モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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106ミヨシ村にさよならしましょう。

「これとこれとー……あとこれー。」

「ちょ……せ、せっちゃんさん!流石に買いすぎですよ!」

「んー?ソウジはー、私にー、文句をー?」

「言いません。」

「んー、よろしー。……あー、おばさーん。このミヨシ漬けってやつもー、お願いしますー。」

「あいよー!毎度ー!」

 

 

俺は今、買い物に来てる。

とは言っても、やってることは荷物持ち。

主にセツヒトさんとハイビスさんの、である。

 

朝、女神様が朝ごはんを作ってくれた。

そこで聞かされた、セツヒトさんハイビスさん寝顔生中継の話。

プライバシーどこ行ったという話だが、まぁ今更である。

 

そこはまぁいいとして、問題はセツヒトさん。

なんとこの方、寝ていても意識のどこかが起きているらしく、感覚も鋭敏。

神様にちょっとしか見られていないはずなのに、その気配に気づいた。

 

…………いや、すごすぎじゃない?

なんで分かるの?

俺気づいたこともねぇよ?

 

 

そんな挙動不審な俺は、尋問を受けた。

ソウジが何かしらやったんじゃないかと。

 

まさか俺も「神様が覗きやるんすよー。」なんて信じてもらえない真実を話すわけにもいかず。

素直にお二方をベッドまでお連れした話を吐露。

自白。

 

 

「ソウジも男だねー。」とニヤニヤと笑って、ほっぺたをツンツンされてしまった。

いや、何もしてないんですが。

 

その事がもちろんハイビスさんにもバレる。

 

 

「わた、私のお部屋に入られたんですね……。ええっと……。」

 

 

そんなことを言いながら、何故か服の襟元を開けて、上から覗いているハイビスさん。

いやいや!何も!してませんから!

 

 

……とはいえ、女性たちに嘘をついた事実は事実。

そんなわけで、罪滅ぼしではないが、ワサドラに持ち帰るお土産の荷物持ちを俺がすることに。

 

……これって、言ってしまえば神様たちの尻拭いを俺がしたってことになるんじゃ……。

 

なんか虚しい。

 

 

「ハイビスちゃーん、ソウジまだイケるよー?」

「あっ、じゃあソウジさん!これもお願いします!」

「は、はいはい。」

 

 

どんだけ買うんだこの人たち。

 

こうして、ミヨシにあるセツヒトさん御用達の商店から、たくさんのお土産を購入した俺たち。

最後の最後に、ミヨシの経済を潤して、ワサドラに帰還することにした。

 

 

* * * * * *

 

 

「いやぁ、寂しくなりますなぁ……。」

「また機会があったら来ますってー。来年とかー?」

「えぇ、それはぜひ!お待ちしています!」

 

 

集会所にやって来た。

村長さんに、ワサドラに帰ることを伝える。

 

ティガレックスの討伐が終わって早5日。

ミヨシの雪はまだまだ残っているが、気候は明らかに暖かくなってきた。

春は目の前である。

 

ハイビスさんの話では、ティガレックスの登場を最後に、大型のモンスターの数がとんと減ったという。

こうなると、この冬山のギルドの業務は、急激に少なくなる。

ハイビスさんも以前から進めていた引き継ぎ業務を終えるという。

 

 

「来年、また来てくださる方々が楽できるようにしておきませんと。」

 

 

そう言って、様々な引き継ぎ報告書を書き上げていた。

この方、抜けているところもあるが、本当に有能である。

 

 

その間、俺とセツヒトさんは、集会所でボーッと過ごした。

まず俺は怪我をしているため、休業。

セツヒトさんも「私も休むー。」と、怠け者の本領発揮。

二人して用もないのに集会所に入り浸った。

授業もないのに食堂に居座る大学生の如く。

 

ティガレックスの討伐直後こそ、様々なハンターたちと話し、情報交換……もとい、宴会を開いていたが。

ここ最近はハンターの数も更に激減。

季節労働者の様に、いなくなってしまった。

 

俺にティガレックスの出現を教えてくれたハンズさんも、挨拶に来てくれた。

 

 

「寂しくなります……ソウジさん、どうかお元気で!また、狩猟のお話を聞かせてくださいね!」

「は、はい。また、どこかで。」

「はい!……失礼いたします!」

 

 

超が付くほど真面目な性格の様で、会う人会う人にしっかり挨拶をして、どこかに向かって旅立っていった。

宴会ではずっと俺の横で酌をしながら、狩猟トークを繰り広げていた。

女子大生のような若くて可愛い女性にお酒を継いでもらう。

距離感が近くて、少しドキドキしたのは秘密である。

 

 

「あちゃー……また増えちゃったかなー……。これだから肉食系は。ごめんねー、ハイビスちゃーん。」

「私もノーマークでした……セツヒトさん、お互い油断しないようにしましょう。」

「そうねー。……ワサドラ帰ってもがんばろー。」

「はいっ!」

「むしろそこが、頭痛の種だよねー……。」

「そうですね……。」

 

 

なんていう話を、女性二人がしていたが。

何の話なんだろうか。

よく分からん。

 

 

そして話は村長さんのところに戻る。

 

 

「ソウジさん、あなたのおかげでこの村は救われたようなものです。ありがとうございました。」

「いやいや!もう本当に、何回礼を言うんですか。」

「そのお強さもそうですが、ソウジさん。あなたは人格が素晴らしい。どうか、精進されて下さい。くれぐれもお元気で。」

「……はい、村長さんこそ。」

 

 

宴会の度に礼を言われてしまうので、もうこちらは申し訳ない気持ちでいっぱいである。

アワキ村長……本当にいい人だった。

シガイアさんとはタイプが違うけど、こういう人もまた、トップに必要な人だと思う。

 

ぶっちゃけ上司なら、シガイアさんよりアワキさんのほうがいいかな。

 

 

「飲み過ぎ食べすぎには、気をつけてくださいね……。」

「はっはっはっ!愚問ですな!私、どれだけ食べても腹を壊したことなどありませんぞ!」

 

 

ボヨンッ。

 

 

腹太鼓を叩いて自慢げなアワキ村長。

いや、そういう心配ではないのだが。

 

元気で居てもらえたらいいけど。

 

ヨツミワドウ。

 

 

そんな失礼なことを考えつつ、ギルドを後にした。

出立は明日、朝。

 

ハイビスさんも、今日で仕事納めらしい。

 

その日は、もうしばらくは浸かることの無いであろう温泉をゆっくり堪能してから、ログハウスに帰っていった。

 

 

* * * * * *

 

 

夜。

荷物をまとめる。

 

セツヒトさんとハイビスさんも、今頃は自室で荷物をまとめている頃だろう。

二人には夕飯の時、ポーチに入れておく荷物があったらまとめておいてほしい旨、伝えておいた。

セツヒトさんとか、お土産入れたらかなりの量なんじゃないだろうか。

 

……まぁ、入るだろうし、いいけど。

 

『自分の荷物はソウジのもの』と、某国民的アニメのガキ大将よろしく宣言すれば、俺のギフトのポーチに荷物を入れることができる。

裏技みたいなものだ。

 

 

「よしっ……こんなもんかな。」

 

 

ポンポン。

 

 

ポーチを軽く叩く。

自分の荷物の整理を終えた。

まぁどんどんポーチに入れるだけでいいんだから、すぐに終わるのだが。

 

不意にポーチに触れたため、目の前に情報画面が起動する。

 

……情報画面。

女神様からもらった、俺の武器の一つ。

アイテムもそうだが、装備に様々な情報に、これ一つでかなり楽させてもらえている。

ありがたい話だ。

 

徐にカーソルを「モンスター情報」に合わせる。

ズラッと出てくるモンスターの名前。

 

バサルモス……懐かしいな……こいつから始まったなぁ、俺のこっちの人生。

アオアシラ……解体の大変さが身に沁みたわ……未だにトラウマ。

プケプケ……は思い出したくない。キモい。

フルフル……以下同文。

キモい敵も多かったなぁ……。

 

 

「あ……。」

 

 

思わず口に出してしまった。

 

ディノバルド。

リベンジすべき、筆頭候補である。

 

 

「あいつに……あの技、通用するかどうかだな。」

 

 

あの技とは、ティガレックス戦で編み出した、回避攻撃のことである。

ディノバルドの超速尻尾攻撃に、使えるかどうか。

試す方法など、一つしかない。

 

 

「やるしか、無いな。」

 

 

決意を新たにした。

首を洗って待っていろ、ディノバルド。

どこにいるのかは知らんけども。

 

モンスターの一覧は、かなりの数が揃ってきた。

一つ一つ確認していく。

まだ「????」となっている箇所も多いが、懐かしい名前から、聞くのも恐ろしい名前まで、色々あった。

頑張って狩猟してしてきたなぁと、実感。

 

まぁこの中には、見ただけで狩ったことの無いモンスターもいるわけだが。

ディノバルドやジンオウガなんかはそうだ。

 

逆に、「えっ?こんなモンスターいたっけ?」みたいな名前もチラホラ見える。

 

ギアノス……ドボルベルグ……?いたっけ?こんなの……ショウグンギザミ……リオレウスにリオレイア……。

リオレウスとリオレイアはよく話は聞くけど……討伐したことはない。

あれかな。卵運搬クエストとかで空を飛んでいるのを見たからかも。

 

一瞬でも見たことのあるモンスターならば、登録されるんだな。

 

他にもアンジャナフ……ラージャン……名前だけでも強そうな奴らが見える。

詳細は……わからないか。

細かい情報はしっかり対峙しないとわからないのか……?

基準がよくわからん。

 

 

「ん?」

 

 

またも思わず声を上げてしまう。

情報画面のモンスターの名前がズラリと並んだ中に、変な名前を見つけた。

 

 

「なんだこれ……ミ……?」

 

 

一覧の更に下の方。

<ミ?#%&、>みたいな文字化けが起きてしまっている箇所を見つける。

初めの1文字はおそらく「ミ」であっているんだけど……。

 

 

「あ。」

 

 

じっと見ようとすると、消えてしまった。

表記も<????>に戻ってしまっている。

 

……なんかよくわからんが……ギフトを作ったのは女神様だしなぁ。

今度聞いてみるか。

とりあえず気にしないようにしよう。

 

 

ガチャッ。

 

 

「おー?ソウジー?どしたの、変な顔して。」

「あ、いえ……ギフトを見ていまして。」

「あー、そういうことー。中空を見つめてぼーっとしているから、変な人にしか見えなかったよー?」

「失礼しました。」

 

 

そう言って、セツヒトさんの荷物を預かる。

 

「私はソウジのものー。」とかよくわからんボケをかましてくるセツヒトさんを華麗にスルー。

イジリにも慣れたものである。

 

なぜかむくれるセツヒトさんは放っておこう。

 

 

「あ、あのー……ソウジさん?」

「あ、どうしました?ハイビスさ……。」

 

 

後ろから声をかけられ振り向いたら、ハイビスさんがいた。

その後ろには……。

 

 

「この荷物は……?」

「あー……えっとですね、実は……。」

「大体が仕事の書類と、あとお土産なんだってー。すごい量だよねー。」

「……これ全部ですか?」

「お願い……できればと!す、すみませんソウジさん!」

 

 

ハイビスさんの後ろにあった荷物。

行きにもあった、ボストンバッグ、お土産の入った袋数個……はいいとして。

 

ファイリングされた書類が山のように積んである。

 

 

「うわー。ハイビスちゃーん、仕事しすぎだよー。」

「いえいえ……大体はミヨシに数年間保管されていたものです。今回、この資料を持ち帰るのも業務の一つになっていまして……ソウジさん、お願いできますか?」

「多分……大丈夫かと思いますが……すごい量ですね、これ。」

「はい……何でも、ハンターズギルドに必要なものだと……シガイアギルドマスターが。」

「はぁ。」

 

 

と言われてもなぁ。

まぁ入れることは問題ないと思うけど。

 

一応書類をポーチに入れようとしてみたが、反応はなし。

そこで、ハイビスさんが「ソウジさんに一時的に、ワサドラに着くまで譲渡します。」と言うと、すんなり入った。

 

「「おー。」」と二人から声が上がる。

 

……これどんだけモノ入るんだろうな……。

今度試してみようか。

 

……いや、やめとくか。試す方法もわからんし。

 

 

…………。

 

 

荷物を預かった後も、なぜか中々部屋に帰ろうとしない二人。

 

 

「だってさー、三人で過ごす最後の夜だしー、なんかさーみーしーいー。」

「子どもですか。」

「いえ……本当に楽しかったですよ?……ここで過ごす、皆さんとの日々は。」

 

 

ハイビスさんが、とても素敵なことをおっしゃる。

 

……それは確かに。

ここにやってきて、セツヒトさんファンに睨まれて、まさかの三人一緒の生活が始まって、毎日が狩りと特訓三昧で……。

たくさんのモンスターを倒した。

村のピンチも、救うことができた。

我ながら、結構強くなった。

 

……冬山で過ごした日々が思い起こされて、ちょっとおセンチな気分になってしまう。

 

 

「そうですね……楽しかったです。さみしいと言えば、さみしいですね。」

「はい……ソウジさん、セツヒトさん。ありがとうございました。私……単純に今、楽しかったって思えます。本当に、色々ありましたけど。」

 

 

本当に色々あったもんな。

機会があったら、また来たいと思うほどには、いい村であった。

 

みんなで、少ししんみりした感じになってしまう。

 

 

「私は単純にー、仕事に戻りたくないのー。」

 

 

……約1名を除いて。

 

 

「雪よー。また降り積もってー。あと1週間はいさせてー。」

 

 

窓に向かって、呪うように言うセツヒトさん。

 

台無しであった。

 

 

* * * * * *

 

 

「それでは!お元気で!!」

「また来いよー!!待ってるぞー!!」

 

 

アワキ村長や商店のおばちゃんに鍛冶屋のおっちゃん、その他いろんな村の人に見送られ、俺たちはミヨシ村を後にした。

 

 

「みなさんも、お元気でー!!」

 

 

俺もハイビスさんもセツヒトさんも、後ろを振り向きながら手を振る。

ポポの上も慣れたものだ。

行きにこんなことしたら、多分バランスを崩している。

 

 

「タオカカからはー、ガーグァでいけるかもねー。この雪だとー。」

「ほ、本当ですか!?」

 

 

ハイビスさんが大声をあげてセツヒトさんに返す。

……あぁ、ガーちゃんグーちゃんか。

 

ガーちゃんとグーちゃん。

ワサドラから遠くタオカカまで、俺たちを運んでくれた恩人……恩モンスターである。

飼い慣らされており、特にハイビスさんにはとても懐いていた。

御者のおじさんも、冬が明けるまではタオカカに滞留すると言っていたし。

みんな元気だといいけど。

 

 

「良かったですね、ハイビスさん。また会えるかもしれませんよ?」

「はい!これでワサドラまでの長旅も、楽しみになります!!」

 

 

張り切るハイビスさん。

 

 

「ねーねーソウジー。」

「え?なんですか?」

 

 

セツヒトさんが、俺にしか聞こえない大きさで声をかけてきた。

 

 

「無事だといいねー。」

「え?あ、俺たちの道中ですか?」

「違う違うー。ガーちゃんとグーちゃん。」

「あぁ……。」

 

 

……まぁガーグァ達も、言ってしまえば御者のおじさんの家畜な訳で。

冬の間、餌をただただ消耗するだけの存在なら、いっそ……ということもある。

というか、それが普通だと聞いた。

村長さんから。

 

 

「……ソウジー、慰めてあげてねー。」

「いや、そうと決まったわけではありませんし。」

「ガーグァのこんがり肉、私好きなんだよねー。」

「セツヒトさん……。」

 

 

命を頂く。

この辺の死生観というか感覚は、こっちの世界の人の方がよっぽど割り切っていると思う。

現代日本に生きてきた俺は、生き物の命の上に立つという考えが、中々浸透しなかった。

ていうか今でも、納得し切れていないことはある。

 

俺はこのままでいいと、セツヒトさんはいつだか言っていたけど。

 

 

「〜♪」

 

 

綺麗な鼻歌を鳴らしながらポポに揺られるハイビスさん。

今日も白いモッコモココートとニット帽が、たいへんお似合いです。

 

 

「じゃあソウジー、頼んだからねー。」

「はい……。」

 

 

ハイビスさんを慰めるという大役を仰せつかった俺は。

タオカカまでの道中、ため息を10回ほど吐くのであった。

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