モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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145思い知らされましょう。

「ガー。」

「グー。」

「…………呑気な顔……癒やされる……。」

 

 

衝撃的で間抜けな時間から、明けて次の日。

俺はふらっとガーグァ達の厩舎にやってきていた。

 

 

色々あったもんで、リフレッシュも兼ねてランニングをしてみたのだが、この村は広い。

いや、村が広い、という表現は少し正しくない。

 

延々と続く畑。

村と畑の納屋と、その境界線が微妙なため、村の周回と言ってもどこを走ればいいかわからなかった、というのが正解だ。

チダイ村は一大農産地。

ワサドラにも結構な広さの畑が広がっているが、次元が違う。

北海道に旅行に行ったときのことを思い出してしまった。

 

人を見かけることも殆どない、のどかな道を走る。

少しずつ気持ちが楽になる。

結構なペースで走るため、ワサドラではぶつからないように気を使うのだが……ここは楽だ。

 

そして10周を越えたところで、この厩舎に立ち寄った、というわけである。

 

 

「ガー。」

「グー。」

「…………。」

 

 

間抜けな面。

これでいてコイツらは、かなり優秀。

天敵のジンオウガの縄張りにも臆することなく、忠実に走ってくれる。

おじさんの腕もあるのだろうが、これまでに何度も助けられた。

 

 

「今回ばかりは……助けてくれないよなぁ……。」

 

 

* * * * * *

 

 

昨日の出来事。

 

 

四人に、すごいところを見られてしまった。

 

セツヒトさんから告白されて、キョドッた俺。

グイグイくるセツヒトさん。

……あれは……キスをしようとしていたんだよな。

 

……。

 

……。

 

 

ま、まぁそこはひとまず置いておいて。

 

そこから4人がなだれ込むようにやって来た。

いくら何でもタイミングが悪すぎた。

 

ショウコは俺以上にテンパるし、教官はなぜかご機嫌だし。

フェニクさんは「そうきたか……。」とか訳の分からんこと言うし、トツバはしらーっと俺を見つめるし。

 

そんな4人にどう言い訳したもんかと思ったら。

 

セツヒトさんが言い放った言葉。

これに全員が驚いた。

 

 

『あー……ごめんねー、告っちゃったー。……我慢ができないもんでー……。』

 

 

これにはあっけに取られた。

漢らしいわ。

言い訳とか考えていた俺、恥ずかしい。

 

その後はもう、セツヒトさんに質問攻め。

俺はなぜかベッドの上に正座して、女性陣がくっちゃべっているのを聞くばかり。

 

 

『せせせセツヒトさん!!ついに!ついにぃ!』

『落ち着いてよー、ショウコちゃーん。……なんかごめーん……。』

『い、いやいや!なんで謝るんですか!?』

『えー、だってショウコちゃんーーー』

『す、ストップです!……セツヒトさん、かっこええです!ウチも覚悟、決めました!』

『おー。さすがショウコ。私の親友。』

『と、トツバ……からかわんといてや……。』

 

 

当事者なのに蚊帳の外。

正座でかしこまる俺、かっこ悪い。

 

そんな時、フェニクさんが俺の横に座り、質問をしてきた。

 

 

『で?ソウジさん。返事はしたのかい?』

『……。』

『……その様子だと、まだみたいだね……。まぁ、我々もタイミングが悪かったからね。』

 

 

ふう、とため息をつくフェニクさん。

すると、いつも以上にキリッとした顔で俺を見つめてきた。

 

 

『ソウジさん、いいかい?君は、自覚した方がいい。』

『……。』

『誰もが優しく、言わなかったのだろうけどね。……無意識に人を傷つけてしまう、そういうことは、あるんだ。あぁいや、今回の件に限らず、だけどね?……君は今、あらゆる人間に好意を向けられている。……これ以上は私が言う資格などないのだろうが……これだけは言わせて欲しい。』

『……はい。』

『まさか引き伸ばそうとか、そんなことを考えてはいまいね?……もったいつけるような人間は、碌なもんじゃない。……普段の様子を含め、いい加減にしたまえよ?ソウジさん。いや、ソウジ君。』

 

 

……これは効いた。

心の臓に、突き刺さった。

 

……その後は見兼ねた教官に無理やり連れ出された。

教官に用意された部屋で、おじさんと男三人で、過ごさせてもらった。

脱ぎ癖がすごいセツヒトさんにも、気を遣ったみたいだ。

……教官が俺とセツヒトさんに気を遣うなど、よっぽどである。

 

ちなみにおじさんは『やっとかよぉ!!』と言っていた。

何でも、中々仲が進展しない俺たちを見て、ずっとヤキモキしていたらしい。

はたから見ても分かるような感じだった、ということだ。

 

……俺はその好意を、ずっと無碍にしていたわけだ。

申し訳ない気持ちで、いっぱいである。

 

 

……以上、回想終わり。

 

 

* * * * * *

 

 

 

『いい加減にしたまえよ?』

 

 

「うぅ……。」

「グァー……。」

「グー……。」

 

 

フェニクさんの言葉が何度も思い出される。

心が痛い。

情けない声が漏れる。

 

心配げに見てくるガーグー達。

……まぁ本当に心配しているわけではないだろうけど、そう見えた。

こいつらにまで心配をかけていては、もうダメの極みである。

 

 

「…………よし。」

 

 

セツヒトさんに返事をしなければならない。

セツヒトさんはああは言っていたが、これはケジメだ。

フェニクさんに言われたから返事をする、ではない。

 

俺が、そう思うから。

 

今まで何にも気づいて来られなかったから。

俺なりに、返事をする。

心を、決めて。

 

 

「いつまでもこのままじゃいけない、よな。」

「……ガー!」

「……グー……。」

 

 

ガーグー達が「せやな」とでも言うように、俺に頭を向けてくる。

……いや、撫でろ、ということか。

もちろんいいけど。

 

 

「…………。」

 

 

こいつらを撫でると。

何故だろう。

俺の頭には、あの人の笑顔が浮かんでくる。

勤勉で、たまにドジで、いつも俺を一生懸命に応援してくれて。

俺がハンターとして生きると決めた、その初めの初めから付き合ってくれた、あの人。

俺の強さとか、見てくれとか。

そういうところではなく、純粋にハンターとしての俺を支えて続けてくれた、あの人の笑顔が。

 

支えてくれた人は、他にもいる。

 

更に頭に浮かぶのは、俺の最高の相棒の姿。

いつも一生懸命で、俺のそばにいつも居て、叱咤激励してくれて。

自分の境遇に屈することなく、常に明るく場を照らしてくれる、相棒。

とても頼りになる、相棒。

 

世話になっているというなら、俺を一番に親身に思ってくれているあの子も、忘れてはならない。

この世界に来て、何も知らない俺を、温かく迎えてくれて。

あの子といると、心底安心する。

若いのに、落ち着いていて、気兼ねなく話ができて……そんな関係性が、とても心地よい。

 

 

「……俺は何て失礼な奴なんだ……。」

 

 

セツヒトさんに気持ちを打ち明けられたばかりだというのに。

次から次へと違う女性を思い浮かべてしまった俺は、やはりダメなやつだ。

フェニクさんの言う通り。

 

いい加減にしよう。

 

 

「……さて。」

 

 

自分のことばかり考えてもいられない。

一先ずは、これから先の事。

ラージャン討伐の報告……あの黒いモンスターについて。

喫緊の課題であり、俺のレベルアップには欠かせない、装備の新調について。

そして、シガイアさんから言い渡されている、赤い目のモンスターの件。

 

その辺も、何とかしないと。

 

 

「よしっ!」

 

 

気合を入れ直して、厩舎を後にした。

とりあえず、セツヒトさんには普通に接しよう。

ワサドラに帰って落ち着いたら話をしませんか、と。

そこだけ、伝えよう。

 

 

俺は、長閑な村の通りをゆっくりと歩き出した。

 

 

* * * * * *

 

 

一日経って、俺の体はかなり良くなっていた。

ショウコからはいつものように、「その回復力、引きますわぁ……。」とお褒めの言葉を預かった。

ものすごくポジティブに、ありがたくその言葉を受け入れることにした。

 

セツヒトさんは見た目元気そうだったが、詳しくはわからない。

だが、なるべく早く医者に診てもらった方がいいだろう。

毒矢をさされたというのに、「あいつにも色々事情があるんでしょー。」と、犯人の男を擁護するようなことを言っていた。

 

仏か。

 

 

そして、お世話になったイパスさんに、礼を言いに行った。

 

 

「もう少し居てくださって構わないのですが……申し訳ありません。ここには首都やワサドラのような腕のいい医者はおりませんで……。」

「いえいえ、そこまでの距離じゃありませんし。こんな大人数を泊めていただいて、ありがたい限りです。」

「そう言っていただけると、大変ありがたい限りです。ソウジさん……。」

「…………ど、どうしました?」

「また、遊びにいらしてくださいね?ラージャンの討伐というあなたのハンターとしての大きな節目に立ち会えたこと、誇りに思っております。」

 

 

そう言うと、イパスさんがその円縁のメガネを外した。

 

なーんかこの人怖いんだよなぁ……。

含む言い方が多すぎて、もう訳がわからなくなる。

 

 

「あ、ありがとうございます。」

「個人的に、えぇ、個人的にではありますが……私は、あなたの進む道を邪魔はしないと、ここに明言いたします。」

「……そ、それはどうも。」

 

 

そ、それはあれか?

中立の立場にある、大陸に大きく影響を持つ人物として。

俺の味方でいてくれる、とか……そういうこと?

 

 

「どうか、道中お気をつけください。()()()()()が、ここのところ強いようですから……。」

「…………あ、ありがとうございました!!それでは、失礼します!!」

 

 

ダダっ!!

 

バタン!

 

 

「ふ、ふー……。」

 

 

あー怖!

もう色々背負いたくなくて、逃げ出すように部屋を出てしまった。

 

南風。

 

南。

 

……首都、だよなぁ……。

あの人、何からどこまで知っているんだろう。

 

……できるなら今後とも、あまり関わりたくはない方であった。

 

 

 

* * * * * *

 

 

「道中気をつけて行こう、おじさん。」

「おぅ、フェニクさん……だったか?頼りにしてるぜ!」

「あぁ。まぁこの車には、最強の御仁がいるからね。護衛として情けない話だが、安心だよ。」

 

 

チダイを出発してから数時間。

御者台に座るおじさんとフェニクさんが話をしている。

頼りになる御仁。

 

それはもちろん、この方である。

 

 

「はーはっはっはっ!!気持ちがいいものだな!幌の上というのは!!」

 

 

マショルク教官。

恐らく、セツヒトさんに並ぶ最強の一角。

 

 

「教官!なんで仁王立ちで突っ立ってるんですか!!」

「見張りを行っているのだ!私が気配を出して、モンスター一匹寄せ付けないと約束しよう!」

「あ、教官もそういう部類でしたか。」

 

 

セツヒトさんもいつだかやっていたが、殺気を放ってモンスターが近寄ることさえ許さない芸当。

意味がわからんかったが、どうやら俺の知り合いは意味わからん連中ばっかりのようだ。

 

まぁ……教官なら落ちても死なないだろう……。

よし、放っておこう。

 

それに、荷台の中に入られたら、正直困る。

 

 

「あいつー……うるさいんだよーもー。」

 

 

なぜなら、セツヒトさんがここにいるから。

荷台にいるのは、俺、セツヒトさん、ショウコ、トツバ。

教官とセツヒトさんが犬猿の仲になっているのは、全員知っている。

おじさん以外。

 

 

「ご、ご主人様……セツヒトさん……マショルクさんに怒ってるんちゃいます?」

「うーん……まぁ何だ、気にするな。」

「ど、どうしてご主人様はそんなに落ち着いているんですか……。」

「……慣れた。」

 

 

どうにもならんことがこの世にはあるのだ。

二人の関係は、色々と深い事情があるからなぁ。

 

 

「慣れって……そ、そういえばご主人様、セツヒトさんにご返事は……。」

「あぁ……色々考えた。……セツヒトさん。」

「んー?何ー?ソウジー。あとー、せっちゃんー。」

 

 

俺とショウコがいるのは荷台の前方、おじさんの後ろ。

荷台の後方には、過ぎていく景色をぼーっと見つめるセツヒトさん。

そんないつもより少し落ち着いた様子のセツヒトさんに、話しかける。

 

 

「せっちゃんさん……横、失礼します。」

「何ー?そんなに私にくっつきたいのー?」

「いえ、話がしたいんです。……ワサドラに着いて、落ち着いてから。」

「お、おー……。うん……りょーかい。」

「……ありがとうございます。」

 

 

いつも通りのテンション。

軽いイジリは、今回ばかりは完全にスルーしておいて。

要件だけ伝えると、俺は荷台の中央に腰を下ろした。

 

 

「ご主人様……胎決めたんですね……いいです!男らしい!」

「な、何を言うか!俺はいつでも男らしく……無かったなぁ……。」

 

 

今までの所業を思い出して、ヘナヘナと力が抜ける。

失礼すぎる。

かっこ悪すぎる、俺。

 

 

「ご、ご主人様!?ど、どうしたんです!?」

「い、いや。おれ、かっこ悪いなぁと……。」

「ソウジ。はっきり言って身から出た錆。昨日のフェニクの言葉。とくと味わうといい。」

「うぐっ。」

 

 

『いい加減にしたまえよ?』

 

 

あぁぁぁあぁ。

トツバの言葉がクリーンヒット!!

俺の精神に百万ダメージ!

ついでにフェニクさんの言葉も思い出して追加百万ダメージ!

 

恐ろしいコンビである。

 

 

「…………まーまー、トツバちゃーん。これがこいつの良いところでもあるんだからさー。許してやってよー。」

「だめ。こういう男は周りまで駄目にする。おしおき。セツヒトもみんなも苦しんだ。」

 

 

うぐぅ……。

正にぐうの音も出ない。

いや、ぐうの音だけしかでない。

 

 

「そーなんだけどねー。……ソウジー、ごめんねー。フォローできないわー。」

「い、いえ、いいんです……俺は……最低です……。」

「アカン……ご主人様が真っ白になっとる……。」

「んー、ちょっとだけー、いい気味ー。でも可愛そうだからー……。」

 

 

ヘナヘナを通り越してヘニャヘニャ。

そんな俺の耳元に、セツヒトさんが近寄ってくる。

 

 

「そんな情けないソウジもー……いいよねー……。(ボソッ)」

「…………っ!!」

 

 

…………ボンッ!

 

一瞬で顔が赤くなる。

おぉ……今のは効いたわ……。

 

 

「……セ、セツヒトさん、何言うたんですか!?」

「んー?……ワサドラまでの、牽制ー?」

「い、いや聞かれても……。」

「……ショウコちゃーん、私やるときはやるからねー?」

「!?」

「んふふー……がんばろうねー?」

「う、うぐぐ。」

「ファイト、ショウコ。」

 

 

女性陣がギャーギャー何かを言い合う中、俺は荷台に横たわったまま。

 

移動一日目はこうして過ぎていった。

 

 

あ、あと半日もあるのね……。

 

 

 

* * * * * *

 

 

その後も無事に移動を終えた。

ワサドラにたどり着いたのは、チダイ村を出発して一日と少し。

「やっぱり一流と移動すると楽だわ!」とおじさんが言うように、来たときよりも更に早くたどり着いた。

 

教官の殺気。恐るべし。

 

 

ちなみにその教官は昨晩、セツヒトさんと何か話しているようであった。

ステゴロの喧嘩でもおっ始めないかと心配したのだが、杞憂に終わったので、そこは安心した。

ショウコなんか「ご、ご主人様、止めんでええんですか!?」と、めちゃくちゃ心配してたけど。

 

あの二人にも色々あるのだし、いい大人だ。

むしろ良い機会だと思って、何もしないことにした。

 

何を話していたのか気にはなるが……次の日のセツヒトさんがそこまで機嫌を悪くしていなかったので、悪い話し合いではなかったのだろう。

 

 

「それじゃおじさん、ありがとうございました!移動、お疲れさまでした!」

「おうよ!また呼んでくれよな!ソウジさんなら、ロハでもいいぜ!」

「いやいや、そこはちゃんとお金払わせて下さいよ。」

「ははははは!まぁ冗談だけどよ!……あー、まぁ、何だ。ソウジさん。……頑張れよ!」

「……はいっ!」

「おう!いい返事だ!それじゃあな!!」

 

 

おじさんにお礼を言って、そこで別れた。

いつもいつも気さくで、且つ素晴らしい仕事ぶり。

かっこいいぜ。

 

これからも懇意にさせていただきたいものである。

 

 

「さて……それじゃまず、ギルドの医務室に行きましょうか。すぐ報告もしましょう。」

「はーい……フェニクー、おんぶー。」

「えっ!?……わ、私か!?それはお安いご用だが……。」

 

 

思わぬセツヒトさんの言葉に、戸惑うフェニクさん。

しどろもどろになるこの人も、珍しい。

こういう時のセツヒトさんは強い。

 

だが、より強引なお方がここにいるのを、忘れてはならない。

 

 

「何だセツヒト!情けない!ほら、私が肩を貸してやろう!」

「……絶・対・嫌ー!」

「ははははは!何!遠慮するな!」

「人の話を聞けー!!!」

 

 

ヒョイッと担がれたセツヒトさんは、多少ジタバタしたものの、何とまぁ大人しく教官に担がれていった。

 

……お、おぉぉ。

な、何があったんだあの二人。

 

そんな姿を見て、ショウコが話す。

 

 

「何か……滅茶苦茶仲の悪いきょうだいみたいですね……。」

「あ……それだわショウコ。しっくり来た。」

「……お二人は仲が悪いと聞いていたが……そこまでではないのだな。」

「フェニクさん。いや、珍しいですよ。俺も驚いてます……昨晩何話したんだろう……。」

 

 

二人の事情を結構知っている俺としては、ちょっと驚き。

……少しは和解したのかな……。

嬉しい。

 

 

「こらー!!もうちょっと優しく運べこのバカマショルク!!」

 

 

ズドゴォン!!

 

 

「ぐぅぉぉぉ……い、今のは効いたぞ!セツヒト!」

「…………ふんっ!」

 

 

スタスタスタスタ……。

 

 

な、仲良くなったのかなぁ……。

うん、そういうことにしよう。

 

 

俺たちも後を追うように、ギルドに向かった。

 

 

……人の頭を殴る音ではなかったぞ……。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

ギルドは、ちょうど混雑時間が終わったところであった。

まだハンター達は結構いたが、朝と夕の渋滞ほどではない。

 

入り口に入ると、中がめっちゃザワザワしだした。

……まぁ、確かに。

教官にセツヒトさん、人気の高いショウコ、美人でかっこいいフェニクさん。

トツバも……まぁマニアックなお方にはどストライクだろうし。

 

話題には事欠かなそうなメンツである。

 

 

ちなみに、ギルドに入る時には流石に教官もセツヒトさんを下ろした。

ムスッとしながらスタスタと医務室に向かうセツヒトさんが、ちょっと可愛かったのは黙っておこう。

 

 

そんなザワザワとした雰囲気の中、フェニクさんが口を開いた。

 

 

「さて……ソウジさん。我々は別口の依頼だからね。報告はこちらで済ませるよ。護衛と狩猟はまた扱いが違うようでね。」

「あ、そうなんですね……わかりました。その、色々とありがとうございました。……助かりました。」

「ははは、ラージャンを倒した人間に頭を下げられては困るんだがね…………あー…………その、ソウジさん。」

「はい?」

 

 

フェニクさんは、俺達とは別に報告する必要があるらしい。

一緒にすれば効率的だと思うのだが。

報酬の出所が違うからだろうか?

……まぁ考えても分からん。

 

そのフェニクさんは、なにか言いたげにモジモジしている。

この人の珍しい姿を、今日はよく見るなぁ。

 

 

「…………ソウジさん、その、昨日は言いすぎてしまった。済まない。」

「い、いやいや。その、俺も色々と反省しました。……ありがとうございます。」

「…………あぁ。次は是非、クエストでハンターとして、ともに戦いたいものだ。色々教えてほしい。」

「俺なんかで良ければ……是非。」

「あぁ。それでは、な。行こう。トツバ。」

「ソウジ、ショウコ、ファイト。じゃ。」

 

 

スタスタスタ……。

 

 

二人がハンター用の受付とは違う方に向かっていった。

何気に今回とても助けられた二人である。

もし今回彼女らがいなかったら……苦しかっただろう。

次は厄介なクエストではなく、一緒に狩りを行いたいと思う。

 

 

さて。

 

俺たちもラージャン狩猟を報告したいところだけど……。

 

 

「お、お疲れさまでした!みなさん!」

「あ、ハイビスさん。」

 

 

俺たちを見つけると、いつもの受付嬢の制服を着たハイビスさんが走り寄ってくる。

眩しいその御姿に、いつもなら心の中で感謝申し上げるところなのだが……。

どうにも何だかドキドキしてしまう。

…………セツヒトさんの告白のせいか、意識している俺。

 

……アホか。とっとと本題に移ろう。

仕事だ、仕事。

 

 

「すみません、ラージャン捕獲の報告をしたいのですが……。」

「ええ!もちろん!狩猟、本当にお疲れ様でございました。みなさん、ギルドマスター室までお願いします。……あれ?セツヒトさんは……。」

「…………色々と、事情が。とりあえず、セツヒトさんが怪我をしました。」

「えっ!!??」

「医務室にいってもらってます。命が、とか、そこまでではないとは思うんですが……。」

「…………わ、分かりました。」

 

 

顔が白くなるハイビスさん。

仲良くなったもんな、セツヒトさんとハイビスさんの二人。

そもそもセツヒトさんが怪我する姿が想像できない。

 

 

 

「……よかったら、医務室へ行かれては?」

「えっ。」

「心配……なんですよね。」

「…………す、すみません。すぐに戻りますので!み、皆さんはお部屋まで、どうぞ!」

 

 

タッタッタッ……。

 

 

医務室のある方まで駆けていくハイビスさん。

まぁ、俺たちが報告すれば……問題ないだろ。

セツヒトさんとハイビスさん、かなり仲良くなったよなぁ……。

 

そんな一部始終もあり、周囲からの視線が熱い。

 

 

「おそらく、ラージャン捕獲の報告は来ているが故、こうも周りに見られるのだろうな!なに、気にせず堂々と行こう!」

「ウチ……ちょっと恥ずかしいです。」

 

 

堂々としていられる教官の方が珍しいと思う。

 

 

* * * * * *

 

 

コンコン。

 

 

『はい。空いております、どうぞ。』

「あ、失礼しまーす……。」

 

 

ガチャ。

 

 

ゾロゾロとシガイアさんの部屋に入る俺たち。

ショウコに教官、そして俺。

セツヒトさんはまだ診察中。

 

 

「皆さんお揃いで。狩猟、お疲れさまでした。」

「いえ。」

「狩猟の簡単な内容については、先程伺いました。マショルク、報告助かった。どうやら力になれたようだな。」

「あぁ!だが、正直ギリギリだったな!ソウジ君!」

「はい……教官が来てくれなかったら、多分俺……。」

「……ははは、なるほど。その辺も含めて、お話を聞きましょう。」

 

 

革張りのソファに腰を下ろした俺たち。

物珍しいのか、ショウコはキョロキョロとして落ち着かない様子である。

猫っぽい。

 

 

「じゃあですね……。」

 

 

腰を落ち着けたところで、シガイアさんに詳細を伝えることにした。

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