モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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105美味しい朝ごはんを食べましょう。

トントントントン…………。

 

 

あぁ……いい音だ……。

実家を思い出す、まな板のあの音。

 

 

グツグツグツグツ……。

 

 

柔らかく聞こえるのは煮炊きの音だな。

 

朝目覚めの時に飯の音がするって幸せだよなぁ…………。

 

 

パカッ。

 

 

炊飯器を開ける音もする。

噴出口に手をおいて火傷をしたなぁ、あれ。

実家じゃ母親にこっぴどく叱られたっけ。

 

母親の手料理……懐かし……………………。

 

 

………………ちょっと待て。

 

 

ピッピッ…………ピッ。

ブォーーー。

 

 

…………操作音がする。

電子レンジの、操作音が。

 

ここしばらく、トンと耳にすることの無かった音。

 

 

「…………えぇ!?」

 

 

ガバっと起きる。

もしや元の世界に戻ってきたのか!?

だってこの世界では聞くことの無いであろう音まで…………。

 

 

「あ、おはようございます。双治さん。」

「……………………え?」

「リビングと台所が繋がっているので、起こしてしまうかと思いましたが、すみません。お体はまだ痛むかと思います。どうぞ、まだお休みになられていて下さい。」

「は、はい。どうも……。」

 

 

カチャ。

チッチッチッチッ。

 

 

ガスコンロをつける音。

 

………………いやいやいや!

 

 

「ちょっと待てえええ!!」

「おはようございます。双治さん。」

「2回目!じゃなくて!!」

 

 

あばら骨は痛むし、無数の傷はまだ残っているし。

それに寝起きの頭でツッコミをかますほど、俺は朝に強くないし。

……だけど。

 

この状況はちょっと突っ込まざるを得ない。

 

台所を見渡す。

 

所狭しと、ありとあらゆる台所用電化製品が並ぶ。

電子レンジはしっかりとターンテーブルを回して動いているし、ガスコンロからは青い炎が安定して出ているし……。

 

そして何より何より。

 

 

「何してるんですか女神様!!」

「おはようございます、双治さん。」

「3回目ぇ!!いや、違う!そうじゃなくて!」

 

 

ようやく頭が冴えてくる。

何してんのこの神様!?

何で白い割烹着に三角巾つけてんの!?

 

 

「朝ごはんを作っておりました。」

「えぇ…………。」

「手ずからに作るというのも、何とも難しいものですね。ですが、これは楽しいです……創造するということは、何分久しぶりなものでして。」

「は、はぁ…………。」

 

 

理解が追いつかない。

だが、目の前にはいつものログハウスのリビング……そして電化製品に蹂躙された、いつも通りではない台所。

 

黒いロングストレートをアップにまとめた見目麗しい女性が、白い割烹着と三角巾をつけ、右手には包丁を持っている。

まな板には……何でたくあんが?

 

 

「お漬物が好物と。」

「いや、そうですけど……マジで何してんすか、女神様。」

「もちろん、新妻ごっこです。」

「何言ってんの!?」

「この後はお目覚めのチューをかまして、照れる旦那様を机へと座らせ、アーンなどをしようかと。」

「ば、バカじゃないの!?」

「ご心配なく。味の保証は致します。」

「そういうことじゃねえから!!」

 

 

いつもと違う格好にちょっとドキドキしてしまった。

割烹着とうなじの破壊力、恐るべし。

 

もう神とか何だとかもはやどうでも良くなるぐらいには、俺は混乱してしまっていた。

 

もう不敬とかどうでもいいや。

マジで何してんのこの神。

 

 

* * * * * *

 

 

「いや、そろそろお出ましになるかとは思ってましたが……意外過ぎです。」

「はい、すみません。」

「…………やけに素直に謝りますね。」

「新妻ですから。旦那様。」

「その設定も終わりましょう!?」

 

 

かなり寝てしまったらしい。

昨日寝たのは夕方とかだった気がするが……疲れていたんだな。

 

既に朝。

目覚めたら、絶世の美女が台所で朝食を作っていた。

その女性は女神様だった。

 

……何だろう、字面にするといよいよもって訳がわからない。

 

 

「混乱を招きまして、申し訳ありません。」

「いえ……大体は飲み込みました。」

「流石です。」

「いや、褒められてもですね……。こちらの世界への干渉は、駄目だったんじゃないですか?」

「ええ、そこは何とかいたしました。」

「…………。」

「…………。」

「…………まさかまた一服盛りました?」

「また、とは何でしょうか。」

 

 

前回も確か、こちらの世界の神に一服盛ってやってきたっぽかったよなぁ……。

 

 

「ですから、こちらの神に何と言って来たのかと。」

「新妻ごっこがしたいと、正直に話しました。」

「…………本当に?」

「ええ。その際に多少交渉がしやすいよう、山吹色のアレを少しばかりお渡ししました。」

「完全に買収やんけ……。」

 

 

おかしいなぁ、確か相互不干渉がどうこういう話だった気がするのだが。

………………今更だ。

 

もう考えるのやめよう。

 

 

とりあえず、色々聞いてみることにする。

 

 

「隣の部屋でハイビスさんやセツヒトさんが寝ているんですが。」

「そこは問題ありません。まだ起きないようです。音も遮断してますし、私も認識できないようにしております。」

「抜かりなし、と。」

「はい。」

 

 

その辺は流石である。

顕現するのも慣れたものだな、この神様。

 

 

「ちなみに、その電化製品は……。」

 

 

気になっていたことを聞いてみる。

明らかにこの世界から浮いているそれら。

電気やガスで動く、正真正銘の文明の利器である。

 

 

「ソウジさんのいらっしゃった世界の物を再現したのです。お懐かしいのでは?」

「そうですけど……これ、揃えたんですか?」

「はい。今日に向けて、ネットで購入いたしました。」

「気合い入りまくりですね……。」

「ご飯を作るなど、滅多にできないことですから。」

 

 

そう言って、炊飯器を開ける女神様。

底をしゃもじですくって天地返し……すげぇ、神様が炊飯器の天地返ししてる。

 

炊きたてツヤツヤのご飯が、机に置かれる。

 

 

「では双治さん、どうぞ。」

「へ?」

「ですから、どうぞ。」

「た、食べるんですか?」

「はい。」

 

 

有無を言わさぬ物言いに、ただただ従うばかり。

仕方なく席につき、朝食の準備を待つ。

 

 

「お口に合うか分かりませんが、味噌は双治さんの地元の物を使用してます。お醤油も。」

「え!?本物ですか!?」

「はい、本物です。買いました。」

「はぁぁ……あ、この匂い、早◯味噌だわ。」

「よく銘柄までお分かりになりますね。」

 

 

子どもの頃から毎日のように口にしていたのだ。

そりゃ分かるとも。

 

 

「いただきます。」

「はい。」

 

 

神様が作った飯を食う。

……罰当たりなのか何なのかさっぱりわからん。

…………まぁいいや。飯に罪はない。

 

意を決して、口に運ぶ。

 

 

「モグモグ……あ、うまいです。マジで。」

「そうですか。それは良かったです。」

「ダシもいいですね……この味噌汁。」

「いりこの煮干しです。」

「そこまで俺の地元に合わせたんですか。」

 

 

何から何まで地元の味である。

凄まじいまでの、『これだよ、これ!』感。

地球の日本が懐かしくなってしまった。

 

 

「…………女神様は食べないんですか?」

「ええ。人の食べるものを口にするのは、あまり良くないので。」

 

 

そう言いながら、お茶をすする女神さま。

言ってることとやってることがあべこべである。

…………基準がよくわからんが、まぁ本人が言うからそうなんだろうな。

すごくうまそうに茶をすする女神様には、違和感しかないけども。

 

 

「しかし……何かできること増えてません?女神様。」

「そうですね、神格が上がりましたから。」

「そうですか……え!?神格!?」

「はい。」

 

 

神格って……そんな簡単に上がっていいものなのか!?

 

 

「ポイントが溜まりまして、顕現してできることが増えました。」

「神様ってポイント制なんですね……。」

「はい。一部例外はありますが、まぁ大体はそんなものです。」

「すっごく俗っぽいです。」

「はい。神世界も、所詮ポイントが物を言います。」

「世知辛え……。」

 

 

あんまり聞きたくないことを聞いた気がする。

まぁ俺の中で、神の世の無茶苦茶っぷりはたくさん聞いてきたからな。

今更か。

 

 

「双治さん、早速ですが。」

「はいはい。なんでしょう。」

「ティガレックスの狩猟、大変お疲れさまでした。」

「あ、ありがとうございます。」

 

 

素直に労われた。

これは単純に嬉しい。

 

 

「今までの狩猟と違い、完全に単独での狩猟。しかも相手はかなりの強敵。SNSでは絶賛の嵐です。」

「そ、そんなに。」

「ええ。単純に、とても盛り上がっています。ここに来て、古参の双治さんのファンが新参のファンを弄り倒す始末です。」

「普通に盛り上がれないのかお前らは。」

 

 

もはやお前ら呼ばわりである。

馴れ馴れしくしても全く悪い気が起きない。

 

 

「しかし、大変なことが二つ起こっています。」

「何ですか?……またどこぞの神様が暴走したとかですか?」

「それはすでに数件起きています。」

「マジですか……。」

「まぁ私たちのSNSには一切関係のないことですし、事態はすぐに収拾されます。ご安心を。」

 

 

神様ってちょくちょく暴走するのか?

なんとも恐ろしい話ではある。

 

だが、そんなことより大変なことって何だろう。

 

 

「まず一つ目。端的にいうと、ワサドラにいらっしゃる方々……ドールさんやショウコさんを始めとした方々のファン層が、ここに来てフラストレーションが溜まっています。」

「……どういうことですか?」

「双治さんを主観とした周辺の観測が、私が発信するSNSの主情報です。ここまではよろしいですか?」

「はぁ……つまり、俺がミヨシ村に来たことによって……。」

「そうです。察しが良くて助かります。あの方々が全く姿を現さなくなった事により、暴走寸前です。」

 

 

そうか、ワサドラにいるドールたちとは、当たり前だが全く会えてないからな。

 

 

「『【悲報】俺氏、ドールちゃんの笑顔を見るまで神格凍結を決意する。』『ショウコたん成分不足し過ぎて現世界破壊しそうな奴の数→()』などと、某掲示板にアホなスレまで立つ始末です。」

「少なくともそいつらは状況楽しんでると思いますけど……。」

 

 

そんなアホな神様方は放っておくとして……。

そろそろ雪どけの季節を迎える。

ワサドラに帰るのも、考えていいかもしれないな。

 

 

「とはいえ、そちらは双治さんがお帰りになれば問題ないかと。もう一つが大変です。」

「嫌な予感しかしません……。」

「数あるファンクラブの中でも、力の強い2つ、『ハイビス様親衛隊』『せっちゃんに語尾伸ばされ隊』なのですが。」

「そんな当たり前のように言われても。」

「そういえばお伝えしてませんでしたね。まぁ、そういう頭のおかしい神々がいると認識されれば大丈夫です。」

「認識したくねぇっす……。」

「ファンクラブ界隈では、現在筆頭の二大勢力です。」

「いらない補足情報ありがとうございます。」

 

 

数あるファンクラブって時点で、他にもやばい神々がいるってことだよな。

…………深くは考えまい。

 

 

「で、その二大勢力がどうされました?」

「破産いたしました。」

「…………へ?」

「ですから、破産いたしました。」

「…………いや、やっぱり分からないんですけど!?」

 

 

その集まりがどういう体系なのかも分からない。

破産ってことは、金がなくなった……ってこと?

 

 

「お二方のプライバシーはきっちりとお守りしております。」

「はい、そこはお願いします。」

「その上で、お二人の朝食を食べる姿、ハイビスさんの一日のルーティン、セツヒトさんが飲酒をされる姿などを有料限定配信にしたところ、非常に好評でして。」

「プライバシーはどうした。」

「更にはプレミアム会員限定有料追徴課金方式PPV寝顔拝聴プランで、もうウッハウハでした。」

「プラン名長すぎでしょう……ん!?寝顔!?」

「はい、昨晩の事です。」

「あれ見せたんですか!?」

 

 

酔いつぶれた二人に寄っかかられて、そのまま寝床まで連れて行ったけど。

 

 

「双治さんがお二人にしなだれかかられた時の収入が、それはもう。」

「まさかその時に……。」

「はい、二大勢力が競うように資金を注ぎ込みまして。メンバーの中には借金をした神もいたとか。」

「うわぁ……。」

「おかげでこっちはもう、うっはうはです。」

「うわぁ……。」

 

 

やってることは銭ゲバである。

あぁ……日本でも確かにそんな風に儲けるような人たちもいたなぁ。

 

 

「その方式を真似してみたところ、かなりの収入がありましたので、ご報告を。」

「…………その2大勢力とやらは、どんだけ金をつぎ込んだんですか。」

「説明が難しいですが……私の神格が上がるほど、とだけ。」

「…………。」

 

 

神様世界のポイント制とか神格の条件とかは分からんけども。

女神様が明言を避けるほどには、儲けたんだな。

 

 

「地球もだいぶ潤いました。」

「まぁ、前も言いましたけど、間接的にそこに貢献できるなら文句はないですが。」

「各地の砂漠化が止められるとは思いませんでした。」

「すごい規模の話だ……。」

 

 

その破産した2団体には申し訳ないが、自業自得ではあるしなぁ……。

 

 

「その二大勢力とやらが、逆襲に出るとかは無いですよね。」

「どうでしょう。『また金ためて寝顔見ような!な!』『本望。』『我が生涯に一片の悔い無し。』というコメントは残されてました。」

「男らしい……。」

 

 

まぁ色々報告をもらいはしたが、正直俺には関係のない話だしなぁ。

女神様が更に銭ゲバになって、よりエグい商売を始めたとして、俺に止める力はないわけで。

 

 

…………ハイビスさんとセツヒトさんの人気に驚くばかりである。

 

 

* * * * * *

 

 

朝食もそこそこにずっと話を聞いていたため、味噌汁やご飯が冷めてしまった。

もったいないことをしたと思ったが、神様がまた温め直してくれた。

「ぜひお二人にも召し上がっていただきたいです」とは、女神様の談である。

手をふっとかざすと、ほかほかご飯と湯気の立つ味噌汁に戻った。

 

 

「電子レンジとか使わないんですね。」

「面倒になりました。」

「せっかく買ったのに……。」

「私の顕現が終わり次第、これらオーバーテクノロジーの品々は回収していきますので。」

「それはそうですね……味噌とか醤油とかは。」

「それらも回収いたします。ですが、朝食はぜひ召し上がっていただきたいです。その辺はお礼ということで。」

「いいのか。」

 

 

いよいよもって、神様の干渉禁止の線引きがわからなくなってきた。

女神様のできることが増えている、ということなのだと思うが。

 

 

「その朝食には、私の加護も多少入っております。怪我の治りが良くなりますように。」

「あ、それはどうも。」

「決して一服盛ってはおりませんので。」

「……なぜわざわざ言うんですか!?」

「ハイビスさんとセツヒトさんには盛っておりませんので。」

「俺は!?ねぇ俺は!?」

「…………さて、私はそろそろ失礼いたします。ワサドラへの道中、どうかお気を付けください。」

「スルーですかそうですかチクショウ!!」

 

 

朝食抜いてやろうか……ダメだ、既に口にしている。

 

 

「毒を食らわば皿までと言いますし。」

「毒って言った!?いま毒って!!」

「そういえば、一つお伝えし忘れておりました。」

「露骨に話題変えないで!?」

 

 

もう俺は女神様の言うとおりにするしかないのである。

…………食らってやろう、最後の一口まで。

 

 

「ティガレックスを倒した今、さらなる強敵に対峙することになるかと思いますが。」

「はぁ……まぁ、いずれはそうですね。そこを目標にしないとですね。」

「…………無理は、禁物です。」

「……え?」

「ですから、無理はされないでください。…………そこだけ、お伝えしておきます。」

「はぁ……。」

 

 

随分真剣な眼差しで伝えてくる女神様。

多分マジなんだろう。

 

……気をつけていこう。

 

 

「SNS関連の方は、お任せください。しばらくは、大人しくするつもりです。」

「わかりました……ご忠告、痛み入ります。」

「次の儲け話は既に考えております。」

「……大人しくしといて下さいよ?」

「はい。」

 

 

信用できないけど……まぁもう後の祭りである。

 

 

「それでは。」

 

 

そう言うと、あっさり消えていく女神様。

いつの間にか、各電化製品も消えている。

 

目の前には、未だに湯気の立ち昇る朝食。

 

 

ガチャッ。

 

 

「うぅ……おはようございますぅ……ソウジさん。」

「あぁ、おはようございます。ハイビスさん。」

 

 

女神様が立ち去ってすぐ、ハイビスさんが部屋から出てくる。

二日酔いかな。調子が悪そうである。

 

 

「あら、この香り……ソウジさん、朝ごはんを作ってくださったんですか?」

「えぇと……そうです。」

「それは……ありがとうございます!いい香り……頭痛も気のせいか、無くなってきた様な……私、セツヒトさん起こしてきますね!」

「あ、はい。よろしくおねがいします。」

 

 

嘘をついてしまった。

だって他になんて言えばいいんだ。

 

 

『あ、先程までいた女神様が作ってくださいました。』

 

 

……完全に頭のおかしいヤツである。

まぁ二人は俺の事情を知っているから、そんな事は言わないだろうけど。

 

 

その後、何とかベッドから起きてきたセツヒトさんと3人で朝食を食べた。

寝ぼけ眼のセツヒトさんが一瞬で起きるほどには、美味かったようである。

 

まさか神様お手製であるとは、ついぞ告げられず。

 

そのままバッチリ平らげてしまった。

お二人も、俺も。

 

 

「ふ、二人とも、何かお腹痛いとかありませんか!?」

「えっ!?」

「えー、大丈夫だよー。めっちゃ美味かったしー。ソウジー、料理得意なんじゃーん。」

「本当ですよ!このお味噌汁なんて、何杯でもいけちゃうぐらいの味でしたよ!」

「そ、それは……ありがとうございます。」

 

 

女神様、良かったですね。

褒められましたよ、あなたの朝食。

 

 

「やー、昨日はごめんねー、ソウジー。」

「えっ?」

 

 

セツヒトさんがいきなり謝罪してくる。

 

 

「昨日って……あぁ、酔いつぶれた事ですか?」

「そーそー、もう記憶なくてさー。……ベッドまで連れて行ってくれたのー?」

「え!?い、いや!セツヒトさんは一人で部屋に向かいました!」

「あーそうなのー。……ハイビスちゃんはー?」

「は、ハイビスさんもです!いやー、二人とも覚えてないんですね!」

「ハイビスちゃん、覚えてるー?」

「いえ……私もいつの間にやら部屋で寝ていたので……。」

 

 

危ない危ない。

俺が部屋まで運んで寝かせたとバレるところであった。

いや、バレても問題は……ないよな?

 

 

「ふーん……いや何かねー?寝ているときに誰かに見られているような感じがしてさー。……気の所為だよねー。」

「…………そ、そうですね。……俺見てませんよ?」

「いやー、ソウジだったらソウジの気配って分かるからさー。なんだろー……幽霊?的な?何かやばい感じがしたんだよねー。」

「そ、そうですか。」

 

 

………………えっ?

 

セツヒトさんまさか、神様方の気配感じたの?

…………いやいやいやいや、ありえないでしょ。

だって相手は神だし。

 

 

「朝も何かこっちで変な気配したんだよねー。ソウジー、何かあったー?」

「いえ!?何も!?」

「だよねー。……何だろー。」

 

 

セツヒトさんすげえ。気づいてる。

人の理超えてきたよ。

 

 

「幽霊とかやめてくださいよー、セツヒトさん。」

「ごめんねーハイビスちゃん。驚かせるつもりは無いんだよー。でもさー、変な気配感じたら教えてねー。……ソウジじゃなかったら、やるからさー。」

 

 

本当にやってしまいそうだから恐ろしい。

そして本気で幽霊を疑うハイビスさんの一般人ぶりに、癒やされた。

 

 

 

女神様とセツヒトさんの末恐ろしさを感じた、慌ただしい朝の一幕であった。

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