私はハイビスと言います。
お仕事は、今急成長中の村、ワサドラのハンターズギルドで、受付嬢をしてます。
……そうです!
全女の子の憧れ、ギルド受付嬢!
友達には心底羨ましがられます。
「そんなことないよ〜」とか返しつつ、内心は鼻高々!
だって筆記試験とかすごく難しかったですし、正直容姿が良くないと面接でキッパリ落とされる、とも聞いてました。
なので、合格できたときは……何かこう、人としても女として認められたような、そんな自己有用感に包まれました!
嬉しくて、涙を流したところまでは、本当に幸せでした。
……まぁ、仕事が始まってみれば、忙しすぎて未だに彼氏もできません。急成長中の村となればお仕事の量も増えます。
ま、まあそこはいいでしょう!
やりがいのある仕事だと思いますし?
まだまだ新人に毛が生えた程度の私は、一番大変な新人登録窓口にいるわけですけど!
でもそこで、金の卵を見つけるという、とても大切な業務を請け負っているんですから。
頑張りましょう、私!いつかイケメンハンターが並ぶ受付台に担当できる日を夢見て!
* * * * *
そうこうしている内に、ここで働いて数年が経ちました。
月日が立つのは早いですね、村もどんどん成長し、以前よりもさらに発展しております。
もはや村と呼んではいけないのでは……?
変なツッコミはさておき。
どうしましょう、私も最早中堅クラスです。
流石に部署の変更を申し出ておりますが、上司や先輩からは、
「さすがハイビスくんだね!的確にハンターの実力を加味して、対応する手腕。私も鼻が高いよ!」
「ハイビスすごいよ。私そこまで新人に細かにケアしたり、アドバイスしたりできないもん。」
と言われます。
いや、嬉しいんです。嬉しいんですけどね。
何というか、自分で言うのもアレですが、私有能な方らしく。
ギルド内どころか村の上役からも、発展に貢献している一人として扱われてます。
……困りました。
これでは私のイケメンゲット玉の輿寿退社計画が潰れそうです。
未だに、というか本格的に「ハンター登録」の部署の敏腕受付嬢としてやっております。
……お給料もかなり上がって、なかなか文句も言えません……!
新人さんって見ていてハラハラするんです。
私が一昨年から提案して実行に移った、新人育成講習会。かなり好評を博しました。
自分が受け持ったハンターさんが死ぬのは、悲しい連絡を貰うのは、懲り懲りなんです。
ましてや新人さんは、そうなってしまう確率が高いわけで……
何とかしたいと思って企画、提案をしたら、うまくいってしまいました。
おかげで、ギルド内でも盤石の地位を築いております。
しかも、育ったハンターさんはここには来ません。
イケメンの方なんて、先輩や後輩がゲットして掻っ攫う始末です。
今日は朝一から受付です。
……私、新人受付担当のまま、独身を貫くのでは……。
ですが仕事は仕事。ハンター志望の方に罪はありません。
今日も今日とて、業務を遂行していきましょう。
* * * * *
「ハンターの登録に来ました。」
早速いらっしゃいました。笑顔が素敵な方です。
しかもイケメンさんですよ!朝イチからラッキーです!
真っ直ぐここに来られたということは、間違いなくハンター志望の方でしょう。
「こんにちは!ハンターの登録ですね?」
「は、はい。」
堂々とされたかと思っていたら、急に新人らしい返事が返ってきました。
うんうん、始めは緊張しますよね!
「それでは、こちらをご記入下さい。代筆や代読は必要ですか?」
「多分大丈夫です。…もし必要ならお願いします。」
「わかりました!」
あちらは初めての経験。
私もなるべく笑顔で対応です。
しかし、とてもきれいな字……まるでお手本のようですね。
装備も一式揃えてきてます。合格!
武器も見たかったのですが、まぁ持ってきてないというケースは、ままあります。
「はい!ありがとうございます。きれいな字でとても読みやすいです!」
褒めるところは褒めます。これ、大事です。
この方、なんとか頑張りたいという空気がビシバシ感じられます。
少しでも自信をつけてあげて、モチベーションを維持させるのが良いタイプだと思います。
名前は「ソウジ」さんですね。
筋肉の付き方もとてもしなやかです。うん、この方は伸びますよ!
いけないいけない、業務をきちんとこなしましょう。
「ソウジさん……ですね。ハンターズギルドでは、その方にあったクエストを紹介・斡旋し、ハンターの方々と依頼主が同時に笑顔になれるよう、お手伝いをする機関です。そのため、ハンターとなられた皆さんには、必ずこうして簡単な面接を行っています。たくさん質問しますが、よろしいですか?」
「はい、大丈夫です。」
「それではよろしくお願いします!」
私の予想ではこのソウジさんという方、村付きのハンターだった可能性が高いです。
しかも即戦力も狙えそうなレベルだと睨みました!
でも、自信が無さ気なのは気になりますね。
面接で見極めましょう。
「答えにくい質問は、お答えいただかなくて大丈夫ですよ。ではまず、ご出身は?」
「えと、覚えが無くて……。」
ん?覚えがない?……つまり隠したいということでしょうか。それとも記憶喪失パターン?
「……記憶があやふやということですか?……では、得意な武器種やハンタースキルなどはございますか?」
「ぶ、武器ですか?ちょっとよくわからなくて……。」
ちょっと待って下さい、下方修正しましょう。
武器も知らないとなると、全く話が変わってきますよ!
「……では、以前なされていたお仕事などは……?」
「えと、資材管理です。クライアントに資材等物品を納品する業務の傍ら、そのシステムの構築や改善、現地の担当者との交渉など、あらゆる部門で仕事を行ってきました。」
えっと……よくわからないです!
クライアント?システム?何を仰っているのか、良くわかりません!
というかこの方そのものが良くわかりません!
「な、何かしらの商いを行っていた、ということですよね?」
「そ、そうです。」
フォロー成功です。
……おかしいですね。私、自慢じゃありませんが、ここ最近は目も鍛えられてきたのか、ハンターさんの腕の目利きにはかなりの自信があります。
ですがこのソウジさん。全く経験に当てはまりません。
参りました。
雰囲気というか、身に纏う空気は明らかに強者なんです。
でも受け答えは、素人さん丸出しです。
頭が混乱してきました……。私、見る目には自信があったのになぁ……。
* * * * * *
結局、面接では何もわかりませんでした。
正確に言えば、何も分からないことが分かりました。
受付嬢失格です、こんな方、どうやって報告を上げればよろしいのでしょうか。
「さようなら。」と、切り捨てることもできます。
でも違うんです。
私の第六感が、この方を逃してはならないと、警鐘を鳴らすのです。
……直感を信じましょう。
ハンターに登録後、見極めも兼ねて、講習会に参加してもらいます。
まさか自分が作った講習会制度が、このように役立つとは……やっておいてよかったですね。
その後、ハンターになる危険性や講習会についてお話して、ソウジさんにはお帰りいただきました。
明日また来られるようですし、担当の教官に彼がどんなものだったか教えてもらいましょう。
教官の人、まだ決まってないんですよね。
どんな方なんでしょうか。
しかし、熱弁を振るい過ぎたでしょうか……ソウジさん、落ち込んで帰っていった様です。
若いのに醸し出す雰囲気が少しくたびれていて……何かうまく言えないんですが、おじさんを奮い立たせようと活を入れている気持ちでした。
明日も来てくれるといいのですが……お金貸しましたし、来るでしょう。真面目そうな方でしたから。
それに、整ったお顔は好印象でした。
もしハンターとしても一流なら、私コロッといってたかもしれませんね!
ソウジさんのギルドカードを眺めながら、自分の行く末を案じる自分。
新人さんの行く末も一緒に考えなければならないのが、この仕事の大変なとこです……。