか、変な意味ではないことは理解している。

……邪推してはいけない。俺はジェントルメェン。

 

 

「それでは、よろしくお願いします……!」

「はいっ……!」

 

 

軽やかに返事をしたハイビスさんは、ニコニコで業務に戻っていった。

 

よし、今日は焼肉だ。

万全の準備をしよう。

部屋の中……暖炉で炙るという手もあるな……。

……いかん、涎が止まらん。

 

夜を待とう。

食材の買い出しをして……ログハウスで装備の整備と、訓練でもするか……。

 

俺はルンルン気分で、ログハウスまでの道を歩いて行った。

 

 

* * * * * *

 

 

「よし……準備完了。」

 

 

今日は焼肉である。

だが、ポポノタン様だけではいけない。

少し高めのお肉と新鮮野菜を買い集めてきた。

 

流石に野菜を切るぐらいはできるので、準備を終わらせた。

 

 

「あとはハイビスさんを待つばかりだな……。」

 

 

そういえば。

焼肉を一緒に食べるカップルは、かなりの深い仲であると、何かで見たことある。

根拠は知らんが。

 

安易に焼肉と言わない方が良かったかも。

ただでさえ二人きりの夜のなのである。

 

……俺が意識してどうする。

そもそもこの世界にそんな概念なんかないだろうし。

……でもなぁ……サウナでハレンチとか言われる倫理観だしなぁ……よくわからん。

 

慎重に夕飯を食べるとしよう。

 

 

ザッザッザッ。

 

 

お、外から足音が聞こえてきた。

雪を踏みしめる音……なのだが……ハイビスさんにしてはちょっと重い?感じがする。

 

 

ドンドンドン!

 

 

「ソウジさん!いますか!?ソウジさん!」

「は、はいはい!ただいま!」

 

 

この声は……いや誰!?

女性みたいだが……分からん、とりあえず出よう。

 

 

ガチャッ。

 

 

「はい、どなたでーーー」

「あぁよかった!すみません!私、ハンズです!」

「ハンズさん!どうしました?」

 

 

玄関を開けてそこにいたのはハンズさんだった。

昨日、ザボアザギルから助けた女性。

息を切らしながら、青い顔をしている。

 

……ただごとではないな。

 

 

「……緊急事態ですか!?」

「は、はい!……す、すみません!とにかく、ギルドへ来てください!」

「わ、分かりました!」

「あ……そ、装備もお願いします!」

「装備!?」

 

 

……流れがマズい。

これは、おそらく。

 

 

「はい、出たんです。ヤツが……。」

「ヤツ……。」

「ご、轟竜……ティガレックスが!」

「!?わ、分かりました!先に行っていてください!すぐに向かいます!」

「はい!分かりました!」

 

 

バタン!

 

 

ザッザッザッ……

 

 

よりにもよってセツヒトさんがいなくなったこの日に。

最悪の事態が起きてしまった。

 

轟竜ティガレックス。

 

話には聞いていた、あの怪物が。

出てしまったのだった。

 

しかしなぜハンズさんが?

……疑問は尽きないが、とにかく急ごう。

 

 

* * * * * *

 

 

「お待たせしました!」

「あっ!ソウジさん!」

「お待ちしておりました!こちらへ!」

 

 

ポーチで一瞬で着替え、暖炉を消してすぐにギルドにやってきた。

早速ハイビスさんとアワキ村長に呼ばれ、集会所の隅の長机に並ぶ。

慌てた様子の村長さんが、話し始める。

 

 

「急なお呼び出し、申し訳ありません……何せもう、ソウジさんしか頼れる方がおらず……。」

「気にしないでください。それより、ティガレックスは……。」

「それは……私から説明します。」

 

 

ハンズさんから説明を聞く。

 

ハンズさんは第一発見者だという……今日は俺と同じ、ポポの討伐に出かけていたらしい。

 

 

「私が狩場について、群れを確認していた時……ヤツが山上から突っ込んできました。」

 

 

ハンズさんがポポの群れを確認している時、ティガレックスが奇襲。

観測されてもいないモンスターの急な出現。

それは驚いたことだろう。

 

 

「それで、すぐにギルドに報告しなきゃって思っていたら……今度はガムートがティガレックスに突っ込んできて……。」

「うわぁ……。」

「怪物同士の大決戦だな……。」

 

 

顔を顰めるハイビスさん。

恐ろしい戦いが繰り広げられたのだろう。

 

 

「私もそこからはよく見てないんですが……一人でしたし。とにかく安全最優先で戻ってきたんです。そしたら……。」

「あっ、そこからは私から説明します。」

 

 

ハイビスさんが手を挙げる。

 

 

「観測班も完全に見落としていたのだと思います。全く出現の話はありませんでしたから。申し訳ありません。」

「いやいや、大型は本当に分からないですから。」

「……すみません。それで慌てた観測班からの報告では……ガムートに追われたティガレックスが、タオカカとミヨシを結ぶ街道のすぐ横に居座っている、と……人里をすぐに襲ってもおかしくないような場所です。」

「……。」

「ソウジさん。」

 

 

今度はアワキ村長さんが話し始めた。

 

 

「現在、ミヨシにいる上位ハンターは4名……逗留を終えて村を出る方が増えまして、その影響で……そのうちティガレックスと交戦経験がある猛者は一人も……。唯一、セツヒトさんがいましたが……。」

「セツヒトさんは今、ここにはーーー」

「はい、ハイビスさんから聞きました。」

 

 

知っていたか。

 

 

「……それで、俺っていうわけですね。」

「はい……そしてさらに悪いことに……。」

「……まだ何かあるんですか?」

「アヤとミヨシを結ぶ街道が、雪崩で堰き止められておりました。」

「……。」

 

 

驚きすぎて言葉もない。

それじゃ、アヤ村に救援を呼ぶ……もといセツヒトさんを呼ぶことができない。

あの人単体が来るだけなら、山道をすっ飛んでくるかもしれないが……。

 

 

「明日朝になれば、報を飛ばして、アヤ、タオカカ両ギルドに連絡することは可能です。」

 

 

ハイビスさんが話し始める。

 

 

「ですが、相性の悪いガムートのいる群れに突っ込むほどの空腹であるティガレックスが、この村の目と鼻の先にいます……ポポ車のポポを狙ってこないとも限りませんし、時は一刻を争います。」

「……。」

「最近のポポの狩猟ペースは異常でした。正直に申し上げますが……生態系を制御できなかったギルドの落ち度です。それで、餌が減ったティガレックスが、ここまでやって来たのではないかと。」

「なるほど……。」

「近年の記録では、周辺にこの時期、ティガレックスがやってきたことはありません。厳冬なら、一昨年にも一頭撃退していますが……ハンターさんたちが減るこの時期に来るのは、初めてです。」

 

 

なんともまぁ、最悪の条件が揃ったな。

強敵、轟竜ティガレックスの襲来。

村の近くに潜んで、いつ襲われるかもわからない。

アヤ村に救援を出したいが、雪崩。

タオカカへ結ぶ道は、ティガレックスが潜む。

セツヒトさんは、不在。

タオカカとアヤに連絡は取れるが、それは明日の朝。

夜間にヤツに襲われたら、こんな小さな村、ひとたまりもないだろう。

 

話に聞くティガレックスの強さは、ゴシャハギさんに匹敵するか、それ以上だと言うし。

……ここまで状況が悪いと、逆に笑えてくる。

 

そして頼れるのは、俺しかいない、と。

 

 

「……村長さん、俺は……。」

「ソウジさん……無理にとは言いません。万が一にも襲われるかもしれない、ということです。」

「万が一、でいいんですか?村の近くにいるんですよね?」

「……え、えぇ。ですが、明日の朝になれば、周辺のギルドに知らせることはーーー」

「しかも空腹。村のポポを狙われたら、防ぐ手立ては俺しかいない。」

「はい……。」

 

 

村長さんの大きな体が、とても小さく見える。

ヨツミワドウなんて例えていたのが申し訳ないと思うぐらいには、縮んでしまっている。

 

 

「ソウジさん……ティガレックス1頭の狩猟、お願いできますか?」

 

 

ハイビスさんが聞いてくる。

少し前の俺なら、これは単なる自殺行為。

でも、今は違う。

ゴシャハギに敵ったという自信が、今まで冬の間頑張ってきたという自負が、ある。

 

この村に今、俺しかいない。

なら、やるしかない。

 

 

「……受けます。打って出ましょう。やってみますよ、そのクエスト。」

「そ、ソウジさん……!」

 

 

ガタッ。

 

 

村長さんが立ち上がる。

止めようとしてくれている。

 

 

スッ。

 

 

だが、それをハイビスさんが手で制した。

 

 

「アワキ村長、ソウジさんを、信じてください。ゴシャハギを倒したのは、まぐれでも何でもありません……ソウジさんの実力です。」

 

 

力強い目で訴えるハイビスさん。

村長さんもいい人だ。

そりゃ俺を無碍に殺したくはないだろうしな。

……だが、俺しかいないのだ。

 

村を、この数ヶ月過ごさせてもらった村を、守る。

やる理由としては、十分に十分すぎる。

先に動いて、ティガレックスを叩く。

この村に自分より強いものがいると分かれば、おいそれと手出しはしないだろう。

 

 

「ハイビスさん、ありがとうございます。俺、行ってきます。」

「はい!あっ……場所はこちらです!」

 

 

ペラッ。

 

 

地図が描かれた紙を渡される。

まぁ俺のギフトを使えば、相手の位置なんて丸わかりなんだが。

ハイビスさん。気遣い、恐れ入ります。

 

 

「……ご武運を。」

「はい……戻ってきたら、アレ、一緒に食べましょうね。」

「……ハイっ!」

 

 

さて、行くか。

夜の狩りなんて、久しぶりだけど。

まぁ、なんとかなるだろう。

 

やるしかないのだ。

 

やってやる。

 

待ってろ、轟竜ティガレックス。

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