モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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149黒蝕竜を狩猟しましょう。

装備を手に入れた俺は再びギルドに戻った。

 

ハイビスさんと、クエスト内容の最終確認。

 

出立は、夜中未明。

日が明るみ始めてから、狩猟を行えるように、とのことであった。

 

……夜にヤツを相手にしては、正に闇夜の烏。

真っ黒だもんな。

 

 

* * * * * *

 

 

ハイビスさんに礼を告げてから、宿に戻った。

 

既に外は夕焼けの時間。

早めに寝て、備えないとな。

 

 

「あ、おかえりなさい。……ご飯、まだだよね。」

「あ、ただいま、ドール。」

「今帰りましたー!」

 

 

ショウコの元気な声が、宿に響く。

……明るい様子だが、無理しているようにも見えた。

 

 

「……ショウコちゃん、何かあった?」

「うえっ!?えぇと、いやぁ―――」

「明日、というか夜中、クエストに行くんだ。」

「えっ、すごいね。そんなに早く。」

「あぁ。ちょっと……危ないモンスターだ。気をつけて、行ってくる。」

「…………うん。わかった。…………お夕飯、用意するね。」

「あぁ。」

 

 

ドールに色々と察されて、しどろもどろになるショウコ。

そこに、助け舟を出した。

ショウコと目が合うと、申し訳無さそうに頭を下げてきた。

 

 

「…………ショウコ、無理はしなくていいんだぞ?」

「は、はい。」

「それにドールってめちゃくちゃ勘がいいからな。バレるって。」

「流石ドールちゃんやなぁ……。」

「伊達で接客業をしているわけじゃないからな。」

 

 

冬山でハイビスさんに、「受付嬢は、一にも二にも観察眼が大事なんです!」と教えられたことを思い出した。

そういう意味では、ドールは受付嬢に向いているのかもしれない。

 

ドールが受付嬢…………。

 

 

「…………。」

「ご主人様……何か変なこと考えてます?」

「えっ!?いやいや!考えて無いぞ!?」

「……ホンマですかぁ?」

 

 

……追加。

ショウコも受付嬢に向いていると思う。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

ガラガラガラガラ…………ガタン!

 

 

「うおっ……と……。」

 

 

急な振動に思わず声が出た。

 

夜の街道は、本当に真っ暗だ。

そんな中、雷光虫の明かりを頼りに進むのは、はっきり言って無謀。

 

モンスターに「狙ってくれ」と言っているようなものだ。

 

だが、そのモンスターは、全く出てこない。

おそらくゴア・マガラの影響なのだろう、恐ろしい限りである。

 

 

「…………なんにも居ませんねぇ…………。」

「まぁ、いたら困るんだけどな。」

 

 

車に揺られ、数刻程。

俺たちは、ゴア・マガラの狩猟ポイントとワサドラの真ん中辺りにまで進んできていた。

 

乗っているのは、当然、あの素敵なおじさんの車である。

もうこの人以上に信頼できる御者なんて、俺の中では存在しない。

 

 

「暗くても道の方は任せてくれ!走り慣れた所だ!」

「急にすみません、おじさん。」

「いいってことよ!まさかギルドマスターから直々に声をかけられちゃ、俺も頷く以外ねえしな!何よりソウジさん達を運ぶとあっちゃ、むしろやらせてほしいぐらいだぜ!」

 

 

嬉しいことを言ってくれるおじさん。

俺の何を気に入ってくれたのかはさておき、俺はこの人が大好きだ。

 

だが、いつもと様子が違うのは、おじさんも流石にわかるようだった。

それは、ガーグーたちも同じ。

 

 

「……グァ!ガ!」

「…………クゥゥ…………。」

 

 

時折切なそうに鳴く姿に、申し訳なく思う。

 

 

「こいつら、怯えきっててなぁ……。すまねえ、ちょっと揺れるぞ!」

「はいっ。」

 

 

ガタン!ダン!

 

 

「うおっ……。」

「にゃっ……!」

 

 

ガタガタと揺れる台車。

少ない光源と、真っ暗な道。

危な過ぎる行程だが、おじさんは流石である。

 

マップを見ながら行き先を確認するが、ほぼ直進できているのだから。

 

かっこいいぜ。

 

ちなみに、今日はドール大明神様の頭を撫でられていない。

だって夜中出発だったし。

ショウコに「ベッド行きます?」なんて言われたが、無理に決まっている。

朝飯も、携帯食料(お手製のおにぎり)である。

 

 

「…………ショウコ、最後の確認をしておこう。」

「……はい。」

 

 

昨晩話した内容を、再確認しておく。

 

 

夜寝る前。

何かの足しは無いかと情報画面を見ていたら、モンスター情報の下の方に「ゴア・マガラ」の文字が現れていた。

もちろん、すぐさま確認した。

だが期待はすぐに裏切られた。

 

 

【モンスター名】

ゴア・マガラ

【種族】??#$%&

【別名】

黒…#?

【詳細】

??に目?#?$れる大型モン?非常に神??鬼没であることから目?$?(……が極めて少なく???そ$'('&$%(&$)'&$(&%$)(の生れば……そ??周辺に多大なる被害をもたらし???その……危険度……は非常に高……い?赤黒い鉤爪の付いた非常+*~'%$)<?=??翼膜??常に生え代わりを……繰り返し……大??鱗粉となって大気中#$%&=(&%')??>)?)'%%…こ…………??鱗粉を周囲??帯に撒#&=(?>}&???散らした鱗粉を吸引した生物には神経系・身体??力…??異常、抵抗力の低下と????た症状が現れ%$'#=??<?)%

 

 

文字列が浮かんだ思ったらすぐに化け、また戻り……その繰り返し。

何度も点滅したり文字が変わったりと、視認がかなり難しい。

 

何とか目を凝らしてわかってきた特徴としては、飛行能力が高いこと、そして黒い霧の正体はその翼の鱗粉であろう、ということぐらいである。

 

 

色々と知りたかったが……仕方がない。

そもそも前情報を先に得られること自体が異常なのだ。

 

 

「まずは黒い霧。要警戒だ。」

「ですね。」

「報告からじゃ、しばらく経ってからそれが発生したという話だけど。その時はショウコ、ゴア・マガラからは距離を取ってほしい。」

「はいっ。」

「……よし。じゃあ戦い方なんだけども。……ぶっちゃけて言うと、分からん。」

「ご主人様の例のやつは―――」

「ああ、今もダメだ。まぁしょうがない。やるしかないさ。」

「…………。」

 

 

打ち合わせとも言えない打ち合わせを続ける。

いろんな可能性を考えて動く。これしかないわけで。

 

 

「……罠の類は、効きますかね?」

「わからん。だが、ラージャンもそうだったけど、強いモンスターになるとその辺軽く見破ってくるらしいからなぁ……あまり期待はしてない。」

「ご主人様の伝家の宝刀も、難しい、と。」

「ああ。もしかしたらジンオウガのシビレ罠みたいに、そもそも効かないヤツもいるしな。」

「よう飛ぶいうなら……閃光玉は?」

「やってみてもいいかもしれない。だけど、過度な期待はしないでおこう。」

 

 

リオレウスには効果覿面だったけど。

 

そこから10分ばかり、打ち合わせを続けた。

 

 

 

「―――こんな感じで、高度な柔軟性をもって臨機応変に対応しよう。」

「行き当たりばったりってことですね!」

「…………そのとおり。」

 

 

身も蓋もないショウコであった。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

辺りにモンスターの気配がまったくない。

狩り場とは思えないほどの、静寂に包まれた森丘。

ここが、今日の仕事場だ。

 

 

「それじゃ、おじさん。ありがとうございました。手筈通りに。」

「おうっ!がんばれよ!」

「……はい!」

「ショウコの嬢ちゃん!ソウジさんをよろしくな!」

「はいっ!」

 

 

 

ザッザッザッザッ……。

 

 

 

おじさんには、一応の安全地帯と言えるスタート地点に待機してもらう。

ここから俺たちは、ゴア・マガラを探す。

 

とは言っても……。

 

 

「…………あっち、ですよね?」

「あぁ……何か、分かるな。雰囲気がすごい。」

 

 

来た道と同様、周囲一帯には生き物と呼べるようなものがほとんどいなかった。

虫とか魚とか……そういう小動物はいるけど。

ファンゴもいなけりゃ鳥のさえずる声もなし。

 

やっぱアイツ、おかしいわ。

 

 

「へ、変に緊張しますね……。」

「俺もだ。」

「ご主人様は普通に見えますけど……。」

「そういう、表情を取り繕うのは、こう、慣れていてなぁ。」

 

 

 

その辺は、中身おっさん。

現代社会である程度揉まれてきた訳で。

そうでなくても、今までたくさんの狩猟を行ってきた。

 

プレッシャーには慣れている。

 

 

 

はずなのだが。

 

 

 

「……いたな……。」

「うわぁ……。」

 

 

見つけた。

瞬間で、粟立つ体。

 

 

チダイ村の西の森、その湖で見た時はある程度距離があった。

モンスターにも気取られ無いような距離。

 

だが、今視認した。

 

黒い巨体。

木々や緑の地面にあまりに合わないコントラスト。

明らかに、異質。

 

見た目だけではない。

発する雰囲気もまた、異様であった。

 

 

「っ……!」

 

 

同時に、俺の体が疼きだしてきた。

もちろん予想はしていたが……ごまかすことはできないような体の異変。

 

動けないほどではない。

むしろ心と体が熱を帯びている。

 

 

(早く戦いたいとか……そういう焦燥感……。)

 

 

興奮状態に陥るという、狂竜症の症状だろう。

 

 

「ご主人様……平気ですか?」

 

 

すかさずショウコが、俺の異変に気づく。

流石である。

 

 

「あぁ、多分平気。」

 

 

推測の域は出ない、何となくの返事を返す。

自分の体が自分でわからない事ほど、怖いものはない。

 

だが、こちとら実年齢は結構な年。

セルフコントロールしてみせよう。

 

 

「…………ふぅー…………。」

 

 

深呼吸して、落ち着く。

……うん、大丈夫だ。

興奮したなら、興奮したなりに攻撃、回避を行えばいい。

 

 

「大丈夫だ。最終確認。」

「……はいっ。まず、ウチの耳にもモンスターとかそういうのの音は感じません。天候は晴れ、直に日も差して来る頃合いです。頃合いとしては……。」

「ばっちり、だな。」

 

 

今俺たちがいるのは、3メートルほどに切り立った崖の下。

その向こう、30メートルぐらい離れた位置。

黒い翼をポンチョの様に覆って佇む、ゴア・マガラがいる。

 

崖の影から出れば、おそらくあちらも気づくだろう。

そうなれば、交戦は必至だ。

 

 

「まず俺が近づく。状況次第だが、いつもどおりショウコは後ろから回って応戦してほしい。霧が出たら……。」

「……退避します。」

「ああ。範囲はわからないが、崖の上にいるといいかも知れない。」

「はい。」

「初撃は頭を狙うけど……無茶はしない。何か俺、体も心も焦ってるんだけど……『まずは、見』だ。」

「ご主人様、無茶せんよう、お願いしますね。」

「約束できないなぁ……だって相手が相手だぞ?」

「それを止めるのが、ウチの役割です!」

「はい、ごめんなさい。」

「……ふふ、ええですね、いつも通りや。」

「本当にな。」

 

 

異変を異変として分かっているなら、対処の仕様がある。

俺は今、おかしい。

気がはやっている。

なら、焦らない。絶対に。

 

 

「焦らず、無茶しないようにする。」

「無茶しない宣言するご主人様なんて……珍しいわあ。」

「……本当にな。」

 

 

ショウコのご尤もなご意見を賜りながらも、最後の打ち合わせは終わった。

状況の確認と言っても、やれることなんて限られているし。

 

いつも通りに。

頑張ろう。

 

 

「…………行こう!」

「はいっ!」

 

 

ダッ!

 

 

崖の裾から、飛び出す。

同時に見えたのは、翼を広げ今にも飛び立とうというところのゴア・マガラ。

 

 

(飛ぶ……なら!)

 

 

ヒュッ!

 

 

ビカァ!!!

 

 

ポーチに手を触れ、閃光玉を取り出した。

すぐさま投擲。

うまいこと、顔の前で炸裂したが……。

 

 

「…………効果なし!」

「了解です!」

 

 

俺の数歩後ろで返事をするショウコ。

閃光玉は効かないようだ。

残念。

 

だが、落ち込む暇などもちろん無い。

 

 

ダダダッ!!

 

 

ジャキン!!

 

 

鍛え上げた足腰で、森丘の地面を蹴って走る。

 

白んできた空の明かりが、薄暗く狩り場を照らし始める。

視界はまぁまぁ良好。

 

武器を構える。

双剣を、ダランと両腕にぶら下げた。

 

 

「………………グゥゥ…………!」

 

 

こちらの敵意に、今にも飛び立たんとしていたゴア・マガラは再び翼をたたみ始めた。

そのまま、首を上に向ける。

 

おそらく、叫ぶと思う。

 

ならば。

 

 

(……鬼人化!!)

「―――グギャァァァアァァァアァァ!!!」

「っ!!」

 

 

鳴き声というよりは、もはや叫声。

何度も聞きたくはない、そんな音。

 

だが。

俺は一足早くゴア・マガラの足元、その巨体の下にたどり着き。

 

 

ザシュ!!ザザザザザザン!ザン!

 

 

「ギャアァ!!?」

 

 

その叫び声に合わせて、回転乱舞を入れる。

様々な大型に見舞ってきた、咆哮無視のカウンター。

うまく入った。

 

 

「やぁぁぁ!!」

 

 

ヒュン!ズザ!

 

 

ショウコの爪撃が、後方で入っている。

挟撃の態勢は整った。

 

後は……。

 

 

(いつも通り……!)

 

 

特別な事は無い。

いつもの狩猟を行う。

 

いくら異質なモンスターとはいえ、モンスターはモンスター。

様子を伺いながら、動きを見切っていく。

 

 

「…………ギシャァァァアァアァァ!!」

「くっ……!!」

 

 

まさかの2回連続の咆哮。

たまらず耳を押さえる。

 

 

「…………ガァァァァ…………。」

「……得意げな顔しやがって。…………こっちだ!」

 

 

ザン!

 

 

そののっぺりとした顔面に一閃。

ショウコの方には、向かせない。

 

しかしこいつ……目が無いのか……?

閃光玉が効かないわけだ。

 

 

「ガァァァ!!!」

「うおっ!?」

 

 

ドガア!

 

 

右前脚。

俺を命を抉り取るかのような、その攻撃。

咄嗟に左後方に回避する。

 

 

(速いっ!)

 

 

リズムが独特、というのはシガイアさんから聞いていたこと。

緩急が結構ある。

のらりくらりとしていて、突如としてトップスピード。

気を付けなければ。

 

そして何より気になるのは……。

 

 

(体から常に黒い霧……鱗粉……?)

 

 

ゴア・マガラの体からは、交戦直後から既に黒い霧が発生している。

微量ではあるが、ショウコに影響があるとまずい。

 

 

「グァァアアァァアァ!!」

「っ!?」

 

 

体を縮めたゴア・マガラ。

すると、急に突進をしてきた。

その四足で地面を抉り取っていく。

 

俺は転がって避け、すぐにゴア・マガラを視界へ。

 

 

「あぶな……ショウコ!無事か!?」

「はいっ!ウチは何とも!」

「よし、……じゃ―――」

 

 

「もう一回挟撃態勢に入るぞ」と、言おうとしたその時。

ゴア・マガラは首を震わせた。

その口には、黒紫色の何か。

 

……まずい。

 

 

「―――ショウコ!散れ!!」

「っ!!はいっ!!」

「ガァァァア!!!!」

 

 

ドォン!

 

 

二人してその場から離れる。

直後、ゴア・マガラから放たれたのは、黒紫色の地を這う煙。

煙弾、といえばいいのか。

 

それが、俺達のいたところに着弾する。

 

 

「くっ……!ショウコ!当たるなよ!」

「はいっ!」

 

 

運悪く、ショウコが狙われている。

黒い霧と同じような色。

少し紫がかっているが……食らうとまずい気がする。

 

狂竜症に陥らないとも限らない。

 

 

(ショウコなら回避はいけるだろう……問題は……。)

 

 

問題は、2つ。

急いで考える。

 

まず、霧の問題。

俺が霧が平気……あまり問題にならない、という前提だが、ショウコに食らわせるのはいけない。

今まさに、その霧が発生し出している。

辺り一帯に充満するのも、時間の問題だろう。

 

そして距離感の問題。

緩急を付けた攻撃で、中々挙動が読めない。

だが、うまく懐に入れば……対策のしようがあるな。

 

 

なら……。

 

 

「ショウコ!!霧の発生!後退!!」

「は、はいっ!!くっ!ご、ご主人様は!?」

「……打って出る!!」

 

 

ジャキン!

 

 

ダダダッ!

 

 

煙弾を撃ち、身体を震わすゴア・マガラ。

その喉元に、突っ込む。

 

 

(鬼人化……!)

 

 

今日二度目の鬼人化。

はっきり言って、新しい装備は重い。

だが、苦にはならない。

どれだけ鍛えて来たと思ってるんだ。

 

身体能力を上げ、ゴア・マガラの足元に迫る。

 

 

(動きを見て……!)

「ガァァァア!!」

(っ!対応する!!)

 

 

ヒュオン!

 

 

顔の右、掠りそうな程ギリギリのところに、ゴア・マガラの爪撃が通り過ぎる。

避けられた。

ならば。

 

 

「ふんっ!!」

 

 

ザシュ!ザザン!

 

 

「グァァアアァ!!」

 

 

まず一撃。

次に来るのは……左脚か!

当たって、たまるか!

 

 

「ふんっ!!」

 

 

ダダン!

 

 

ゴア・マガラの体の下。

右から振り下ろされる、その攻撃を。

 

俺は、()()()()()避ける。

前飛び込みの前転で、左脚の一撃を避け。

 

 

「ふんっ!」

 

 

ザン!

ザシュザシュ!!ズザザザン!!

 

 

「ギァァアァアァァ!!」

 

 

ゴア・マガラの右半身に、下から双剣を入れる。

 

 

(デカブツ退治は、やっぱこうだな……。)

 

 

コイツの挙動は、まだ読めないところがある。

だが、その巨体の足元は留守になりがち。

攻撃そのものが、届かなければいい。

 

 

……言うは易いが、もしボディプレスなんてやられたら、死んでしまう。

諸刃の剣。

だが、こいつは翼が自慢のタイプ。

 

ボディプレスは無いと、信じる。

 

 

「グァァ…………!!」

 

 

口に見える、黒紫色。

再びの煙弾の構え。

それを待っていた。

 

 

(体……がら空き!!)

 

 

今までのモンスターも、たくさんの遠距離攻撃を行ってきた。

ほぼ全てのモンスターに言えることは、その攻撃中は足元ががら空きだということ。

 

ゴア・マガラも、同じ。

だと思う。

 

煙弾を吐く、その時間。

隙あり、だ。

 

 

ザシュ!

ズザザザン!ザザン!

 

ヒュパッ!!

 

 

(入った……!)

 

 

斬り結んだ、その最後の一撃。

音も感触も、違った。

 

 

「ガァァァア!!」

 

 

ドガア!!

ドガン!!

 

 

 

俺の攻撃なんぞ、まるで効いてないかの様に前脚を振り上げるゴア・マガラ。

1撃、2撃と連続して繰り出されるその爪。

 

鋭利な切っ先、絶対に当たりたくない。

 

 

(…………いち…………にぃっ!!)

 

 

バックステップで避けたあと、順番に地についたその脚めがけて。

 

 

(連斬……!!)

 

 

ザザザザザザザシュッ!

 

ヒュパ!!ズザザザン!!

 

 

コマのように回りながら、双剣を当てていく。

 

 

「グァァアアァァアァ!!?」

 

 

感触が違う。

今までのような、ただ斬るだけの感じと違う。

 

これが新しい武器と防具の効果……。

攻撃が、入っている。

 

 

(セツヒトさん……これ凄いです……!)

 

 

スキルとやらが働いているんだろう。

狩猟に出る前に情報画面で自分のスキルを見てみたが、訳わからん文字が羅列されていた。

 

攻撃、弱点特効、力の解放、業物、超会心、強化持続、砥石使用高速化とあった。

セツヒトさんによれば、砥石を研ぐスキルについては後付け、スロットもあるからまだ強化できる、と言っていた。

 

恐ろしい。

そして、今までそれら無しで頑張ってきて良かったと思う。

この装備に慣れたら、そりゃ腕は落ちるだろう。

 

 

それぐらい、違う。

 

 

「グァァァァア…………。」

 

 

忌々しそうに俺を睨みつけるゴア・マガラ。

いや、目がないから実際には違うが。

…………まぁおそらく、その鱗粉を撒き散らしながら俺の場所を確認しているんだろう。

そういう役割が、この霧にはあると見た。

 

 

(辺りに充満してきたな……。)

 

 

ショウコを下げてよかった。

おそらく、吸い込んだら悪影響は必至。

 

 

「ガァァァァァァアアァァァ!!」

 

バッ!

 

(っ!空中!!)

 

 

俺の前足への攻撃が効いたのかは分からない。

ただ、ゴア・マガラはその翼を広げた後、空を飛んだ。

 

 

バサッ……バサッ……!

 

 

「グゥゥゥゥゥゥ……グルアアアァァァァアア!!!」

(また煙弾!?)

 

 

ドガァ!

 

ブワッ……。

 

 

空中に飛び上がったゴア・マガラ、その姿勢のままホバリングをしていた。

推進力はどこから来るのか……そんなことはどうでもいい。

 

肝心なのは、黒紫の鱗粉を、次々と地面に撒き散らしていくということ。

着弾する度。

フヨフヨと、煙弾が落ちたところを中心として、円状に拡がる。

 

 

(くっ……そぉ!!)

 

 

もはや、辺りに無事なところなどありはしない。

直撃だけは避けながら、視界は悪いが何とかゴア・マガラを視認する。

 

 

(……このままだとジリ貧……!!なら……!!)

 

 

空中にいるとは言え、双剣が届かない高さでは無い。

切っ先さえ当たれば、可能性はある。

 

 

「……シッ!!」

 

 

ドゴォ!!

 

 

再度俺に向かって放たれた煙弾を避けると、一直線に走る。

バサバサと翼をはためかせながら、黒紫の鱗粉を放つゴア・マガラ。

その下から。

 

 

「……らぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

ダン!!

 

 

跳躍し、後ろ脚に双剣の取っ掛かりをつける。

そこを支点として、無理矢理に自分の体を捻じ曲げる。

 

 

(空中回転乱舞!!)

 

 

ズザザザザザザザザザザザ!!

ザシュ!!ヒュパッ!!

 

 

「ギャアァァァアァアァ!!!」

 

 

ドガア!!

 

 

(成功!!) 

 

 

ものすごい音とともに、地に墜ちるゴア・マガラ。

空中にいるなら、斬って落とすしか無い。

俺にできるのは、これぐらいしか無い。

 

俺は何とか着地して、追い込みに入る。

 

 

(鬼人化……乱舞!!)

 

 

ザシュ!!

ズザザザザン!!ザザン!!

ザザザザザザザ!!

 

 

おそらく弱点であろう頭部に、とにかく剣撃を入れまくる。

チャンス。

少しでも、ダメージを稼ぐ!!

 

 

ズザザザザザザ!!ヒュパ!シュパン!!

 

 

「………グルルルルルル……!!」

「っ!ちぃっ!!」

 

 

舌打ちをしながら、後退。

 

 

「いい感じです!!ご主人さま!!」

「ああ!ショウコ!!こっちには来るなよ!!」

「はいっ!ち、近づけません!!」

「それでいい!!」

 

 

おそらく崖の上にいるのであろう、ショウコに大声で伝える。

崖上が安全であるとは限らないが……最悪スタート地点に戻ってもらっても良い。

 

それほどに、辺りは黒紫に染まった。

先程まで白んでいた空が、もはや別の世界のようだ。

 

 

(さて……次は……っ!?)

 

 

気を取り直して、再び攻勢に出ようとした。

その時。

異変に気づいて、思わず身構えた。

 

 

 

ゴア・マガラの雰囲気が変わった。

 

 

 

その両脚を地に張り付け、踏ん張っている。

 

 

「…………ショウコ!!何かしてくる!!」

「はいっ!!気をつけま―――」

 

 

遠く切り立った崖の上にいるであろうショウコに、大声を上げて伝える。

その返事を聞いた直後。

 

 

「グギャァァアァアァァァァアア!!」

「っ〜!!」

 

 

今までとは比にならないほどの、大咆哮。

俺は耳を押さえ、姿勢は前傾に。

何とか片目で視認する。

 

 

 

「……グギャァァアァアァァァァアア!!」

(まだ……。)

 

 

2回目の咆哮。

これはある程度、読んでいた。

 

3回目は、無い。

そう踏んで、耳を離した。

 

だが。

 

 

「…………ギャァァアァアァァァァアア!!」

「ぐぁ…………!!」

 

 

耳を劈く、3回目の咆哮。

周囲の空気が震えている。

ゴア・マガラの身体を中心に、同心球状に白い衝撃波のようなものが見える。

 

 

(ティガレックス並か……それ以上……!)

 

 

耳がキーンとして、うまく聞こえない。

それほど大きな声だった。

 

そして、何とか開けていた目で確認したゴア・マガラは。

先程までとは、全く違う姿をしていた。

 

 

「……いよいよ本気ってわけか……。」

 

 

のっぺりとしていた頭からは、怪しく白紫に輝く角が2本。

体中からは、これでもかと黒紫の霧を放ち。

 

 

「……。」

「グァァァァァァ………。」

 

 

一層異彩を放ち始めたゴア・マガラ。

 

 

「……ふぅー……よしっ。」

 

 

恐怖で震える心を締め直すように、俺は息を整え。

 

本気のゴア・マガラと、相対した。

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