モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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142ソロでやりましょう。

頭の中が、色々ゴチャゴチャしている。

 

そもそもが、色々あったクエストだ。

ラージャンの狩猟。

首都やワサドラの様々な思惑が入り交じる依頼。

イパスさんも含め、余計にややこしくなった中で、予想通りの妨害を食らった。

セツヒトさんが、肩に負傷してしまった。

ショウコが一緒に、避難してくれた。

 

セツヒトさんが無事でいることを、切に願う。

 

 

……今の状況。

結局、俺は一人で、こいつと戦わなければいけない。

 

金獅子、ラージャン。

 

前情報通りの、恐ろしいほどの強さ。

だから、想定では複数で叩くはずだった。

たが、もはや想定外。

規格外な力に対して、俺は一人で戦わなければいけない。

 

そういう状況にある。

 

ぶっちゃけた話、人数が揃っていれば、何とかなるかも、なんて考えていた。

甘かった。

俺は甘かったんだ。

 

 

「ふぅー……。」

 

 

反省ばかりはしていられない。

今は、もうごちゃごちゃしたことは、とりあえず置いておく。

 

 

(……集中…………!)

「グゥゥゥ……。」

 

 

いろんな事を一瞬で考え終える。

反省も後悔も後でできる。

今はコイツに。

ラージャンに集中しなければ。

 

だって……。

 

 

「…………グァァァァ!!!」

「っ!!?」

 

 

ブォン!!

 

ドガァ!!!

 

 

(パワーが……半端なさすぎる……!!)

 

 

一発でも喰らえば、終わりなんだから。

 

さっき、はっきりと分かった。

力の差は歴然。

食らったら致命傷、ではない。

次に食らったら。

 

 

 

多分、終わりだ。

 

 

 

「ガァァァ!!」

「っ!……!!」

 

 

声が出ない。

死の恐怖、思考がそれ一色に染められていく。

 

多分だけど、こいつは俺を捕食するために戦っている訳ではない。

自分の縄張りを守るため。

または、安眠を邪魔した報いを受けさせるため。

ただただ怒りに身を任せて拳を振り回しているだけ。

 

冷静に対処すれば、避けられる。

それは、自分でわかる。

 

だが。

 

 

「グァァァァ!!!」

「くっ……!!」

 

 

ブォン!

 

ドガァ!!

 

 

振り上げられた両の拳が、叩きつけられる。

恐ろしいほどの、拳の速さ。

 

怖い。

恐い。

逃げたい。

それさえできない。

 

背中を向けたら、死ぬ。

対峙しても、勝てない。

そう思う。

 

 

(頭では……わかってる!!)

 

 

万全でやれば、避けられると分かっている。

落ち着けば、やれる。

だが。

心が、恐怖で支配されていて、体が動かない。

動かせない。

本能が、早く逃げろ、落ち着けと警鐘を鳴らす。

 

 

「ガァ!グァ!アァァ!!」

 

 

何回も振るわれる、パンチのラッシュ。

 

俺が選択したのは、ぎこちなく後退して、避ける動き。

 

 

だが。

 

 

(あれ……この避け方じゃ……。)

 

 

……ゾクッ……。

 

 

悪手。

連撃を避けながら、ふと思い返す。

これでは、先程と同じ。

 

このバックステップの回避では。

 

 

(死ぬ。)

 

 

明確な答えが出て、体中が冷え切る。

冷えた体は余計に固まり、脱力とは程遠くなる。

 

 

(避……駄……食ら…………っっっ!!)

 

 

頭の中は、冷え切った体のせいで、ひどく冷静。

死ぬ間際だからなのか、スローモーションとなる世界。

 

死ぬ時は、生物は記憶を総動員して、集中力を高め、何とか生き残る方法を模索するという。

その状態。

 

 

 

そんな瞬間。

 

 

 

生き意地汚く思考をフル回転し、頭が焼き切れる程に考えを巡らせたら。

 

 

 

自分の感情のどこかが。

 

 

 

 

 

プツ。

 

 

 

 

 

切れた。気がした。

 

 

 

 

「…………っ!!」

 

 

 

 

バッ!!

 

ドガァッ!!!

 

 

 

 

「…………。グァァァァ……。」

 

 

 

俺の背中、()()にはラージャン。

自分でも驚きながら、低い姿勢を直して、急いでラージャンの後ろ姿に目を向ける。

 

 

体が、一瞬だけ軽くなった。

俺を殴り殺さんとする金獅子の連撃。

その最後の拳を間近に見ながら。

思い切り踏み込んで、距離を()()

懐に入り込むことで、何とか回避に成功した。

 

……振り返り、よくも避けやがったなという顔で、ラージャンはこちらを睨みつけてくる。

そんな表情が、見てとれる。

 

咄嗟の判断、それ以上の刹那。

逃げるのではなく、突っ込むという選択が、うまくいった。

 

 

俺は、ラージャンを睨み返しつつも。

別のことに気を取られていた。

 

 

(体が…………熱い…………!)

 

 

ズキン……ズキン……。

 

 

規則的に心臓が打ち鳴らされる度に、目の痛みが激しくなっていく。

ラージャンに悟られてはいけないと、平静は保っているが。

 

ついにその痛みは、鈍く全身に及んでいく。

 

 

(深呼吸……。)

 

 

吸っては、吐く。

 

落ち着け。

どうした、俺の頭と体。

 

なぜ。

 

なぜこんなにも。

 

 

(……興奮している……?)

 

 

理由は、分からない。

だが、先程のラージャンの攻撃は、間一髪で避けられた。

熱く滾った心。

恐怖を跳ね飛ばし。

急に足に力が入り、素早い対応ができた。

 

 

「…………グァウァァァ!!」

 

 

その剛腕を振り上げ、地に落とさんとするラージャン。

その一挙手一投足が…………見える。

 

 

「グァァ!!」

 

 

ブォン!

 

ドガァァァァ!!

 

 

地が割れ、草木や石が飛び散る。

抉られた地面からは、その有り余る力が十分に伝わる。

避ける瞬間も、ラージャンから目は離さない。

 

 

(…………体が熱い…………。)

 

 

ドクンドクンと血が巡るたびに、力が湧いてくるのがわかる。

手にも、足にも。

疼くような目の痛みはすこし収まり、全身はピリピリとした痛みが続いている。

 

何故かは分からない。

分からないけど。

……理由を考えている暇なんて、無い。

 

 

好転した。

俺はまだ、こいつと戦える。

今は、この状況を受け入れる。

 

 

「…………っし!」

「…………グゥゥゥ…………。」

 

 

気合を入れ直すと同時に、ラージャンから唸り声が上がる。

さっきまでの、怯えきった自分はどこに行ったのか。

いや、怖い。

怖いんだけど。

 

それさえも上回る、この高揚感。

 

…………ついに俺の頭はイカれたんだろうか。

今一撃をもらえば、俺は死ぬかもしれないというのに。

 

 

いや、いい。

とにかく、いいことだと思え。

少なくとも、今は。

 

 

「グゥゥゥ……。」

「…………しっ!」

「ガァ!?」

 

 

呼吸を読み、ラージャンが反応できない、ほんのスキ。

息を吐こうとした、その瞬間。

前に踏み込み、双剣を入れる。

 

弱点の一つであるその頭部に、数撃だけ。

 

 

ザン!ザザザザ!

ヒュパ!!

 

 

「……!」

「ギャアァァ!!」

 

 

怯え切っていた先ほどの自分ではできなかったであろう、ほんの隙を見つけての攻撃。

しっかりと刃が入った。

手応えが、違う。

ラージャンに、攻撃が効いている。

 

 

「……ふっ!!」

 

 

短く息を吐きながら、回転乱舞を繰り出す。

 

 

ズザン!

ザシュ!ザザザザザン!!

シュパ!

 

 

「グラァァァァ!!ガァ!!」

「ぬおっ!!?」

 

 

きれいに入った攻撃。

その乱舞の終わりに合わせて、ラージャンから振り回された拳。

あまり力は乗っていない一撃だが、当たりたくはない。

寸でのところで避け、姿勢を整える。

 

目の前にはラージャン。

黒い体は、隆々とした筋肉に覆われ、威圧感が半端ない。

立派な角はとても硬そうで、突進なんぞ食らったら体がバラバラにされるかもしれない。

 

 

(……大丈夫だ……落ち着いている……。)

 

 

そんなプレッシャーを感じて尚、冷静になれている自分がいる。

ちょっと前まで、恐怖でしかなかった金獅子。

その姿を、しっかりと全体的に捉えることができている。

 

 

「……ほら、来い!ラージャン!……そんなもんじゃないだろ!」

「………グラァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

雄叫びとともに繰り出されるラージャンの攻撃。

 

 

ブォン!

 

ドガァ!!

 

 

振り上げられた両手を地に叩きつけ。

 

 

「ガァァァ!!」

 

 

ブォン!ブォン!ブォォン!

 

 

力任せにパンチを連続で振り回し。

 

 

「ふん!」

「ガァァァ!?」

 

 

俺はそんな猛攻を。

 

 

全て、受け切った。

 

 

「……ラァァァァァ!!!!!!!!」

「っ!?」

 

 

ビリビリッ!!

 

 

攻撃は、見切った。

そう言える。

当たれば終わりと思える、ラージャンの猛攻を防ぎ切った。

いや、避け切った、というべきだ。

何なら、回避攻撃で反撃もできた。

 

自分が自分でよくできていると、評価し始めた頃。

 

 

ラージャンにも、変化が起きた。

 

 

「グゥゥゥゥ……。」

「完全に◯イヤ人じゃん……。」

 

 

両腕の肘を、まるで空手で気合を入れるかのように腰に当て。

上空に向かって吠えたラージャン。

周囲の木々は揺れ、俺はたまらず耳を押さえた。

ラージャンの体は、一瞬稲妻のような閃光が炸裂。

頭と上半身の体毛が金色に輝き、その剛腕は赤みを帯びている。

 

……そうか、これが「金」獅子か……。

 

黄金色に輝く体毛は、薄暗い森の中で目立つ。

野生で生きる者とは思えない程の自己主張。

最強種であれば、そこは問題ではないのだろう。

あの寝姿も、この体毛の輝きも。

 

こいつが、この世界で最強の一角であるということを物語っていた。

 

 

「……ここからが本領発揮か……!!」

「……グラァァァァァァァ!!!!!」

 

 

叫び声だけで、並の生物なら失神してしまうであろう、そんな咆哮が響き渡り。

 

 

ラージャンは、これまで以上の猛攻を仕掛けてきた。

 

 

「……グラァッ!!」

「うぉっ!!??」

 

 

右腕を振り上げたと思ったら、間髪入れず俺に殴りかかる。

その速さは、先ほどの比ではない。

さらに拳の勢いそのままに地面で回転し、俺のいた場所全てを拳で薙ぎ払う。

 

 

グワン!

 

バギィ!ドガァ!!

 

 

ベキベキ………ズドォン!!

 

 

剛腕に当たった大木が、倒れる。

だが、ラージャンの勢いは止まらない。

 

 

「ガァァァ!!」

(……ラッシュ!!)

 

 

振るわれたのは、その両腕。

ボクサーのように軽やかさはない。

ただただ、その怪力を振り回す、連続の拳。

 

 

(5回目……!!)

「……ガァ!!」

 

 

ブワン!!

 

 

(ここ!!)

 

 

ヒュッ!!

 

ザシュ!!

 

 

「ガァァァ!!」

(成功……こえぇ……。)

 

 

黒い体の時……通常時に仕掛けてきた連撃とは比べ物にならない。

振り回されるスピードが、まるで違う。

当たったら最後、すべて持っていかれるであろう、その拳。

 

だが俺は、そこに突っ込んだ。

避けるために、連撃に、突っ込んでいった。

一撃だけ、カウンターを入れながら。

 

 

「……グゥゥゥゥ……。」

 

 

振り向きながら、俺に狙いを定めるラージャン。

怖すぎて速すぎて、多分最初の俺なら回避できなかったと思う。

だけど、今なら見える。

体も、よく動く。

 

タイミングが取れるかどうかは一か八か、だった。

だが、やることは同じ。

ふり回される拳の元、その懐に入り込んでしまえばいい。

……シビア過ぎるけどな!!

 

 

バッ!

 

 

一旦距離を置くため、ラージャンから離れる。

多分コイツは俺から離れない。

完全なるインファイター。

 

 

距離を詰めてくるだろう。

 

……と思った俺は、爪が甘かった。

 

 

「……グァァ!!」

「えっ。」

 

 

俺が距離をとって着地した瞬間。

体を一瞬だけ震わせたラージャンが、いきなり。

 

 

口からビームを放った。

 

 

「うぉぅ!!!??」

 

 

バッ!!

 

 

ズガァァァァァァァァァ!!!!!!

 

 

ジュッ。

 

 

……もうちょっとで当たってた。

いや、掠った。

 

 

(足、焦げてるぞ……。)

 

 

嫌な匂いを放つ自分の靴を、地面に擦り付ける。

……情報画面にあったブレスってこの事だったのか。

金色の体毛といい、ビームといい……。

 

 

(アレみたいだな……。)

 

 

某有名な漫画を思い出しながら、そう言えば主人公も猿がモチーフだったなぁと思い出す。

恐ろしい遠距離攻撃である。

……インファイターだなんだと思い込んでいた自分の頭を訂正。

 

このモンスター、どんな状況でも戦えるわ……。

 

 

 

「グゥゥゥ……!!」

(次は何だ!?)

 

 

呼吸をしっかり読むと、モンスターが攻撃に移るかどうかが分かってくる。

モーションを読んで備えることは、ハンターには必須のスキル。

 

そのスキルが、「次、来るよ。」と俺に教えてくれる。

 

 

ガッ!!

 

 

地を蹴り、上空に飛び上がったラージャン。

思わぬ動きに、俺は必死で頭を巡らす。

 

 

(上空に……これは……飛び込み!!)

 

 

グルグルと回転したと思ったら、次の瞬間。

ラージャンが、俺に向かって、飛び込んできた。

 

物理法則など無いのがこの世界。

わかってはいたが……。

 

 

(無茶苦茶……過ぎる!!!)

 

 

バッ!!

 

 

俺が取った選択肢は、空中にいるラージャンの、その真下に回避すること。

これは、セツヒトさんから教えてもらったやり方。

 

 

…………。

 

 

『いーい?アイツ時たまグルグルグルーって上から突っ込んでくるのさー。』

『えっ!?グルグル……?』

『そー、グルグルー。その時はー、後ろに避けちゃだめだよー?』

『な、なんでですか!?』

『避けても避けても、追いかけるように何回も来るからさー、避けきれないんだよねー。』

『……じゃ、じゃあどうすれば……。』

『んー……気合いと勇気で突っ込む……かなー?』

『はぁ!?』

『まーまー、一度やってみるからさー。ソウジなら一発でできるってー。』

 

 

…………。

 

 

 

気合いと勇気って言ってたけど……。

こういうことだったのか。分かりにくい。

 

確かに、避けた後も俺を狙い続けてグルグルドカンを繰り返してくるラージャン。

俺は前後ジグザクに回避し続けていく。

 

どうやってその回転をしながら俺に正確に狙いを定めているのか。

どうやったら空中で止まって回ってこの勢いで突っ込んでくるのか。

完全に物理法則無視のその動きに、疑問は尽きない。

 

尽きないが……。

 

 

(対応……できる!!)

 

 

相変わらず、体の調子がいい。

ガチガチに凝り固まっていた肉体は、打って変わって脱力状態。

 

ドロドロに溶けた様な体を、ラージャンに投げ出す。

 

 

「…………ガァァァ―――」

(……ここ!!)

 

 

ブワ!!

 

 

振り上げられた両腕を掻い潜り。

 

 

「―――ァァァ!!」

「…………っ!」

 

 

一瞬を見切って。

 

 

ヒュパ!

ズザシュ!

ギン!ギギン!!

ズザザザ!!

 

 

「ガァァァァ!!」

(回避攻撃!!……やっぱ硬いなぁ!)

 

 

斬った感触が、鈍い時がある。

ダメージを与えられていない、と言うことではなさそうだ。

だが、効率は悪そう。

 

 

(剣は……。)

 

 

見慣れた双剣。

その刃は、やはり斬れ味が鈍っていた。

 

 

「ガァァ!!」

「くっ…………!!」

 

 

黄金色のラージャンが、咆哮と共に俺に迫る。

まるで俺の反撃など、意に介していない。

ダメージは通っていると、願いたい。

 

 

(乱打……!)

「ガァ―――」

 

 

モーションから、動きを予測する。

上腕が膨れ上がって、力を溜めるポーズ。

これは、乱打。

 

 

「―――ァァァ!!」

(拳に合わせて……ここっ!!)

 

 

相変わらずシビアなタイミングを、見切る。

体を、前進。

そのまま、懐から抜けるように回避して…………。

 

 

「ふっ!!」

 

 

ザシュ!

ザザザ!ザン!

 

 

避けざまに、数撃。

しかしラージャンは、その猛攻をやめない。

 

 

(あんまり使いたくなかったけど……!!)

 

 

カチッ。

 

 

落とし穴を仕掛ける。

罠ハメはあまり使いたくないが、四の五の言ってられる状況ではない。

 

予測通り、俺に迫りくるラージャン。

あと一歩……!

 

 

「…………グァァァ!!」

 

 

ヒョイッ。

 

 

「うぇっ!?」

 

 

驚いた。

だって、ラージャンが落とし穴を避けたのだから。

 

 

(何かを仕掛けたのを、見切った……ということか?)

 

 

「ガァァァァ!!!」

「やべ!!」

 

 

ブォン!

 

 

(回避…………!!)

 

 

ズガァ!!

 

 

「ぐはぁ!!!」

「グラァァァァ!!」

 

 

ズガァン!!

 

 

ゴロゴロゴロゴロ…………ドンッ!

 

 

「…………ぐぇほっ………!!…………ぅぅう…………。」

「グルルルル…………。」

 

 

失敗した。

罠に嵌めようとした。

だが、ラージャンはそれさえも上回った。

 

殴られ、転がされ、木に叩きつけられる。

 

俺の行動の異変。

気づいたのか偶然か、定かではない。

だが、俺の罠を飛び越えて上空から振り回された右の拳に。

 

 

俺はモロに被弾した。

 

 

「…………こひゅー……こひゅー……。」

 

 

ヤバイ。

 

息が。

 

ヤバイヤバイヤバイ。

 

 

これって不味いやつだ。

体の確認。

足……手……腕……とにかく痛い。

動くと言えば動く。

だが、それ以上に……。

 

 

(…………体が、重い。)

 

 

まるで徹夜明けの時の様な意識。

朦朧とする。

ただ、ヤバイとはわかる。

 

多分骨まではいってない。

だが、本当に。

 

 

(…………何で!なんで動かない!!俺の体!!!)

 

 

震えながら、何とか上半身を上げる。

腕に力が入らない。

それでも、ラージャンから目を離してはならない。

それが、教えられたことだから。

 

 

…………これで終わり、なのか。

ここまでか。

 

 

…………終わりなら、その最後まで目を瞑りたくはない。

 

予想通りと言えば、予想通りの終わり方。

無茶が過ぎた。

 

 

どこかで漠然と、死ぬ時は狩猟中だろうなとは思っていた。

こんな危ない仕事、死ぬ時は狩り場だろう、と。

 

 

何とか恐怖は克服できた。

克服、してしまった。

逃げることを前提に動けば、何とかなったかも知れないけど。

…………後の祭り、か。

 

 

「………………ガァァァァァァァ!!」

 

 

不思議と、本当に怖くない。

超強敵、金獅子ラージャン。

やはり、俺の手には負えなかったか。

 

 

「…………グラァ!!」

 

 

ブォン!!

 

 

両の腕を振り上げたラージャン。

ゆっくりと動く世界。

…………何もこんな時までスローモーションにならなくても、とは思う。

 

 

「お前……強かったな……。」

「ガァ!!」

 

 

捨て台詞とも辞世の句とも取れない変な言葉を口にした。

ここで、終わり。

 

最後まで、見届けよう。

腕が辛いけど。

このままの姿勢で、やってくれ。

 

 

ズァ!!

 

 

天に向けられた腕が振り下ろされる。

すべてを覚悟して、俺はラージャンを見つめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズガガガガガガガガガガガガガ!!

 

 

 

「ギャァァァ!!?」

「っ!?」

 

 

その時。

どうにも動けない俺を目の前に、ラージャンが最後の一撃を下ろそうとした。

そんな時。

 

 

ボウガンが弾を射出する音。

どこかで聞いたことのある、懐かしい音。

セツヒトさん……ではない。

あの人は、ボウガンを持ってきていなかったはず。

 

 

「…………ぐぅ…………!!」

 

 

とにかく、助かった。

すぐの死は免れた。

 

 

ならば、と、全身全霊の力で体を起こす。

ゆっくりと、立ち上がる。

 

 

ズガガガガガガガガ!!!!

 

 

「ギャオオオ!!………………グラァァァァ!!」

 

 

 

ボウガンの弾が、連続で着弾。

動き回るラージャンの弱点を、きれいに捉え続ける。

はっきり言って、神業。

 

 

…………俺は、こんな芸当ができる人物を一人、知っている。

セツヒトさんも、その腕には敵わないと言っていた。

ムカつくけど、と一言添えて。

 

 

「…………ふっ…………うぅ…………!」

 

 

意識を何とか回復させ、ポーチから回復薬を選択する。

酔っ払った時の様な、ブレブレの視界の中。

何とか回復薬グレートを選択。

 

 

「…………ゴクッ…………ゴクッ……ぶはぁ!!」

 

 

バシャバシャ…………。

 

 

勢い余って、4つも取り出した。

2つを飲み干し、残りは全身にぶっかける。

 

…………先程までのどうしようもない体から、少しはマシになる。

 

 

「…………ぁぁ…………痛い…………。」

 

 

 

ズガガガガガガガガ!!

 

 

「ギャオオオ!!…………ガァァ!!」

 

 

相変わらず、弾のあられを浴びていたラージャン。

突如、後退した。

 

 

「…………っ!!ビームです!!」

「何ぃ!?緊急回避ぃ!!!」

 

 

ズァァァァァ!!

 

 

目前で繰り出される、雷光のようなビーム。

横から見ると、その凄まじさがわかるな……。

 

 

「…………ぬぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

ダダダダダ……。

ダン!

 

 

どこからどうやって来たのかは分からない。

分からないけど。

 

世界で一番頼りになる人物が、突然俺の目の前に現れた。

 

 

「…………待たせたな!ソウジ君!」

「…………教官!!」

 

 

大きなボウガンと、ツンツン頭。

隆々とした筋肉は、ラージャンにも負けていない。

 

 

マショルク教官、参上。

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