モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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109経緯を聞きましょう。

ワサドラに帰る途中、セツヒトさんが救援信号を見つけ、ヘルプに向かった。

そこに居たのは、俺のオトモ、ショウコだった。

 

ひとまずショウコ達から事情を聞き、この後について考えてみたいと思う。

 

 

「え、えーっとですね……ま、まず、ウチらは普通にクエストを受けまして……。」

 

 

緊張しているのか、おっかなびっくり話し始めたショウコ。

説明をまとめるとこうだ。

 

いつもの様に今朝早く、クエストを受注。

気候も暖かくなり、ワサドラでは大型モンスターの討伐クエストが少しずつ増えてきた。

だが、彼らは近頃あまり大型を相手にしていなかったらしい。

肩慣らしも兼ねて、ドスジャギイの狩猟を行おうとしたようだ。

 

だが。

 

 

「ウチらアイルー二人で探し回ったんですけど……ドスジャギィなんかひとっつもいませんでした。」

 

 

モンスターがいなかったという。

小型さえ。

 

こっそりマップを見る。

……確かに周辺にはいないが……あ、岩山の向こうに一体……。

 

 

「何か強力なモンスターがいたんじゃないか、と。」

「ウチらもそう思って、警戒を強めたんです。そしたら、例のセルレギオスが出てきて……。」

「なるほど。」

 

 

セルレギオスにいち早く気づいていた周辺のモンスターは、どこかに雲隠れ。

そこに突如現れたセルレギオス。

そういうことか?

 

 

「あいつらホント奇襲が好きだよねー。」

「そうなんです……実は、ウチとフェニクさんは、セルレギオスは初めてではなくて……。」

「そうなのか?」

「…………そこからは、私が説明するよ。」

 

 

フェニクさんが割って入ってくる。

 

 

「……実はショウコさんとは、ソウジさんと出会う前から懇意にさせてもらっていてね。」

「そうだったのか。」

「すみません、言うてなくて。」

「その時に、一度ヤツから奇襲を受けたんだ……この辺じゃ目にすることは殆ど無いモンスターと知ったのは、しばらく後だったけどね。」

 

 

ガシャ……。

 

 

上を見上げるフェニクさん。

防具の鎧が、音をたてる。

 

 

「あの時は何とか救援が間に合い無事に済んだが……まさか二度もあるとは思わなかったよ。」

「すみません……ウチ、引きが悪くて。」

「いやいや、そういうことじゃないさ。これは誰にでも起こりうる事だしね。」

 

 

フォローをきっちりと入れるフェニクさん。

……俺と出会う以前、か。

ショウコが「招き猫」と呼ばれ、周りから距離を置かれていた時期だ。

 

……この人、いい人なんだろうな。

 

 

「とにかく、警戒はしていたんだ。だが、突然空から飛来し、猛攻を仕掛けてきてね……トツバはいち早く気づいていた。そして救援信号を出そうと素早く用意した時……。」

「……セルレギオスに、狙われた。」

「そういうこと。後は見ての通りだよ。大剣で何とか追い返そうとしたんだが、私では力不足だった。」

 

 

自分の力が不足していたと言い切るフェニクさん。

立ち居振舞や所作を見たところ、腕はかなりのものだと思うのだが……見間違いだったか?

 

 

「私は元兵隊なんだ。対人には自信があるのだが、どうもモンスターは勝手が違うね。……トツバとショウコさんには、迷惑をかけている。」

「いやいや、ウチもいつも助かってますから。」

「ふふ……ありがとう。」

 

 

そう言ってトツバの髪を撫でるフェニクさん。

トツバの容態は落ち着いているように見える。

応急処置が良かったのかな。

流石ハイビスさん。

 

 

「しかしヤツを一蹴するとは……さすが、ワサドラでも有名なお二人だね。本当に助かったよ。……改めて、感謝する。」

 

 

手を膝に置き、一礼するフェニクさん。

様になっているなぁ……実力者であるというのが伝わる。

 

 

「まあさー、無事だったんだしー?それでいいよねー。……それより気になるのは、セルレギオスの動向だねー。」

「……撃退したのではないのかい?」

「うーん、そうなんだけどねー?」

 

 

そう言うと、ちらりと俺の方を見るセツヒトさん。

…………マップを確認しろということか。

すでに起動している情報画面から、マップを見る。

 

……やはり、ワサドラ方面に飛んでいるな。

 

 

「……逃げた方向が、ワサドラ方面、南東の方角でした。このまま行けば途中でかちあうかもしれません。」

「そーだよねー。どうするかなー。」

 

 

どうするとはつまり、やつをこのままにしておいていいのか、という話だ。

 

 

…………。

 

 

沈黙。

 

俺も考えてみる。

 

まず戦力。ここは申し分ないだろう。

おそらくセツヒトさん一人でも何とかしてしまうだろうし、俺にフェニクさん、ショウコもいる。

ただし、それ以外……ハイビスさんや御者のおじさん、何よりトツバを考えるべきだ。

トツバは今の所容態は安定しているが……どんなに急いでもワサドラまではあと半日はかかるだろう。

その間に容態が急変するかもしれないし、仮に野宿をするならばその護衛は必須だ。

 

戦力を振り分ける必要がある。

 

 

「……分散しましょう。」

「……そうだねー、それがいいかなー。」

「俺の考えとしては……まずは全員でこのままワサドラに帰還。最も良いのはこれです。だけど、途中でセルレギオスにかち合う可能性もある。最悪の可能性を想定したい。」

 

 

俺の案は、分散。

 

仮にセルレギオスに襲われた際、打って出るのは俺かセツヒトさん+ショウコだろう。

どちらかがセルレギオスに対応し、どちらかがワサドラに急ぎ連絡。

厳しいことを言うようだが、フェニクさんには荷台の方に回ってもらおう。

 

 

「俺としては、モンスターもそうですけど、野盗とかその辺が怖いです。」

「あぁ、なら私が適任だね。捕縛なら任せてくれ。」

「私は人間相手はちょっとなー……。」

 

 

セツヒトさんが言い淀む。

何で?セツヒトさんなら、その辺の人間など問題にならないだろうに。

 

 

「どうしてですか?」

「…………やりすぎるかもー。」

「あぁ……。」

 

 

なるほど。

それはちょっとマズいか。

 

 

「じゃあ、こうしましょう。仮にセルレギオス等強力なモンスターに襲われた際は、俺とショウコ、二人で行きます。」

「えっ!?ウチとですか!?」

「あぁ。」

「ご主人さまとセツヒトさん、お二人の方が簡単やと思うんですけど……。」

「俺たちがいなくなったこの車に、万が一にも新手が出たときは……モンスターならセツヒトさん、人間ならフェニクさんに対応してもらう。むしろ、ガーグァ車に残る方が重要だ。怪我人もいるし、戦えない人間を守る人が欲しい。」

「な、なるほど……。」

 

 

簡単に分散の方法を提案した。

一応、皆も異存は無いようだ。

 

 

「いいんじゃなーい?私とショウコちゃんが組むよりも、ソウジとショウコちゃんが組んだほうがいいよー。黄金コンビでしょー?」

「お、黄金?」

「お互いわかってる方が、動きやすいだろうしねー。それにー、ショウコちゃーん。」

「は、はい!」

 

 

ショウコが元気良く返事をする。

……もしかしてセツヒトさんが苦手なのか?

 

 

「ソウジならー、多分セルレギオス、問題ないよー。私が保証しまーす。」

「えっ?」

「多分じゃなくてー、確信。……確定?」

「俺は一生懸命やるだけですよ。……ショウコ、万一の時は、頼むぞ。久々だけど、大丈夫だよな?」

「は、はい!むしろよろしくおねがいします!……強くなったご主人さま、見てみたいです!」

 

 

よし。

方針は固まった。

まぁセルレギオスに襲われれば、の話だが。

 

 

「おじさん、ハイビスさん、そういう感じで、よろしくおねがいします。」

「おぅよ!分かったぜ!」

「何もない事を願いますが、その際は、ソウジさん。ショウコちゃん。ご武運を。」

 

 

ガーグァ車に残る二人にも、確認しておく。

 

 

「しかしよ、門外漢の俺が口をだすのもアレだが……。」

 

 

おじさんが俺に問いかけてきた。

 

 

「はい、何でしょう。」

「思い切ってよ、ワサドラへの道を外れて、迂回するってのはどうなんだ?このまま行きゃあ、コイツらならそれでも明日までにはワサドラに着くだろうしな。」

 

 

おじさんが、ガーグァたちを首で差す。

 

 

「それもいいんですけど、あのセルレギオス、俺たちを覚えましたからね……。」

「おっ?……それはヤバいのか?」

「ヤツの性格は執拗、且つ奇襲が目立つ。飛行能力もかなり長けています。……迂回しようとも、襲われるなら一瞬。なら、いっそまっすぐ向かったほうがいいでしょう。……こちらには一人、負傷した者がいますしね。急ぐに越したことは無いです。」

「なるほどなぁ……ソウジさん、考えたなぁ……。」

 

 

執拗に攻めてくる性格のモンスター、そして移動スピードもかなり速い……そこを考えれば、迂回しようと変わらないだろう。

なら、急いだほうがいい。

トツバも、心配だ。

 

 

「承知した!余計な口を挟んですまねぇな!」

「いやいや、そういうアイディアが活路を見出すこともありますし、ぜひ言ってください。」

「ははは!了解、っと!」

 

 

ピシィッ。

 

 

手綱を握り直したおじさんは、笑いながら俺に返事をした。

うーん、仕事人って感じで、かっこいいなぁ。

 

 

「ショウコ、簡単に打ち合わせしておこう。まぁ……やることは変わらないだろうけど。」

「はいっ!よろしくおねがいします!」

「ふふっ……ダメだな、妬けてしまうよ。」

 

 

フェニクさんが笑顔で言うと、その腕を組んだ。

灼ける、とは?

 

 

「いや、出会いこそ私の方が早いが……見てわかるよ。君たちは最高のペアだろうってね。」

「さ、最高のペア……。」

 

 

ショウコ、何故顔を赤くする。

 

 

「えぇ……多分ですけど、ショウコと俺なら、大丈夫です。俺の、唯一無二のオトモなんで。」

「ご主人さま……ちょっと……は、恥ずかしいです……。」

「そ、そうか?すまん。」

「いや、謝るのはおかしいですよ、ご主人さま。」

「えっ!?じゃ、じゃあどうすればいい!?」

「その辺は変わってないようで安心しました……。」

 

 

何だ?なんか間違ったのか俺?

 

 

「ショウコちゃん……あなたのご主人さまは強くなったんですよ……その辺はまっっっっっったく変わっておりませんが。」

「あぁ……ですよねぇ……。」

「おー?その話ー、私も混ぜてー。」

 

 

打ち合わせをするはずが、ハイビスさんを皮切りに、突如ガールズトークを繰り広げだす女性陣。

怪我人もいるのに。

 

 

「まぁ、後でいいか……。」

 

 

とりあえず、方針は決まったわけだし、俺とショウコなら打ち合わせ何もいらないだろう。

現場に出れば、ショウコならいくらでも合わせてくれる。

信頼感が違う。

 

 

「よっ、と……。」

 

 

幌の後ろからその上に飛び乗った俺は、周辺の監視をすることにした。

 

 

「おじさん!何か居たらすぐ言いますから!」

「おぅ!よろしく頼んだ!」

 

 

とかなんとか言いつつ、こっそりマップを起動。

 

 

「…………。」

 

 

一応、周辺には敵影無し。

このまま何事も無く、事が過ぎればいいけど。

 

 

ゴソ。

 

 

水筒を取り出し、一服する。

そこから夕方まで、周囲の監視を続けた。

 

 

* * * * * *

 

 

夜。

日も沈み、今日はこの辺で野営をする事にした。

 

ワサドラまでは、もう目と鼻の先……とまではいかないが、かなり近づいた。

草原にまばらに生える大きな木を拠り所に、川の近くでキャンプを張る。

 

人員総出でやったら、準備はすぐに終わった。

 

 

「……ん……?」

「…………トツバ?」

 

 

ショウコが声を上げる。

 

 

「…………ここは……。」

「トツバ、起きたね。……体はどう?無理に起きなくていいよ。」

「フェニクとショウコ……それに……誰?」

「あぁ、私達を助けてくれたみなさんだ。」

 

 

フェニクさんが俺たちを紹介してくれた。

 

 

「…………どうも、ありがとう。私は、トツバ。」

「ソウジだ。体の方は平気か?」

「大丈夫……そう、あなたが……。」

「あぁ、ショウコと組んでいる、ハンターだ。」

 

 

トツバが起きた。

と言っても、態勢は横たわったまま。

 

腹に大きな裂傷を受けていたのだ。無理もない。

 

 

「……私は失敗した。」

「失敗などではない。いち早く知らせてくれたおかげで、お前以外は全員無事だ。ありがとう、トツバ。」

「礼はいい。体が勝手に動いただけ。」

「あぁ。そう言うと思ったよ。」

 

 

トツバとフェニクさんが話をするのを聞いていると、二人の関係性が何となくわかってきた。

分かりあっている、そんな印象を受けた。

 

 

「どれぐらい、経ったの?」

「ウチらが襲われて、その日の夕方や。ほんまもう……無茶しすぎ、トツバ。」

「ショウコも無事なら、問題無い。」

「問題大アリや……でも助かったから……ありがとうな、トツバ。」

「ん。」

 

 

トツバはショウコよりも小さい。

黒のショートヘア、猫耳も黒く、クリっとした目、いかにもアイルー系の亜人という印象だ。

装備は外してラフな格好になっているが、荷台に積んであった獲物はハンマーだった。

……アイルーなのに、力が強いんだろうな。

 

 

「セツヒトさん、ソウジさん……知ってる。有名。ありがとう。感謝してもしきれない。」

「気にしないでー、こういうのはー、持ちつ持たれつー。」

「ありがとう。ハイビスさんも、久しぶり。」

「トツバちゃん……良かった、目を覚まして。」

 

 

ハイビスさんとは知り合いなのか。

そりゃそうか、ワサドラのハンターやオトモで、この人を知らない人はいないだろう。

 

 

「もう一人の……おじさん。ハンター?」

「いや、俺は違うぜ、アイルーの嬢ちゃん。安心しな。俺が責任持って、ワサドラまで連れてくからよ!」

「この車の……そう。」

 

 

皆が心配してゾロゾロと集まってきた。

野営も一通り終わり、夕飯時。

……腹減ったな。

 

 

「…………そろそろご飯にしようと思うけど……ショウコ達は、何か持ってるか?」

「携帯食料ならありますけど。」

「なるほど。」

 

 

俺のポーチには、人数分の食糧が十分に入っている。

弁当は昨晩で食い尽くしたけど。

……ワサドラ帰ったらお礼を言いに行こう。美味かった。

 

トツバは、食欲はあるというので交代で夕飯を取った。

思ったより元気そうで良かった。

 

 

「アイルーは体力や俊敏さもそうですけど、復活も早いんです。」

「そうなのか?」

「はい……まぁご主人さまは異常やと思いますけど……。」

「…………。」

 

 

何も返せない。

ティガレックスの時に負った肋骨の負傷も、既にそこまで痛みはない。

…………女神様の朝食のおかげなのだろうか。

 

ありがとうございます、女神様。

 

 

「だからー、私とソウジは外で寝るってー。見張りもしなきゃだしー。」

「いや、ここは私が見張りをしよう。ショウコとソウジさん、セツヒトさんには体力を温存してもらわないとね。」

「あ、あのー、私は荷車にいるだけですから、テントでなくても……。」

「ウチは平気ですよ?何ならご主人さまと寝泊まりなんて、毎日のことでしたし。」

「「「えっ……?」」」

 

 

どこで寝るか、誰が見張りをするのかで譲り合いが止まらない。

そしてショウコがいらぬことを言い出し、場は混乱を極めてきた。

 

 

「そういやショウコちゃんはー、ソウジと同じ部屋で毎日寝泊まりしてたんだよねー。」

「そ、そうなのか……?私はてっきり同じ宿で2つ部屋を取っていたものだと……。」

「…………ショウコちゃん、ちょっと私とお話しましょう?ね?」

「ご、ご主人さまぁ……。」

 

 

穏便で平和な話し合いの結果、俺、セツヒトさん、フェニクさんが一人ずつ交代で見張りをすることに。

俺はおじさんと荷車で仮眠。

他の女性陣は2つのテントで寝ることに。

 

 

「さぁショウコちゃん。こっちのテントにいらっしゃい?」

「ご、ご主人さまぁ……。」

 

 

ズルズルズルズル……。

 

 

ハイビスさんに引きずられ、トツバのいるテントに入っていくショウコ。

何故かフェニクさんもセツヒトさんも一緒に。

 

 

………………。

 

 

いやー穏便に済んで良かった良かった。

寝よ。

 

 

「ソウジさん、俺はガッツリ寝るが……大丈夫かい?」

「ええ、構いませんよ。護衛と見張りは俺たちの領分ですし。」

「いや……大丈夫ってのはそっちじゃねぇんだが……。まぁいいわ。よろしく頼む。」

「はい。おやすみなさいです。」

「お、おぅ。」

 

 

おじさんが物凄い目でこちらを見た後、毛布を被った。

何かあったのだろうか。

 

……不安が無いよう、きっちりと見張りをしよう。

 

 

「よっ、と。」

 

 

音を立てないよう慎重に幌の上に登る。

毛布を取り出して、防寒態勢。

 

そこからしばらく、俺は辺りを警戒するのであった。

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