モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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137復帰しましょう。

タマミツネ討伐から10日ほど経過した。

 

怪我の治癒の経過は順調。

医者からも「あなた人間ですか。」と太鼓判を押されたほどであった。

3日開けてもう一度診察に来るように言われたが、日常生活に支障はないらしい。

ショウコに三角巾が取れたことを伝えると、化け物を見るような目で見られた。

「ご主人様はやっぱおかしいわ……。」と言われた。

 

褒め言葉と受け取っておこう。

だって治りが早くて悪いことなんてないし。

というかこの世界の回復薬の効き目がエグすぎるんだと思う。

 

 

目の方は、未だに赤いままである。

だがそもそも、これのせいで体調に異変をきたしているわけでもない。

プラスもないがマイナスもない。

つまり普通。

そのまま自己流で経過観察することにした。

俺しか分からないわけで、医者に相談しようにもできないし。

 

 

また、骨折したままであるが、ハイビスさんに誘われた訓練場の見学?も行った。

…………見学と言えば聞こえはいいが、完全に教えに行ったようなものであった。

 

まず訓練所に入ると、周囲がざわついた。

 

「あれが例の……。」「マジかよ……。」みたいな反応。

腫れ物を扱うかの様にベンチに案内された俺は、とりあえず初心者ハンターたちを観察した。

 

常に視線は感じていたが、スキル「気にしない」を発動した俺には問題はなかった。

 

そんなハンターたちの中の一人、双剣を扱う一人の女性ハンターを発見。

ハンズであった。

あれ?太刀とか大剣使ってなかったっけ?と思ったが、結構色々やるタイプらしい。

迷惑かとも思ったが、近くに行って観察した。

…………なるほど。

力任せに訓練所名物のからくり蛙を斬っては刃をボロボロに。

そして、また研いでは斬りつけて……の繰り返し。

 

大変そうである。

 

人に教えられるほど偉いわけではないが、多少アドバイス程度ならできるだろうと、声をかけた。

 

 

「あ、ハンズ。ちょっといいか。」

「は、はい!!」

「少し見ていたが……力が入り過ぎだと思う。」

「力が……?」

「うん。その武器の斬れ味だと、この蛙には刃が立たないだろ?きっちりクリティカルに当てる必要がある。」

「く、クリティカル……。」

「言葉では難しいんだけど……。」

 

 

そう言って、訓練所に備え付けの安い双剣を手にする。

…………懐かしいなぁ。俺もこれを何本もダメにしては、「刃こぼれがしなくなるまで斬りつけるんだ!!」って教官に言われたっけ……。

言われた当時は意味がわからんかった。

いや、今も意味がわからんけど。

斬りつけたら刃はこぼれるわけで。

なんて楯突いたら、滝登り+地獄の装備ランニングが追加された。

 

いい思い出である。

 

 

とにかく、目の前でやってみることにした。

 

 

「一回やってみるわ。」

「えっ!?そ、ソウジさん怪我してますよ!?」

「いやまぁ、左手でやるだけだし。無茶したら相棒(ショウコ)に怒られるし、手は抜くよ。」

「は、はぁ……。」

「じゃあ……。」

 

 

返事もそこそこに集中し、片手による連撃を見舞った。

 

からくり蛙は、そのまんまモンスターを模している。

ヨツミワドウの弱点そのまま、頭部や前脚、首や胴回りが柔らかい。

双剣が狙うなら、前足の特に先端……爪の間とか、腹部の中心から少し外れた左右の2cmぐらいのところとか……。

まぁ狙ってもなかなか難しい部分を捉える必要がある。

 

そこを分かりやすく、丁寧に斬ってみることにした。

 

 

ザザザザン!ザシュ!ザン!

 

ガタガタ!……ボン!!

 

………シュー…………。

 

 

俺の左手の連撃で、壊れたかのようにうなだれるからくり蛙。

ある一定のダメージを与えると起こるリアクション。

これができるかどうかが、教官との訓練の目安であった。

 

久々だったし左手一本で不安だったものの、何とかお手本を見せることに成功した。

 

 

「……あー、よかった。アドバイスしといてできないとかかっこ悪すぎる……。とまぁこんなふうに―――」

「す、すごい!!」

「へ?」

 

 

ハンズが目をキラキラさせて俺を見てきた。

そこからは大変だった。

 

どうやってやったのか、クリティカルとは何か、弱点はどう攻撃すればいいのか、などなど。

両手が使えないものの、身振り手振りも交えて教えてあげた。

そういえばハンズは非常に熱心な子だった。

 

力み過ぎれば、腕っぷしばかりが太くなるばかりである。

兄のハンザさんに殺されかねない。

それに、女性として太い腕いかがなものかと思うので、できる限り俺が大切にする脱力について伝えてあげた。

 

 

「…………こんな感じかな。また明日も来るから、頑張って。」

「はい!ありがとうございました!!」

 

 

お礼を言われて照れくさかった。

相当飲み込みはいい。

すぐできるだろう。

 

そしてハンズを教えた後、来るわ来るわ「見てほしい」の嵐。

俺は双剣以外は専門外だと始めに断りを入れたのだが、「じゃあ双剣を見てほしいです!」と言われ、5〜6人程にアドバイスを送った。

 

じゃあ、って何だよ……とは思ったが、ツッコミはしなかった。

 

初日はそんな感じで終わり、その後二日目、三日目と同じようにハンターたちと交流した。

仲良くなってきてからは、クエストの細かい話や俺に関する話題も増えてきた。

「いつもランチに行くハイビスさんとはどういうご関係なんですか!?」と言うハンズの質問には、思わず吹き出してしまった。

そのタイミングでハイビスさんが俺を呼びに来たものだから、あの人も間の悪いことである。

 

その場は適当にはぐらかし、昼食に向かった。

そりゃまあ毎日毎日一緒に飯食ってたら、そんな邪推も飛び出すわな……。

 

 

…………。

 

 

ハイビスさんとは、あの日以降お昼を共にした。

イシザキ亭だけでなく、色んな所を回ってみたが、最終的にはやっぱりイシザキ亭に落ち着いてしまった。

まぁおかげでこの町のランチ事情には、少し詳しくなった。

 

 

「訓練所の方々と仲良くされているようで、何よりです。」

「ギフトのこととか、色々伝えられないこともあるので気をつけてますが……俺もいい勉強になってます。」

「ええ。皆さん、ソウジさんに会いたがってました。ソウジさんも勉強になったのなら何よりです。」

 

 

ハイビスさんから教えてもらった話では、俺はかなりの速さでハンターランクをあげた急成長株として注目されているらしい。

「今更知ったんですか!?」というハイビスさんの驚き顔は忘れられない。

 

 

「ちなみに……訓練所に……へ、変な方とかいらっしゃいませんでしたよね?」

「あー……コアなファンの方……みたいなのはいなかったと思います。」

「よかったです……。」

「ハンズなんて、めちゃくちゃ覚えが早くて、教えていて楽しかったですよ。」

「あの子は地力がありますからね。上達も早いでしょう。」

 

 

お兄さんのハンザさんが、体術で敵うものはいなかったとか言っていたことを思い出した。

見た目は完全にその辺?の女子大生なのだが。

ハンターの強さと見た目は、ぶっちゃけ比例していない気がする。

セツヒトさんは細くてスタイルいいし、アイルーのトツバなんて、ちっこいのに、俺でも持つのに苦労しそうなハンマーを持っていた。

 

そんなハンターと力の関係を考察する時間もあるほどには、暇な毎日であった。

 

 

* * * * * *

 

 

ザシュ!ザザン!

 

 

「ギャァァァァァァ!!」

「ショウコ!」

「いけます!」

「よしっ!…………っと。」

 

 

カチッ。

 

ビリビリビリビリィ!

 

 

「ギャア……ガァ…………グァァ!!」

「ほれ!眠り!」

 

 

俺が仕掛けたシビレ罠にかかるリオレウス。

ショウコが麻酔玉を投げる。

たった2発で、モンスターは嘘のように眠り始めた。

 

 

「グォ………………zzz。」

「…………相変わらずすごい効き目だな…………。」

「眠ってます……よね?」

「…………ああ、多分大丈夫だ。」

 

 

リオレウスが、その巨体を横たえてスヤスヤと眠り始めた。

あんなに厳つかった顔も、こう見ると少し愛らしく見えてくる。

 

…………いや、尻を焼かれたし、愛らしくは見えないな。

 

 

「ご主人様、信号弾打ちますよー!」

「あぁ!頼む!」

 

 

ショウコが手際よく、クエスト終了の合図を発射する。

これでクエスト完了である。

 

 

 

あれからまた一週間ほど。

 

すっかり腕も良くなった俺は、リハビリ代わりにクエストに行くことにした。

採取や小型モンスターの討伐など、所謂低ランクのクエストである。

 

右腕も問題はなかったので、ようやくショウコの許可も降り、大型モンスターの狩猟に行くことができた。

 

 

「アンジャナフにリオレウス……これで一応、装備に必要な素材まであと一体……ですね。」

「まぁその一体が問題だけどな。」

 

 

ショウコと二人で行った2つのクエスト。

いずれも俺の新しい装備に必要な素材……モンスターの狩猟である。

 

アンジャナフにリオレウス……いずれも顔がめっちゃ怖かったが、無事に討伐できた。

 

 

アンジャナフは、見た目が完全に恐竜であった。

大型のモンスターは、大体別名が付いている。

火竜、斬竜、轟竜、泡狐竜……必ず最後に「竜」が付くので、なんとなく恐竜っぽいな、とは思っていたが。

アンジャナフの恐竜らしさは、もうそのまんまであった。

幼い頃に親に連れて行ってもらった博物館にアンジャナフの復元模型があったら、違和感があんまりなさそうである。

 

背中には羽、情報画面によればこれは飛ぶためのものではなく、体温調節したり威嚇に使ったりするものらしい。

そういう生態にも、爬虫類らしさを感じてしまった。

 

とはいえ、この世界のモンスターらしく、若干ファンタジーな部分も持ち合わせていた。

蛮顎竜という名前の通り、顎の力が凄まじく、本気を出すと口から炎のようなものが見えた。

実際の恐竜に火を扱うやつなんていないはずである。ファンタジー。

鼻の上に何かコブのようなものが現れたり、体色が赤く変化したり……まぁこの世界のモンスターらしいモンスターだった。

 

そして、正直言って俺と相性が良かった。

奇抜な攻め方をすることはほとんど無かったからである。

体の側面タックルや頭を地面に押し付けての突進、尻尾の薙ぎ払いや噛みつきなど。

今までのモンスターを思い出せば、結構ゴリ押しで倒せたと思う。

実際、ショウコと俺は、アンジャナフからほとんど距離をとらなかった。

シビレ罠にハメて眠らせるまでにかかった時間は3時間半ほど。

 

いい感じに狩猟ができたと思う。

こんな言い方、アンジャナフに失礼だと思うけど。

 

 

そしてリオレウス。

こいつがもう何というか、ザ・モンスターという感じだった。

羽を使って飛び、火球を飛ばし、空中で尻尾をサマーソルトし……。

「えっ?飛び過ぎじゃない?」と思うほどであった。

飛んでいれば、ぶっちゃけ双剣使いの俺にできることはない。

と、何も知らない俺ならば諦めていたかもしれない。

 

ところがどっこい、このクエストに行く前に、セツヒトさんからとあるアドバイスを頂いていた。

「閃光玉。とんでいるリオの、顔の前で炸裂させてみー?」と言われていたのだ。

試しにやってみたら、これがもう効果覿面。

申し訳ないと思えるほどに、リオレウスが空中から墜落するわするわ。

 

おかげでタコ殴りにさせてもらった。

 

流石に5~6個ほど食らった後、地に落ちることは無くなったが、それまでに翼を徹底的に破壊した。

長時間飛ぶことが難しくなったリオレウスの体力を徐々に削り、捕獲に至ったというのが大体の流れである。

 

しかし俺は一つ失敗した。

リオレウスの火球を避けたはいいが、お尻にその炎が付いてしまったのである。

あんまり熱いものだから、プチパニックになったが……その場で尻もちをついて事なきを得た。

その間リオレウスの気を引いてくれていたショウコには、感謝しか無い。

 

 

「お尻に火がついた瞬間、笑いをこらえながらリオレウスの正面に行ったウチを褒めてください。」

「はい、ありがとうございます。」

 

 

何ともアホな話であるが、少しでも火球がズレていたら、怪我していたかもしれない。

火竜恐るべし。

 

 

ちなみに、その2体を討伐したのはカクラニ火山。

以前行った採掘場の近くである。

 

 

* * * * * *

 

 

ショウコと俺はギルドに報告を済ませ、帰路についた。

途中セツヒトさんのところに寄り、閃光玉ハメのお礼を申し上げた。

お尻を焼かれた話をしたら、たいそう喜んでくれた。

ちくしょう。

 

 

そして宿では、ドールにいたく心配された。

 

 

「おしりにお薬塗ろうか?」

「いやいやいや!!自分で塗るから!!」

「ホント?」

「だってドール……自分が逆の立場になって俺に薬塗られたらどうする?」

「…………すごく恥ずかしい。」

「だろ?」

「でもソウジさんは大丈夫だよね?」

「いやいやいや!意味がわからん!」

 

 

ドールさんのハチャメチャ理論と格闘しながら、なんとかお尻は死守した。

中高生ぐらいの女の子に、尻に薬を塗ってもらうとか、恥ずかしいにもほどがあるだろう。

ちなみにショウコが「ウチが塗ります!」と言ってきたのは、スルーしておいた。

「ウチ、オトモやのに……。」などと意気消沈していたが、知ったことではない。

 

ぬりぬり。

 

 

さて。

 

 

俺の装備に必要なモンスターは、あと一体。

最難関……金獅子、ラージャンである。

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