モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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14行きつけのお店を見つけましょう。

宿の庭でドールに剣の振りを見てもらった後、俺は流石に疲れて部屋に戻っていた。

 

更に他の武器も試そうとしたのだが、ドールは仕事があるし、一時間も付き合わせて悪いことをした。

 

後でまた、お礼を伝えておこう。

 

 

「結局、開放条件は分からなかったな……。」

 

 

開放とは、片手剣の<操作方法>が完全に表示されていたことだ。

 

頭の中で<操作方法>内の技名を選択すると、どう動けば良いかがわかるのだ。

武器の扱いに関してド素人の俺でも、それなりに使えるようになる。

あんなに苦労していた斬り下ろしはおろか、様々な連撃に繋げられた。

ドール曰く「ここまで剣さばきがすごいと思ったのは初めて。」とのこと。

 

……自分でもよく分からないが、どうやら一端の剣士並みには武器を扱えることがわかった。

 

これは嬉しい。開放の条件はわからないが、これなら明日の講習会で無様な真似を晒さなくて済みそうだ。

 

 

「腹減った……。」

 

 

安心したら、急に腹の虫が悲鳴を上げた。

急激に動いたためか、体が栄養を摂れと唸っているだ。

 

備え付けのポットから水を飲む。

即座に体に吸収されていくのがわかる。喉も相当に乾いていた。

 

俺は遅めの昼食を取るべく、一式装備に着替えて飲食店に行くことにした。

 

途中、宿のおじいさんに会えたので、ドールが練習に付き合ってくれたことについて、詫びとお礼を伝えておいた。

 

「うちの子がお客さんの役に立てたなら何よりだよ。」と笑顔で言ってくれたのでよかった。

 

ついでにおすすめの店はないか尋ねると、「うちの飯には負けるがね。」と前置きをおいた上で、3つほど教えてもらえた。

 

もう一度お礼を伝えた後、その中の一つに向かうことにする。

 

 

* * * * * *

 

 

村の中は、かなりの人でにぎわっていた。

 

村の住人だけでなく、行商人やハンター、なんだかよくわからない人たちがわんさかいて、正直驚いた。

 

と同時に、「もう村と言い張るのは無謀では?」と、何度目になるかわからない突っ込みをつぶやく。

 

それぐらいにはにぎわっていた。

 

……いい。活気にあふれているし、なんなら人間ではなさそうな種族の人たちまでいる。

 

自分が異世界にいる、と改めて認識させてくれる。

わくわくするじゃないか。

 

ひげを蓄えた小さいおじさんや、耳が尖った美人、二足歩行する猫耳の人まで、多種多様な人種が入り混じっている。

ていうか猫耳の人種多いな!

 

マップの現在地を確認しながら、人混みの中を潜って、めあての店を目指す。

 

 

「イシザキ亭……イシザキ亭……あ、あれか?」

 

 

大通りから脇にそれた小道。住宅しかない中、一軒だけ木の看板が、入口に下がっている。看板には、無骨に「イシザキ」とだけ書かれている。

 

中々入るのに勇気のいる店だが、思い切ってドアを開けてみた。

 

ドアには鐘がかかっていて、うるさくはない程度の音が店内に響いた。

客はゼロ。小さな窓から少し中は見えたのだが、やはり客は誰もいないようだ。

 

 

「ご、ごめんくださーい。」

 

 

静かな店内に俺の声が響く。奥からは食欲をそそる香りが漂っている。

右手にはカウンター席が並び、左手には上品な木製の机と椅子が5セット程。どれもデザインが洒落ていて、落ち着く雰囲気だ。

 

きょろきょろしていると、お店の人であろう女性が、奥からやってきた。

 

 

「あ、いらっしゃい!ちょっと!お客さんだよ!」

「どうも。やっていますか。」

「絶賛営業中だよ!好きな席に座ってねー!」

 

 

奥から出てきたのは、20代後半位の快活な女性だった。

厨房にいる人間に呼びかけていたので、まだ人がいるのだう。

口ぶりから旦那さんだろう。

 

俺はカウンターに腰掛けることにした。なぜならカウンターには、見たこともない植物やスパイスが、瓶の中に入ってずらりと並んでいたからだ。

前の世界でカレーをスパイスから作っていた俺としては、興味がある。

 

奥さんはそれからメニュー表を持ってきた。

あるじゃないか、メニュー表。

 

……文字だらけでどれがいいかわからない。

写真などはまだないのかな?

 

 

「すいません。」

「はーい、お決まりですか?」

 

 

カウンター越しに、俺に水を出しながら尋ねてくる。

奥さん、めちゃくちゃ美人さんだ。右の泣きぼくろが非常に色っぽい。肩にかかる程度のウェーブがかかった髪が、とても良く似合っている。

 

しかも……で、でかい。カウンターにアレが乗っている……!

 

オレンジ色のエプロン、その奥にはたいそう立派な山二ツ。

 

 

「…………えーと、おすすめはありますか?」

 

 

いかんいかん。俺は見た目は若いかもしれないが、中身はやはりおっさんのままだ。

こういう目線に女性は敏感だと聞く。早々に目線をメニュー表に戻し、おすすめを聞いてみる。

 

 

「今は、そうねぇ。ガーグァの卵のオムライスとか……キノコとリノプロ肉のソテーがおすすめだよ!」

「じゃあ、その二つください!」

 

 

いかん、聞いただけでよだれが出そうだ。

「あいよ!」と江戸っ子のような返事をした奥さんは、厨房に行って、旦那さんに注文を伝えていた。

 

 

一瞬旦那さんが見えたが、スキンヘッドで腕が丸太のようないかつい男性だった。

 

さっきのエロ目線がバレたら、俺殺されるんじゃないか。

 

自重しよう。目立たないように……。

 

 

* * * * * *

 

 

 

「うまぁぁぁぁぁい!!!!」

 

 

目立たないなんて無理でした。

 

 

何このオムライス、ふっわふわの半熟卵とデミグラスソースが合うにもほどがある。

ライスはケチャップライスではなく、少しスパイスの効いたピラフのような味わいで、ナッツのような、食感のよい食材がアクセントになっている。

そのライスが、濃厚な卵とソースに合う。合い過ぎ。

 

それにこのキノコ!何だこれ、こんな食感初めて!

リノプロ肉?ってやつも、めっちゃうまい。

歯ごたえがあるのにぷりぷりで嚙み切りやすく、アツアツの肉汁がキノコとばっちりマッチングしている!

味付けはシンプルなのになあ……素材もよく、下ごしらえも丁寧に行われている。

 

 

「あはははは!そうだろ!ウチの自慢の味さ!」

「いやこれめっちゃうまいなにこれうま」

 

 

返事も忘れるほど熱中した俺は、10分程で完食してしまった。

量はかなりあったのだが、空腹もあいまって、一瞬で食べきってしまった。

 

 

「……こんなうまい飯、初めてです!」

「嬉しいね、アイツにも伝えておくよ。」

 

 

アイツとは、厨房の旦那さんのことだろうか。

ものすごい腕の太さで、ものすごくおいしい料理。

 

かっこいいわぁ……。

 

 

「でもねえ、最近お客がめっきり減っちゃって。困ってるんだよ。」

「確かにお客さん、俺だけですもんね。」

 

 

隠れた名店を見つけた気分でいたが、この昼飯時に誰もいないってどうなんだろう。

 

 

「実はね……大通りの方に、街で人気の大手のレストランが新店舗出しちゃってさ。味は絶対に負けてないんだけど、値段がちょいとあちらの方が安いんだ。」

「な、なるほど……。」

 

 

通い詰めて通い詰めて、全メニュー制覇したいと思うほどには、この店はうまかった。

だがこのままでは、店が無くなってしまうのではないか。

それは困る。

 

 

「奥さん!俺この店の味好きです。通い詰めますよ。」

「あら、ありがたいねぇ。常連さん出来上がり〜♪」

 

 

また来よう、ここはとにかく美味かった。

別に奥さんが気になるわけではないぞ。繰り返す、気になるわけではない。

 

そんなことを自分に言い聞かせていると、不意にこんなことを言われてしまった。

 

 

「ちなみに!私は、『奥さん』じゃあないよ?」

「へ?」

「奥にいるのは兄貴、よく間違われるんだよね〜。こんな店だけど、またよろしくね!若いの!」

 

 

背中をバンっと叩かれた。

 

めっちゃ痛い。

痛いけど、なんだろうこの気持ち。

 

おっさん心に刺さる。

このお胸の大きい気さくなお姉さんの感じ。

 

 

「……ごちそうさまでした。」

「また来てね!待ってるよ〜。」

 

 

笑顔で見送るお姉さん。

おっさんがキャバクラにハマる気持ちがわかった気がする……。

 

……また来よう。

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