モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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152退院しましょう。

俺とショウコが入院した病室。

お見舞いに来てくれた人達で、たいへん賑やかであった。

 

……賑やかな病室ってなんだ。

 

 

セツヒトさんにオスズさんに、ハンズさんにドールに……。

とにかく騒がしくなってしまった。

 

 

「ソウジさん、体の方はどうだ?」

「おじさん。いや、本当に。この度は助かりました。」

「いや、いいってことよ!気にしないでくれ!」

 

 

俺とショウコ、二人を運んでくれたおじさん。

異変を感じて、狩場の中まで迎えに来てくれたというのだから、ありがたいという他なかった。

 

 

「まぁ、今はちょっと騒がしいからな!また落ち着いたら酒でも飲もうや!じゃあな!」

「あ、はい!お気をつけて。」

 

 

そして迷惑を考え、早々に立ち去っていった。

お見舞いに持ってきてくれた果物類を、スッと置いて。

かっこいい人である。

 

 

 

セツヒトさんは終始、俺にべったりだった。

 

 

「いやー、やるじゃんねー。ソウジー。もうG級でいいんじゃなーい?」

「何を言いますか。今回もギリッギリの狩猟でしたよ……。」

「誰にも倒せないようなモンスターを倒したってー……結構凄いことなんだよー?」

 

 

会話こそ普通だが、距離が近い。

ベッドに腰掛けて俺の横を陣取っている。

 

 

「セツヒトさん!その、近いですよ!ソウジさんと!」

「おー?何ー?ハイビスちゃんやきもち系ー?」

「なななな何をおっしゃってるのか……。」

「じゃーあー……はーい、どうぞー。」

 

 

ヒョイ。

 

 

ポスン。

 

 

セツヒトさんが、まるで子猫を扱うかのようにハイビスさんを持ち上げる。

すると、自分が座っていた場所にハイビスさんを座らせた。

 

 

「えっ!?えっ!!?」

「よーし、これで文句ないでしょー?」

「い、いやいやいや!そそそそういう話ではありません!!」

「えー。ちがうのー?」

 

 

……とりあえず放っておこう。

この方々とは、また話をしないといけない。

 

 

 

その反対側、ショウコのベッドの周りには、オスズやドール、ハンズが並んでいた。

ショウコはまだ目を覚まさない。

 

 

「ショウコ……お見舞いに来たにゃあ……?ダメにゃ、起きないにゃあ……。」

「そ、そんなに起こさなくてもいいんじゃないかな?寝かせてあげよう?」

「そ、そうですよ。お疲れなんですよ、きっと。」

 

 

オスズが、寝ているショウコのほっぺたをツンツン。

それを制止しようとするドールとハンズ。

 

珍しい組み合わせである。

 

 

「にゃあ。ショウコは昔から、寝るふりがうまかったんだにゃ。もしかしたら、と思ってにゃ。」

「脇腹をこちょこちょして起こすのはどうかと思いますよ……。」

 

 

オスズはそんなことまでしていたのか。

見逃した。

なんだその可愛い光景。俺も見たかったぞ。

ヒナタさん辺りが見たら、尊さに涙を流すかもしれない。

 

 

「……。」

「ソウジー……ハイビスちゃんがせっかく横にいるっているのにー、変なこと考えてるでしょー。」

「えっ!?いやいやいや、考えてませんよ。」

「ははははハレンチィ!?」

 

 

ギャーギャー。

 

 

セツヒトさんのいつものいじりに、ハイビスさんの鋭敏なハレンチ感知センサーが発動。

「一体何を考えていたんですか!?」と聞かれ、「オスズさんがショウコをくすぐっていじるというそれはもう可愛らしい光景を頭に浮かべていました」なんて正直に言うわけにもいかず。

 

何とか誤魔化しているところに救いの手が現れた。

 

 

 

コンコン。

 

 

ガチャ。

 

 

 

「入ります。みなさん、ここは病室ですから。面会時間は終わりですよ。」

「あ、はーい。じゃねー、ソウジー。ショウコちゃん。」

「こ、これは失礼しましたにゃ。また来ますにゃ!ソウジさん、ショウコ!」

「ソウジさん、お着替えとか、平気?」

「あ、大丈夫だぞ。ありがとう、ドール。それに、ハンズも。」

「ご無事でとにかく安心しました!また来ます!早くランニングしましょうね!」

「お、おう。」

 

 

ハンズからランニングのお誘い。

いつも辛そうな顔をしているからやめておこうと思ったが。

よし、そんなに言うならまたやってやろう。

 

 

 

看護師さんがやってきて、皆が素直に病室から出ていく。

ようやく解放された俺。

非常に騒がしかったが、ようやく静かな部屋に戻りそうだ。

 

 

「……ソウジさん。」

「あ、はい。」

 

 

だが、一人残っているハイビスさん。

看護師さんが来た瞬間、小型のモンスターのように俊敏に起立していた。

 

 

「……本当に狩猟、お疲れ様でした。その、ゆっくりされてくださいね。」

「……ありがとうございます。ハイビスさんも、お仕事の方頑張ってください。」

「……はい!ふふ。……よーし、やる気出てきました!残業頑張りますね!」

「あ、はい。」

 

 

バタン。

 

 

ハイビスさんが非常にやる気になって、部屋を出ていかれた。

これから残業か。

 

…………。

 

 

うーん、受付嬢を始めとしたギルド職員は、間違いなくブラック。

ハイビスさんが倒れませんように。

 

 

「……ん……うーん……。」

「……。」

 

 

ショウコが何やら唸っている。

 

……俺も何もすることがないので、とりあえずおじさんの持ってきてくれた果物でも食べることにした。

 

ショウコは、まだ目を覚まさない。

 

 

* * * * * *

 

 

 

病室は暇である。

なので、ボーッと思考するにはちょうどいい。

 

時刻はもう夜。だが、全く眠くならない。

開け放した窓からは、外の喧騒が少し聞こえてくる。

……既に10回は「乾杯」の声が聞こえている。

 

町の活気が、再び戻ってきたのだろう。

いいことである。

 

 

「…………。」

 

 

考える。

まずは今回の相手、ゴア・マガラのこと。

一言で言えば、異様だった。

 

思えば、ハンザさん達の暮らす放牧地帯にいるジンオウガの目が、死ぬ間際に赤かったことから、色々と騒動が始まった。

神様から話を引き出して、なんかヤバイことは確定 。

そこから沼地でタマミツネと戦った。

アイツは、完璧に鱗粉……黒い霧に感染していた。

攻撃や挙動の凶暴性、強さ……いつもの様子とやらは知らなかったが、それでも異常だった。

 

その原因、大元が、今回の相手であるゴア・マガラ。

 

タマミツネと同様に感染したモンスターもまだいる。

早めに倒すことができてよかった。

ギリギリだったけど。

 

 

「…………。」

 

 

狩猟の時を思い出す。

 

……ギリギリ、だったな。

そりゃまあ、体に異変は起きるとは思っていたし、実際精神的な意味では、狩りの前からおかしかった。

コントロールしながら戦えていたと思うが、急に力が抜けた。

 

急だったし、最悪のタイミングだった。

 

俺の場合、狂竜症を克服していたと思っていたが、勘違いだったのか。

それとも流石に人間の許容できる鱗粉の量をオーバーしてしまったのか。

……その辺、自分の体なのに定かではない。

 

……まぁ、この辺はいいや。

考えても答えは得られない気がする。

 

 

問題なのは、ここから。

 

命を削る技、『獣宿し』というやつである。

あれは……強力だった。

憑依状態か……それ以上の力を発揮できた。と思う。

頭の中は結構冷静で、冷静なまま、ゴア・マガラを殺してやる、と。

そういうわけわからん心境であったことは、覚えている。

 

 

「命を削る技、か……。」

 

 

使わない、とは言ったけど。

もし。

もしもまた、今回のような状況になったら?

大切な人がやられて、絶体絶命になったら?

 

考えたくないことではあるが……切り札として使うしかない。

 

 

常に使うことは無くても、その発動条件とやらは、少し研究していくことにしよう。

ショウコ辺りには全力で止められそうだから、こっそりと。

 

 

研究の切り口は、やはり鬼人化、だろう。

今まで何度となく行ってきた、双剣使いにだけ許された、身体強化術。

精神の移行というのか、それを行うことには慣れている。

意図的に、自身の攻撃性を高め興奮状態に持って行く、か。

 

……難しそうだが、やってみよう。

 

 

 

「う……ん…………?」

 

 

ショウコの苦しげな声が聞こえた。

チラリと見る。

すると、驚いた。

 

 

「あれ……ショウコ?」

「あ……。」

 

 

何と、ショウコが目を開けて、こちらを見ていた。

その目からは涙が流れ、ベッドにまでポタポタと溢れていた。

 

 

「ショウコ!だ、大丈夫か!?何処か痛いのか!?」

「ご主人様…………ご主人様や……あぁ……よかったぁ…………。」

「……ショウコ。」

 

 

俺の顔を見るなり、泣き出す。

オロオロとしてしまう。

どうすればいいのか。

 

 

「……と、とりあえず……無事か?」

「……それは、こっちのセリフです。」

「いやいや!充分に俺のセリフだ!……心配した。」

「それは、ウチもですよ……。」

 

 

無理に体を起こそうとするショウコ。

痛がりながら上半身を起こすと、体のあちこちを確認し始めた。

 

 

「痛いですけど……ご主人様が無事で……すんません。泣いちゃいました。」

「……いや、いいんだ。まずは……ありがとう。」

「…………。」

「ショウコが庇ってくれなかったら……多分今頃、俺たちはここにいない。」

「…………あの時、ウチも体がうまく動かなかったんです……でも、なんとかせんとって……気がついたら、崖から飛び降りて、アイツの前に……。」

「そうか……。」

 

 

どこかに避難していたわけでは無かったのか。

 

 

「死ぬ時は、そん時や、思うて。気いついたら、もうここに。」

「そうか。」

「あん時……どうなったんですか?」

「…………。」

 

 

そこから、ショウコに色々と伝えた。

何とかゴア・マガラを屠り、おじさんが俺たちを拾ってくれて。

三日間寝込んでいたこと。

昼間には、色んな人がごった返していた事。

 

特にオスズに色々と体を触られていた。

と伝えたら、ショウコが頬を膨らませる。

 

 

「オスズさんは、後でお説教です……。」 

「ははは……あの人なりに、心配していたんだと思うぞ?」

「そうですよねぇ……あの天然さんは……。」

 

 

そんなことを言いながら、わずかに微笑むショウコ。

母親、姉、そんな家族みたいな間柄なんだろうな。

 

お互いに気を使わない、そんな関係。

 

すると、俺の話題になった。

 

 

「……その、ご主人様の獣宿し、ですか?」

「あ、あぁ。」

「……絶対に、使っちゃいけませんよ?……命を削るやなんて、そんな……。」

「…………。」

 

 

確約はできない。

まぁ頻繁に使うつもりは勿論ないが。

というか使えるかもわからんし。

 

でもまぁ……ヤバいときは……。

 

 

「…………やるつもりですね、ご主人様。」

「…………そりゃあ、な。」

 

 

大切な人や町がやられそうなら。

俺は、多分迷わない。

 

 

「……付き合いも長くなりましたからね。ご主人様は、無茶する人なんです。よぅわかります。」

「ははは。そうだな。」

「もう……やっぱり、ウチがおらんといけませんね。」

「……ああ。よろしく頼む。相棒。」

「ふふっ……はいっ。」

 

 

笑みをこぼして、返事をするショウコ。

いつもの弾けるような笑顔に、俺もようやく安心することができた。

 

 

…………。

 

 

…………。

 

 

 

「やっぱ、最初は良かったですよね。」

「そうなんだよ。意外と戦えてた。新しい武器と防具は、かなり性能が良かった。」

「流石、セツヒトさんとご主人様です。普通新しい装備なんて、すぐにはよう扱えませんよ?」

「体のサイズがぴったりでなぁ。すごいよな、セツヒトさん。違和感もなんにもなかった。」

「あの人……超人なんちゃうかって思う時あります。」

「安心するといい。あの人は、狩猟の面ではとっくに超人だ。」

「あぁ……そうでした。」

 

 

 

いつものように、狩猟の反省会をした。

体を休めるべきなのだろうが、正直全く眠くない。

とっくに寝る時刻なのだが、俺とショウコは遅くまでだべりあった。

 

 

「ご主人様?」

「ん?何だ?」

「……もうバレバレかも分かりませんけど。ウチ、ご主人様、好きです。」

「ぬおっ、な、何だ急に。」

「まぁ……ウチなんて、眼中に無いかもしれませんけど。周りには負けませんよ!」

「…………あぁ……その、なんだ。今は、そういうつもりは無いんだ。」

「あ。ええですええです。お側におれればもうウチ、最高なんで。」

「お、おう。」

 

 

ショウコらしいストレートな物言いに、少し照れてしまう。

 

 

「それに、ウチはご主人様の唯一無二の相棒、なんですよね?」

「そうだ。当たり前だろ。」

「ふふ……よし、一歩リード……!」

「それはリードというのか……。」

 

 

非常にまっすぐな告白のされ方をされてしまった。

変にドキドキしない辺り、俺とショウコの関係性は、もう行くところまで行っている気がする。

 

これからも、相棒として頑張ってもらおう。

 

 

「……セツヒトさんやハイビスさんたちは、どうするんです?」

「…………腹は決めてる。殺されるかもしれんが、言うしかない。」

「……何言うつもりなんや……。」

 

 

そりゃ、返事だけど。

 

 

 

そんなアホみたいな話をしながら、夜は更けていった。

 

 

 

…………。

 

 

………………。

 

 

 

暇な時間は早く過ぎ去るというが、実際そうで。

 

二日後。俺は退院した。

 

 

「化け物ご主人様!ウチを置いてかんで!」

「人を化け物扱いするやつの言うことなんか聞くか!」

 

 

そんな軽いやり取りをして、俺はとっとと退院。

ショウコは当初の予定よりは早くなりそうで、明日までは様子を見るそうだ。

ショウコも充分に化け物である。

 

 

お医者さんに「あ、ソウジさんはもういいですよ?」なんて言われた。

……ちょっと投げやりで、悲しかった。

 

 

 

その足で退院の手続きをしようとギルドに向かったら、大変なことになった。

 

ギルド中のハンターに囲まれたのだ。

歓声が上がり、何故か胴上げまでされる始末。

しかもさすがハンター。胴上げの高さが半端じゃなかった。

 

天井にぶつかりそうになり、股間の辺りがヒュッとするような浮遊感と恐怖を味わってたら、

 

 

「皆さん!!いい加減にしなさーい!」

 

 

というハイビスさんのお言葉で、何とか解放された。

ハイビスさんの前では、ワサドラギルドのハンターは皆、子どものようになる。

 

おかんみたいだった。

 

 

「……ソウジさん!絶対に今、失礼なこと考えてましたよね!!」

「イイエカンガエテイマセン。」

 

 

さすが敏腕受付嬢。

よく見てらっしゃる。

 

 

その後は、もう色んな人に飲みに食事にクエストに誘われた。

気のせいではなく、中には熱い視線を送ってくださるお姉様方もいらっしゃった。

完全にモテているが、まぁ一過性のものであろう。

丁重にお断りを申し上げた。

 

 

「いやはや……すごい騒ぎだと思って来たら、ソウジさんでしたか。」

「シガイアさん。」

 

 

人だかりが凄くて、さすがのハイビスさんでも収集がつかない、そんな状況。

そこにやってきたシガイアさん。

これまたとんでもないことを言い始めた。

 

 

「みなさん!明日の夜、宴を開きます!場所はここ!ギルド横集会所!費用はギルド持ちです!」

「…………。」

 

 

一瞬静まり返る場内。

 

 

そして。

 

 

「うぉーーー!!」

「やったぜ!タダ酒だ!!」

「飲むぞー!」

 

 

ハンターたちが喜びの声を上げた。

 

 

「…………ソウジさん、こうでもしないと、皆さん収まりませんよ。」

「いや、ありがとうございます。」

「とんでもないです。町の救世主にしてやれることがこんなことなんて、むしろ申し訳ないですよ。」

「はぁ。」

「というわけで、ソウジさんも。宴。()()参加してくださいね。」

「は、はい。」

 

 

断る理由なんてないが。

完璧なタイミングで、完全に言質を取られてしまった。

さすがのシガイアさんである。

 

 

「もしかしてまたギルマスのマスター服姿が見られる!?」

「いけない!みんなに伝えないと!!」

 

 

……俺に熱い視線を注いでいらっしゃったお姉様方が、速攻で離れていく。

 

……ちょっと虚しくなった。

 

シガイアさんのダンディぶりは、どうやらファンが多そうである。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

ガチャ。

 

 

ギイイ……。

 

 

「た、ただいま帰りました……。」

 

 

宿「ホエール」に帰ってきた俺は、ゆっくりとドアを開けた。

昨日ドールを泣かせた手前、何だか気まずかったからである。

 

テンションは朝帰りのお父さん。

 

 

『あ。おかえりなさい。』

「あ。ドール、ただいま。」

 

 

水場から聞こえるのは、いつものドールの声。

いや、いつもより落ち着いて聞こえる。

昨日とは打って変わって。

 

 

『お部屋、お掃除したから。』

「あぁ、ありが……ドール、風邪でも引いたか?」

『へっ!?いやいや、引いてないわよ!?』

「…………ん?」

 

 

おかしい。

声はドールなのに、何か違う。

 

こう……少しの違和感なのだが。

 

 

「ドール?」

『な、なぁに?』

「……いや、気のせいか。部屋に行くよ。後でホエールさんにも話すけど、しばらくハンター業は休みだ。」

『あ。うん。わかったー。』

「…………?」

 

 

どうも様子が変だ。

……まぁいいか。

 

 

「それじゃ2階に―――」

 

 

ガチャ。

 

 

「ふぅ……ただいま……あれ?ソウジさん!?もう退院していいの!?」

「…………んん!?」

 

 

いやいやいや。

ちょいと待て。

 

水場にドール。

入口にドール。

 

これが俺の夢とかならば、まだわかるが。

んなわけない。

 

 

「あれ?ど、ドール!?何でここに……?」

「えっ?今買い物をして帰ってきたんだけど……。」

「…………。」

 

 

入口にいるのは、いつものドール。

膝下まである焦げ茶色のハーフパンツにエプロン、白い半袖Tシャツ。

栗色のショートの髪の毛。

間違いないよなぁ……。

 

 

「じゃあ今そこにいるのは……?」

「………………あぁ!!」

 

 

大声を上げたかと思うと、買い物袋を机において水場にダッシュを決めるドール。

 

って、速っ!?

 

 

『…………やっぱり!!なにかおかしいと思った!!』

『あ、あらー!やっぱりバレちゃったわ!!作戦失敗ねー。』

『もうっ、普通に帰って来られないの!?』

『ほ、ほら、私って生まれながらのエンターテイナーだからね?つい、ね?……驚いた?』

『驚いた……ほら、ソウジさんに謝って!』

『は、はい!!』

 

 

なんかやり取りしている。

…………何となく読めた。

 

この、ドールにそっくりなのに性格がまるで違う人。

俺は知っている。

 

 

「わたた……そ、ソウジくーん……ご、ごめんね。驚かせちゃって。」

「驚くも何も……何やってんですか?」

「ドールになりきって、サプライズしようかとね!」

「……いや、流石ですミヤコさん。すっかり騙されました。」

 

 

水場から出てきた女性。

ドールにそっくりで全然そっくりじゃないお方。

 

ドールの母、ミヤコさんであった。

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