モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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11もう一度現状を確認しましょう。

宿屋「ホエール」に戻ってきた。

 

おじいさんの孫のドールに紹介されてギルドに向かった時は、多少ウキウキしていた。

「これからが俺の冒険の始まりだ!」と。

 

……。

 

 

「もう心折れそう……。」

 

 

部屋に入って冷静になって考えてみる。

 

そりゃ確かに都合が良過ぎたな。

何の経験もない俺が、命を賭けて活躍するような凄腕ハンターにパッとなれるわけない。

 

新人に、億単位の金が動く案件を任せると言われれば、答えは「No!」だ。

経験を積ませ、失敗も成功も経験させてから……と考えるのが、当たり前だし普通だ。

 

むしろ経験を積ませてくれる、初心者ハンター向けのシステムがこの村のハンターギルドに出来上がっていた、その幸運に感謝すべきだ。

 

 

「……前向きに考えれば、上出来だ。」

 

 

ギルドカードの発行代金を肩代わりしてくれたのは、借金をわざと背負わせてこちらが簡単にやめないようにするためかもしれない。

宿に2日泊まるぐらいのお金なんて、金持ちからしたらはした金かもしれないが、食い詰め者からしたら大金だろう。

 

発行代金以外にも、生活費や装備代金について不安があればここへ、と言われて紹介されたのは、明らかに堅気ではない方々が出入りする建物だった。

 

あれはやばい。気がする。借りない方がいい。

サラ金、ダメ絶対。

 

 

お金と言えば、手持ちの残り金額も、そこまで余裕があるとは言えない。

換算してみたのだが、宿のおじいさんの言っていた「z」を基準に考えると、現在15万とちょっとは金がある。

宿代が銀貨2枚で2000z、食事は銅貨5枚で500zと考えると、宿泊代と食事代だけで1日3500z消費することになる。

この世界の暦がまだよくわからないが、単純計算でひと月とちょっとは持つと考えてよい。

だが、それ以外の支出に何があるかわからない。

 

焦ってきたぞ……。

 

分からないことだらけだ。とにかく情報が不足している。

 

この世界の日常生活に必要な知識さえ俺にはない。

ハンターになるための知識経験なんて、それはもう圧倒的に足りない。

 

情報が欲しい……情報……。

 

 

「あっ。」

 

 

……忘れていた。あるじゃないか。

俺にだけ許された情報源が。

 

 

おもむろに腰に手を伸ばす。ポーチに手をかける。

すると目の前に、まるでゲームのメニュー画面のような「ギフト」が浮かんでくる。

 

これだ。とにかくこれで今できることを試しに試すんだ。

分からなかったことを、調べることができる。一人で解決できることがある。

 

ようし、そうと決まれば、さっそくまずハンターについて調べよう。

空中を眺めながら、さっそく<ハンターノート>の項目を選択する。

 

バサルモス戦で役に立ったこの項目。

あの時は後回しにしてしまったが、ハンターに関する記述もあった気がする。

 

 

「<ハンターの業務>、<クエスト受注>、<武器種の選択>、<各武器種の操作方法>……これめちゃくちゃ大事なこと書かれていそうだな……。」

 

 

そう小さく、独り言をつぶやく。

 

時間はあるのだ、朝早くからギルドを訪れて、まだ昼食時でもない。

しらみつぶしにこれらの画面を見ていこう。

 

* * * * *

 

 

「なんてこった……大体のことが分かってきたぞ……!」

 

 

恐るべし情報画面。

 

言いにくいが、情報画面は情報画面だ。それ以上も以下でもない。

 

とにかく恐れ入った。

ハンターという仕事については、ほぼ網羅しているのではないか。そう思えるほどだ。

 

まずはクエストについて……クエストとはつまり、ギルドにきたハンター向けの依頼だ。

これには様々な内容のものがあることが分かった。

 

受付のお姉さんが言っていた<採取><納品>系のクエスト。

 

〇〇の葉が何枚欲しいだの、△△のモンスターの毛皮をいくつ納品してほしいだの、そういった集める系のクエストらしい。

 

また、モンスターを倒す<討伐>や、その場からモンスターを撤退させるだけでもクエストクリアになる<撃退>、罠による<捕獲>といった種類があるようだ。

 

なので、ハンターの業務は多岐にわたる。モンスターに関わる依頼以外にも何でも受けられる、と言った方がよいだろう。

 

 

次に武器種やスキルについて。この情報はもう、超有用だった。

 

武器種とは、そのまま武器の種類。

両手で剣と盾をもつ最もオーソドックスな<片手剣>や、両手で自分の身長ほどもある剣を使いこなす<大剣>。

 

遠距離射撃が可能な<ライトボウガン><ヘビイボウガン>、演奏することでステータスを上げたりそのまま鈍器としても殴れたりする<狩猟笛>。

 

変わり種では虫を使ってモンスターからエキスを取りながら戦うという<操虫棍>など。

 

とにかくたくさんの武器が存在していた。

 

 

そして。そしてそして。

 

 

それらの武器全て、おれはポーチの中に持っていた。

 

意味が分からないかもしれないが、この小さなポーチの中に、数十種類の武器や装備が入っていたのだ。

 

なぜ気付かなかったんだ……。そしたらバサルモス戦でも多少は戦えたのかもしれないのに。

 

……嘘です。武器の扱いなんて分かりません。思い上がってすみません。

 

 

これらの武器は、一瞬で装備することができた。

 

と言っても「持っている片手剣を装備したい。」と念じるだけではダメだった。情報画面の<武器装備>の画面から選択する必要がある。

これは<装備>と同じシステムだな。

 

 

選択したら……いつの間にか、自分で剣と盾を手にしていた。

……これはすごい。本当にゲーム画面の中のキャラクターになった気分だ。

 

選んだ武器の名前は、「ハンターズナイフ」というらしい。

初心者用の武器で、他の武器も見てみたが、全て初心者用だった。

そして、右腕には、肘から甲まで覆うぐらい大きさの盾が付いている。

 

説明書のように<操作方法>という文字を見付けた俺は、ムズムズする気持ちを抑えられず、部屋を飛び出した。

 

 

* * * * * *

 

 

「読んだだけではよくわからんからな!」

 

 

実際に剣を振ってみなくては、何とも分かりづらいだろう。

 

なので、さっそく試してみたくなった俺は、宿の庭を借りて素振りをしに行うことにした。

 

<武器装備>で武器種をバカスカ変えていたら、ドールやおじいさんに変な目で見られそうなので、とりあえず片手剣を装備したまま行ってみる。

 

ちなみに、体の装備は、以前と同じ<ミヨシ村装束一式>だ。

昨晩体を拭くときに、全て外してポーチにしまっていたのだが、汚れがある程度落ちて綺麗になっていた。装備の洗浄効果もあるのか、このポーチ。

 

庭は、前世の学校の多目的室ぐらいの広さがあった。

宿の建物に四方囲まれる形で、屋根はなく空が見える。その隅の方をお借りした。

 

おもむろに片手剣を構える。

周囲には何も無いが、一応確認。うん、何もない。

 

まずは思い切って振ってみるか。

 

 

「鞘から出して、と。……よ!……ハッ!……ヤあッ!」

 

 

……うん、まるでなってない。笑えるほどなっていない。

素人ながら自分でもよくわかる。

 

体は非常に軽やかだ。しなやかで素早く動けるし、力もあると思う。

おそらく前世の俺がこの剣を振ったら、多分剣に振り回されて自滅するだろう。筋肉痛どころではない気がする。

多分この体、やれと言われれば、バク中とかできる気がするし。

 

 

「体は軽いんだよな……技術が伴ってない感じ……。」

 

 

癖になってしまった独り言をつぶやく。

 

このまま振り続けても意味がない、と断じた俺は、空中に<操作方法>の画面を出してみる。

 

 

「斬り落とし……としか書いてないんだよなあ。」

 

 

それだけしか書かれていないのだ。

何かこう、やり方とか練習方法とか書いていないものか……。

 

そう試行錯誤を続けている最中だった。

 

 

「ねぇ、何してるの?」

「おわっ!」

「わわ、びっくりしないでよ。私だよ、ドール。」

 

 

急に話しかける女性には耐性がついてきたと思っていたが、そんなことはなかった。

 

 

「すまん、驚いてしまって。」

「集中してたんだね、結構前からいたんだけど。」

「気付かなかった。」

「いいよ。ハンターさんって集中するとすごいって知ってるし。」

 

 

他人には見えないこの画面と、にらめっこしていただけなんです。

そんなことを白状できるわけもなく、会話を続ける。

 

 

「いつから見てたの?」

「えっと、剣を振った音が聞こえて、ソウジさん帰ってきたんだって。それで見に来たらすごい顔で集中していたから。」

「そうか。いや、恥ずかしい……。」

「気に障ったらごめん。続けていいよ。」

 

 

年下の子どもに気を遣われて、何とも申し訳ない気持ちになる。

……でも人から見てもらうのはありじゃないか?

 

 

「……ドールは、いろんなハンターを見てきたのか?」

「どうかな。宿に泊まった人が、そうやって庭で練習するのを見るのは、好きなんだ。だから、見ていると言えば見てるかも。」

 

 

どうせずぶの素人なんだ。ドールは今までいろんなハンターを見てきている。

どんなもんか判定してもらおう。

 

 

こうして俺はプライドなど宇宙のかなたに放り投げ、実質一回り以上年下の少女に教えを乞うことにしたのだった。

 

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