小さい頃の話。
遠くに出かけたその帰り、車から見知った景色が見えるとホッとした経験がある。
動物的な本能なのか何なのかは分からない。
だが、ワサドラに着いた時、同じような気持ちを抱いた。
もはや俺にとって故郷だな、ここは。
セルレギオスを無事討伐した俺達。
回収班の皆さんに、ワサドラまで送ってもらった。
眠りこけるセルレギオスは、この後すぐに解体班の下に送られるらしい。
「よっと……ふぅ、半年ぶりかな……?」
ワサドラの入り口で、そんなことを言ってしまった。
長い間、ミヨシにいた気がする。
それだけ、あちらでの生活は濃いものだった。
「ショウコ……このままギルドに行くが、いいか?」
「はい。みんなも心配しているかも、ですしね。」
「あぁ。トツバの容態も気になる。早く確認したい。まぁ、無事捕獲したことは、情報伝わってるだろうけどな。」
ギルドの連絡網の速さは凄まじい。
恐らく既に、ギルドでは俺たちがセルレギオスの狩猟を終えたことが伝わっていることだろう。
携帯電話どころか、電信を用いた通信手段すら無いこの世界にあって、これは凄いことである。
まぁ日本でもその昔、中国からの使者が来た際はすぐに連絡できるよう、海から太宰府まで狼煙リレーでつないで伝えたと言うし。
その時代時代で、通信というものは最速を求め続けてきたんだろうな。
……情報伝達の発展について考えるのはまぁ置いておこう。
ショウコとともに、久しぶりのワサドラギルドへたどり着いた。
懐かしい。
石造りの、厳つい建物。
ミヨシの集会所は、温かみのある木造であったため、余計に懐かしく感じてしまう。
ギィッ。
扉を開けて、中に入る。
ザワザワザワザワ……。
「おぉ……。」
「どうしたんです?ご主人様。」
「いや、人の多さに少し圧倒されただけだ。」
「……そんなにミヨシは人が少なかったんですか?」
「まぁな。山間の村だし……ハンターの数はそれなりにいたんだけど。」
それでも、ワサドラの賑わいはかなりのものだ。
今日何度目かわからない、帰ってきたなぁという実感。
「お……ハイビスさん。」
「あ、ソウジさん!狩猟、お疲れ様でした!」
「はい。無事、捕獲しました。」
「はい、すでに連絡は。ショウコちゃんも、お疲れさま!どうだった?」
「ご主人様が……強くなってました。」
受付ではなく、入口に入ってすぐのロビーでハイビスさんを見つけ、声をかける。
しかし何だショウコ、その感想は。
嬉しいじゃないか。
「ふふふ。ソウジさんは、かなりレベルアップしましたからね。……ソウジさん、私は違う業務で席を外します。狩猟完了報告については、ヒナタにお願いしていますが、よろしいですか?」
「あ、はい。俺は大丈夫です。」
「では、よろしくお願いします。……あ、例の書類の山……そっちは明日でもよろしいですか?」
「承知しました。俺はいつでもいいですよ?」
「ありがとうございます。では。」
スタスタスタ。
ハイビスさんが早足で受付奥の方に向かっていった。
帰ってきたばかりなのに、忙しないな。
……やはり受付嬢、というかギルド職員って、ブラックだよなぁ。
「……ご主人様とハイビスさん、仲良うなってませんか?」
「そ、そうか?まぁ、一緒に生活したからな。数か月。」
「……一緒のログハウスで寝泊まりしたと、昨日聞きましたけど。」
「あぁ。宿も殆ど無いような辺境の村でな。俺たちのような季節限定の滞在者には、そういう場所を案内されるんだ。」
「…………ウチの方が先やもん。」
「ん?何か言ったか?」
「い、いいえ!?それよりご主人さま!ヒナタさんとこ、行きましょう?」
「あ、あぁ。」
ショウコに押されて、受付に向かう。
その間、結構な視線が俺たちに集まっていた。
ショウコは人気だし、俺も久々だ。
少しは視線も集まるか。
「次の方、どうぞ。」
「あ、お願いします。」
「はい……って、そ、ソウジ様!」
「どうも、お久しぶりです。」
一番並んでいた行列に並ぶこと十数分ほど。
ようやくたどり着いた受付にいたヒナタさんに、挨拶をする。
「お久しぶりです、同志、ソウジ様。ミヨシはいかがでしたか?」
「色々ありました……長くなるので詳細は省きますが、まぁ、いろいろ。」
「こちらのギルドにも、ゴシャハギやティガレックスの討伐のお話は届いております。……ギルド中が、騒ぎになりました。」
「そ、そうなんですか?」
そこまで話題になったのだろうか。
恥ずかしいぞ。
「ソウジ様は、そもそも下位に登録されておりました。それが一報ですぐに仮上位認定され、ゴシャハギを捕獲、さらには完全ソロでティガレックスの討伐。……控えめに言って、大騒ぎでございました。」
「そ、そうですか……。」
そりゃこっちでは見ないようなモンスターばかりだけど。
……だからさっき、色んなハンターやギルド職員にジロジロ見られていたのか?
あんまり目立つのは、ちょっと、恥ずかしい。
「あ、あんまり話題になるのはちょっと……。」
「ご安心ください。ひとまずは私と、ハイビスせんぱ……ハイビスが受付を専属のまま、担当いたします。お手数ですが、私かハイビス限定で、お話を下さいますよう、お願いします。」
「あぁ、よかったです。今までと同じようにしていただくと、ありがたいです。」
「はい。」
ヒナタさんは相変わらずの人気だった。
他の受付もあるのに、ヒナタさんの受付には若い男性ハンターを中心とした列ができていた。
黒いロングの髪型、力のある目つきがまさにクールビューティーといった感じ。
今日は髪を下ろしていて、少し印象が違うけども、これはこれで。
「ご主人様、どこ見てるんですか?」
「い、いや!?どこも見てないぞ!?」
「ふーん……怪しいですねぇ……。」
「な、何を言うか。」
はいすみません。眺めてました。目の前の美人さんを。
だって久しぶりだったし。
おっさんの癖は、中々に業が深い。
「それでは……狩猟完了報告でよろしいでしょうか。」
「あ、はい。正規のクエスト報告ではないですけど……。」
「その辺はハイビスから承っております……セルレギオスとは、珍しいですね。ショウコ様も、本当にお疲れ様です……。」
「あ、はい。ヒナタさん、ありがとうございます。」
……ヒナタさんは通常を装っているが、俺には分かる。
恐らくは、ヒナタさんの目には今、ショウコのその猫耳からブロンドの髪、尻尾、八重歯に至るまで、すべてがインプットされ、脳内フォルダに保管されていることだろう。
目つきが違う。
そしてそれを本能的に察してか、若干ショウコがたじろいだ。
ヒナタさんを見つめてしまった俺、ショウコを見つめるヒナタさん。たじろぐショウコ。
何だこの三すくみ。
「……まずは、こちらにサインをお願いします。」
「あ、はい。」
アホなことは考えないで、とっとと報告を済まそう。
後ろにはまた、行列ができているし。
…………。
「はい、お疲れさまでした。これで終わりです。」
「ありがとうございます。」
「長旅でお疲れかと思いますが、まだお伝えすることがございまして。よろしいですか?」
「あ、はい。どうぞ。」
何だろう。
……もしや帰ってきてすぐにシガイアさんから呼び出しか?
「まず、救援していただいたトツバさんですが、今は医務室にいらっしゃいます。」
「医務室。」
「はい。とは言っても、急を要するような状態ではありません。ご安心ください。」
よかった。
お医者さんに診てもらってそれなら、安心だ。
終わったら見に行くことにしよう。
ショウコも気になっているだろうし。
「次に。伝言をお預かりしております。セツヒト様からです。」
「セツヒトさん?」
「『今日はー、宴会だからねー。みんな連れてイシザキ亭だよー。』……とのことです。」
「ど、どうも。」
急な物真似で、ヒナタさんがセツヒト語を操った。
かなり似ていて驚いた。
「うわぁ……ヒナタさん、めっちゃ似てます!すごいです!」
「そ、そんな……恐れ入ります……。」
ショウコが感心するほど。
……意外な特技だなぁ。
「そ、そして最後にもう一つですが……。」
微妙に顔を赤くしたヒナタさんが、話し出す。
「シガイアより、明日の朝、セツヒト様と部屋まで来てほしいと、承っております。」
「明日の朝。」
「はい。」
……シガイアさんは物真似しないんだな。
上司の物真似をする部下とか、前世の新年会を思い出した。
しかし、さすがに今日は呼び出されなかったか。
……確かに、帰ってきて早々に呼び出しなんかしたら、セツヒトさんあたりはブーブー言いそうである。
恐らく既に飲む気満々だろうし。
「以上です。お引止めしまして、申し訳ありませんでした。」
「いやいや、お手間取らせまして、こちらこそ。」
「……また、ミヨシの話など、お聞かせくださいね。」
「あ、はい。もちろんです。」
「それでは……。次の方、どうぞ。」
そういうと、また次のハンターを呼ぶヒナタさん。
相も変わらず、行列は続いている。まだまだ忙しそうだ。
そういえばここは新人ハンターの受付ではないが……配置換えでもあったのだろうか。
ヒナタさん有能な人だろうしなぁ。
「ご主人様。早くドールちゃんやホエールさんところ行きたいでしょうけど……先に医務室、寄ってもええですか?」
「あぁ、行こう。俺もそのつもりだ。」
「すんません。したら、行きましょう。」
ヒナタさんへセルレギオスの狩猟報告を終えた俺たちは、今度はギルドの医務室に向かうことにした。
* * * * * *
医務室。
基本的に、ハンターやそのオトモ、ギルド関係者が応急処置をしたり、入院をしたりする施設である。
ギルドに付随していて、お医者さんも常駐している。
俺もディノバルトの一件では、とてもお世話になった。
……女神さまが初顕現したのも、この医務室の入院部屋だったなぁ……。
この扉から超絶美人が入ってきたものだから、ケガの痛みなど吹っ飛んでしまったのを覚えている。
懐かしい。
コンコン。
「トツバー?ショウコやけどー。」
「あぁ。どうぞ。」
トツバではない、女性の声。
恐らくフェニクさんだろう。
一緒にいたんだな。
ガチャッ。
入院室は、トツバのベッド以外誰もいなかった。
俺の時もそうだったな。
もはや長期入院とか必要な患者は、いつまでもここにおらず、病院に行くのだろう。
「ショウコ、ソウジ。狩猟お疲れ様。」
「トツバ。お医者さんに診てもらったん?何処か悪いところ、あった?」
「特に無い。回復薬をしっかり付けて、安静にしていればいい。」
「そか……よかったぁ……。」
安心してベッドに頭を預けるショウコ。
……不安だったんだな。
「ソウジさん、ショウコさん、セルレギオスの狩猟、お疲れ様だね。」
「フェニクさん、ありがとうございます。」
「ワサドラに無事着いて、すぐにギルドに報告をしたんだ。けどセツヒトさんが、そんなに心配しなくてもいいというものでね。……しばらくしたら、セルレギオスの狩猟完了報告が舞い込んできたんだ。あまりの早さに、とても驚かされたよ。」
「そうでしたか……ショウコといましたからね。やっぱりやりやすかったです。」
「ショウコさんも、お疲れ様だね。久しぶりの二人での狩猟は、どうだったかい?」
「ご主人様が強くなりすぎでした……。」
「ほぅ……興味があるね。聞かせてもらえるかな。」
「私も聞きたい。ソウジの双剣は、ショウコの爪との組み合わせが悪いとずっと思っていた。気になる。」
フェニクさんとトツバが、俺たちの狩猟話に食いついてきた。
「そ、そんなん、普通やって。むしろ、ご主人様の指示ばっか聞いて、何もせんと勝って……。」
「ショウコ、そんなことないぞ。双剣はスタミナや切れ味の管理が難しいんだ。持ち直す間、何度も引き付けてくれたじゃないか。安心感が違ったぞ。」
「ご、ご主人様……。」
何もしていないと言いかけるので、そこは止める。
ショウコの存在は、最高にありがたいのだから。
実際、ティガレックスのソロ討伐の際は、もう何とか無理やり刀を研いで、際の際ギリギリまで時間を削って回復薬を飲んで……忙しないことこの上無かった。
「セルレギオスは、空中に跳ぶ……いや、飛行する、が正しいか。本当にその力に長けていたんです。毎回飛んでは攻撃、飛んでは攻撃、忘れた頃に噛みつきや薙ぎ払い……リズムも独特でした。」
「搦め手……というわけではないんだろうが、そういう敵は厄介だね。」
「ええ。なので最初は見る……つもりだったんですが……私が突っ込んでしまいました……。」
「へぇ……ソウジさん案外むちゃするタイプかい?」
「そうなんです!ご主人様はいつもいつもそうやって私をハラハラさせるんです!」
「わ、悪かったって……でも、できると思ったことしかやらないぞ?」
「そればっかりですやん……。」
今日は謝りっぱなしだな。
「……ソウジは、ショウコを必要としている。逆も同じ。」
「あぁ、いいコンビだな。」
「「そ、それはどうも。」」
ハモる。
「ほら、息もぴったりだね。」
「お似合い。」
「と、トツバ!からかっとるやろ!?」
「客観的事実を言っただけ。私もフェニクとはそういう風になりたい。」
「その為には、怪我をしっかり治して、特訓しないとな。二人に並ぶにはまだまだかかりそうだけどね。ふふ。」
「い、いやぁ、どうも。」
…………やはりからかわれているような、そうでもないような。
まぁいいか。
とにかくトツバは無事だった。
それで良しとしよう。
しばらく話をした後、俺達は入院室を後にした。
* * * * * *
宿「ホエール」に向かう。
何故か緊張している自分がいる。
…………何で?自分でもよくわからん。
何もやましいことは無いのに。
「ご主人様、ええですか?セツヒトさんやハイビスさんと一緒に暮らしとったこと、ぜっっっったいに話したらあきませんよ!」
「お、おぉ。」
「これはもう、ぜっったいです!ドールちゃんの前では言うたらあきません!」
「は、はい。」
何度も何度もショウコが話す。
耳にタコができてしまうほど。
遅かれ早かれバレるものだし、そもそもバレても大丈夫なのでは?と言ったのだが、
「世の中には知らん方がええこともあるんです!」
と、ショウコさんは一点張り。
素直に従おうとは思うが……余計に緊張が増してしまった。
とりあえずお土産を出しておいて……ただいまを第一声に……。
頭の中でリハーサル終了。
いざ。
ガチャ。
「た、ただいまー……。」
「あっ。」
「あっ。」
開けたら目の前。
すぐそこにドールがいた。
「わぷっ……!ど、どうしたんです?ご主人様?」
俺が入ろうとしたら急に止まったものだから、ショウコが背中に当たる。
「うわっ。」
「えっ……。」
ショウコに押され、バランスを崩す俺。
思わずドールを抱きしめるような姿勢になってしまう。
「あ、あああ、わ、悪い!ドール!わざとではないんだ!」
「そ、そそそそソウジさん!?」
いかん。
すぐに離れる。
「…………い、いきなりごめん、ドール。」
「…………う、うん。」
二人して変な雰囲気になってしまう。
何だコレ。
「……え、えーっと……た、ただいま帰りました。」
「う、うん。おかえりなさい、ソウジさん。」
とりあえず挨拶は完了。
よし、このまま何事も無かったかのように……。
「おや、ソウジさん。お帰りなさい。そろそろかと、思っとったぞ。」
「あ、ホエールさん。」
「…………出会い頭に抱擁とは……ソウジさんもだいぶ上手になったのぉ……。」
「ち、違いますよ!?ホエールさん!」
「お、おじいちゃん!違うよ!?」
「ほっほっほっ。若い若い。」
何事もなく、などとてもできずに。
俺もドールもあたふたしてしまう。
「……ウチ、ナイスアシストしてもうた?」
何を言ってるんだ、ショウコ。
……………………。
…………。
コトッ。
「とりあえずお帰り、ソウジさん。」
「ああ。コーヒーありがとう。」
「ショウコちゃんも、お帰り。」
「おおきに……ドールちゃんの淹れたコーヒーは世界一やぁ……。」
ズズズズ……。
茶をしばく老人のごとく、音を立ててコーヒーを飲むショウコ。
お行儀悪いぞ。
「ソウジさん、いきなり過ぎだよ。帰ってくるならお便りくれても良かったのに。」
「すまん、色々あって。……ホエールさんも、急にすみません。」
「ほっほっ。気にせんでいいぞ、ソウジさん。部屋の方は一旦片付けたが、少し前から空けておる。またここで過ごすということで、いいかの?」
「はい!是非お願いしたいです!」
「あいわかったわい。……それじゃドール、しばらくここでもてなしておいてくれ。わしは準備をするわい。」
「え?おじいちゃん、私やるよ?」
「ええ、ええ。積もる話もあるじゃろ?お前もゆっくりしなさい。」
「う、うん。ありがとう。」
「ショウコ殿も、同じ部屋でいいかの?」
「は、はい!よろしくおねがいします!」
「うむ。元気でよろしい。それではの。」
2階に歩きだすホエールさん。
お変わり無いように見える。元気そうで良かった。
部屋も空けてもらって、嬉しいとしか言いようがない。
ありがたいなぁ。
「……ドールにホエールさんに、二人とも元気だったか?」
「うん、それはもう。むしろお客さんが少なかったから、暇だったよ?」
「そうか。あー……冬はお客さんが少ないんだな。」
「うん。そう。ショウコちゃんはずっといたし、たまにマショルクさんも夕飯食べに来てくれたんだ。」
「え!?教官が!?」
「うん。」
「へ、へぇ。」
教官の話を久々に聞いたからか、驚いてしまった。
この宿に何の用だったんだろう。
いや、ご飯を食べに来たんだろうけど。
「多分だけどね?私とおじいちゃんを心配してきてくれたんだと思うよ?……あの人、すごく優しいね。」
「や、優しい……?」
まぁ悪い人では無い。
だが、優しい人なのかと言われれば、クエスチョンマークが付く。
や、優しいねぇ……ちょっとベクトルが違う気がする。
「そうか……教官にあったら話してみるよ、その辺。」
「うん。ありがとう。お客さん、たくさん連れてきて飲み食いしてくれたんだ。おかげで助かったんだよ?」
「そうだったのか。」
教官は謎の人脈があるしな。
イシザキ亭にも、よく分からないお偉方を連れて行ってたようだし。
「ソウジさんは、元気だった?」
「あぁ、ミヨシ村で何とかやれたよ。ドールを撫でたお陰かな。」
「……私、ご利益の神様じゃ無いんだけど。」
「い、いやいや、そういう意味ではなくて……何というか、思い出して頑張れたんだ。」
「そ、そう……。」
「う、うん……。」
…………な、何だ!?
何か妙に緊張するぞ!?
どうして!?
「ご主人様、何で緊張されてるんですか?」
「ショウコには分かるか……いや、よく分からんが、久々に帰ってきたからかな。緊張している。」
「…………ソウジさん、平気だよ?帰ってきてくれて、また前の『ホエール』に戻ってきた感じがする。」
「そうか?……まぁ、徐々に前みたいに戻っていくと思うから。」
「うん。分かった。」
ドキドキの理由は分からないが、まぁなるようになるか。
何せここは俺の故郷だし。
実家みたいなものだし。
「あ!そうです、ご主人様!この後の飲み会、ドールちゃんも連れて行きませんか?」
「えっ?ドールを?」
「そうです。ね、ドールちゃん、今日の仕事はいつまで?」
「えっ……?多分ソウジさんのお部屋の準備が終わったら……後はソウジさんの夕飯次第、かな。」
「じゃあ一緒に夕飯食べへん?ウチも一緒や!いいですよね?ご主人様?」
「あぁ、こっちは全く構わないぞ?人が増えたほうが楽しいしな。」
「えっ、えっ……えーっと―――」
「行ってきなさい、ドール。」
ショウコが今晩の飲み会に参加しないかと提案。
迷うドールに、戻ってきたホエールさんが声をかけた。
「こっちは気にせんでええぞ?今日は泊まる客も少ないしの?」
「おじいちゃん……。」
「宴の帰りも、ソウジさんにショウコ殿も付いておるしの。安心じゃわい。……ソウジさんもセツヒトも、せっかく帰ってきたんじゃ。色々話しておいで。」
「う、うん。……おじいちゃん、ありがとう。」
「ほっほっ。その言葉だけで報われたわい。」
急遽、ドールが夜の飲み会に参加することに。
…………い、いいのか?
「わ、よろしくね、ソウジさん。……あ、何着ていけばいいのかな。」
「いつもの格好でいいと思うぞ?むしろ問題なのは……。」
中学生や高校生にしか見えない、その見た目なのだが……。
こっちの世界の飲酒制限は何歳なんだろうか。
そもそもそんな基準はあるのか?
「ドールちゃんと飲み会!楽しみやなあ!」
「ショウコちゃん……私、お酒、飲めないからね?年齢的にはクリアしてるけど。」
「ええんや!雰囲気を楽しむもんやし、ウチも一緒におる!」
「う、うん。よろしくね。」
年齢的にはOKなのか。
…………まぁ、よりちっちゃいショウコもいるし、今更だ。
さらに小さい、暴食アイルー店員も働いているのだ。
誰も止めようがない。
ウキウキしている二人。
保護者として、宴会ではしっかりしようと心に決めた俺であった。