モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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誤字報告、いつもありがとうございます。

モンスター名を間違えるとか……痛恨の極みです。
見返すといくつも見つかる誤字の数々!申し訳ありません。


投下ペースは今、二、三日に一回ですが、年末忙しく遅くなるかもしれません。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。


124強さを自覚しましょう。

ようやくジンオウガを屠った。

 

 

「し、死んでます……よね……?」

「…………多分。」

 

 

さっきまでピンピンしていたモンスターが、無言で倒れている。

ジワジワと削ってはいたが……。

 

恐る恐る近づくショウコ。

 

 

「……多分、死んでますね……。」

「良かった…………いでででで……!!」

「ご、ご主人様!?」

「すまん、ホッとしたら急に……全身、痛いわ。」

「や、休んどってください!ウチ、後処理やっとくんで!」

「ありがとう……。」

 

 

寄りかかるものもなく、とりあえず地面に腰を下ろして落ち着く。

どっと疲れがきた。

 

疲れ……もあるが、それよりも痛み。

鈍く重い痛みが、全身にくまなく走る。

 

 

(雷撃の直撃は……かなりきつい……!)

 

 

……反省の多い狩猟であった。

 

油断が招いた被弾。

そこから完全に崩された。

ソロであれば、死んでいたのはこちらだった。

ショウコのカバーがあり、何とか生きながらえたけど。

 

 

(反省はまたするとして……最後は妙だったな。)

 

 

雷を纏った、ジンオウガの強化状態。

正直、あの状態をキープしながら一刻ばかり、常に猛攻は続いた。

撤退もせずに、とにかく激しい攻撃の連続。

 

俺達は、よく耐えられたと思う。

 

そして最後。

 

ようやく強化状態を振り切ったかと思えば、結構あっけなく死んだ。

 

あの目……。

あの血走った、得も言われぬ不気味な赤い目。

あれは果たして、正常な状態だったのだろうか。

 

無尽蔵とも思える体力。

身体能力や攻撃の威力は、まぁ前回の個体といい勝負だった思う。

ただ、そのスタミナは異常だった。

 

 

(ギルドに、一応報告しておくか。)

 

 

これまでにも、モンスターが撤退せずに苦しめられた戦いはあった。

 

例えば、初めてのディノバルド戦。

いつまでもも続くかと思うほどの猛攻に、死ぬ寸前まで追い詰められた。

だが、あれは俺が弱かったこと、ディノバルドのしつこいまでに敵を倒さんとする性格。

そこを考えれば、まぁ納得できる。

 

ティガレックス戦も、そうだった。

いつまでも続きそうな戦い、スキも見えない相手に、とても苦しめられた。

だが、あれはティガレックスも追い詰められていた。

少なくとも、子ガムートのいる群れを襲うほどには、ヤツは飢えていた。

生きるために、俺を倒そうとする。

そんな必死さが感じられた。

 

だが、今回のジンオウガは違う。

確かに、俺はとちった。

そのせいで、ジリ貧になるまで追い込まれた。

だが、攻めきれていなかったのはあちらも同じ。

 

無双の狩人、と呼ばれるには、引き際も心得ていると勝手に思いこんでいたけど。

前回は、セツヒトさんのヘビイボウガンのタコ殴りに、たまらずすぐ撤退したわけだし。

 

 

「……ご主人様ー!!信号弾、オッケーです!!」

「あー!ありがとう!」

 

 

……まぁ、とりあえず考えるのは後にしよう。

お互いに生きている。

今はそれでいい。

 

 

白み始めた空に、高く舞い上がる信号弾を確認して。

俺はショウコとともに、移動集落のある方向に歩き始めた。

 

 

* * * * * *

 

 

「……多分、こっちだな。」

「分かりますか?ご主人様。」

「あぁ……ギフトの力だけど。」

「その力、ホンマ色んな人らに広めるのやめた方がええですねぇ……。」

「そうだなぁ……。」

 

 

ショウコと何気ない会話をしながら、草原を歩く。

小高い丘を目指し、そこから周囲を見回しても、一面の草っ原。

遠くに山が見える、そして所々に低木や岩。

以上。

 

……俺は早々に諦めて、マップを頼りに歩くことにした。

移動集落の場所は分からないと思っていたが、ムーファの群れがいたことを思い出す。

それを感知したマップを見て、辿ればいい。

初めからこうすりゃ良かった。

無闇矢鱈に使うことはやめておこうと決めはしたが、誰が見ているわけでもないし。

 

 

「お……ショウコ、見えたぞ。」

「あ、ホンマや!あー……ようやくですねぇ……朝やのに疲れました……。」

「疲れているとこ悪いが……着いたら、報告と振り返りをしよう。ハンザさん達も心配しているかも知れない。」

「了解です!」

 

 

移動集落に近づくと、向こうからガーグァの引っ張る御者が見えた。

おじさんだ。

 

 

「おーい!!無事かー!!」

「無事でーす!」

「あー!よかったーーー!!」

 

 

オジサンの顔を見るのが久々な気がする。

つい昨晩には話したのにな。

内容の濃い狩猟だった。

 

 

「いやぁ!さすがソウジさん達だ!信号弾を見るまではハラハラしたが、良かったぜ!!」

「いえ、お迎えありがとうございます。」

「すまねぇな、信号弾を見た瞬間に走り出そうとしたんだけどよ。商人仲間に止められちまってなぁ。確かに、こんなだだっ広い草原じゃ、見失うかもしれねえしな。」

「確かに、大変だと思います。」

「そしたら村の見張りのやつがやたら目がいいもんで、ソウジさんたちを見つけてな?いやぁ、安心したぜ!」

 

 

俺たちも安心した。

おじさんの笑顔で、少しホッとする。

 

 

「……ソウジさん!?何か、焦げてねえか!?」

「ははは……雷撃にやられまして……。」

「うわぁ……考えたくもねぇわ……よく無事でいたなぁ……。」

 

 

俺もそう思います……。

 

 

…………。

 

 

……。

 

 

「失礼します、ハンザさん。」

「失礼します!」

「あぁ、入って楽にしてくれ。本当にご苦労だった。」

 

 

御者のおじさんに車に乗せてもらい、集落まで直行できた。

車に揺られるのが、意外と辛かった。

全身を動かされ、体中の痛みが強くなってしまった。

 

おかげで着いた頃にはなかなか歩き出せず。

御者の周りに集まっていた人々にたくさん心配されてしまった。

面目ない。

 

 

「辛そうだが、平気か?」

「あ、大丈夫です。外傷自体は殆ど無いです。」

「傷を甘く見ないほうがいい。よかったらもう一泊していくといい。出来得る限りのもてなしはしよう。」

「お言葉に甘えたいんですが……ギルドにすぐに報告したいこともありまして。今日、発ちます。」

「…………そうか。わかった。」

 

 

意外や、残念そうな顔を浮かべるハンザさん。

少し憂いを帯びた顔がまたかっこいい。

イケメンは何してもイケメンである。

 

 

「……ここから北に……どれだけかはちょっと分かりにくいんですが、ジンオウガが倒れていると思います。」

 

 

挨拶もそこそこに、報告に移る。

 

 

「おそらく、既に回収班が向かっているかと。」

「誘導などは必要だろうか。」

「多分必要ないと思います。あの人たち、そういうのを探すプロですから。」

「わかった。では、ギルドからの報告を待とう。……ムーファたちも、新しい草を食べさせなければならない。すぐにでも、移動を始める。」

 

 

昨日……というか昨晩移動して、もうすぐには、か。

せわしない。

 

なんて俺が心配顔だったからか、ハンザさんが話し始めた。

 

 

「……心配には及ばない。我々は放牧の民。移動には慣れている。それに、ソウジ殿、ショウコ殿が、あの雷狼竜を屠った。安心してまた生活できるというだけで、ありがたい。……礼を。」

「い、いやいや、ウチはそんな……。」

 

 

顔を赤くして手をパタパタとするショウコ。

イケメンパワー、炸裂。

芸能人を前にした主婦のごとし。

 

 

「……また、凶悪なヤツが出たら、教えて下さい。……ハンターが、必ず力になります。」

「あぁ。ワサドラギルドにも礼を伝えよう。素晴らしいハンターの派遣に、な。」

「あ、ありがとうございます。」

「……なぜソウジ殿が礼を言うのだ。……面白い。」

 

 

笑うハンザさん。

ニコッと笑顔。

いや、これでシスコンなんだから、神様もなかなかバランスを取っている。

 

……そういえば最近女神様とコンタクトしていないな。

いや、別にしたいわけではないけど。

 

 

「朝食を用意する。しばしの間だが、ゆっくり休むといい。」

「ありがとうございます。」

 

 

ショウコと礼を言い、そこからはしばらく歓談しながら朝食を食べた。

肉料理をメインにかなりの量を出してきて、正直言うとキツかった。

集落の人々が代わる代わる差し入れを持ってくるので、無下に断るわけにもいかない。

 

こうして俺とショウコは、満腹で御者に乗り込むのだった。

恐るべし、放牧の民。

 

 

* * * * * *

 

 

ガラガラガラガラ……。

 

 

「辺りを警戒しますが、とりあえず最短距離で行きましょう。」

「おぅよ!任しとけ!」

 

 

ガーグァ車の中で、俺とショウコがゆったりと座る。

だめだ、もう食えない。

 

 

「ものすごい量の食事でしたね……。」

「ショウコは少食だもんな……。」

 

 

結局食べきれない食事は、持ち帰ることになった。

 

スープ系は無理だとして、様々な肉料理……ムーファの腸詰めや骨付きのこんがり肉、根菜を甘辛く炒めたものまで、包んでくれた。

帰ったらまた美味しくいただくとしよう。

 

今は無理だけど。

腹がいっぱい。

 

 

「でも……あの族長さんのお願い、どうしましょうかね……。」

「あぁ……あれか。」

 

 

食事を取りながら、ハンザさんにとあるお願いをされた。

「もしハンズを見かけたら、一度こちらまで顔を出すよう伝えてほしい。」と伝言を頼まれたのだ。

 

もし見かけるも何も、おそらく今日中には顔を合わせるんだろうけど……。

 

 

「とりあえず……帰ったらハンズに事情を聞いてみるか。」

「そうですね。何か言いにくい事があるかも分かりませんし。」

「じゃあ、ショウコ。ジンオウガの狩猟の振り返りをしておこう。」

「はいっ!」

 

 

そこからひとまず頼まれごとを忘れ、ショウコとジンオウガ戦の反省を始めた。

 

成果としては、明確なピンチに陥ったが、勝つことができたということ。

そして対応を早くすることで、移動集落の人たちへの直接の被害がなかったことが挙げられた。

 

課題としては、まずやはり油断。

そんなつもりは無くても、俺たち二人で何処か「ディノバルドよりは遅いな」などと考えていた。

そして指示が遅れ、ショウコの回避が遅れ、俺の負傷に繋がった。

慢心……しないと誓っていても、してしまった。

これは大いに反省である。

 

 

「……すんません。ウチ、足引っ張ってもうて……。」

「そんなことはないぞ。ショウコが居なかったら、そもそも俺は死んでいる。狩りの際の動きは、そこ以外は完璧だったしな。」

 

 

そうなのだ。

ショウコは、今回、ダメージらしいダメージを食らっていない。

回避だけなら、正直セツヒトさんとかその辺りの領域にいる。

身体能力が高く、更に技術や読む力も付いてきた。

 

これはいい傾向だ。

 

 

「これからも、よろしくおねがいします、ショウコ。」

「いやいや、ウチこそ……。」

 

 

いや、本当にすごかったんだもん。

そりゃ褒めるよ。

 

 

「最後に……ウチから一つ、ええですか?」

「ああ、いいぞ。おじさん、まだ時間ありますよね?」

「ああ!ペースは早いが、まだあと3時間ってところだな!」

 

 

充分すぎる。

 

 

「ありがとうございます……で、ショウコの話は?」

「ええと……これは勘……なんかなぁ。外れてたら申し訳ないんですけど……。」

「いいぞ、そういう意見も大切だと思う。」

「じゃあ……ジンオウガ、何か今回、切羽詰まってました?」

「…………あぁ。確かに。俺にも、そう見えた。」

 

 

ショウコも同じことを思ったか。

うん、ちょっとおかしかった。

 

 

「うまく言えないんですけど……今までのウチの経験からして……大型って、こっちを舐めてかかってくるんです。ウチ、ちっこいし、力も無い。こう、こっちをもてあそぶ?みたいな。余裕……ともちゃうんですが。何か、そんなんが無かった、です。」

「…………こっちをただ捕食する対象にしか見ない、そんな雰囲気では無かったな。」

「そう!そうです!……始めから本気やったというか……ここでウチらを絶対に倒さんといかん!みたいな。そんな感じでした。」

「うーん……。」

 

 

理由を考えても分からない。

分からないが、違和感は感じる。

 

今までの狩猟の経験。

バサルモス……ティガレックス……ディノバルド……色んなモンスターを屠ってきたが、ジンオウガはその中でも賢い方だと思う。

なぜ撤退を選ばなかったのか。

そんな余裕は無かった……?

いやでもなあ。いくらでも出来ただろうに。

 

もちろん逃しはしないけど。

 

 

「……俺から、いいか?」

「あ、おじさん。どうぞ。」

 

 

二人で考え込んでいると、手綱を握るおじさんが会話に参加してきた。

何か予想がつくのだろうか。

 

 

「いやな?……ジンオウガの気持ちになってみちゃどうかなって思ってよ。」

「雷狼竜の?」

「ああ。」

 

 

モンスターの、気持ち。

考えたことも無かったけど。

 

 

「夜に現れたろ?ソウジさんのモンスターを見つける力は大したもんなのに、それを掻い潜って昼間は潜伏してたんだ。」

「はい。」

「相当慎重で、狡猾なやつだと思っていいよな。何せ、無双の狩人なんて呼ばれるやつだしな。」

「…………。」

 

 

俺もショウコも、黙って耳を傾ける。

 

 

「俺ら素人からしたら、ソウジさんやセツヒトさんみたいなハンターなんて、どんだけ強えか予想もつかねえが……誇り高い狡猾なモンスターならよ、そんなハンターを目の前にして……どう思うかってな。」

「…………ウチなら、逃げ出しますかねぇ……。」

「だろ?だけどジンオウガは自負がある。『俺が最強のモンスターだ!』ってな。」

「…………。」

「ソウジさんを見て、『ここでやらねぇといけねぇ!』って思ったんじゃねえの?俺は仕事柄、世間の色んな話を聞いてきたが……ティガレックスをソロで殺れるなんてヤツ、見たことも聞いたこともねぇぞ?」

 

 

なるほど。

おじさんが言いたいことは分かった。

 

相手は誇り高い無双の狩人、雷狼竜ジンオウガ。

だが生きるため、周到に夜間を選び、奇襲を試みようとした。

しかしそこに突如としてやってきた強者。

 

初めから本気を出す理由にはなるか。

俺がそんな強者として認識されたなら、だけど。

 

 

「……俺、そんな強くないですよ?」

「「…………。」」

「えっ!?何?ふたりとも黙って。」

 

 

急に静かにならないでほしい。

 

 

「ショウコの嬢ちゃん……おめぇの主は、とことん鈍いのなぁ。」

「ウチ、その辺もう諦めてます……。」

「何の話をしてるの二人で。」

 

 

蚊帳の外感。

二人で話を進めないでほしい。

 

……寂しくなっちゃうだろ!

 

 

「いいか、ソウジさん。この際だからはっきり言うけどよ。おめえもうちっと自覚したほうがいい!強えに決まってんだろ!このスットコドッコイ!!ソロでティガレックスやゴシャハギに挑むのはな、世間一般では自殺って言うんだよ!自殺!……それを、そんな平気な顔してやってのけるのは、強え以外何者でもねえっつーの!!」

「は、はぁ……。」

「あんたは明らかに強者!まちがいねぇ!それに周りをよく見てみろ!!……そんなやつを放っておくわけねぇだろうが!」

 

 

ショウコが照れている。

何でよ。

 

 

「ウチも、強くなったつもりです。でも、それはオトモとして、できる限りの強さですよ?……アイツの猛攻を負傷しながら避けまくる……何ならカウンターもかまして……そんなん出来る人、まずおらんですって!…………かっこよすぎます……(ボソッ)。」

 

 

最後に何を言ったか分からんかったが。

そうか。

 

俺も強くなったんだな……。

 

 

「だからよ、そんなソウジさんを前にして、ジンオウガも必死こいちまったんじゃねえかってな。あれだろ?倒れてからは割とあっさりトドメまでさせたんだろ?」

「はい……そ、そうです。」

「ならそういうことじゃねえか?……いやー、致命傷まで食らわせておいて、ジンオウガも悔しかったろうなー……っと、素人ながらに予想したわけだ。」

「なるほど……。」

 

 

筋は通る。

……まぁ、今回はそんな所で落ち着こう。

 

これ以上は、何か褒められ過ぎて、むず痒い。

 

 

「ショウコの嬢ちゃんも、もっとグイグイ行かねぇとな!!」

「ちょ、ちょっとおじさん!!なにゆうて―――」

「コイツに問題あるかと思ったが、おめえらもアレだ!もっと積極的に―――」

「も、もうっ、うっさい!!」

「わっ!!何するんだこら!!や、やめっ……ひ、ひひひひひひ!!」

 

 

ショウコが何故かおじさんに飛びつき、コチョコチョし始めた。

何か照れ隠しのようにも見える。

 

 

「ガー。」

「グァー。」

 

 

ガーグー達が鳴く。

それは……慌てているのか?

 

……まぁ、平和で何より。

 

 

その後、おじさんの手綱が大変なことになり、ガーグーたちが混乱する一幕もあったが。

 

無事にワサドラに帰り着くことができた。

 

 

眠いけど、これからギルドに報告に行こう。

 

 

もう一つ気になる事。

あの、赤い目。

 

 

……不気味だった。報告するに越したことはない。

 

俺とショウコはおじさんに礼を言い、ギルドに向かうのだった。

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