「えっ!?じゃあハイビスさん、朝すぐにギルドに出勤したんですか!?」
「そーそー。有休使えばいいのにさー、準備があるからって聞かないでねー。」
ワサドラに帰ってきた夜、飲み会の明くる朝、俺はセツヒトさんと合流。
ギルドに向かおうとしたところ、ハイビスさんの姿はなし。
どうやら俺たちより早く出発してしまったらしい。
あんなに酔っていたし、休めばいいのに。
「ちょっとハイビスちゃん、オーバーワークー?」
「そうですね……少し心配です。」
「私みたいに休み休みやればいいのにー。」
「セツヒ……せっちゃんさんはサボりすぎでは……。」
「何をー。私はライフワークバランスを考えてるのー。」
随分とライフに偏ったバランスである。
今朝のこと。
久しぶりにドールさんの朝食を頂いた。
何てこと無い、普通の朝食。
何かの焼き魚に大根おろし、俺の好きな漬物数種、ツヤッツヤの白ごはん、豆腐と海藻の味噌汁。
…………それはもう美味かった。
繰り返すが、美味かった。
さすがドールさんである。
食べた瞬間、「あ、これだ。」という感じ。
しっくり来た。
思わず「むぉぉぉぉ!!」とか唸ってしまって、ホエールさんにもドールにもショウコにも心配されてしまった。
恥ずかしかった……。
その後は朝食を褒めに褒めてしまったので、ドールが顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
やりすぎたが、マジで美味かったんだからしょうがない。
俺があげたエプロンをギュッと握りしめて恥じらう様子が、やたら可愛く見えたのは内緒である。
その後、セツヒトさんのところに行った次第である。
頭ナデナデはしていない。
忘れていた。
多分ドールも。
「シガイアさんの話って何でしょうね。」
「そーねー。まぁ報告とー……ソウジに聞いてほしい話でもあるんでしょー。」
「俺に聞いてほしい話?」
「だってー、ソウジ一応下位……じゃなくてー、仮の上位でしょー?ティガレックスの討伐とか普通はー、ありえないー?」
「な、なるほど。」
他人事のように聞いているが、これは自分のこと。
今思い返しても、よくやったなぁと思うし……もう一度やれと言われれば、謹んでお断り申し上げたい。
「…………逃げては行けない状況で……無我夢中でしたからね……。」
「あー、それは分かるよー?命を大事にー、でも切った張ったしなきゃいけない感じー?…………久しくやってないなー。」
セツヒトさんがそんなことをする状況など、来てほしくはないが。
そんなことを駄弁りながら、ギルドに到着。
割と遅めの朝だが、ハンター達が実入りのいいクエストを狙って、今日も混雑していた。
ミヨシには無かったこの光景。
懐かしい。
「ハイビスちゃんはー……あー、いたいたー。」
セツヒトさんが指差した先、受付の奥にハイビスさんを見つける。
上司……と思しき男性と、何か話しているな。
今日も制服。やはりとてもお似合いである。
すぐ見つかるな。美人さんは遠目でもよくわかる。
「ハイビスちゃーん、おまたせー。」
「あ、セツヒトさん、ソウジさん。」
男性に会釈をしたあと、トコトコとこちらにやって来るハイビスさん。
「昨日はどうも、ありがとうございました。」
「おはようございます……ハイビスさん、体調は大丈夫ですか?……働きすぎじゃないですか?」
「……今、そのことを上司にも言われまして……。明日から少しお休みをとったらどうか、と。」
「えー、良かったじゃーん。」
「でも、お休みって、何すればいいのか分からないんですよね……。」
うーん……ザ・ワーカホリックでブラック従業員な発言。
本当に倒れないか心配だ。
それが続くのは若いうちですよ……。
とは思いつつも、とりあえず3人でシガイアさんのもとに。
ハイビスさんも呼び出されたらしい。
久々に訪れるそこは、相変わらず重苦しい門に閉ざされていた。
偉い人の部屋って、やっぱり入りにくいよなぁ……。
コンコン。
「ハイビスです。セツヒトさん、ソウジさん、お二人を連れて参りました。」
『どうぞ。』
「失礼します。」
慣れた手つきでドアを開き、俺たちを先に入れるハイビスさん。
「失礼します。」
「失礼しまーす。」
緊張している様子のかけらもないセツヒトさんが、今ばかりは羨ましい。
つくづく小物だなぁ、俺。
「いやー、どうもどうも!お疲れの中お呼び立てして申し訳ありません。どうぞ、お座りください。」
「シガイアさーん。呼ぶの早すぎますよー。」
「セツヒトも元気そうだな、良かったよ。ソウジさんも、どうぞどうぞ。」
「あ、はい。失礼します。」
開口一番文句をつけるセツヒトさんすげぇ。
ハイビスさんは即座にお茶の用意を始めている。
…………言われるがままに座ろう。
「改めて、お帰りなさいませ、皆さん。」
「はい、ありがとうございます。」
「ありがとうございますー。あー……お茶おいしー。」
「セツヒトは本当に元気そうだな……でも良かったよ。……さて、二人の活躍は聞いていますよ。ソウジさん、強敵を相手に、ものすごい立ち回りだったと聞いてます。」
「いやいや、もう何がなんだかでしたよ。それに、ティガレックスの狩猟以外は、セツヒトさんも居ましたし。」
「ですが、ティガレックスは完全にソロだと聞いてますが?」
「はい……死ぬかと思いました。」
「ははは、でもこうしてワサドラに帰ってきてます。……素晴らしい猟果じゃないですか。」
「あ、ありがとうございます。」
何かの書類を片手にして話し出すシガイアさん。
すぐさま持ち上げてくるだろうなと邪推していたら、やはり褒められた。
このあととんでもない事を言われるのではと身構えてしまう。
「ハイビスさんも、こちらにお座りください。お三方にそれぞれ、お伝えしたいことがあります。」
「は、はい。失礼します。」
「では……。」
ジャケットを正すと、シガイアさんはソファに浅く腰掛け、俺に向き直った。
俺も同じように浅く腰掛け、構える。
「……まず、ソウジさん。本当にお疲れさまでした。」
「は、はい。」
「ははは、そう身構えないでください。……ギルドでは、今回のソウジさんの狩猟成果を鑑み、特別に対応することに致しました……全く、規格外な方です。私もこんなことは初めてですよ。」
スッ。
そう言うと、一通の封筒を俺に差し出してくる。
「は、拝見します。」
な、何だろう。
まさか金一封とか……んなわけ無いか。
えーっと……。
………………マジか。
「…………ソウジー?何もらったのー?もしかしてお金ー?」
「いや、違います。……シガイアさん、これ本当ですか?」
「ええ、本当です。ソウジさん、あなたを―――」
紙にはシンプルに、こう書かれてあった。
『ワサドラギルド所属 ソウジ HR7に昇格とする。』
「―――HR7。これに認めます。」
シガイアさんの声が静かに響いた。
「……うわぁおー……。」
「わぁ……。」
セツヒトさんもハイビスさんも、驚いているのかあまり言葉を発さない。
多分すごいことなんだろう。
なんだろうけど。
「……す、すみません。理解が追いつかず。」
「えぇ、そういう反応をされると思っておりました。」
「あ、そうですか。」
俺の反応を読んでいたとは。
流石シガイアさん。
「セツヒトのフォローがあったとはいえ、ソロでの大型モンスター狩猟多数。ベリオロス、ガムート、ザボアザギル……いずれも上位ハンターが相手取るべき強力な大型。更に強力な雪鬼獣、ゴシャハギ。そして何より轟竜ティガレックスの完全単独討伐…………セルレギオスの狩猟のおまけ付きです。」
「…………。」
「認められるのに、さほど時間はかかりませんでしたよ。」
HR、すなわちハンターランク。
1から始まり、そのハンターの狩猟の成果を見ながら、下位はHR3まで、上位は4〜7まで。そこから先はG級と呼ばれる、ハンターの最高峰。
すなわち、HR7とは、上位ハンターの最高ランクに位置する。
…………え?俺が?
「…………まだ飲み込めてないようですが、ひとまず承認を願いたいです。……タオカカ周辺の長クラス、役員全員の推薦もありますし、その辺との関係性を悪化させたくない。」
「は、はぁ……。」
何だろう。イマイチ実感が湧かないというか。
「ソウジー、私が言うのも何だけどー、すごい事だよー?HR7になるのって、私も結構時間かかったのさー。この天才、セツヒトさんがだよー?」
「…………。」
「すごいことだってー、これー……うわー、シガイアさん、思い切りましたねー。」
「反対する役員など、いなかったな。」
「……おぉ……それはそれですごーい……。」
HR7。
意味するところは分かったが、じゃあこれから先どうなるかと言うと、分からん。
「……シガイアさん、この認定を受けて……俺ってどうなります?」
「そうですね……私の個人的な意見を言わせてもらえれば……厄介かもしれません。悪い意味で早過ぎですね。」
「おー?どういうことー?」
セツヒトさんが疑問を投げかける。
だが、シガイアさんの意図したことが分かったのか、すぐにセツヒトさんは納得した様子に変わった。
「……あー……確かにめんどいかもー……。」
「あぁ。分かるか、セツヒト。……少し、な。」
「…………説明をしていただいてもよろしいですか?」
どうやら手放しに喜んでいいような状況ではないようだ。
真剣に話を聞く。
「……ハイビスさん。HR7のハンターについて、概要を説明して頂いてもよろしいですか?」
「は、はい……。まず、上位ランクでも一部しか認められていない狩猟域……火山地帯の奥地の溶岩洞や、禁足地周辺といったところへ立ち入ることが許可されます。それに付随したクエストももちろんです。……難易度が高いクエスト……街や国単位での依頼や、王族や貴族からの変則的な直接依頼もあります。なので……あ……。」
「…………ハイビスさんも、気づかれましたね。」
気づく、とは。
黙って聞く。
話を挟めるような空気ではない。
「…………ソウジさんのその力が、公になるリスクが上がった。そういうことです。」
「…………マジですか……?」
「マジも大マジですよ、ソウジさん。…………私の力の及ぶ範囲で、ソウジさんの力はひた隠しにしてきました。……今だからこそ言いますが、すでに何件かもみ消してますよ?」
「えっ!?」
「心当たりはありませんか?身近なところでは……このギルドの職員、ヒナタや解体班の方々は、怪しんでいるフシがありました。」
「…………。」
「何とかしましたがね。それに、今回の旅で同行されたガーグァ車の御者の男性。彼も同様に、ソウジさんのただならぬ力に気づかれてました。」
「え……。」
「まぁ彼は問題ないでしょう。例えバレたとしても、ソウジさんやセツヒト、ハイビスさんに対してとても友好的でしたからね。」
マジか。おじさんにも……。
まぁそりゃなぁ。
目の前で2日前のホカホカ弁当を出したり、遠出をするのに軽装だったり、超遠距離のモンスターの察知なんかしたりしたら、怪しまれもするか。
しかし既におじさんとコンタクトを取っていたのか。
シガイアさんの仕事の速さに、驚いてしまう。
「……すみません、軽率でした。」
「いえ、仕方がありませんよ。大体のケースは、人命救助を優先すべき事態でしたしね。……まぁアイテムの取り出しなどは、今後もう少し慎重にすべきでしょう。」
「はい……。」
何してるんだ俺……。
反省。
「…………危惧している様な状況は、まだ起こっていません。ただ、これからソウジさんにはオフィシャルな依頼……ギルド本部や政治の中心に近い人間からの依頼が増えるでしょう。……私の力も、流石に及びません。」
「…………。」
「今回のHR7の認定も、どこかキナ臭い。すんなり行き過ぎです。おそらくは、私のソウジさんへの優遇を訝しんだ連中が仕組んだか……これまで以上に、最新の注意を払ってください、ソウジさん。…………首都にいる腹の黒い奴らに、ソウジさんの力が悪用される未来は……見たくありませんからね。」
「……はい、分かりました。」
「……まぁここまで言いましたが……これはあくまで可能性の一つです。これまで通り、ソウジさんは伸び伸びと狩猟をして欲しい。その、ギフト、という力の使い方について気をつけていただければ、と。」
「はい……。」
強さには責任を伴う、か。
何かの漫画で昔見た気がする。
気をつけていこう。
「ハイビスさん、これまで通り、ソウジさんのフォローをよろしくおねがいします。……本当に申し訳ありません。巻き込む形になりますが。」
「……はい、承りました。」
「セツヒトも、できる時には助力を頼むぞ。まだ現役で、全然イケるじゃないか。」
「だからー、それはソウジだから……じゃなくてー……まー、やりますよー?そりゃー。」
「そうか……。助かるよ、本当に。」
俺は、強くなった。
HR7と認められたことは、本当に嬉しい。
だが、面倒なことも付いてきた。
……仕方ないよな、この力が無ければ俺はここまで来られなかった。
ギフトが無かったら、多分バサルモスに潰されるかディノバルドに瞬殺されるか……そんな感じで人生終わっていただろう。
俺自身を守る為。
俺の周りの人たちを守る為。
俺の力を知り、それでも助けてくれるこの人たちを守る為。
頑張っていこう。
「……シガイアさん、ありがとうございます。色々考えていただいて。」
「いえいえ、助かっている部分の方が多いんですよ?ミヨシであんなに活躍していただいたおかげで、私の中央での発言力も増えましたし、コネクションも太くなりましたからね。」
「は、ははは……。」
乾いた笑いしか出てこない。
この人、マジで底が知れねぇ……。
…………まぁでも、そこまで明け透けに俺に言うぐらいには、心を開いてくれているんだろう。
そう解釈しておく。
「それに……ハイビスさん。例のアレはありますか?」
「あっ、はい!……あの、ソウジさん。」
「は、はい?」
「その……ミヨシを出る際にお願いした荷物を……その、頂きたいのですが……。」
「あ、あー!すみません!持ちっぱなしで!」
俺はポーチに触れてアイテム画面を起動。
……する前に、一応周りを確認する。
「多分大丈夫だよー?人もモンスターの気配も無いからー。」
「あ、ありがとうございます。」
慎重になってしまう。
壁に耳あり障子に目あり。
俺はポーチから、預かった書類を取り出した。
ドン!ドサ!ドサドサ!バサ!
「おぉ……。」
「多分これで全部ですね……『ハイビスさんに返します。』……多分、これでいいと思います。」
ギルドマスターであるシガイアさんの部屋、その中央部分に書類を取り出す。
ミヨシで見た時も多いとは思ったが、やっぱりすごいな。
「この量を軽々と持ち運んだんですね……。ソウジさん、やはりその力、ひた隠しになさってください……。」
「は、はい。本当に気をつけます。」
セツヒトさんももう見慣れてしまったのか、そこまで驚いてはいない。
ハイビスさんはいそいそと書類の山を整理し始めた。
「……あ、ありました。ギルドマスター。この辺にある書類が、それになります。」
「ありがとうございます、ハイビスさん。……長年持ち出せないかと、苦心していたんです。」
「シガイアさん……それは?」
シガイアさんが俺を使ってまで持ち出したかったもの。
一体何か、気になった。
「ソウジさんには、聞く権利があります。……これらのほとんどは、ミヨシやタオカカに私が残してきた、元々は私の所有していた書類です。……あの近辺のモンスターの出現履歴、狩猟記録、職員の履歴書や人の出入りまで、細かく私がまとめたものです。」
「え……じゃあこの大量の書類は元々……。」
「はい、ほとんどは私のものです。……セツヒトも、ご苦労だったな。」
「マジでさー、私一線退いたっていうのにー、人使い荒いですよー。」
「すまないな。報酬は弾むぞ?」
「……いいですよー。シガイアさんの頼みならー。」
「……ブレスワイン。46年もの。」
「……やったー!」
何がなんだか分からないが、セツヒトさんが飛び跳ねそうな勢いで喜んでいる。
……セツヒトさんも、何かやっていたのか?
「実はこの中には、持ち出し禁止のものや、閲覧さえ禁止されているものもあります。」
「えっ!?」
「周辺一帯をまとめるタオカカの村長に権限が一任されていましてね……。それをーーー」
「私が許可もらってきたってわけー。ワサドラ出る時にシガイアさんに頼まれたからねー。……あのタオカカの村長さん、めっちゃいい人でしたよー?」
「そりゃお前の大ファンなんだから、当然だろう。」
「そーなんだけどさー。……一応お金も渡しておいたからねー。」
「あぁ。本当に助かった。」
セツヒトさん……確かワサドラを出発する時、シガイアさんからの書類を受け取っていたなぁ。
帰りのタオカカでも、どこかに行っていたし。
……整理すると、つまりこういうことか?
シガイアさんは、これらの書類が必要だった。何にかは知らんが。
するとセツヒトさんや俺が、冬の間ミヨシに行くことになった。
渡りに船と、セツヒトさんとハイビスさん、そして俺の力を使って、これらの書類の収集及び運搬に成功。
今に至る、と。
……何か利用された気分。
いや、利用されたんだけど。
「隠していて、申し訳ありません。ソウジさん、ハイビスさん。」
「い、いえいえ。」
「お二人は何も知らないまま、これらの運搬をお願いする必要がありました。……その、隠し事などは、お二人ともあまり得意ではないでしょう?」
「……。」
「……。」
二人して黙り込む。
はい。
その通りです。
ハイビスさんも、腹芸が得意なタイプでは無いです。
むしろ俺達なんて、シガイアさんみたいなできる人の手の平の上で踊らされるタイプの人間である。
「……利用されたみたいで、あまりいい気分ではないですが。」
「ははは、本当に、申し訳ありません。……引き続き、ソウジさんが良い環境で狩猟ができるよう、ワサドラギルドとしてバックアップを続けていきます。私たちは、一蓮托生です。」
「……はい。」
ダメだ。
マジでこの人には敵う気がしない。
何だろう、見ているところとか考えている先が違うというか。
頭の良さがまるで敵わない。
……上司になったら、ちょっと怖いぞ。
「それに、ハイビスさん。」
「は、はい!」
「本当に重要な任務。よく分からないままに頑張っていただいて、ありがとうございました。」
「い、いえ、とんでもありません。」
「ミヨシでも激務だったと聞いております。……誓って、他意はありませんので、数日お休みを取ってください。」
「え!?」
「いえ、本当に他意は無いですよ?体を休めて下さい。働き過ぎです、本心から心配しています。」
「ほ、本当ですか?」
「えぇ、本当です。」
ニッコリ。
シガイアさんが笑う。
……笑顔に何か含まれている気がしてならない。
……ハイビスさんもめっちゃ複雑な顔をしている。
「……シガイアさーん、それじゃ余計疑われるだけですってー。怖いってその顔ー。」
「な……本気で言ってるんだぞ?セツヒト。」
「分からないってー……そういうところの計算は下手くそなんだよねー昔から。……ハイビスちゃーん、シガイアさん、マジで言ってるよー?安心して休みなー?」
「え、そ、そうですか。」
「うん。わっかりにくいよねー、このキツネ顔ー。」
「……セツヒト、ブレスワインはやめておくか?」
「いやー、マジかっこいいですー。もうイケオジ過ぎてー、職員もファンいっぱいいますよー?」
「変わり身の早いやつだ……。ま、まぁというわけです。安心して、休みをとってください。部長にも伝えておいたので。」
「は、はい。ありがたく、頂戴いたします。」
シガイアさんが超珍しくたじろいだぞ……?
貴重なものを見た。
セツヒトさんとシガイアさん。
タオカカギルドにいた頃からの付き合い。
あんな死線を潜ってきただけあるなぁ。
「三人にお伝えすることは、以上になります。ご足労いただき、ありがとうございました。」
「はい……ありがとうございました。」
「ソウジさん。こんな私を信用しろというのも難しい話でしょうが……一人の男として、あなたの快進撃は聞いていて、何というか、ワクワクしますよ。一人のファンとして純粋に、応援しています。」
「あ、ありがとうございます。」
「先程の件、くれぐれもよろしくお願いしますね。……それでは。」
ガチャッ。
バタン。
シガイアさんに出入り口まで見送られ、部屋を出る。
「……ふぅ……。」
「あー、ソウジー、とりあえずまぁ……昇格おめでとー、だねー?」
「ありがとうございます。……素直に喜べない事情も判明しましたが……。」
「ソウジさん、ひとまずは喜んでいいと思いますよ?……私もギルドに勤めてから、こんな昇格聞いたことがありません……そ、その、非常にか、かっこいいと、お、思いますよ?」
「ハイビスさん。」
ありがとうございます。
あなたみたいな女性にかっこいいとか言われるなんて、嬉しゅうございます。
「よーし、飲みいこうかー。」
「行きませんよ!まだ昼にもなってませんって!」
「えー。」
ブーブー言うセツヒトさんはさておき。
HR7になった。
だから何だと思ったが、色々あるらしい。
具体的に大変になるのはこれからだろうなと漠然と考えながら。
今は素直に、昇格を喜ぼうと思った。
この時の俺はまだ知らなかった。
上位ハンターの最高ランク、HR7。
これが招く、とんでもない事態なんて。