モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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122もう一度見つけましょう。

ジンオウガの狩猟にやってきて初日。

 

広大な草原の中、その姿を見つけることはできず。

その日はのこのこと、放牧の民の移動集落に帰ってきてしまった。

 

そのことを族長のハンザさんに報告。

 

 

「なるほど。いや、すぐに見つかるとは思っていない。寝食の世話はさせてもらう。どうか、捜索を続けてほしい。」

「もちろんです。……すぐに狩猟を終えたかったんですが。お心遣い、痛み入ります。」

 

 

対象を見つけられないクエストというのも、中々無い経験だったものだから、どう報告したものかと迷っていたが。

正直に伝えることにした。

嘘つく必要も無いし。

 

マジでどこにいるのか分からんかったし。

 

 

族長と同じテントで休んでほしいと言われたので、そのままお言葉に甘えることにした。

 

 

「ご主人さま?イケメンさんと同じテントで大丈夫ですか?」

「お前は俺を何だと思っているんだ。」

 

 

ショウコの疑念は尽きない様子。

いや、ノーマルだって言ってるじゃないですか。

 

 

* * * * * *

 

 

夕飯時。

ハンザさんの指示に従って、やたら豪華な飯が出てきた。

腸詰めにチーズを使ったフォンデュの様なものまで、肉系が中心の温かい料理が眼前に揃う。

 

めっちゃ美味そうだけど……。

 

 

「は、ハンザさん。こんな豪華な食事、いいんですか?」

「どうか、食べてくれ。我々の生活を、命を賭けて守るという者が目の前にいる。もてなさずして、どうするというのだ。」

「そ、それはありがたいお言葉ですが……。」

「…………では、こうしよう。気にせず、食べるといい。我々も打算的にこの食事を用意した、と考えればいいだろう。頑張ってくれという思惑のもと、な。」

「は……はい……。」

 

 

集落の人達が精一杯心を込めて作ってくれた食事。

打算的だろうが何だろうが……俺は美味しく食す。

そして、雷狼竜を屠る。

 

これが俺の仕事なんだ。

 

そう割り切って、食べることにした。 

 

ていうか、めっちゃ美味そうで我慢できなかった。

心弱いなぁ俺……。

 

 

「……ありがたく、いただきます。」

「いただきます!」

「あぁ。存分に食べてくれ。」

 

 

ここの方々も生活が厳しくなってくる頃だろうに。

……是が非でも頑張んなきゃな。

 

ムシャムシャと、食べ進める俺とショウコ。

 

 

「そういえば、普段モンスターが出てきた時ってどうしとるんですか?」

「基本的には、我々で追い返す。無論、敵わなそうな相手はすぐに逃げる。」

 

 

ショウコがハンザさんに唐突に質問した。

多分俺とハンザさん二人とかだと……ずっと黙りっぱなしで辛かっただろう。

こう言う時、ショウコがいると助かる。

 

 

「逃げるって言うのは……。」

「そのままの意味だ。我々は移動して牧畜に草をやり、成長を享受して暮らす民。動くことには慣れている。……無論、雷狼竜には慣れていないが。」

「なるほど。」

 

 

ハンザさんの口調は常に淡々と、しかししっかりとしている。

言動の責任を意識してるんだろうな。

族長ともなると、色んなもの背負ってるんだろうしなぁ。

 

 

「一人、一際強い者が居た。」

「え?それは……ハンターよりもですか?」

「分からんが……私は体術で勝ったことはない。」

「へぇ。そんなに。」

 

 

見た目めっちゃ強そうだけどな、ハンザさん。

 

 

「今はここにはいない。ある者に憧れ、その……聖地巡礼、と言っていたか。それを行うからと、居なくなった。」

「それは……奔放な方ですね。」

「真面目で素直で可愛い、私の妹だ。」

「い、妹!?」

「ああ。真面目で素直で可愛く愛くるしい、私の妹だ。」

「…………。」

 

 

よっぽど妹さんのことが可愛いんだろうな。

 

というか……ハンザさんの様子がちょっと変わった?

何か……表情が違うというか……心なしか微妙にデレデレしているというか……。

 

……もしやとは思うが……シスコンというやつか?

いや、こんなイケメンの方に限ってそんな。

 

 

「妹は可愛い子だ。小さい頃は私にべったりでな。私が長男として厳しく育てられたのに対し、妹は皆に愛された。無論、私もな。」

「そ、そんなに素敵な子がいるんですね!」

 

 

シスコン空気を察したのだろう。ショウコが当たり障りなく返事をする。

 

 

「ああ。ハンターになり、大型モンスターも何体が倒したとは聞いた。流石私の妹だ。……近頃連絡が無く、心配している。」

「ちなみにお名前は?」

「ハンズ、と言う。」

「「ブーーー!!」」

 

 

思いっきりお茶を吹き出す。

 

えぇ!?

ハンズってハンザさんの妹だったの!?

 

ま、まぁ生い立ちなんて聞いたこと無かったけど……。

 

 

「我々の部族は、父の名前から自身の名前を引き継ぐ。私とハンズは、父の『ハン』の名をそれぞれもらった。……妹と名前が似ているというだけで、誇らしい。」

「そ、それは……いいですねぇ!」

「そうだろう。それだけで私は生きていける。」

「へ、へー。」

 

 

やばい。

こらシスコンだわ。

 

だって違うもの。

ハンズの話をする時の目が。

 

キラッキラしている。

さっきまであんなに凛々しかった、キリッとした切れ目が。

少女漫画みたいだもの。

 

 

「今はどこで何をしているのかは分からない。……ハンズは可愛すぎる。心配している。」

 

 

ど、どーしよ。

……これ、言うべき?

 

『あなたの妹さん、その憧れの人のストーキングしてましたよー。』って!?

それとも言わない方がいい!?

どっち!?

 

いかん、選択を間違えると大変なことになりそう……。

 

そ、そうだ!しょ、ショウコはどうする!?

 

 

「……あ、ウチちょっと失礼しますねぇ……。」

 

 

トトト。

 

 

あ!逃げやがった!!

まって!ショウコ!行かないで!

 

 

バサッ。

 

 

虚しく響く、入り口の布の音。

……トイレに行く振りして消えるとか、お前合コン中の女子大生かよ!

 

 

「厠は、外だ。もしソウジ殿も催したら、使うといい。」

「あ、じゃあ行ってきますね!」

 

 

ラッキー!

スタコラサッサ。

 

 

バサッ。

 

 

出た瞬間、聞き耳を立てていたショウコをとっ捕まえた。 

 

 

「……ショウコ……?」

「わ、わー!す、すんません!もうウチ、耐えきれんなって!」

「だからって置いてくな!ちょっとこのやろう!」

「わー!耳は!耳はやめてくださいぃぃ!!」

 

 

だめ、やめてやらん。

俺をあんなに濃いシスコン空間に置いていきやがって。

 

一通りショウコの耳いじりを終え、お仕置き終了。

 

 

「……はぁ…………いや、あんな感じとは思いもよらず……ギャップあり過ぎです、あの人。悪い意味で。」

「……言うべきか、言わざるべきか。」

「……言わん方がええんちゃいます?ハンズさん、冬山に行くまでの経緯とかは、あまり話されてなかったですし……。何か事情があるんかと思いますけど……。」

「……あのお兄さんから逃げたとか……。」

「……あり得なくもない話ですね……。」

 

 

とりあえずショウコと話した後テントに戻り、ハンザさんと残りの夕飯を平らげた。

ショウコがうまい感じに話を変えてくれて助かった。

 

さすが相棒。

 

 

ちなみにハンザさんは、ハンズが出ていった理由がとんとわからない、ということだった。

「しっかり者の私の自慢の妹だ。きっとこの集落の為になると、精進しようとしてくれているのだろう。」と、非常にポジティブな見解を述べていた。

 

…………本人がそれでいいなら、まぁいいか。

 

 

そこで夕飯は終い。

ハンザハンズ問題は棚に上げ、早々に俺たちは床についた。

明日も狩猟だしな。

気にしないスキルを発動しよう。

 

明日は見つかるといいなぁ……。

 

 

* * * * * *

 

 

ゴソゴソ。

 

 

眠りもそろそろ深くなろうかと言う頃合い、ショウコが何やら枕元にやってきた。

なんだ?

 

 

(……ご主人さま……。)

(……何だ?ハンザさんも寝ているんだから、俺達も早く寝よう。)

 

 

小声で話しかけてくるショウコ。

修学旅行の夜を思い出す。

 

 

(その、外の見張りとか、せんでもええんですか?)

(あぁ、そのことか。……一応見張りは立てているらしいぞ?集落内の男たちで、当番で回していると聞いたけど。)

(あ、そうなんですね……。)

(見つけ次第、俺たちに報告をくれる。……今は、休もう。)

(はい……おやすみなさいです。ご主人様。)

(あぁ。おやすみ。)

 

 

移動疲れもあり、ぐっすり眠れそうだ。

 

……眠い……。

 

 

…………。

 

 

……。

 

 

……ォ……。

 

 

「!!」

 

 

ガバッ!!

 

 

……今、明らかに……!!

 

 

「……ショウコ!起きろ!」

「ふぁっ、ふぇっ!?」

「来た!ヤツだ!多分!」

「えっ……わ、わかりました!」

 

 

寝に入ってしばらく。

確かに聞こえた。

かすかだったけど……。

 

あの冬山で聞いた、雷狼竜の雄叫びが。

 

 

「ソウジ殿。」

「ハンザさん……俺の杞憂でしたら、後で謝ります……。とりあえず、皆さんを起こして下さい。嫌な予感がしました。」

「……わかった。すぐに行動に移る。……誰か!すぐに支度を!」

 

 

俺のことを信頼してくれているのかどうかは分からないが、そこからのハンザさんたちの動きは早かった。

静かに、だが迅速に、月明かりの元荷物をまとめるハンザさんたち。

移動に慣れている、というのは、どうやら本当らしい。

ハンザさんの指揮の元、素早く動き出す人々。

 

…………これで勘違いだったら、本当に申し訳ない。

だが、嫌な予感がする。

咆哮も、かすかだが聞こえた。

 

 

「ご、ご主人様!?ウチには何も―――」

「わからん。確証は無いんだ。だけど……。」

 

 

何か、心が焦ってしまう。

意識とは別の、俺の本能的な何かが、動けとうるさいのだ。

「マップ」を起動しても、見張りの担当に聞いても、ジンオウガの影も形もない。

 

だが……わかる。

ハイビスさんがいつか言っていた、達人の感覚。

そういうものなのかどうかは分からないが……絶対に、()()

 

 

「ショウコ!北北東、何か分かるか!?」

「………………あ…………分かります…………空気が、違う…………。」

「よし……打って出る。準備はいいか!?」

「愚問です!」

 

 

ハンザさんたちに大体の方角を告げ、すぐさまそこに走ることにした。

放牧の民たちを巻き込みたくない。

少しでも離れたところで、戦う必要がある。

 

 

「ソウジさん!出たのか!?」

 

 

ガーグァ車のおじさんが、血相変えてこちらにやってくる。

 

 

「勘違いだったら、すみません。ただ……あの時と同じような声がしました。」

「そうか……ソウジさんが言うんなら間違いねぇ!俺にゃ何もできねぇが……頼んだ!」

「はいっ。」

 

 

おじさんもさすが、準備が早い。

既にガーグー達を待機させ、すぐにでも出られそうだ。

移動集落の人たちにも声をかけ、荷物を載せてあげている。

助かるよ、おじさん。

 

 

「武運を祈る!」

「ソウジさん達!無茶すんじゃねえぞ!」

 

 

ハンザさんと御者のおじさんの声。

返事をして手を振り、俺達は一目散に走った。

 

狙うは、雷狼竜。

そこで待ってろ、動くんじゃないぞ。

 

 

* * * * * *

 

 

「アァォォォォォォン!!!」

 

 

バチッ……バチバチ!

 

 

バチィィィィ!!!

 

 

視認できた。

というか、わかり易すぎた。

 

月明かりの下、優しく風が抜ける草原の、その上に。

光り輝く大型モンスターが、鎮座していた。

 

 

「ご主人様……あれが?」

「あぁ、ジンオウガだ……。」

「うわぁ、わかりやす……めっちゃ光ってますね……。」

 

 

帯電状態……と表現していいのか、ジンオウガはその身を光り輝かせ、雄叫びをあげた。

 

顔の向きを上から正面へと移し、鋭い瞳で俺たちを射殺さんとしてくる。

 

 

「…………グゥゥゥゥ…………。」

「……自己紹介は、いらないみたいだな。」

「あっちもウチらが来ること、分かっとったんですかね。」

「さてな……おい、ジンオウガ。」

 

 

ジャキン!

 

 

双剣を取り出す。

気を引くことができれば、御の字。

…………俺たちの後ろに向かわせるわけには、いかない。

 

 

「俺たちが生きるため、みんなが生きるため……お前を、殺す。」

「…………グゥゥゥゥ!!」

「…………来いっ!」

「ガァァァァァァァァ!!!」

 

 

辺りに何もない、ただただ草原が広がるそのど真ん中。

 

俺達とジンオウガの、戦いが始まった。

 

 

「ガァ!!」

 

 

グルン!

ドン!

グルン!

ドンッ!

 

 

「雷球!曲がるぞ!」

「はい!」

 

 

開始してすぐ、飛び道具を使ってきた。

巨体をクルッと回し、軽々とした着地と同時に、光り輝く何かを射出してくる。

ジンオウガは、その身にまとった雷の力を使って、多彩な攻撃を繰り出してくる。

その一つが、雷球。

 

距離のある相手に放つ、飛び道具。

ぶっちゃけ、あんまり速くない。

……だからこそ、厄介。

タイムラグがあるので、注意を払う時間が長い。

それに、曲がる。

散漫になってしまうのだ。

 

 

(この間に……来るな。)

 

 

雷球を丁寧に避ける寸前、ジンオウガが突進を始める。

やはりだ。

同時に仕掛けてきた。

 

 

「ショウコ!後ろ、取れるか!?」

「やってみます!」

 

 

気負いのない返事。

いいな、余裕がある。

 

 

「ガァァァ!!」

 

 

右腕を振り上げるモーション。

鋭い爪が襲う。

 

俺はそれを、寸前で避ける。

 

 

ズドォン!

 

 

(まだ。二回目……。)

 

 

鬼人化、身体能力を上げる。

 

……集中!!

 

 

「グァァ!」

 

 

(来たっ!)

 

 

次の一手、左腕の振り降ろし攻撃。

俺は極限まで力を抜き、対の二刀の切っ先を、合わせる。

ディノバルドよりは、遅い。

 

 

「ふっ……!」

 

 

ギキン!!

 

 

爪とかち合う、俺の双剣。

セツヒトさんが打ってくれた、ベルケルブリザード。

 

空中回転乱舞をお見舞いする。

剣先をジンオウガの爪から腕に走らせ、その勢いを受け切り。

俺の体は、無数の攻撃を当てた後、浮いた。

 

 

ズザザザザザサン!

 

 

「アォォ……。」

「しゃっ!」

 

 

スタッ。

 

 

着地を、こちらも軽やかに。

 

……いきなりだが、上手くいったな。

その爪の振り下ろしは、見たことがある。

冬山では、避けるしかなかったけど。

 

今は、反撃の術がある。

 

 

「ナイスです!ご主人さま!」

 

 

ヒュパ!

シュザン!ザン!

 

 

言いながら、後ろ脚と尻尾にダメージを加えていくショウコ。

 

 

「ショウコもナイスだ!このまま挟撃態勢!尻尾に気をつけてな!」

「はいっ!!」

 

 

ブォン!

 

 

指摘されて腹が立ったのか、尻尾を振り回してきた。

 

 

(……尻尾……あいつの方が数枚上手だな!)

 

 

ディノバルドよりも、数段遅い。

回避攻撃をするまでもない。

跳躍して尻尾を避け、その攻撃の中心に剣を向ける。

 

 

「っらぁ!!」

 

 

ズザン!ザシュ!ザン!

 

 

「クォォ……!」

 

 

体をぐらつかせるジンオウガ。

回るコマは、その軸こそが弱点。

……カウンターの餌食だ。

 

 

「ショウコ!叩き込め!」

「はいっ!!」

 

 

ザシュ!ザザザザザン!!

ザザン!!

ヒュパッ!ザシュザシュ!

 

 

スキが生まれたジンオウガ。

一斉に攻撃を行う。

 

だが。

 

 

(…………?…………様子が何か違う…………!?)

 

 

「やべぇ!!離れろ!ショウコ!」

「えっ―――」

 

 

 

余裕を持つことと油断することは、そこまでの過程が全く違う。

努力は、強さに繋がる。

強さは、余裕を生む。

余裕は、視野を広くする。

 

油断は、逆。

根拠のない自信。

それは視野を狭める。

 

ハンターにとって、視野は生命線。

 

 

「グァ―――」

 

 

離れたと同時、放電を始めようと構えたジンオウガ。

かすかなモーション。

だが、俺には分かった。

ジンオウガが、必殺の攻撃をしてくることを。

 

そして、ショウコがまずい状況にあることも。

 

 

(ショウ……間に合……これしか……!)

 

 

一瞬の思考。

 

放電にショウコが巻き込まれる。

少しだけ反応が遅れている。

 

あの一撃は、まずい。

 

 

「――――おぉぉ!!」

「うぇっ!?」

 

 

俺は、半秒にも満たない時間で判断し。

ショウコを。

 

 

ドガッ。

 

 

「ぐうっ!!」

 

 

蹴った。

苦しげなショウコの声。

 

 

(すまん!)

 

 

頭の中で謝った、その瞬間。

 

 

「グオォォォォォンン!!!」

 

 

バチバチバチバチバヂヂヂヂ!!!!

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

「ご、ご主人様ぁ!!」

 

 

俺は、ショウコを蹴り飛ばし、避けることはかなわず。

 

 

咆哮と共に放たれた雷撃に、直撃した。

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