モンスター名を間違えるとか……痛恨の極みです。
見返すといくつも見つかる誤字の数々!申し訳ありません。
投下ペースは今、二、三日に一回ですが、年末忙しく遅くなるかもしれません。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
ようやくジンオウガを屠った。
「し、死んでます……よね……?」
「…………多分。」
さっきまでピンピンしていたモンスターが、無言で倒れている。
ジワジワと削ってはいたが……。
恐る恐る近づくショウコ。
「……多分、死んでますね……。」
「良かった…………いでででで……!!」
「ご、ご主人様!?」
「すまん、ホッとしたら急に……全身、痛いわ。」
「や、休んどってください!ウチ、後処理やっとくんで!」
「ありがとう……。」
寄りかかるものもなく、とりあえず地面に腰を下ろして落ち着く。
どっと疲れがきた。
疲れ……もあるが、それよりも痛み。
鈍く重い痛みが、全身にくまなく走る。
(雷撃の直撃は……かなりきつい……!)
……反省の多い狩猟であった。
油断が招いた被弾。
そこから完全に崩された。
ソロであれば、死んでいたのはこちらだった。
ショウコのカバーがあり、何とか生きながらえたけど。
(反省はまたするとして……最後は妙だったな。)
雷を纏った、ジンオウガの強化状態。
正直、あの状態をキープしながら一刻ばかり、常に猛攻は続いた。
撤退もせずに、とにかく激しい攻撃の連続。
俺達は、よく耐えられたと思う。
そして最後。
ようやく強化状態を振り切ったかと思えば、結構あっけなく死んだ。
あの目……。
あの血走った、得も言われぬ不気味な赤い目。
あれは果たして、正常な状態だったのだろうか。
無尽蔵とも思える体力。
身体能力や攻撃の威力は、まぁ前回の個体といい勝負だった思う。
ただ、そのスタミナは異常だった。
(ギルドに、一応報告しておくか。)
これまでにも、モンスターが撤退せずに苦しめられた戦いはあった。
例えば、初めてのディノバルド戦。
いつまでもも続くかと思うほどの猛攻に、死ぬ寸前まで追い詰められた。
だが、あれは俺が弱かったこと、ディノバルドのしつこいまでに敵を倒さんとする性格。
そこを考えれば、まぁ納得できる。
ティガレックス戦も、そうだった。
いつまでも続きそうな戦い、スキも見えない相手に、とても苦しめられた。
だが、あれはティガレックスも追い詰められていた。
少なくとも、子ガムートのいる群れを襲うほどには、ヤツは飢えていた。
生きるために、俺を倒そうとする。
そんな必死さが感じられた。
だが、今回のジンオウガは違う。
確かに、俺はとちった。
そのせいで、ジリ貧になるまで追い込まれた。
だが、攻めきれていなかったのはあちらも同じ。
無双の狩人、と呼ばれるには、引き際も心得ていると勝手に思いこんでいたけど。
前回は、セツヒトさんのヘビイボウガンのタコ殴りに、たまらずすぐ撤退したわけだし。
「……ご主人様ー!!信号弾、オッケーです!!」
「あー!ありがとう!」
……まぁ、とりあえず考えるのは後にしよう。
お互いに生きている。
今はそれでいい。
白み始めた空に、高く舞い上がる信号弾を確認して。
俺はショウコとともに、移動集落のある方向に歩き始めた。
* * * * * *
「……多分、こっちだな。」
「分かりますか?ご主人様。」
「あぁ……ギフトの力だけど。」
「その力、ホンマ色んな人らに広めるのやめた方がええですねぇ……。」
「そうだなぁ……。」
ショウコと何気ない会話をしながら、草原を歩く。
小高い丘を目指し、そこから周囲を見回しても、一面の草っ原。
遠くに山が見える、そして所々に低木や岩。
以上。
……俺は早々に諦めて、マップを頼りに歩くことにした。
移動集落の場所は分からないと思っていたが、ムーファの群れがいたことを思い出す。
それを感知したマップを見て、辿ればいい。
初めからこうすりゃ良かった。
無闇矢鱈に使うことはやめておこうと決めはしたが、誰が見ているわけでもないし。
「お……ショウコ、見えたぞ。」
「あ、ホンマや!あー……ようやくですねぇ……朝やのに疲れました……。」
「疲れているとこ悪いが……着いたら、報告と振り返りをしよう。ハンザさん達も心配しているかも知れない。」
「了解です!」
移動集落に近づくと、向こうからガーグァの引っ張る御者が見えた。
おじさんだ。
「おーい!!無事かー!!」
「無事でーす!」
「あー!よかったーーー!!」
オジサンの顔を見るのが久々な気がする。
つい昨晩には話したのにな。
内容の濃い狩猟だった。
「いやぁ!さすがソウジさん達だ!信号弾を見るまではハラハラしたが、良かったぜ!!」
「いえ、お迎えありがとうございます。」
「すまねぇな、信号弾を見た瞬間に走り出そうとしたんだけどよ。商人仲間に止められちまってなぁ。確かに、こんなだだっ広い草原じゃ、見失うかもしれねえしな。」
「確かに、大変だと思います。」
「そしたら村の見張りのやつがやたら目がいいもんで、ソウジさんたちを見つけてな?いやぁ、安心したぜ!」
俺たちも安心した。
おじさんの笑顔で、少しホッとする。
「……ソウジさん!?何か、焦げてねえか!?」
「ははは……雷撃にやられまして……。」
「うわぁ……考えたくもねぇわ……よく無事でいたなぁ……。」
俺もそう思います……。
…………。
……。
「失礼します、ハンザさん。」
「失礼します!」
「あぁ、入って楽にしてくれ。本当にご苦労だった。」
御者のおじさんに車に乗せてもらい、集落まで直行できた。
車に揺られるのが、意外と辛かった。
全身を動かされ、体中の痛みが強くなってしまった。
おかげで着いた頃にはなかなか歩き出せず。
御者の周りに集まっていた人々にたくさん心配されてしまった。
面目ない。
「辛そうだが、平気か?」
「あ、大丈夫です。外傷自体は殆ど無いです。」
「傷を甘く見ないほうがいい。よかったらもう一泊していくといい。出来得る限りのもてなしはしよう。」
「お言葉に甘えたいんですが……ギルドにすぐに報告したいこともありまして。今日、発ちます。」
「…………そうか。わかった。」
意外や、残念そうな顔を浮かべるハンザさん。
少し憂いを帯びた顔がまたかっこいい。
イケメンは何してもイケメンである。
「……ここから北に……どれだけかはちょっと分かりにくいんですが、ジンオウガが倒れていると思います。」
挨拶もそこそこに、報告に移る。
「おそらく、既に回収班が向かっているかと。」
「誘導などは必要だろうか。」
「多分必要ないと思います。あの人たち、そういうのを探すプロですから。」
「わかった。では、ギルドからの報告を待とう。……ムーファたちも、新しい草を食べさせなければならない。すぐにでも、移動を始める。」
昨日……というか昨晩移動して、もうすぐには、か。
せわしない。
なんて俺が心配顔だったからか、ハンザさんが話し始めた。
「……心配には及ばない。我々は放牧の民。移動には慣れている。それに、ソウジ殿、ショウコ殿が、あの雷狼竜を屠った。安心してまた生活できるというだけで、ありがたい。……礼を。」
「い、いやいや、ウチはそんな……。」
顔を赤くして手をパタパタとするショウコ。
イケメンパワー、炸裂。
芸能人を前にした主婦のごとし。
「……また、凶悪なヤツが出たら、教えて下さい。……ハンターが、必ず力になります。」
「あぁ。ワサドラギルドにも礼を伝えよう。素晴らしいハンターの派遣に、な。」
「あ、ありがとうございます。」
「……なぜソウジ殿が礼を言うのだ。……面白い。」
笑うハンザさん。
ニコッと笑顔。
いや、これでシスコンなんだから、神様もなかなかバランスを取っている。
……そういえば最近女神様とコンタクトしていないな。
いや、別にしたいわけではないけど。
「朝食を用意する。しばしの間だが、ゆっくり休むといい。」
「ありがとうございます。」
ショウコと礼を言い、そこからはしばらく歓談しながら朝食を食べた。
肉料理をメインにかなりの量を出してきて、正直言うとキツかった。
集落の人々が代わる代わる差し入れを持ってくるので、無下に断るわけにもいかない。
こうして俺とショウコは、満腹で御者に乗り込むのだった。
恐るべし、放牧の民。
* * * * * *
ガラガラガラガラ……。
「辺りを警戒しますが、とりあえず最短距離で行きましょう。」
「おぅよ!任しとけ!」
ガーグァ車の中で、俺とショウコがゆったりと座る。
だめだ、もう食えない。
「ものすごい量の食事でしたね……。」
「ショウコは少食だもんな……。」
結局食べきれない食事は、持ち帰ることになった。
スープ系は無理だとして、様々な肉料理……ムーファの腸詰めや骨付きのこんがり肉、根菜を甘辛く炒めたものまで、包んでくれた。
帰ったらまた美味しくいただくとしよう。
今は無理だけど。
腹がいっぱい。
「でも……あの族長さんのお願い、どうしましょうかね……。」
「あぁ……あれか。」
食事を取りながら、ハンザさんにとあるお願いをされた。
「もしハンズを見かけたら、一度こちらまで顔を出すよう伝えてほしい。」と伝言を頼まれたのだ。
もし見かけるも何も、おそらく今日中には顔を合わせるんだろうけど……。
「とりあえず……帰ったらハンズに事情を聞いてみるか。」
「そうですね。何か言いにくい事があるかも分かりませんし。」
「じゃあ、ショウコ。ジンオウガの狩猟の振り返りをしておこう。」
「はいっ!」
そこからひとまず頼まれごとを忘れ、ショウコとジンオウガ戦の反省を始めた。
成果としては、明確なピンチに陥ったが、勝つことができたということ。
そして対応を早くすることで、移動集落の人たちへの直接の被害がなかったことが挙げられた。
課題としては、まずやはり油断。
そんなつもりは無くても、俺たち二人で何処か「ディノバルドよりは遅いな」などと考えていた。
そして指示が遅れ、ショウコの回避が遅れ、俺の負傷に繋がった。
慢心……しないと誓っていても、してしまった。
これは大いに反省である。
「……すんません。ウチ、足引っ張ってもうて……。」
「そんなことはないぞ。ショウコが居なかったら、そもそも俺は死んでいる。狩りの際の動きは、そこ以外は完璧だったしな。」
そうなのだ。
ショウコは、今回、ダメージらしいダメージを食らっていない。
回避だけなら、正直セツヒトさんとかその辺りの領域にいる。
身体能力が高く、更に技術や読む力も付いてきた。
これはいい傾向だ。
「これからも、よろしくおねがいします、ショウコ。」
「いやいや、ウチこそ……。」
いや、本当にすごかったんだもん。
そりゃ褒めるよ。
「最後に……ウチから一つ、ええですか?」
「ああ、いいぞ。おじさん、まだ時間ありますよね?」
「ああ!ペースは早いが、まだあと3時間ってところだな!」
充分すぎる。
「ありがとうございます……で、ショウコの話は?」
「ええと……これは勘……なんかなぁ。外れてたら申し訳ないんですけど……。」
「いいぞ、そういう意見も大切だと思う。」
「じゃあ……ジンオウガ、何か今回、切羽詰まってました?」
「…………あぁ。確かに。俺にも、そう見えた。」
ショウコも同じことを思ったか。
うん、ちょっとおかしかった。
「うまく言えないんですけど……今までのウチの経験からして……大型って、こっちを舐めてかかってくるんです。ウチ、ちっこいし、力も無い。こう、こっちをもてあそぶ?みたいな。余裕……ともちゃうんですが。何か、そんなんが無かった、です。」
「…………こっちをただ捕食する対象にしか見ない、そんな雰囲気では無かったな。」
「そう!そうです!……始めから本気やったというか……ここでウチらを絶対に倒さんといかん!みたいな。そんな感じでした。」
「うーん……。」
理由を考えても分からない。
分からないが、違和感は感じる。
今までの狩猟の経験。
バサルモス……ティガレックス……ディノバルド……色んなモンスターを屠ってきたが、ジンオウガはその中でも賢い方だと思う。
なぜ撤退を選ばなかったのか。
そんな余裕は無かった……?
いやでもなあ。いくらでも出来ただろうに。
もちろん逃しはしないけど。
「……俺から、いいか?」
「あ、おじさん。どうぞ。」
二人で考え込んでいると、手綱を握るおじさんが会話に参加してきた。
何か予想がつくのだろうか。
「いやな?……ジンオウガの気持ちになってみちゃどうかなって思ってよ。」
「雷狼竜の?」
「ああ。」
モンスターの、気持ち。
考えたことも無かったけど。
「夜に現れたろ?ソウジさんのモンスターを見つける力は大したもんなのに、それを掻い潜って昼間は潜伏してたんだ。」
「はい。」
「相当慎重で、狡猾なやつだと思っていいよな。何せ、無双の狩人なんて呼ばれるやつだしな。」
「…………。」
俺もショウコも、黙って耳を傾ける。
「俺ら素人からしたら、ソウジさんやセツヒトさんみたいなハンターなんて、どんだけ強えか予想もつかねえが……誇り高い狡猾なモンスターならよ、そんなハンターを目の前にして……どう思うかってな。」
「…………ウチなら、逃げ出しますかねぇ……。」
「だろ?だけどジンオウガは自負がある。『俺が最強のモンスターだ!』ってな。」
「…………。」
「ソウジさんを見て、『ここでやらねぇといけねぇ!』って思ったんじゃねえの?俺は仕事柄、世間の色んな話を聞いてきたが……ティガレックスをソロで殺れるなんてヤツ、見たことも聞いたこともねぇぞ?」
なるほど。
おじさんが言いたいことは分かった。
相手は誇り高い無双の狩人、雷狼竜ジンオウガ。
だが生きるため、周到に夜間を選び、奇襲を試みようとした。
しかしそこに突如としてやってきた強者。
初めから本気を出す理由にはなるか。
俺がそんな強者として認識されたなら、だけど。
「……俺、そんな強くないですよ?」
「「…………。」」
「えっ!?何?ふたりとも黙って。」
急に静かにならないでほしい。
「ショウコの嬢ちゃん……おめぇの主は、とことん鈍いのなぁ。」
「ウチ、その辺もう諦めてます……。」
「何の話をしてるの二人で。」
蚊帳の外感。
二人で話を進めないでほしい。
……寂しくなっちゃうだろ!
「いいか、ソウジさん。この際だからはっきり言うけどよ。おめえもうちっと自覚したほうがいい!強えに決まってんだろ!このスットコドッコイ!!ソロでティガレックスやゴシャハギに挑むのはな、世間一般では自殺って言うんだよ!自殺!……それを、そんな平気な顔してやってのけるのは、強え以外何者でもねえっつーの!!」
「は、はぁ……。」
「あんたは明らかに強者!まちがいねぇ!それに周りをよく見てみろ!!……そんなやつを放っておくわけねぇだろうが!」
ショウコが照れている。
何でよ。
「ウチも、強くなったつもりです。でも、それはオトモとして、できる限りの強さですよ?……アイツの猛攻を負傷しながら避けまくる……何ならカウンターもかまして……そんなん出来る人、まずおらんですって!…………かっこよすぎます……(ボソッ)。」
最後に何を言ったか分からんかったが。
そうか。
俺も強くなったんだな……。
「だからよ、そんなソウジさんを前にして、ジンオウガも必死こいちまったんじゃねえかってな。あれだろ?倒れてからは割とあっさりトドメまでさせたんだろ?」
「はい……そ、そうです。」
「ならそういうことじゃねえか?……いやー、致命傷まで食らわせておいて、ジンオウガも悔しかったろうなー……っと、素人ながらに予想したわけだ。」
「なるほど……。」
筋は通る。
……まぁ、今回はそんな所で落ち着こう。
これ以上は、何か褒められ過ぎて、むず痒い。
「ショウコの嬢ちゃんも、もっとグイグイ行かねぇとな!!」
「ちょ、ちょっとおじさん!!なにゆうて―――」
「コイツに問題あるかと思ったが、おめえらもアレだ!もっと積極的に―――」
「も、もうっ、うっさい!!」
「わっ!!何するんだこら!!や、やめっ……ひ、ひひひひひひ!!」
ショウコが何故かおじさんに飛びつき、コチョコチョし始めた。
何か照れ隠しのようにも見える。
「ガー。」
「グァー。」
ガーグー達が鳴く。
それは……慌てているのか?
……まぁ、平和で何より。
その後、おじさんの手綱が大変なことになり、ガーグーたちが混乱する一幕もあったが。
無事にワサドラに帰り着くことができた。
眠いけど、これからギルドに報告に行こう。
もう一つ気になる事。
あの、赤い目。
……不気味だった。報告するに越したことはない。
俺とショウコはおじさんに礼を言い、ギルドに向かうのだった。