ドールに、剣の振りを見てもらうことにした。
いや、少女に何か師匠的な部分を見出したわけではない。
ただ、自分一人では煮詰まっていたのは確かなわけで。
「じゃあ、いくぞー。」
「う、うん。」
さっきドールにお願いしたら、今まで見たことの無いぐらい目を見開いて「え?」という顔をされた。
そりゃそうだよ。昨日今日会ったやつに「剣の振りを見てほしい」なんて言われてみろ。
……キモい。
早まったかもしれない。でももう遅い。すでに構えてしまった。
ちなみにドールに「ハンターになることはできたが、初心者講習会をまずは受けることになった。」と伝えると、「よかった。」とだけ返事された。
知り合ったやつが、無謀なことに突っ込むよりはよほどいいよな。
優しい子だな、と改めて思った。
「まずは、斬り下ろし……ハッ!!」
そうして、自分でもよくわからないまま、<操作方法>に書いてあった技名を言って、剣を振る。
するとすぐドールから指導が入った。
「斬り下ろし?片手剣の人って、もっと上から力強く振り下ろしてたよ?」
「そうなのか!?……じゃあ……こう?」
言われた通り、力強く振り下ろしてみる。
「うーんとね。ごめん、うまく言葉にしづらい。そんなに強くなくて、次の斬りにつなげられるような感じで。」
「……もう少し力を抜いてみるか……。」
* * * * *
「……ハアッ!」
「あ、いいかも。それ。」
様になってきたらしい。やはり人に見てもらって正解だったかもしれない。
いや、ドールに見てもらって、正解だったかもしれない。
多少フィーリングな言語を使うが、非常に分かりやすかった。
ただ、流石に長時間拘束するのはどうかと思う。すでに30分ほどは見てもらっていた。
「ごめんな、ドール。いい練習になったよ。ここからは一人で練習してみる。」
「そこは『ありがとう』だよ。謝られてもうれしくない。」
「そうか、確かに。ありがとう。」
「……ふふっ。どういたしまして。」
初めてドールが笑うのを見た気がした。
「じゃあ、次が最後ね。ソウジさん。もう一回、剣を振ってみて。」
「よしきた。じゃあ、今日の総仕上げだ。」
本当にいい子だ。
報いるためにも、今日一番の出来の振りを見せたい。
集中する。今日のことをおさらいする意味で、もう一度情報画面の<操作方法>を開く。
斬り下ろし、とだけ書かれている。何の説明もない。
でもだいぶ体に馴染んできたこの動き、モノにしたい!
そう願った瞬間だった。
頭の中に情報が流れ込んできた。
【片手剣の使い方……斬り下ろし……派生先…横切り……水平切り……回転切り……ハードバッシュ……ジャストスラッシュ……バックステップ……旋刈り……溜めてタイミングよく……ガードとカウンター……………】
そして何も変化のなかった<斬り下ろし>の部分が光り出した。
「ドール……そこからもう少し離れて見てて。」
「えっ?」
「頼む……。」
「わ、分かった。離れるね。そ、ソウジさん?大丈夫?」
「……いくよ。」
ドールが十分に離れたのを確認し、光り出した<斬り下ろし>を、頭の中で選択した。
「……フッ!」
息を吐きだすと同時に、斬り下ろす。すぐに刃を返して切り上げる。さらに踏み込んで斬り下ろしと切り上げ、そのまま横薙ぎ、勢いを殺さずに回転して強烈な横薙ぎを行う。
「れ、連続技…。」
ドールが何かを言っていたが、よく聞こえなかった。
それぐらい集中していたわけで。
最後の技が終わった後、俺は今までにない感触を得ていた。
「これは……。」
頭の中に情報が入ってきた、と思ったら、片手剣の操作の仕方が分かった。分かってしまった。
そうか、斬り下ろしはあくまで初手、そこから連続でつなげて相手を畳みかける。それがこの武器の特徴か。
「すごい……。」
あっけにとられているドール。だが、それは俺も同じだ。
急に<操作方法>が光り、武器を扱えたのだから。
なぜできたか、それは間違いなくこのギフトの力だろう。
そしてこの肉体。
先ほどの尋常ではない連続技の応酬。正直体がちぎれるかと思ったが、今では体はぴんぴんしている。
「ソウジさん。すごい。こんなの見たことないよ。」
「……うん。できたな。」
「感動が薄いと思うけど……。でも、斬り下ろしどころじゃなかったね。あんなに連続して素早く剣を振るえるなんて、驚いた。」
「……あのー、ドールさん。お願いがあります。」
「……何でしょう?」
「……もう一度だけ、剣を振るのを、見てもらってもいいですか?」
「……ふふふ。あははははは。」
こんなに笑う子だったっけ?そう思うほど、ドールは今までにないぐらい楽しそうだった。
「うん、いいよ。でも、さん付けじゃなくて、ドール、だからね。あと、敬語もなし。」
「はい、すみません。」
性懲りもなく再び謝り、その後何度もドールに剣の振りを見てもらったのだった。