モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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117慎重に採掘場を進みましょう。

教官との飲み会から2日後。

いよいよショウコとクエストに出かける日になった。

 

昨日は二日酔いを堪えながら、装備とアイテムの点検。

そしてショウコと打ち合わせを行った。

寝る部屋も同じ。

一緒に起きて、一緒に朝食を食べることに。

 

ドールとホエールさんには、ディノバルドを再び相手にすることを伝えてある。

「何の心配もしとらんぞ。」とは、ホエールさんの談。

若干不安そうなドールも、その言葉で少しだけ笑顔になった。

 

 

「ドール、多分大丈夫だ。頑張ってくる。」

「ご主人様はウチが守る!ドールちゃん!安心しぃや!」

「……うん。信じて、待ってる。」

 

 

ドールが頭を差し出す。

久々の上目遣い。

心を込めて、撫でさせてもらう。

 

……ご利益ご利益。

 

 

「ソウジさん。何か、失礼なこと、考えてない?」

「考えてませんよ、ドール様。」

「絶対考えてる……。」

 

 

だって、俺たちの勝利の女神なのだ。

許して欲しい。

 

ショウコもドールの頭を撫でようとしたのだが、「だ、だめ。これは、ソウジさんの専用……。」と言っていた。

 

俺専用の頭って、どういうことだ。

 

 

宿を出てからは、ギルドへ直行。

今日はランニングをせずに早めにギルドへやってきた。

混むのは嫌だし。

 

ギルドに着いてすぐ、ハイビスさんを発見。

挨拶をする。

 

 

「お、おはようございます、ハイビスさん……。」

「はい、おはようございます、ソウジさん、ショウコさん。」

「あ、あの、ヒナタさんの体調は……。」

「ヒナタは今日もお休みをとっております。……湯冷めして風邪をひいておりますので。」

「うっ……。」

 

 

昨日、ギルドに顔を出したところ、ハイビスさんに怒られてしまった。

理由は、先日銭湯内のベンチでヒナタさんとアイルー談義で盛り上がってしまい、風邪をひかせてしまったからだ。

 

申し訳ないとしか言えない。

 

 

「もういいんですよ?怒ってませんので。」

 

 

プイッ。

 

 

擬音付きで横を向くハイビスさん。

あぁ、まだ怒ってらっしゃる……。

その、同性が見たらイラッとしそうなリアクションは辞めたほうがいいですよ! 

 

 

「あ、あのー……ハイビスさん、今日はこのディノバルドの狩猟クエストを受注できればと思って来たんですが……。」

「……拝見します。」

 

 

横目でチラリ。

知的イケメン君にもらったクエスト内容が書かれた紙を手渡す。

流石にハイビスさんも、これには冷静に対応している。

仕事モードのこの人はとても有能だ。

 

 

「……承知致しました。すぐに手配します。」

「ありがとうございます。」

「…………ディノバルド、ですね。……ショウコちゃん、大丈夫?」

「大丈夫です!……ちょっと怖いですけど、頑張れます!」

「…………ふふ、正直でいいわね。……分かりました。ソウジさんも、くれぐれも気を付けて下さいね。ご武運を。」

「はい、ありがとうございます。」

 

 

普通に受付終了。

さて、火山地帯へ向かうとしよう。

ようやくリベンジ。

あれから半年以上空いて臨む相手。

全く同じ個体では無いけど。

 

 

「よし……ショウコ、行こう。」

「はいっ!」

 

 

元気よくガーグァ車に乗車。

向かうは火山地帯の一角。

 

車で大体4、5時間、といったところだろう。

 

少し不安だが、それぐらいでいい。

慢心はしたくない。

初めて会う御者の方に挨拶をして、俺達は街道を進んでいった。

 

 

* * * * * *

 

 

「ようやく着いたか。」

「あー……ウチ、腰が痛いです……。」

 

 

道が悪かった。

道中小型のモンスターに運悪く出くわし、少し時間を食ってしまったが、一応は時間通り。

…………大型に襲われるという最悪の事態は免れた。

 

 

「クエストの期間……3日はここにおりますので。」

「はい、ありがとうございます。よろしくおねがいします。」

 

 

御者のお兄さんは、このままこの採掘場横の宿に滞在するらしい。

火山カクラニ。

ミヨシやアヤ、タオカカなどを含む山岳地帯とは別の火山帯に位置する。

タオカカには無かった、ゴツゴツの岩場や茶色く剥き出しになった地面が見える。

比較的新しい火山なのだろう。山頂からは噴煙が出ていて、周囲も硫黄のような独特の匂いに包まれていた。

 

 

「ウチは、フェニクさん達と採掘しに来たとき以来です。」

「あぁ、あの時の。」

 

 

以前ショウコからもらったお守り。

ショウコ達がわざわざ採掘して手に入れてくれたものである。

ここで掘ったのか。

 

 

「あの目がおかしかった人たち……おるんですかね……。」

「さてなぁ……とりあえず、依頼主に話を聞きに行こう。」

 

 

時刻はもう昼前。

早くにワサドラを出たとはいえ、今日町に帰ることは厳しいだろう。

ディノバルドがどこにいるのかも分からんし。

マップに反応もないし。

……どこかポンコツなんだよなぁ……このマップ。

 

 

採掘場で働く人たちの集落と思しき場所。

小屋が数多く立ち並ぶ。

その中心に、唯一2階建ての石造りの小屋を見えた。

近づくと看板に「採掘場管理本部」と書かれてある。

多分ここだろう。

 

 

「入るぞ、ショウコ。」

「はい。」

 

 

コンコン。

 

 

ガラガラ。

 

 

引き戸になっている入り口を、ノックして開ける。

 

 

「こ、こんにちは……。」

 

 

開けた瞬間、すこし驚いてしまった。

身長は低いが、筋肉隆々の男たち数名に、一斉に睨まれたからだ。

 

 

「あ、あの。こちらの責任者の方はいらっしゃいますでしょうか。」

「…………あそこだ。」

 

 

クイッ。

 

 

あごで示された先。

新聞を顔に載せ、イビキをかいて寝ている御仁が一人。

 

あの人が……一番偉い人?

 

 

「あ……ありがとうございます。」

「…………。」

 

 

ぶっきらぼうな態度。

…………怖っ!!

 

止まっていても仕方がないので、一路その責任者の元へ。

 

 

「ご主人様……起こしますか?」

「…………起こさないと何もできないしなぁ……。あ、あのー……。」

「……んっ?……んん?!」

 

 

顔の上に載った新聞を手に取ったその人は、眠そうな目で俺を睨んできた。

……いや、眠いから目つきが悪いだけか?

…………わからん。

ただ、機嫌がいいとはとても言えないような顔。

 

 

「……おめぇらは……。」

「こ、こんにちは。ワサドラギルドより参りました、ソウジと申します。」

「お……おー!そうかそうか!いやぁすまねぇな!気づくのが遅くってよ!…………おい!茶ぁ出してくれ!!」

「へいっ!」

 

 

部下の様な人に命令するおじさん。

 

 

「あ、お構いなく。話を聞きに来ただけですので。」

「何だ、やけに腰が低いじゃねえか。……ハンターってのはもっとふてぶてしい奴が来ると思っていたがよ!」

「い、いえいえ。依頼主にそういう態度では、仕事をする上で良くないでしょう?」

「…………おめぇ、本当にハンターか?」

「え、ええ。一応は。」

「ほーん……まぁいい!よく来てくれた!……採掘に来ているハンターたちが、裸足で逃げ出すようなモンスターが現れちまってよ……おかげでこっちも仕事がぱったりよ。何とか、討伐を頼む!……あぁ、遅れたな。俺はノジリ。ここの責任者だ。」

「よろしくおねがいします。改めて、ワサドラギルドのハンター、ソウジと言います。こっちは……。」

「オトモアイルーのショウコです!よろしくおねがいします!」

「おぅ、ショウコか!元気がいいな!」

 

 

立派なヒゲに身長は低い。

頭にタオルを巻いて、クリームパンみたいな手でショウコの頭をワシワシしている。

 

 

「にゃ、ニャァァァ!!!」

「よろしくな!ちっこいの!」

 

 

丸太のような腕とグローブのような手。

力仕事を常とする男、って感じ。

身長は俺よりは低いが、体格がいい。

 

そんな人に頭をグリグリされて、ショウコは驚きの声を上げていた。

 

 

「早速なんですが、モンスターに着いてお話を聞いてもよろしいですか?」

「おぅわかった!…………これが地図だ。俺の部下が見つけたのは大体この辺だな。」

 

 

壁に張り出された採掘場の全体図。

その上の方に目一杯手を伸ばして、指を差すノジリさん。

なるほど……。

…………いや、分からん。

 

まぁその辺……採掘場の奥地に現れたってことなんだろう。

 

 

「ありがとうございます。早速、行ってみます。」

「おぅ、もう地図を覚えたのか?さすがハンターだな。」

 

 

迷路のように……とまではいかないが、入り組んだ坑道。

だがまぁギフトを使えば問題はない。

問題はないが……。

 

 

「確かにそうですね。地図を一つ、頂いてもよろしいですか?」

「おぅ、構わねぇ。ちゃんと返してくれれば大丈夫だ。」

「ありがとうございます。」

 

 

道がわからないという体でなければいけない。

変に疑いをかけられないようにしないと。

 

 

「それでは、行ってきます。」

「お、おぅ!気をつけてな!」

 

 

どこか不安そうな顔。

まぁ多分、俺の腕を疑う……とまではいかないにしても、大丈夫か心配してくれているんだろう。

 

ディノバルドに敵うかどうかは分からないが、不安にもさせたくない。

 

 

「ご主人様は強いです!ノジリさん、大船に乗ったつもりでおってくださいね!」

「嬢ちゃんがそこまで言うのか!そりゃありがてえや!」

 

 

ショウコ、ナイスフォロー。

 

笑い合う二人を横目に、こっそりマップを起動してみる。

…………反応はなし。だが多分どこかにやつは潜んでいる。

奇襲が大好きなモンスターだ。

 

慎重にいこう。

 

 

* * * * * *

 

 

「ふわぁ……暑いですねぇ……。」

「クーラードリンクを飲んでこれか……体力の管理は気をつけないとな。」

 

 

採掘場に入ると、熱気がムワッと俺たちを包んだ。

自然にできた洞窟では無い。人の手で掘り進めた穴。

入り口は木枠で覆われて四角い形、人工で造られたことがよく分かる。

 

木枠の横には、工事現場でよく見るような安全標語がたくさん貼られていた。

 

「安全第一」……「足元確認」……「クーラー5つ、命は一つ。クーラードリンクは必ず携帯しましょう。」……前世の工事現場さながらである。

 

 

「ご主人様、ここから先、狭くなりますけど……しばらく行くと急に開けてくるんです。」

「ああ、マップでもそれは確認できるが……。」

「今歩いてる道は、人工の道です。でも、ここを抜けると……ほら。」

「おぉ……。」

 

 

ショウコの先導の元穴を進んでいくと、突如開けた場所に出た。

ここは……。

 

 

「ここら火山の一帯は、空洞になってるんです。ウチらも、そういった場所で採掘をしてました。」

「なるほど、そういうことか。」

 

 

溶岩や水流で自然にできた洞穴が既に存在し、それを外から繋げて、半天然の採掘場にしているわけか。

周囲には、明らかに自然にできたであろうゴツゴツの岩や、鍾乳石のような尖った形の岩が見えた。

 

足元には、予想していたような採掘場とは違い、水が流れていた。

 

 

「これ、よう滑るんです……気をつけてくださいね。」

「あぁ。狩猟中に滑りましたとか、洒落にもならん。」

 

 

ちょっとした学校の体育館くらいに広い場所。

マップを見れば、そんな場所がいくつも存在している。

蟻の巣みたいだ。

 

ショウコがある道の前で止まるった。

 

 

「この先は、ウチらも行かんようにと念押しされた、溶岩洞があるそうです。」

「あぁ……確かハイビスさんから、HR7になったら立ち入りの許可がもらえると聞いたけど。」

「クエストがスムーズに受けられたのも、それが理由でしょうね。ウチらの時なんて、『絶対行くなよ!いいか!絶対だぞ!』ってめっちゃ念押しされましたよ。」

「それは逆効果じゃないのか……。」

 

 

強力な個体が潜んでいるのだろうか。

マップには、何も反応がないけど。

 

 

「そろそろ警戒しておこう。……ヤツはいきなり来るぞ。」

「はい……気をつけましょう。」

 

 

一層気を引き締めて、歩き進むことにした。

一路、溶岩洞とは反対の、目撃情報があった奥地へ向かう。

 

途中地中から突如現れた小型のモンスターに驚かされるハプニングもあった。

口から真っ赤な液体を出してきて、めっちゃ熱かった。

溶岩……だよなあれ。体どうなってるんだ……。

 

 

「ウロコトル、と言うモンスターみたいだな……。」

「トカゲみたいなやつでしたね。」

 

 

そこまで強くなかったので、余裕を持って倒せた。

地面にも気をつけていこう。

 

 

* * * * * *

 

 

「もうすぐ目撃地点だ。」

「完全に火山の目の前ですね……。」

 

 

目の前には、ついこの前まで溶岩でしたよと言わんばかりに熱を帯びた地面が、ドス黒く広がっている。

踏むと異様に熱かったため、すぐにどいた。

 

この上でモンスターと戦ったら、かなり危険だな……。

 

雪山でも思ったが、フィールドの特性を掴むことは大切。

暑さ寒さもそうだし、こうした地面の状況もしっかりと把握しておかなければ。

ティガレックス戦では、思わず雪に足を滑らせ、攻撃を食らってしまった。

用心用心。

 

 

「………ん……?」

 

 

足元が震えている。

…………くるな。

 

 

「ショウコ。」

「は、はい!」

「下だ。」

「えっ。」

 

 

ボゴォ!

 

 

地面から出てくるウロコトルを警戒していたからか、早く気づけた。

地面から出てくるな、と。

 

 

ボゴッ!ドガッ!

 

 

地面から這い出してくる何か。

ウロコトルの比ではない大きさ。

間違いなく、大型モンスター。

 

 

ドゴッ……。

 

 

ズン…………。

 

 

全身を使って地面から出てきたそれは、俺たちを視認するや否や、睨みつけてきた。

足元にあった瓦礫をものともせず、一蹴りしてどかしてもなお俺たちを目から離さない。

 

 

「…………グルルルルルル…………。」

「あんまり睨まないでくれ。顔怖いわ。」

「ご、ご主人様……よく分かりましたね……ウチ、全然気づけませんでした。」

「足元が震えた気がしてな。それより……来るぞ。」

 

 

半年前、俺達はこいつと対峙した。

俺は、負けた。

それはもう、コテンパンに。

 

…………リベンジを誓っていた存在が、また、俺達の前に現れた。

 

 

「今回は奇襲じゃ無いんだな……あの時とはまぁ、違うやつなんだけど。……今日は負けない。」

「グルルルルルル……。」

「…………来いっ!」

「…………ギャァァァァァァァァァ!!!」

 

 

物凄い咆哮が辺りに響き。

 

 

「ショウコ!」

「はいっ!」

 

 

戦闘の態勢に。

地面から出てきた相手は、斬竜ディノバルド。

 

 

戦いが始まった。

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