モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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118リベンジを果たしましょう。

ディノバルドが地中から現れた。

マップにもようやく反応が現れる。

もうちょっと精度なんとかならないのかとか、思わなくもない。

 

贅沢は禁物だな。

普通は無いんだし、コレ。

 

 

「ショウコ!」

「はいっ!」

 

 

左右に分かれる。

斬竜ディノバルドは、その苛烈な攻撃が特徴。

足場も悪いこの状況、まずはスピードに慣らさせてもらう。

 

 

「ギャアッ!!」

「ぬおっ……と!」

 

 

ガキン!

 

 

牙と牙がかちあい、生き物のそれとは思えないほどの甲高い音が響く。

噛みつき攻撃。

……食らったら致命傷は免れないな。

余裕をもって避けていこう。

 

 

「予備動作は分かりやすいぞ!そのまま態勢保持で!」

「はい!」

「ほらっ!こっちだ!」

 

 

ジャキン!

 

 

双剣を構える。

だが、これは気を引くためのパフォーマンス。

まずは見に徹する。

 

 

「グルルル……ギャア!」

 

 

ダン!

 

 

(上っ!)

「ふっ!」

 

 

ズドォン!

 

 

浅く跳躍したディノバルドがその身を翻し、尻尾を俺に叩きつける。

回避。

 

 

(もう一回!)

「ギャアァ!!」

 

 

ズドォン!!

 

 

体を半回転させ、もう一発振り下ろしの尻尾攻撃。

このパターンは、経験している。

 

 

(左に2歩……。)

 

 

 

尻尾を振り下ろす連続攻撃。

個体としては前回より大きいだろうか。

だが、間合いは掴めた。

 

 

「2連尻尾は間合い2歩横!」

「はいっ!」

 

 

情報の共有。

まぁショウコなら軽く避けられるだろうけど。

 

 

「グゥゥ……。」

 

 

攻撃を読まれたと知ってか知らずか、恐ろしい顔つきで唸るディノバルド。

いや、元から怖いんだけど。

 

 

「ギャァ!!」

 

 

ガギン!

 

 

ギリギリギリギリ…………!

 

 

ディノバルドが自分の尻尾に噛みつく。

あの牙で噛んだら、普通はただでは済まない。

だがヤツの尻尾は特別製。

まるで炉に入れた鉄の様に、その尻尾は赤みを帯び始めた。

 

 

「ご主人様!」

「いや、攻撃じゃない!……自分の武器を、強化してるんだ。」

「言うてましたけど……噛んで……強化……?」

「……意味分かんないよなぁ。」

 

 

いや、意味はわかるんだけど。

そのとんでもっぷりに、ショウコが引いている。

 

 

ギィン!

 

 

「……グァァァァァァ……。」

 

 

牙から解放された尻尾は、赤黒く光る。

口に見える赤い炎。

 

態勢を整えたようだ。

 

 

「もっと攻撃が苛烈になるぞ。」

「うわぁ……怖いわあ……。」

「逃げ出すか?」

「いえ、ご主人様おりますし……頑張れそうです。」

「なら良かった。」

 

 

気負いの無い返事。

いい感じだ。

 

あの時とは違う。

今は二人。

この世で最も頼りになる相方がいる。

 

十分だ。

 

 

「…………いくぞ!」

「はいっ!」

 

 

気合を入れる。

その瞬間、ディノバルドが叫ぶモーションを入れた。

少しだけ上体を逸らす、その動きを。

 

 

(見切るっ!)

「ギャァァァァァァァ!!!」

 

 

吠えた瞬間。

俺は回った。

キャンセルの効かない、回避行動。

そこに斬撃を加える。

 

その開いた口に、俺は突っ込んだ。

 

 

「ふっ!!」

 

 

ザシュ!ザザザザザザ!

ザザン!

 

 

「ギャァ!」

 

 

咆哮を上げるその間に反撃を食らうとは思わなかったのだろう。

よろめくディノバルド。

 

だが、攻撃の手は止めない。

 

 

「ショウコは背後!尻尾を最警戒!」

「はいっ!」

 

 

素早くディノバルドの背後に回ったショウコは、早速後ろ脚を切り裂き始める。

 

一撃は弱いが、確実に効いてくるその攻撃。

 

だがそれを意に介さず、ディノバルドは俺を睨みつけて離さない。

 

 

(ダメージ量的に、俺を最も警戒すべきと悟ったか。)

 

 

大型モンスターといえど、複数の相手を器用にこなすほどの頭はない。

ならば、どうするか。

 

一番強力なヤツを狙う。

これが基本だ。

 

事実、ディノバルドは俺を見据え、攻撃を繰り出そうとしている。

 

 

(なら……。)

 

 

スッ。

 

 

動き出す俺。

狙うは首元、本来なら双剣には届かない場所。

 

だが、取っ掛かりがあれば、俺には十分。

 

 

「おらぁ!」

 

 

ダン!

 

 

跳躍して、足の付根に斬りかかる。

そのまま後ろ向きに回転して、更に上部を狙う。

 

 

ザシュ!ザザザン!!

 

 

「グァァ!」

 

 

空中回転乱舞。

もはや慣れ親しんだ、俺の一番大きなダメージソース。

 

ディノバルドも負けじと、俺が着地したスキを狙ってくる。

 

 

(噛みつきっ!)

 

 

ガギイ!

 

 

双剣で牙を受け止める。

……そのままに力を利用する。

 

 

(回避攻撃……!)

 

 

「ふっ……!」

 

 

軽く息を吐き出して脱力。

高速で回る周囲の景色。

 

双剣を逸らし、ディノバルドの頭を……。

 

 

(斬るッ!!)

 

 

ザン!!ザザザザン!!

 

 

「グラァァァァァァァ!」

「わっ!」

 

 

グラつくディノバルドの足に、ショウコが驚く。

 

 

タッ。

 

 

俺はようやく地に足をつけ、ショウコを見やる。

 

 

「ショウコ!大丈夫か!?」

「平気です!ウチ、まるで相手にされとりません!このままいきましょう!」

「よしっ!」

 

 

たじろいだディノバルドだったが、すぐに足に力を込め、再び尻尾を俺に振り下ろしてくる。

 

 

「くっ……!」

 

 

何度も連続して回避攻撃は繰り出せない。

集中力は続くが、流石にスタミナがもたない。

 

 

ズドォン!

 

 

「ご主人様!」

「大丈夫だ!」

 

 

だが、避けるだけならいける。

俺は左側に倒れ込むように体を傾け、すんでのところで回避した。

 

 

(2連は……こないか。)

 

 

ディノバルドも、俺を警戒してかその苛烈さは少し無くなった。

忌々しそうに俺を見つめる。

 

だが、関係ない。

体がまだ温まっていない今こそ、攻撃を叩き込むチャンス。

 

 

「次っ!」

「はい!」

 

 

斬撃を続けるショウコ。

尻尾での後ろへの攻撃も、難なく避けている。

上手くなったなぁ……。

 

感心してばかりいられない。

俺も強くなったんだ。

 

 

「ギャァ!」

「ふん!」

 

 

尻尾を大剣のように操り、俺を何度も狙ってくるディノバルド。

だが、当たらない。

絶対に、避けてやる。

 

そして、隙を見つけては……。

 

 

「うらぁ!」

 

 

ザシュ!ザザン!!

 

 

「よっ!」

 

 

ザン!ザシュッ!

 

 

何度も何度も、剣を見舞う。

俺の武器は、手数が命。

そっちが攻撃を止めないのなら、こっちだって同じことをするまでだ。

…………スタミナなら、絶対に!

 

 

(負けないっ!!)

 

 

ズザザザン!

 

 

バキィ!

 

 

「グァァァ!!!」

 

 

手応えあり。

回転乱舞が、ディノバルトの頭上に連続でクリーンヒットした。

そのトゲトゲしたところを、切ってやった。

 

 

「グラァァァァ…………。」

 

 

口から赤い吐息を吐き出して怒っているディノバルト。

どういう原理で赤い息を出しているのか、皆目検討もつかない。

 

何度も攻撃を食らわす。

後ろから、前から、その体力を削っていく。

 

やがて焦れたディノバルドは、「もうお前ら許さん」と言わんばかりに姿勢を低くした。

これ、やばいやつかも。

 

 

「ギャァッ!!」

「!!ショウコ!」

「はい!」

 

 

瞬間、いきなり尻尾を振り回してきた。

同時にバックステップで後退する俺たち。

 

 

「これが厄介なんだよ……。」

「モーションが無いですね……。」

 

 

長い尻尾を活かし、周囲一帯を攻撃する技。

正直食らってもそこまでダメージはない。

だが、食らえば大きなスキになる。

 

 

「ご主人様。」

「あぁ、コイツの薙ぎ払いはこれじゃない。もっとすごいのが…………これだ!来るぞっ!」

「……グァゥ!」

 

 

尻尾を振り回したディノバルドが、再び自分の尻尾に噛みつく。

 

 

ギリギリギリギリ…………!

 

 

力を溜め、俺を見据えて狙いを定めている。

これだ、この攻撃。

一帯を薙ぎ払う、超高速の尻尾回転攻撃。

地を這うように繰り出されるそれは、強烈無比の一言。

 

……これを食らって、前回俺は意識が飛びそうになった。

 

 

「ショウコ!コイツは引き受ける!」

「はいっ!下がります!」

 

 

シュッと後ろに飛び退くショウコ。

さすがの判断だな。

 

そして、俺はというと。

 

 

「ふぅーーー……。」

 

 

息を吐き出して、極限まで力を抜く。

 

意識を研ぎ澄ませ。

対応しろ。

 

モーションとかそういう話ではない。

繰り出される、その刹那。

そこで、力を解放する。

 

 

ギリギリギリギリ……!

 

 

時間にして4、5秒。

だが、その短い時間が俺にはとてつもなく長く感じる。

…………高めろ。

 

 

「グァ――――」

 

 

(今っ!)

 

 

ディノバルドが尻尾を牙から離す。

 

その瞬間。

 

まるでマグナム弾のように突っ込みながら、体をひねる。

 

 

「ふっ!!」

「―――ァァァ!!!」

 

 

高速で迫る尻尾。

あの時とは違う。

 

……見える。

 

 

ギィン!

 

 

俺とディノバルドの剣がかち合う。

その勢いを利用して……。

 

 

(喰らえ。)

 

 

ザザザザザザザザザザザシュ!!

 

 

尻尾を振り回しながら、迫りくる巨体。

コマの中心を狙うかのように。

 

俺は、回転乱舞を見舞った。

 

 

「ギャァァァ!!」

 

 

食らってもなお、再び尻尾に噛みつくディノバルド。

 

 

(もう一回!!)

 

 

「グァァァ!!!」

 

 

またも薙ぎ払いを繰り出してきた。

 

2連。

周囲を無差別に滅するその攻撃を。

 

 

(いなして!回避攻撃!)

 

 

集中力は途切れていない。

スタミナも十分。

 

迫りくる尻尾に呼応するように、双剣を繰り出した俺は。

 

 

「あああぁぁぁ!!」

 

 

ザザザザザザザザザザザザ!!ザシュ!!!

 

 

「ギャァァァァァァ!」

 

 

ディノバルドの、その体躯の中心を、抉った。

 

 

トッ。

 

 

着地。

 

 

「………はあっ……はあっ。」

「…………グルルル…………。」

 

 

流石に無茶し過ぎた。

息が乱れる。

 

 

「すぅぅ……はぁぁぁぁぁぁ。」

 

 

呼吸法で無理矢理息を整える。

ディノバルドの方は……?

 

 

「…………。」

 

 

ドスン。

 

ドスンドスンドスン…………。

 

 

「……行ったか……。」

「……みたいですね……ご主人様、今の攻撃……回避攻撃、ってやつですよね?」

「ああセルレギオスの時にもやった、アレだよ。」

「……ディノバルドのあの薙ぎ払いは、とんでも無い速さでした。それにも対応できるとか……凄いです、ご主人様。」

「ありがとう。……何と言うか、集中力を高めるんだ。そしたら見える。何度か見た技っていうのも大きい……まぁ、弱点はあるんだけどな。」

 

 

回避攻撃の弱点。

 

まずはスタミナの管理。

鬼人化して、身体能力を上げる。

頭もフル回転。

単純に、疲れやすい。

 

更に、術後のスキが大きい。

すべての技に言えることだが、攻撃終わりにスタミナが切れたらシャレにならない。

防がれてしまったら、手痛い反撃を食らう。

 

ここに気を付けなければいけないと、事前にショウコには伝えている。

逆に言えば、ショウコがいるというある意味での保証があるからこそ、あそこまで攻撃できる。

ここは大きい。

 

 

「……ショウコのおかげだ。」

「ウチ、何にもしとりませんけどね。」

「何を言う。アイツ、足にかなりのダメージが来てたぞ?十分に削れていたじゃないか。」

「そ、そうですか?」

「あぁ、動きが明らかに緩慢になっていってたぞ。嘘じゃない。」

「う、嬉しいです……。」

 

 

ショウコも確実にレベルアップしている。

避け方も間合いのとり方も、めっちゃ上手かった。

この半年は、無駄じゃなかった。

 

 

「武器の方は、大丈夫か?」

「平気です。ご主人様の双剣みたいにシビアな管理が必要ないのが楽ですね。……ご主人様のは、研いだほうがいいですね。」

「だな……セツヒトさんにも相談したけど、武器の強化……というか、斬れ味を良くするのは、急務だな。」

「……ご主人様も、口で噛んで強くしてみたらええやないですか?」

「アホか。」

 

 

いきなりボケをかまされる。

……余裕があるな。いい証拠だ。

 

 

「…………整えたら、いこう。できたら日が暮れるまでに倒したい。」

「はいっ!いきましょう!」

 

 

そこから、武器の研ぎ直しと一応怪我や装備の点検を行った。

……問題なし。体調も万全。

 

 

あの時は、ヤツは引き下がらなかった。

だが、今日は後退した。

 

俺たちを脅威と感じたのだ。

……強く、なったな。

 

うん。実感した。

 

 

「よし、行きましょう!」

「……あぁ!」

 

 

ディノバルドが逃げた方向に、走り出す。

今度は、俺たちが追う側。

 

リベンジ完了までは、気を抜かない。

ショウコと俺は、改めて気を引き締めて奴に挑む。

 

 

* * * * * *

 

 

「おりました……けど……。」

「あいつ……何してんだ……?」

 

 

辺りはゴツゴツとした岩場地帯。

身を隠すところには困らない。

 

丁度いい岩の陰に隠れ、ディノバルドを視認。

したのはいいのだが……。

 

 

「溶岩に……尻尾を浸して……うわ、研いだ。」

「もはや生き物には見えませんねぇ……。」

 

 

岩場の先、ドロドロの溶岩が剥き出しになったところ。

真っ赤な池の、そのほとりで。

 

ディノバルドは、尻尾をつけては研ぎ、つけては研いでいた。

 

 

「あんな生態、あったんですね……。」

「いや、情報画面にもそんなのないぞ……うわ、また溶岩に突っ込んだ。」

「…………火怖くないんでしょうかね……。」

「恐ろしいな。熱くないのか……?」

 

 

溶岩って確か数千度とかそんな常識外れの温度だった気がするのだが……。

うーん、ファンタジー。

 

……まぁ、今更だな。

 

 

「……おっ、終わった。」

「ピンピンしてますね……あっ。」

「……いや、ショウコの攻撃した足、結構キテるみたいだぞ。」

「ホンマや……。」

 

 

やたらと足を気にしている。

下を向いては足を上げ、自身の歩み具合を確認している様子が伺えた。

 

 

「強くなったな……ショウコ。」

「……ウチも頑張りましたから。」

「あぁ。」

「でも、それでもなおご主人様に意識を向けざるを得なかった、ってことですよね?」

「そうなるな。」

「ウチら、強うなりましたね……。」

「本当にな。」

 

 

少し気恥ずかしい。

だが、相手は以前コテンパンにやられた相手。

 

レベルアップしたことが実感できる。

 

 

「……用意はいいか?」

「はいっ。いつでも。」

「よし。真正面から、行くぞ。」

「はいっ!後ろに回ります!」

 

 

簡単に確認を済ませる。

 

走って向かうは、ヤツの正面。

あの怖い顔の面前。

 

 

「…………ギャァァァァァァ!!!」

「くっ……!いきなりだな……っ!」

 

 

急な咆哮。

しまった。分からなかった。

 

 

「グァァァ!!」

「うぉっ!?」

 

 

すぐの噛みつき。

咄嗟に後ろに飛んで回避。

ヒヤッとした。

 

……油断しないって決めたのに。

 

 

(ショウコは……?)

 

 

「はぁぁぁ!」

 

 

ザン!ザザン!

 

 

(よし……挟撃態勢OK。)

 

 

既に背後から足を削り出している。

さすがの速さだな。

 

 

ジャキン!

 

 

「ディノバルド!こっちだ!」

「…………グルルル……!!」

 

 

俺を見るや、ガンを飛ばしてくるディノバルド。

おぉ……怖い顔。

 

 

「さぁ、来いっ!」

「グァァァ!!」

 

 

気を引く。

思惑通り、こっちに突っ込んできた。

 

 

「グァ!」

 

 

グルン。

 

 

尻尾を地につけ、這わせながら一回転。

 

 

「あぶねっ!」

 

 

バッ!

 

 

バックステップでかわす。

たちこめる、焼け焦げた臭い。

 

 

(岩が焼けてるよ……。)

 

 

先ほどより、尻尾の熱さが上がっているのか?

……攻撃を食らったら、不味いな。

 

 

「グアァ!!」

 

 

今度はその身を翻し、尻尾の振り下ろしを繰り出す。

ケツが見えたそのタイミングで避ける。

 

 

(ここだ!)

 

 

振り下ろし攻撃が終わった直後、更に追撃をかけようと、もう一度尻尾を振り上げるディノバルド。

そのスキに、足元に移動する。

 

ショウコは……後退して様子を見ている。うん、それでいい。

今は見ていてくれ。

 

 

(安全地帯は、むしろここ。)

 

 

「おらあ!!」

 

 

ザシュ!!ザザザン!!

 

 

足元に、斬撃を食らわせる。

ディノバルドは再び尻尾を振り下ろすが、狙いは大外れだ。

 

俺がいるのは、お前の足元だぞ。

 

 

「もう一丁……!」

 

 

ザン!ズザザザン!

 

 

「ギャアァァ!!」

 

 

攻撃の途中に俺が消え、足元に攻撃を食らう。

そんな風に見えていたのだろうな。

 

死角をうまく使って、攻撃できた。

尻尾の振り下ろしは、その特性上、後ろを振り向く。

俺が見えない一瞬がある。

それが、ケツが見えた時。

 

あとは、ヤツの足元に素早く動けばいい。

避ける必要もない、安全地帯。

 

 

「ショウコ!振り下ろしは隙が大きいぞ!ここに張り付けば安全だ!」

「は、はいっ……ってそんなん、ご主人様しかできませんって!!」

「イケるイケる!あんまり足元見えてないぞ、コイツ!」

「や、やってみます!!」

 

 

ショウコに情報を伝える。

モンスターに張り付くというのは、正直めっちゃくちゃ怖い。

だがディノバルドの場合、その自慢の尻尾攻撃を主体とした攻撃。

クルクルと回るため、死角はできやすい。

 

そこを突けばいい。

 

 

「態勢を変える!俺は正面!ショウコは足元!!」

「が、頑張ります!」

 

 

ショウコは小さい。

何よりも素早い。

ディノバルドの動きにも問題なく対応して、何ならきっちりダメージも与えている。

 

絶対、ショウコなら大丈夫だ。

 

 

「頼んだ!……ディノバルド!こっちだ!!」

 

 

ジャキン!

 

 

わざとらしく双剣を大きく構え、アピールしてみる。

 

 

「グラァァァァァ!!!」

 

 

おー、怒ってる怒ってる。

もっと、怒れ。

 

さっきから、動きが拙いぞ。

足にきているのか、怒りで周りが見えて無いのか知らんが。

隙だらけだ。

 

 

「ガァッ!!」

「うおっと。」

 

 

噛みつき……からの。

 

 

「ギャオオオ!!」

(尻尾の一回転。)

 

 

グォン!

 

バッ。

 

 

跳躍して躱す。

 

 

「うらっ!」

 

 

ザシュ!ザザザン!!

 

 

「ギャァァ!!」

 

 

跳んで躱して、そのまま頭に回転攻撃。

トゲトゲが折れているその頭上に、俺の双剣が当たる。

傷口を、更に抉った。

 

 

(ショウコは……よし、できてる。流石。)

 

 

一連の攻撃の間、ショウコは足元に張り付いている。

回転攻撃も、コマの軸にいれば攻撃が当たることは無い。

 

 

「ショウコ!そろそろ来るかも!!」

「はいっ!!離れます!!」

 

 

バッ!

 

 

すぐさまバックステップでかなりの距離を取るショウコ。

……すごい速さだ。一瞬のスピードなら、セツヒトさんレベルじゃないか?

さすがアイルー。

ていうかアイルー並みに素早いあの人がヤバいな……。

 

 

「グァッ!」

 

 

ガギン!

 

 

引きちぎらんばかりに、牙で尻尾を挟んだディノバルド。

また薙ぎ払いだな。

 

 

(鬼人化……集中……!!)

 

 

息を吐いて、集中力を高める。

 

 

ギリギリギリギリ……!!

 

 

限界まで力をためていくディノバルド。

 

 

「ガァーーー」

(今っ!!)

 

 

ジャストタイミング。

そこしか無い、そんな瞬間。

狙う。

 

 

「シッ!」

「ーーーァァァ!!」

 

 

迫り来る、ディノバルドの刃。

振り回し、全てを薙ぎ払うその攻撃。

 

だが、見える。

 

双剣の切っ先を下に向け、体を捻る。

ディノバルドの攻撃を、敢えて受ける。

その力、使わせてもらう。

 

 

キン!

 

 

剣と剣がかち合う。

受け流し、跳躍した体は更なる回転を始め。

 

 

ザザザザザザザザザザザザザン!!

 

 

「ーーらあっ!!」

「ギャァ!!」

 

 

ディノバルドの喉元を、削った。

 

 

ボガン!

 

 

「ァァァァ………。」

 

 

ズゥン……。

 

 

倒れ伏せたディノバルド。

転倒。

 

逃す手はない。

 

 

「ショウコ!」

「はい!」

 

 

打ち合わせておいたこと。

ディノバルドは、喉元が弱点。

口から噴煙を吐いて倒れる。

そしたら、総攻撃。

 

 

「ふっ!」

「やぁ!!」

 

 

ザシュ!ザン!ザザン!!

シュッ!ザン!

 

 

「……グァ!……ガァ!!」

 

 

倒れる時間は、個体差はあるかもしれないが大体10秒弱くらい。

ショウコは攻撃を継続。

俺は……。

 

 

「ショウコ!俺は仕掛ける!」

「はい!ウチは続けます!」

 

 

カチッ。

 

 

作動したのは、シビレ罠。

 

 

ビリビリビリビリ!!!

 

 

「ガァ!?……ァァァ!……ァァァ……。」

 

 

苦しそうに呻くディノバルド。

チャンス時間の継続。

 

 

「うらぁ!」

「やぁぁ!」

 

 

再びの総攻撃。

フクロだ。

 

前回は、罠を使ってハメ続けた。

あの時は必死に何度も何度も仕掛けて仕掛けて。

 

モンスターには、罠に耐性ができると知ったのもあの時だった。

 

今回は、そんなことはしない。

しないけど。

一回ぐらいなら、いいよな。

 

 

「ショウコ!時間!」

「はいっ!」

 

 

シュタッ!

 

 

俺とショウコは、揃って背後に飛ぶ。

 

 

「……グァァァァァァ……。」

 

 

心なしか、力の無い声をあげるディノバルド。

効いている。

 

 

「畳み込むぞ!!」

「はいっ!」

 

 

ショウコの返事とともに。

俺たちは態勢を整え、再び斬竜に対峙した。

 

 

* * * * * *

 

 

「ギャア!……グァッ……。」

「……。」

 

 

ダッ。

 

 

噛みつき攻撃を回避。

 

ディノバルドは、俺でもわかるほどの虫の息。

口からはよだれが垂れ落ち、足には無数の傷。

更には、尻尾が短くなっている。

 

 

「ディノバルド。……終わらせる。」

 

 

ショウコから、捕獲のタイミングであると先程聞いた。

既に捕獲はできる状況にある。

だが、しなかった。

 

奴は、ここで、俺たちの手で、屠りたかった。

 

命を天秤にかけるほど、偉い人間ではない。

ハンターとは、そんな崇高な仕事ではない。

これは、俺のわがまま。ただそれだけだ。

 

 

「……じゃあな。」

「グァ……。」

 

 

双剣を突き立て喉元を抉る。

対の切っ先が、赤黒い皮を切り裂いた。

 

 

ズバッ!

 

 

「ァァ…………。」

 

 

ズゥン……。

 

 

力なく倒れたディノバルド。

しばらくは首を上げ、尚も戦おうという意志を見せたが。

頭を地に置き、それっきり動かなくなった。

 

 

巨体が倒れると、その大きさがよくわかる。

 

 

「うわぁ……この背中えっぐぅ……。」

「絶対に乗りたくないモンスター第一位だな……。」

 

 

目の前に横たわるゴツゴツの背中。

こんなん、座ったら死ぬ。

 

 

「……ふぅ……ショウコ、お疲れ様。」

「は、はい……あ、あれ……?」

「どうした!?」

 

 

急にポロポロと涙が出てくるショウコ。

本人もよく分からないようで、戸惑っている。

え!?何!?怪我していた!?えっ!?

俺も戸惑う。

 

 

「す、すみません……あれ、なんでやろ……ウチ……あれ?」

「しょ、ショウコ!?大丈夫か!?傷でもできたか!?」

「い、いや、そんなん違くて……安心したら感動してもうて……うわぁ……こ、こんなん、恥ずぅ……。」

「あ、あぁ……良かった。」

 

 

ショウコも、強くリベンジを誓った。

二人で絶対に倒そうと決めた相手。

 

感動しちゃったんだな。

俺だって、安心した。

……殺すことを選んだ自分に少し戸惑って、感動は薄れてしまったんだけど。

 

 

「す、すんません。落ち着きました。」

 

 

慌てながら涙を拭うと、何でもなかったかのように真顔になるショウコ。

いや、真顔は逆に面白いぞ。

 

 

「そ、それより、あれ、どうしましょう!」

「ん?あ、あれか。」

 

 

恥ずかしさを取り繕うかのように、話題を変えてくるショウコ。

うん、乗ってやろう。

 

ふと横を見やる。

ショウコの言うアレとは、ディノバルドの倒れ伏した、その20mほど後方にあるモノの事。

ディノバルドの切れた尻尾が見える。

見えるのだが……。

 

 

「すごいですね……。」

「何かのモニュメントみたいだな……。」

 

 

ディノバルドのその強靭な尻尾を切り落とした。

それにより、一層こちらが優勢になったのだが。

 

あまりに尻尾が鋭利だからか、溶岩だらけの岩場に、ガッチリ突き刺さってしまっている。

長さもすごい。俺より高いぞ……。

 

 

「……ま、まぁ回収班がなんとかしてくれるだろ。」

「めっちゃ深く突き刺さってますけど……。」

 

 

深く考えないことにしよう。

 

 

「とりあえず、行こうかショウコ。ここじゃ信号弾撃てないし。」

「回収班の人ってどんなんやろう……。」

 

 

多分とんでもないプロフェッショナル集団だと思うぞ。

こんな採掘場の中に入ってまで、モンスターを回収するんだから。

……あの人たちといい、観測班といい……ギルドの底が知れない。

……とにかく、ここは洞窟内。入り口で信号を上げる必要がある。急ごう。

 

 

感謝しているぞ、ディノバルド。

自分を殺した相手に言われても嬉しくないだろうが。

 

 俺が、改めて強くなろうと心に決めた、その最たるきっかけ。

 

ありがとうと心の中で言うと、俺たちは準備もそこそこに出口に向かって歩き出した。

 

 

 

リベンジ、完了。

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