モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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131怒り狂うモンスターと戦いましょう。

「ギャアアア!!」

「ぬおっ!!」

 

 

ドガァ!!

 

 

谷肌の岩に思い切り突進してぶつかるタマミツネ。

すんでのところで、まるで闘牛士のように避ける。

 

コイツ……こんな直線的な動きだったか?

 

 

「グゥゥゥ…………ガァアッ!!グァァァァ!!」

「くっ……そ!!」

 

 

首を振り回し、体を捻り、尻尾を叩きつけ…………。

 

無茶苦茶だ。

あの流麗な動きは、見る影もない。

ただ俺を殺すために。

形振りなど構っていない。

そんな攻撃。

 

 

「ギャアアア!!」

「ま……じか!!」

 

 

ギィン!!

 

 

シュバッ!!ズザン!!

 

 

「ギャア!!……グゥゥゥ…………。」

 

 

振り向きざまにのしかかってきたタマミツネに、何とか回避攻撃を入れる。

一応の反撃を試みたが……効いている様子は微塵もない。

 

 

「…………どうしたんだよ、お前。」

 

 

答えるわけもない質問を投げかけてみるも、もちろん返答は無かった。

 

 

…………。

 

 

タマミツネとの戦闘が始まってすぐ。

パターンとして、まずは咆哮。

そしてグルグルと回ってからの泡放出……と読んだ。

 

だがタマミツネは、一心不乱に突進をかましてきた。

予想外の事態だったが、ギリギリのところで回避。

 

その後も予想外は続いた。

 

泡狐竜の名前が疑わしくなるほどには、ヤツは全く泡を吐かなかった。

まるでティガレックスの様に、猪突猛進なモンスターになっていた。

 

…………赤い目の影響、なのかもしれないな。

 

動きが単純になっただけならまだ良い。

…………明らかに、タマミツネの攻撃力が増していた。

水しぶきの上がり方、周囲の破壊具合……さっきやりあった時とは、全く違う。

 

強くなっている。

 

賢くなっている、とか、俺との戦いに慣れてきている、という訳ではなく。

単純なパワーが上がっている。

 

 

(……別のモンスターとして狩猟した方がいい……。)

 

 

俺の中で読み切っていた、タマミツネの動きや攻撃パターン。

一旦リセットした。

興奮し、我を失っているような、そんな様子。

……あの黒い霧?煙?が原因なのだと思う。

何となくだけど。

 

何故なら。

 

 

(あの煙吸ってから……調子が悪い……!!)

 

 

俺も、霧を吸ってから体が重い。

何度か接近した時、吸い込んでしまった。

 

体が重くなり、体力も無くなってきている気がする。

毒か何かの類だろうか。

 

タマミツネも、苦しんでいるのかもしれない。

何故かアイツはパワーアップしているわけだけど。

 

 

「グァウ!!」

「やべっ!!」

 

 

ガキン!!

 

 

その顎先を開き、噛みついてくるタマミツネ。

思わず双剣で防ぐ。

 

 

ギギギギギギギギ…………!

 

 

「グゥゥゥゥゥ!!!」

「ぬっ……ぅああああああ!!」

 

 

ギャン!!

 

ズザン!!

 

 

「ギャァァァァァァ!!!」

「……よっと……。」

 

 

バッ。

 

 

牙と剣との鍔迫り合い。

勝ったのは、俺の方。

はっきり言って、大型にパワーで勝つなんて無理も無理。

 

なので、いなした。

 

剣先を地に向けて、相手の力をわざと受ける。

その後、刀を返して、目を狙った。

そして、バックステップで退避。

 

タマミツネの赤いその目からは、血がダラダラと流れている。

 

 

「グァァァァ…………。」

「くっ……。」

 

 

また放出される、黒い霧。

先程の鍔迫り合いで、かなり吸い込んでしまった。

 

俺の体は大丈夫……ではない。

うまく力も入らないし、今回避攻撃をしろと言われたら、正直しんどい。

 

風邪を引いたかのようにだるい。

 

そんな感じ。

 

 

(熱が出ても出社を命じられた頃を思い出すな……。)

 

 

どうでもいいことを考えてしまった。

 

あのクソ上司は、元気にしているだろうか。

是非ともこの霧を吸い込んで、寝込んでもらいたいものである。

 

閑話休題。

 

 

……タマミツネは、とても苦しげだ。

あの、どこか華麗な姿は、今は全く感じられない。

やっぱお前もキツイんだな……。

 

…………早く楽にしてやろう。

 

 

「…………っあぁぁぁあ!!!」

「グアァァッ!!」

 

 

タマミツネの爪先を狙う。

 

フリをして。

 

 

(狙いはこっち!!)

 

 

ズザン!!

 

 

「ギャアッ!!!」

 

 

前脚を狙って、タマミツネの首元に入り込む。

突然の俺の攻撃に、片脚を上げて避けるタマミツネ。

 

だが、それはフェイント。

俺はタマミツネの首から切りつけつつ、回転、跳躍した。

 

 

「うらぁっ!!」

 

 

ズザザザザザザザザザザン!!

 

ザシュッ!!

 

 

「グァァァァ…………!」

 

 

跳んだ後、頭部から背中、尻尾にかけて蹂躙。

背骨を渡るように、タマミツネを切り刻む。

 

基本、俺の攻撃はカウンタースタイル。

今のように自分から仕掛けることは、特に序盤ではあまりない。

だが、今のタマミツネは先程とは違う。

猛攻に次ぐ猛攻を仕掛けてくる。

 

猛攻を防ぐためには。

 

…………俺から行くしかない。

 

だるい体。

回避攻撃は正直自信がない。

 

 

「ガァッ!!」

 

 

ズドォン!

 

 

タマミツネが上半身を持ち上げて、巨体を沼地に叩きつける。

だが、遅い。

いや、先程より速度は上がってはいるのだが。

 

 

(動きを読んで……!!)

 

 

ズザン!ザシュッ!

 

ズザザザザザザン!!

 

 

(鬼人化……乱舞!!)

 

 

「ギャァァァァァ!!」

 

 

のしかかりを仕掛けて、スキだらけの側部。

そこに、渾身の力を込めて剣撃を叩き込む。

 

 

「…………グゥゥゥ…………。」

「効いてないなぁ……。」

 

 

バシャッ。

 

 

バックステップで距離を取る。

 

……力が乗り切っていない。

タマミツネに反応することはできている。

かなり速度は上がっているが、反応は可能。

集中を高めれば、おそらくは討伐できる。

 

…………だが、肝心のパワーが乗らない。

俺が、弱くなっている気がする。

 

 

「グァァァァ…………!」

 

 

ブワッ……。

 

 

(アレか……。)

 

 

黒い霧。

もはやタマミツネの体どころか、周囲一帯までその霧は広がりつつある。

俺も、ぶっちゃけ吸い込みまくっていると思う。

 

……何とか打開しなければ。

 

再び仕掛けようと、右足を踏み出した。

その時。

 

 

ガクッ。

 

 

(あれ……?)

 

 

バシャッ。

 

 

膝を付きそうになり、慌てて姿勢を立て直す。

 

 

(ち、力が……抜けて……!?)

 

 

意識すればするほど、自分が思うように動かない。

 

 

(ヤバい!ヤバイヤバイヤバイ!!!)

 

 

タマミツネが迫ってくる。

その巨体を大きく振り上げ、押し潰してくる。

 

 

「こなくそっ………!!」

「グアァァァァ!!」

 

 

タマミツネのそれとは思えないほどの叫び声を下に聞きながら。

 

 

ドガァ!!

 

 

「ぐぁ!!!!」

 

 

ドン!バシャッ!!

 

バシャバシャ……ドン!!

 

 

俺は吹っ飛ばされ、谷の壁にぶち当たった。

 

 

「ぐはっ……ゲホッ!ゲホッ!……っつぅ……!」

 

 

背中をモロに壁に当て、呼吸がままならない。

回らない頭を必死に使って、状況の確認を行う。

 

 

(双剣……無い……怪我……足……よし……腕……右……いかれた……!)

 

 

思わず頭をかばって振り上げた双剣。

そしてそれを支えた腕。

 

そのうち、右腕が、おそらく折れた。

 

 

(呼吸……!!)

 

 

「ひゅうう!!はぁぁぁぁぁぁ………。」

 

 

教官に習った呼吸法で、無理矢理息を整える。

こんな苦しさ、教官の鳩尾パンチよりは楽だ。

 

多少痛むが……大丈夫だ。

 

 

(双剣は……?)

 

 

一瞬で状況判断を終え、息を整えつつ、目を配る。

タマミツネの後方に落ちている俺の武器。

二本とも仲良く地面に突き刺さっていた。

 

 

「グァァァァァァ……。」

 

 

そんな俺の様子を見て、なおも攻撃を続けようとするタマミツネ。

 

……絶体絶命……という状況に追い込まれてしまった。

……何だ、すごく落ち着いているな、俺。

これぐらいのピンチ、いくらでもあったからなぁ。

腕までいかれたのは、久々だけど。

 

 

「……タマミツネ……すまないが、まだ終わってない。」

「グゥゥゥゥゥ……。」

「ハンターってのは……しぶといんだよ!!」

 

 

バッ!!

 

 

振り向いた後、全力ダッシュ。

足は無事だ。

 

だが、こんな鈍足ではすぐタマミツネに追いつかれてしまう。

 

 

「ギャァァァァァァ!!!」

 

 

ザバァッ!!

 

 

地に体を付け、蛇のように俺を追いかけるタマミツネ。

 

……()()

 

 

カチッ。

 

バリィ!!ビリビリビリィ!!!

 

 

「ギャァァァァァァァ!?」

「おっけー……いってぇ……!」

 

 

伝家の宝刀!!ノーモーショントラップ!!

……我ながらダサいネーミングと技である……。

 

だが、効果は覿面だ。

引っ掛からなかったモンスターなど、いない。

 

 

(武器武器……。)

 

 

痛む体と右腕を庇いながらも、素早く武器を回収する。

 

 

シュッ……シュッ……。

 

ぺタペタ……バシャッ……。

 

 

(さて……。)

 

 

さっと双剣の切れ味を戻し、回復薬を貼ってぶっかける。

我ながら手慣れたものである。

 

シビレ罠はあと7秒ぐらいか?

 

 

……一瞬でいい。

考えろ。

この状態でこいつに敵うのか。

 

いや。敵うかどうか、ではない。

 

多分だけど、ここでやらないといけない気がする。

この黒い霧。

ここで断ち切らないといけない。

そんな気がする。

女神様が言っていたのは……多分そういうことなんだろう。

 

だから、この状態で戦う。

これは確定。

 

 

(よりにもよって右手とか、笑えん。)

 

 

笑えないはずなのに。

なぜこんなにも冷静なのだろうか。

 

 

(……やることが決まっているからか。)

 

 

肚を決める。

決めた。

 

 

「ギャァァ!!……グァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

怒りの咆哮が聞こえる。

ついに罠の効力が切れたか。

 

 

「……怒ってるよな?……だろうなぁ。さて……。」

「グゥゥゥゥゥ………。」

「……いくぞ。」

 

 

ジャキン!

 

 

左手はしっかりと。

右手はやんわりと。

体に力はあまり入らない。

激痛が走る中、双剣を握る。

 

 

「折れた腕でどこまでやれるか分からんが……やるか。」

「ギャァァァァァ!!!」

 

 

怒るタマミツネを正面に捉え。

 

俺はダランと双剣を構えたのだった。

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