モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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140森の奥まで行きましょう。

毎度毎度誤字報告すみません……なぜあんなにも見直して間違えるのか……。

とてもありがたいです。感謝申し上げます。

 

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農家の人、と言われて。

 

まず俺が想像するのは、前世の祖父である。

 

茶色いズボンに黒い長靴、夏はランニングシャツ、冬は正直ダサいブルゾンを着こなし。

何とも言えないデザインの帽子をかぶり、首にはタオル。

 

トラクターや軽トラをブンブン乗り回し、汗と泥にまみれた手はシワシワ。

芋焼酎をかっくらうように飲む、とにかくせっかちな農家のおじいちゃん。

 

それが俺の祖父であり、農家の人のイメージでもあった。

 

 

 

今回のクエストの依頼文にあった依頼主は、南部農家主の娘、とだけ。

だから、多分農家の女性、というイメージが強く先行していたのだろう。

正直まだ、目の前の女性と農村というイメージが結びつかない。

 

 

「あらあら、驚かせてしまいましたかしら……申し訳ありません。最初に名乗ればよかったですね。」

「いえいえいえ!!滅相もない!すみません、こちらこそ全く気づかず!」

「あらあらあら、頭を上げてくださいな。ふふふ、面白い方ですね、ソウジさん。」

 

 

ふんわりと笑う女性。

ファッショナブルな格好を颯爽と着こなす都会的な姿と、眼鏡をかけた知的な印象が、どうしても依頼主の方とは結びつかなかった。

まさか、この方がイパスさんだとは。

 

 

「……重ねて、申し訳ありませんでした。気付かずに、取り乱してしまいまして……。」

「とんでも無いです。えぇ、自己紹介が遅れましたね。」

 

 

なるほど、だからずっと俺たちの相手をしていたのか。

あちらからしたら、どうして話をしないのだろう、と不思議に思っていたのだろう。

 

……自己紹介、これ大事。

 

 

「……で、では、依頼についてお話を聞いてもよろしいですか?」

「はい。それでは……どこからお話しましょうか……。」

 

 

少し思案顔のイパスさん。

美人で知的で大変おモテになるのでは、と推測できる。

思い込みはいけないよ、俺。

反省しましょう。

 

 

「少し長くなりますが、よろしいでしょうか。」

「はい。」

「では……私の父、キタバは、根っからの農夫でして。我々連合は合議制をとっているのですが、全会一致で長に指名されたにも関わらず、全てを私に一任してしまいまして……。」

「……。」

 

 

な、何の話だ?

ま、まぁいいや。黙って聞こう。

 

 

「父は、この一帯では有名でして。農地改革や品種改良まで手ずから行い、ここ首都北部農産地を更に発展させました。そちらでは南部農産地、と言うんでしたね。……体も丈夫では無い私に、何かお手伝いできることがあるならと、こちらの業務に携わる毎日を送っておりました。父は変わらず、農作業に精を出し、たまに私にアドバイスをする程度。……そんな日々を長らく送ってまいりました。」

「は、はぁ。」

「そして一月ほど前……父が倒れました。」

「えっ。」

 

 

よくわからん話が、急にシリアスになった。

……どういう展開になるんだこれ。

 

 

「……原因は、その時は不明でした。ただお医者様の話では……凶悪すぎるモンスターを見て、自我を保てなくなったハンターの症状に似ている、と……。」

「……。」

 

 

なるほど。

聞いたことはある。

狩猟中、狩場に強力なモンスターが乱入。

命は助かったものの、それがトラウマになってハンターを引退する、という話。

 

俺だって、初めてバサルモスやディノバルドと対峙した時なんて、どれだけ怖かったか。

 

すこし目を潤ませて話す様子は、ちょっとだけ辛そうだ。

俺が心配そうに見つめていると、イパスさんはそれを察した。

 

 

「あ……すみません。……幸い、父は回復には向かっております。ご安心くださいね?……おそらく、以前のように仕事をするのは難しいでしょうけど……。」

「……命があってこそ、です。モンスターに出遭ってしまった、というのなら、そこをまず喜ぶべきかと。」

「……ええ、そうですね。ありがとうございます。……本題に入りますね?」

 

 

ゆっくりと、だがはっきりと、今回の話の前置きを話してくれたイパスさん。

のんびりした様子の中にも、平穏ではいられなかった様子が見てとれた。

俺の励ましにもならない言葉に、感謝を返してくれた。

 

 

「ここにも、一応下位ながら、村付きのハンターがおります。お願いして、父がいた農地の奥、大森林の入り口に調査をお願いしました。」

「……もしかして、そこに?」

「……はい。金獅子、ラージャンの姿があった、と。」

「……なるほど。……よくラージャンだと分かりましたね。」

「首都から派遣されてきた方に、確認をとりまして。間違いないということでした。」

「そうですか……。」

 

 

……ん?

ちょっとおかしくないか?

すると……首都ギルドは、先にラージャンの情報を掴んでいた、ということになるのでは?

 

……駄目だ、判断する材料が足りない。

もう少し話を聞くことにする。

 

 

「色々対策を考えましたが、私も父でさえも見たことも聞いたこともないようなモンスターでした。どうしようもなく、私も困り果てている時に……あるお噂を思い出しました。」

「……俺とショウコのことですか?」

「はい。ワサドラに、とても強いハンターさんとそのオトモがいる、と。」

「な、なるほど。」

 

 

面と向かって言われると、正直恥ずかしいものがある。

 

 

「それで一筆書きまとめ、ワサドラのギルドに依頼をお願いした、という次第です。」

「……経緯は大体わかりました。ありがとうございます。」

「……ご主人様。」

「あぁ……少し考える。」

 

 

心配そうに俺を見つめるショウコ。

ありがとな。

 

 

……話を整理しよう。

ラージャンは、どうやらこの辺にはいないようなモンスター。

いわゆる、その土地に昔からいるような、ヌシのような存在ではないようだ。

キタバさんが、見たことがないと言うぐらいなのだから、まぁ間違いないだろう。

 

問題は、俺たち……というよりもワサドラがクエスト依頼を受ける前に、首都ギルドの方がラージャンの存在を認識していた、ということだ。

「首都から派遣されてきた方」という存在が、気にかかる。

 

……イパスさんが、まぁありがたいことに俺達の名声を聞いて、ワサドラに依頼をかけて……。

首都はラージャン討伐に躍起になっているところに、肩透かしを食らった形に……なるのではないか。

 

あれ、すっごく嫌な感じがしてきた……。

首都にラージャンの確認とか頼っておいて、ワサドラに狩猟依頼を出すとか……イパスさんも厄介なことをしてくれちゃってますけども。

その理由が、俺の噂を聞いて、って……。

 

……あー!すっごくヤな予感がする!!

 

 

……仕方がない。

ここまで来たのだ。

そのために、あのメンツを揃えた。

 

ラージャンを倒す。

……ここの人達の生活を守るため。

イパスさんの父、キタバさんも、狩猟すれば体調が良くなるかもしれない。

 

俺は、狩る。

狩るんだ。

 

 

「……イパスさん、お話、ありがとうございます。話しにくいお話もありましたよね。……早速、明朝その森林に足を運んで、ラージャンを探してみます。」

「……えぇ!ありがとうございます!」

「いえいえ。」

「本当に、ワサドラにお話を持っていって良かったです。……首都の方、少し感じが悪かったんですよね。ソウジさんみたいにかっこよくて礼儀正しい方なら、そのまま首都にお願いしましたのに……。」

「あ、あはは。」

 

 

気分で依頼先を決めた、ということか!?

お、おそろしい……。

 

そんなことを思って適当に愛想笑いをしたら、急にイパスさんの雰囲気が変わった。

のんびりとした様子が一変、キリッとした顔つきに。

 

 

「ソウジさん。」

「は、はい。」

「……我々は、この大陸の食の一大生産地の民です。食は、営みの源。……ギルドの思惑は色々あるかもしれませんが、()()()()()()()()()()()()()()()()()、平穏無事に過ごさせてもらっております。」

「……あ、な、なるほどー。」

「ですから、ご迷惑をおかけしたことは、申し訳ありません。どうか、お気を悪くなさらないでくださいね?」

 

 

 

冷ややかな口調で意味深なことを言うイパスさん。

 

確定。

この人、頭のいい人だ……。

しかも、シガイアさんみたいにしたたかなタイプ。

 

 

「あら……そういえばソウジさん。お泊りになる場所は、お決めになられてますか?」

「い、いえ。今一緒に来た狩り仲間が、探してくれてるはずです。」

「そうですか……。よろしければ、集会所横の宿をご利用ください。おそらく()()()、そちらに案内されているはずです。」

「……え?」

「……村に着く前から、()()()()()()()()()()()()()()()おります。」

「…………。」

 

 

お、俺はまだ皆のことを紹介していないぞ!?

宿を探していることなんぞ、話した覚えもない……。

どこからどこまで知っているんだこの人。

 

 

「セツヒトさん……あの伝説の方とお会いできるのですね……。今日は何ていい日なんでしょう。ソウジさん、ショウコさん、今夜は色々なお話をお聞かせくださいね?楽しみです!」

「は、はぃ……。」

 

 

最初の優しいのんびりとした様子で話すイパスさん。

もちろんセツヒトさんが同行する話もしていない。

 

全て知っていたのか……。

イパスさんの末恐ろしさを垣間見て、もうしどろもどろになる他ない。

……やっぱり、この一帯を取り仕切る人なだけはある。

 

人間として、完全に負けたわ。

 

 

* * * * * *

 

 

「多分あの人、最初自己紹介せんかったの、わざとですね。」

「え、そうなの!?」

「んー、多分そうだろねー。それにー、途中挟んだ涙ちょちょ切れ話もー、ちょっと演技入ってたのかもよー?」

「えぇ!?そうなんですか!?」

「いや、分かりませんけどね。本音6割に演技4割みたいな感じやないですか?」

「女の涙は意外に軽いもんだよー、ソウジー?勉強になったー?」

 

 

イパスさんとの話が終わり、言われたとおりに隣の宿に入ると、何と全員……ガーグァ車のおじさんを除いた3人が勢揃いしていた。

宿の部屋を3つ取り、その内の一つに全員で集まった後、話の経緯を伝えた。

すると、女性陣から出るわ出るわ、イパスさんへのあれやこれや。

 

ひそひそ話をしているようで申し訳ないが、ちょっと強烈過ぎた。

しかもショウコやセツヒトさんの言う通り、始めから徹頭徹尾計算ずくだったとして……。

……怖っ!

 

 

「先に我々が来るタイミングを掴んで、この宿に招待して……今の話を総合するに、中々の傑物ではないかな、その人。」

「ソウジ、これから気をつける。べき。」

「は、はい……。」

 

 

フェニクさんやトツバまで、同じ感想である。

女性同士、色々わかることがあるんだろう。

俺って鈍いんだなぁ……全然わかんなかったぞ。

 

 

「……ソウジはー、そのままでいいよー?」

「そうです、ご主人様。そういう所は、そのままでいて下さいね!」

 

 

気をつけつつそのままでいろとは、どうすればいいんだ。

……なんて俺の心の中のツッコミは、俺の口から発されること無く。

権謀術数の数多など、俺には全くもって使えないことがよく分かった。

 

……俺って、アホで鈍いのかもなぁ……。

 

 

* * * * * *

 

 

次の日、早朝。

俺たちはおじさんのガーグァ車に乗って、西の大森林の入り口に向けて出発。

昼前には、件の大森林の入り口までたどり着いた。

 

 

昨晩は大変だった。

イパスさんに招かれての、夕飯。

新鮮なお野菜がカラフルに並ぶ食卓は、なるほどこの土地ならではの料理が並んでいた。

だが、俺が多分に苦手意識を持ってしまった。

イパスさんに。

 

 

「ソウジさんは、今までどのようなモンスターをお相手にされたのですか?」

「え!?えーっと……ま、まぁ色々です。」

「お噂ではバサルモスにディノバルド、ジンオウガにティガレックス……様々な狩猟歴があるようですが……。」

「あ……概ねその通りです。」

「まぁ!うふふ、素敵ですね……冬山では、どのように過ごされていたのですか?」

「え!?そんなことまで知っているんですか!?」

 

 

何だろう。

質問を返そうにも、俺以上に俺のことを知っている感じ。

話を続ける度に、そんな不気味な感じがして、まぁ料理の味がしないしない。

 

こういう時に頼りになるショウコは、とっとと俺たちのいるテーブルから退散していた。

セツヒトさんもフェニクさんもトツバも、簡単な挨拶を済ませてとっとといなくなっていた。

おじさんは「堅苦しいのは苦手だからよ!」と、そもそも来ていない。

 

危険察知能力が凄まじい。

みんなひどい。

 

夕飯が終わる頃には、狩りに行くよりも疲れている自分がいた。

 

 

「昨日は大変だった……。」

「お、お疲れさまです、ご主人様……。」

「……ショウコ、俺を置いて逃げたな?」

「……にゃ、にゃー。」

 

 

何だその誤魔化し方。

俺の猫好きな本能に訴えているのか。

 

騙されんぞ。

 

……気を取り直して。

 

 

「じゃあ皆さん、手筈通りにお願いします。」

「りょーかーい。」

「分かった。」

「トツバ、気ぃつけてな?危ないときは信号弾で、頼むで?」

「任せて。」

 

 

それぞれが返事をして、俺たちは以前話し合った形で分かれることにした。

 

ラージャンの狩猟に俺とショウコ、セツヒトさん。

付いてくる形で、フェニクさん。

車に残るおじさんとトツバ。

 

そんな感じ。

 

トツバには前もって、黄色い信号弾を渡してある。

ガーグァ車に危険が迫った際には、有無を言わずに発射するよう伝えておいた。

 

 

「おじさん、トツバ、よろしくおねがいします。」

「おぅ。まぁこっちは気にせずよ、存分に狩って来てくれ!」

「はい、ありがとうございます。」

「私がここを守る。安心して。」

 

 

若干不安だが、狩猟地としてこのスタート地点は整備されている。

滅多なことでは()()()()()()ここには現れない。

 

なので、トツバの放つ信号弾が見えたら……それは妨害が来たと考えていいだろう。

 

 

「それじゃ、出発しましょう。」

「気をつけてなー!」

「はーい!おじさんもー!」

 

 

セツヒトさんが元気よくおじさんに返事をした。

少しテンション高めである。

 

……強敵を前にワクワクしているのだろうか。

 

 

「セツヒトさんは凄いな……私は少し緊張しているよ。」

「んー?何かねー、ちょっとウキウキしているんだよねー。……あの時逃がしてもらったラージャンに、また挑むってのがさー。」

「……やはり相当に強いんだな。」

「まーそりゃねー?多分今の私だと、一人でやるのは……ちょっち辛いかもー。」

「…………。」

 

 

セツヒトさんとフェニクさんが話している。

……俺たちの中で最強のセツヒトさんがこう言うぐらいである。

呑気な口調ではあるものの、俺たちはより緊張を高めていった。

 

金獅子、ラージャン。

一体どんなやつなのか。

 

 

…………。

 

 

「しかし……植生が全く違うな……。」

 

 

歩き始めてしばらく。

思わず呟いた。

 

車で送ってもらった森の入口。

遠目からは鬱蒼とした森林が、見渡す限りに広がっていた。

奥に見える山々までそれが続いているから、相当な規模だ。

だが、近くに来たら、まぁそこまで密に木々が生えているわけでは無かった。

だが、畑ばかりの平地が広がっていた先程とは違う。

 

 

「大森林……だからねー。……よっと。」

 

 

ヒョイッ。

 

 

軽々と倒木を飛び越えるセツヒトさんが、俺の独り言に応えてくれた。

 

 

「タオカカから南西に連なる山脈群の南だからねー。雨雲もできやすいし、こんなに大きい木がー……フッ!」

 

 

ヒュバッ!!

 

…………バキッ……!

ズゥン…………。

 

 

「……育つんだってさー。」

「…………軽く大木を真っ二つにしながら言わんでください。」

 

 

横倒しになっている木を今度は斬りつけ、俺たちが通りやすいようにしてくれるセツヒトさん。

今日持っている武器は太刀。

刀身の長さ、斬れ味の鋭さは、今見た通りだ。

 

恐ろしい剣速である。

本当に何でも使えるよなぁ……。

 

 

「ごめんごめんー……でも、いるねー。」

「えっ!?ラージャンですか!?」

 

 

不穏な事を言われ、思わずマップを見たり辺りの雰囲気を探ったりする。

…………なんの反応もないけど。

 

 

「いやいやー、そういうんじゃなくてー。……ほら、見てみー?この木。…………明らかに自然に倒れた感じじゃないでしょー?」

「…………本当ですね。無理矢理倒された感じがします。」

 

 

セツヒトさんが斬った巨木を見る。

直径がショウコの身長位の幹。

その根元は抉れ、倒れたというよりも倒されたような痕跡が見受けられる。

 

 

「これがラージャンの……?」

「んー、いやーどうだろうねー。そこまではわかんないかなー。」

「……比較的新しめです。用心していきましょう。」

「オッケー。」

 

 

抉れた土の水分からして、そんなに前のものとは思えない。

注意して歩くに、越したことは無いだろう。

 

 

「…………む?済まない。ちょっといいかい?」

「あ、はい。どうしました?」

 

 

木にばかり気を取られていたところ、フェニクさんの声がかかる。

フェニクさんの見つめる先、地面に目をやる。

…………何だ?

 

 

「これは……人の足跡だな。」

「うえっ!?マジですか!?」

「あぁ。木の葉がここだけ異様に凹んで……それが規則的に並んでいる。二人……かな。」

「おぉ……探偵みたい。」

「ははは。そのような仕事をしていたからね。……私達が歩く獣道をわざわざ避けて歩く、そんな理由があるのだろう。しかもかなり真新しい。」

「…………妨害、ですか?」

「そこまではわからないさ。まぁ、ソウジさんの言うように、用心に越したことは無い、ということだね。」

「…………。」

 

 

フェニクさんのミステリアスな顔つきは表情が読みにくい。

だが、言っていることは本当である。

すげえなこの人。

付いてきてもらって良かった。

 

 

「おー……ホントだー。フェニクー、よくわかったねー。」

「ホンマや……言われんと気づかんかった……。」

 

 

他の二人も感心しきりである。

 

 

「足元は、基本だ。ソウジさんもショウコさんも、気を配った方がいい。セツヒトさんは……言うまでもないか。」

「いやー……私も歩き方は雑な方でー……フェニクすごいねー。前から只者じゃないとは思っていたけどー。」

「セツヒトさんにそう言われるとは、光栄だ。」

 

 

ショウコと俺はお互い顔を見合った後、一緒に互いの目線を下に向ける。

足元か……んー……。

 

 

「き、気ぃつけます……。」

「俺も……。」

 

 

ハンターとして必要なスキル。

まだまだ色々あるんだなぁ……。

 

 

* * * * * *

 

 

昼食は軽めに取ることにした。

時間がもったいないという理由もあるが、煮炊きをしてモンスターとかに刺激を与えたくなかった。

俺のギフトにも一応食い物はあるが、フェニクさんの手前、控えておいた。

 

腹も少し膨れて落ち着いたあと、再びラージャンの捜索を開始。

「やまかーん。」とか言いながらズンズン先頭を歩くセツヒトさんについて行った。

何を根拠にしているのかは分からんが、来た道を迂回する様に進路を取っている。

 

 

「……セツヒトさん、この先……。」

「んー?」

 

 

俺のマップ上には、この先に池みたいなものが映っている。

小声で伝えると、「じゃーそこ行こー。」とのんきな返事が返ってきた。

それでいいのか。

 

 

「わー……きれいですねぇ!」

「波打ってなくて……鏡みたいだな。」

 

 

ショウコが声を上げ、池を見つめる。

そこは、木々に囲まれていた今までと違い、空が開けて気持ちのいい場所であった。

池というか……もはや湖だな、これは。

 

 

「……ちょいまち。」

「は、はい。」

「へ?」

 

 

セツヒトさんから声がかかり、すっかり進路を湖に向けていた俺たちは立ち止まる。

ショウコから気の抜けた返事が上がった。

 

 

「水場はねー、モンスターが寄ってくるんだよねー……。一旦ここで張ってみよー。」

「は、張るって。」

「いや、セツヒトさんの言うとおりだ。休息も兼ねて、ここで落ち着こう。」

 

 

タイプの違うミステリアス、熟練者の二人にそう言われれば、俺から言うことはない。

木の幹に体を隠し、しばらく湖を観察することにした。

 

 

「ソウジー……何か見えるー?」

「いや……俺にも何も……あ、そういうことですか。」

 

 

湖に目を凝らしていると、セツヒトさんから声がかかる。

多分、マップを見ろと言いたいのだろう。

ギフトを起動し、辺りを探る。

 

…………湖の向こうに何かいるけど……。

 

顔を上げて目を凝らすと、小さく小型モンスターの姿があった。

かなり遠く、視認は厳しいけど。

俺なら見える。

 

 

「…………小さいやつが一匹……水飲んでますね……。」

「そ、ソウジさん……すごい目だな……。」

「ご主人様の目は半端ないんですよ……ウチにはまーったく見えません。」

「私もー。目には自信あるんだけどなー。」

 

 

みんなで目を細めて湖の向こうを見つめる。

が、誰もかしこも、見えていないらしい。

全く、いい身体能力を得たものである。

 

この体、すこぶる軽いし動体視力も半端ない。

視力もいいし。

視力矯正に悩まされ、ちょっと走れば息を切らしてた前世とは大違いである。

 

 

「いや、見えますよ。えっと、あの三角の形した木の左下辺り。……あ、いなくなった。」

「説明を受けても何がなんだか、だな。ははは。」

「す、すみませ……。」

 

 

フェニクさんに突っ込まれ謝ろうとした。

その時。

 

 

 

 

ズキ……。

 

 

 

 

「!?」

「んー?……ソウジ?どうしたの?」

「…………す、すみません…………。」

 

 

その視力の凄さに感謝していた目が、痛んだ。

両目とも。特に右目が痛む。

 

 

……ズキィ!

 

 

「っ……!!」

「ご、ご主人様!?」

「だ、大丈夫かい?ソウジさん。」

 

 

みんなが心配しながら、うずくまる俺を囲む。

一番痛む右目を押さえ、心配掛けまいと顔を上げて、ふと湖が目に入った。

 

その向こう。

 

 

 

…………何だ…………あれは…………?

 

 

 

 

「すみません……。」

「えっ!?ご主人様!?」

 

 

ショウコの心配の声をよそに、立ち上がる。

集中して、目を凝らす。

その先、さっきのモンスターが居たところの少し右。

 

…………異質なヤツが居た。

 

 

(黒い……?)

 

 

遠すぎて完璧には捉えきれない。

だけど、分かる。

 

あれは、あれは……どこかおかしい。

全身真っ黒な、飛竜の様相を呈しているその体。

翼は下を向き、折りたたまれているように見える。

だがそんなことよりも。

 

 

 

俺の目が、体が、アレはヤバイと告げている。

 

 

 

俺は棒立ちのまま、()()に釘付けになり。

 

 

「…………。」

 

 

みんなに声をかけられるまで、目を離すことができなかった。

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