モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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154打ち上げをしましょう。

修練場でひと汗かいて、ザシューさんと銭湯に行った。

 

さっぱり。

 

その後、再びギルドに向かおうかという時。

 

 

「俺は、ここで失礼します。」

「あ、そうですか。」

「打ち上げは、遠慮しておきます。どうぞ、楽しんできてください。」

「……ありがとうございます。」

「いえ。それでは……また双剣を教えてもらえるとありがたいです。」

 

 

ザッザッザッ……。

 

 

そう言って、ザシューさんとは別れた。

 

打ち上げは難しい、か。……まぁなぁ、亡くなっている人もいるわけで。

しかもその関係者だし。

気を遣わせないように配慮したんだろう。

 

せっかく同性のハンター仲間ができたと思ったんだけど。

まぁ……次の機会に。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

「ソウジさん!こっちですよ!!」

「あ、ハイビスさん。」

 

 

受付嬢の制服のまま、ギルド横の集会場にいたハイビスさんを見つけた。

カウンター席に呼ばれ、腰掛ける。

 

集会場の打ち上げは、既に始まっていた模様。

ギルドに入った瞬間、ハンターたちの騒ぎ声が聞こえた。

主賓とか言われてちょっと緊張していたが……べ、別に挨拶とかいらないよな……。

 

 

「お疲れ様です……今までどちらに?」

「あ、修練場に行って、その後銭湯に行ってました。」

 

 

ハイビスさんに居場所を聞かれ、素直に応じる。

 

 

「あ、ギルドにはいらしたんですね。」

「はい。すみません、こんなに早く始まっているとは。」

「いえいえ!その、クエストから帰ってきた方々からこう、自然と始まったと言いますか。こう、みなさん我慢ができなかったようでして……。」

「あはは、なるほど。」

 

 

確かになぁ。

大変なクエストから帰れば、待っているのはギルドの金で飲める酒。

そりゃ我慢もできないか。

 

明日は休みにしようというハンターたちが多そうである。

いや、逆にそこを狙って報酬の良いクエストを狙うハンターも増えるのか?

 

うーん、わからん。

 

 

やけに申し訳なさそうなハイビスさん。

受付嬢の制服を身に纏い、今日も可憐。

 

 

「す、すみません……一応止めようとしたんですが、ギルドの力およばず……。」

「いや、全然!……むしろ、そんなに気を張らなくてよくて、助かりました。」

「あ、そう言っていただけると……助かります。」

「いえ。……ちなみに、俺の挨拶とか無いですよね?」

「えっ。」

「えっ。」

「……あー……。」

「……マジですか……。」

 

 

話を聞いたところ、乾杯の音頭をとってほしいということである。

 

はっきり言おう。

そういうの超苦手。

 

とは言うものの、その乾杯を待ってくださっていたらしいし。

肚を決めるか……。

 

 

 

「あ、あー……御聴衆の皆々様!た、大変長らくお待たせいたしましたぁ!」

「おー!!主賓が来たぞー!!」

「待ってたぞー!もう既に飲んでるけどよー!!!」

「「「ハハハハハハハ!!!」」」

 

 

ワイワイガヤガヤ。

 

 

あかん。

もう空気ができあがっとる。

これは何言っても無駄。

 

かくなる上は……。

 

覚悟を決める。

 

 

「……ギルドのタダ酒だ!!いつも素材掻っ払われてる分、たくさん呑むぞ!!乾杯!!」

 

 

……。

 

 

シーン。

 

 

やばい。

大いに外した。

 

と思ったら。

 

 

ドッ!!!

 

 

「……へ?」

「わはははは!!!す、すげえ!誰にも言えねぇこと言いやがった!!」

「しかもハイビスさんが横にいるのにな!!俺絶対言えないわ!!」

「いいぞー!!カンパーイ!!」

「「「かんぱーい!!!」」」

 

 

あ、よかった。

とりあえず盛り上がってくれた。

 

 

「ふぅ……。」

 

 

一安心してカウンターを振り向く。

そこには、なんとも微妙な顔をしたシガイアさんが居た。

 

 

「……。」

「……ソウジさん。」

「あっはい……。」

「……ご自身の影響力を、よくお考えになってください……。」

「……た、大変失礼いたしました……。」

 

 

き、気のせいか青筋が見えるような……。

 

 

「ソウジさん……そんな風にお考えだったんですね……。」

 

 

あぁっ!ハイビスさんがちょっぴり不機嫌に!!

 

……もう後の祭りだ。

だからこういう挨拶は嫌なんだ。

畜生。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

打ち上げは大盛り上がりであった。

 

朝や夕のギルドの喧騒とは比べ物にならないほどの大騒ぎ。

何ともうるさい雰囲気だが、こういうのは嫌いではない。

人前に立つということが苦手というだけで。

 

 

「さっ!主賓なんですから!みなさんとお話ししてきてくださいね!!」

 

 

すっかり機嫌を取り戻したハイビスさんに見送られ、いろんなテーブルを回った。

その度にグラスに酒を注がれるものだから、大変であった。

何回か、こっそり解毒薬を服用したのは内緒である。

 

 

しかしハイビスさんとシガイアさんの機嫌が直ってよかった。

 

シガイアさんには、そのマスター服姿を待っていらした女性陣をご紹介したところ、満更でも無いご様子であった。

女性にカクテルを作る姿がそれはもうかっこよかった。

 

 

ハイビスさんとは、酒を酌み交わしながら会話した。

 

 

「すみません、俺、ああいう挨拶とかとても苦手でして……。」

「い、いえ、すみません。こちらも配慮が足りず……。」

「ハイビスさん……いいんです。ハイビスさんにはいつもお世話になりっぱなしなのに、ギルドの不利益になるようなことを……。」

「い、いえいえ。」

「ハイビスさんが居なかったら俺、ここに居ないかもしれないのに。」

「へ?」

「え?だって……ここの初心者講習に招いてくださったのはハイビスさんですよ?右も左もわからない俺を、こうやっていっぱしのハンターにしてくれた。そのご恩は、一生忘れませんよ。」

「…………。」

「なのになぁ……すみません。」

「……い、いえいえ!いいんですよ!!大丈夫です!!!」

「で、でも……。」

「いいんです!大丈夫です!!ふ、ふふふふふ。」

「……大丈夫ですか?」

「さ、さー!のみましょー!ささ!ソウジさん!!」

「は、はい。」

 

 

こんな会話をした。

……やけにご機嫌になったのは、感謝申し上げたからであろうか。

 

真意までは分からない。

 

 

そんなこんなで複数のテーブルで色んなハンターと交流した。

 

モンスター狩猟の話が多かったが、印象に残ったのは戦いにくかったというモンスターの話。

ガララアジャラ、ベリオロス、ガノトトス……色んな名前が出てきた。

音で地雷を爆発させてくる、尻尾が鬱陶しい、異次元タックル、その他出るわ出るわモンスターへの愚痴。

 

ババコンガというモンスターは、何とう◯こを飛ばしてくるらしい。

 

 

「えっ!?う◯こ」

「何だソウジ……まだ戦ったことねぇのか……。」

「……あいつは動きは厄介だけど……それ以前に臭いがなぁ……。」

「3日は取れねぇよな……。」

 

 

厄介なモンスターも笑い飛ばしていた柄の悪そうなハンターたちが、口を揃えて声を小さくした。

恐ろしいモンスターもいたものである。

臭いのは嫌だよなぁ……。

 

 

…………。

 

……。

 

 

カウンターに戻ってきた。

いろんな話を聞きつつ、酒も酌み交わしつつ。

いい交流ができたと思う。

 

カウンターには、なんとショウコがいた。

 

 

「ショウコ!?もういいのか!?」

「あ、ご主人様!!はい!退院です!!」

「は、早くないか……?」

「ご主人様に言われたくないです。」

「す、すまん。」

 

 

ぐうの音も出ない。

 

 

「完全には治りきってませんけど、入院の必要は無いらしいです!もっとも、お酒はダメですけど。」

「そりゃそうだ。病人が酒飲むなんて。」

「……ご主人様は飲んでますけど。」

「……すまん。」

 

 

仕方ない。

ショウコとの打ち上げは、また今度やろう。

身内だらけになりそうだけど。

 

 

「ソウジさん、戻られましたか。」

「シガイアさん、どうも。……格好、似合ってますね。」

「いやはや、どうやら中々ウケがいいようでして。いい歳して舞い上がってしまいましたよ。」

 

 

ハハハハと笑うシガイアさん。

この人、非常に渋く線も細くて、なんというかカッコいいオジサマという感じである。

普段がアレだからその辺気にしたことはないが……ファンは多いと見た。

 

今でもこっちをチラチラ見ている女性ハンターたちがいる。

人気だなぁ……。

 

 

「いや、ソウジさん、ショウコさん。改めて、狩猟お疲れ様でした。」

「あ、ありがとうございます。」

「ありがとうございます!」

 

 

ショウコの飲み物を差し出しながら、労いの言葉を下さるシガイアさん。

ショウコのそれは……お酒じゃ無いよね?

 

 

「ショウコさん、どうぞ。チダイ村直送の果物で作った、私オリジナルのミックスジュースです。」

「わぁ!ええんですか!」

「ええ、もちろん。よろしければご感想をお聞かせください。」

「はいっ!!」

 

 

「めっっっちゃうまいですぅ!!」と目をキラキラさせるショウコ。

よかった、ショウコも少しぐらいこの雰囲気味わって欲しかったし。

シガイアさん、流石だぜ。

 

 

「みなさんとお話しはできましたか?」

「はい。あんまりこういう交流の機会ってなかったんですけど、楽しかったです。みんなテンション高めだし。」

「……今回は、街全体が沈み込んでいましたからね。早急に私の方から流通やハンターの人流を制限しました。『只事ではない』と広がり、皆さんを不安にさせてしまいました。」

「それは……致し方ないところかと思います。」

「前代未聞の処置でしたが、やむを得ない、と。判断が遅れては、より被害は広がりますからね。……そんな時、素早く対応し、討伐までしてくださった。しつこいようですが、ソウジさんには感謝申し上げます。」

「いやいや、本当にギリギリでしたから。」

「……謙遜は美徳ですが、人によっては嫌味に聞こえますよ?ソウジさん。」

「これは……俺の癖みたいなものなんで。」

 

 

元日本人であるからして。これも致し方ないことなのだ。

だって嫌だろ。「俺のおかげだ!」みたいに振る舞うやつなんて。

しないけど。

 

 

「シガイアさんって、ずっとここにいますけど……いいんですか?」

「いや、ここにいると色んな噂を聞けるんですよ。楽しいものです。結構抜け出しては、ここに来るんですよ。」

「よくあの忙しさの中……。」

「ははは、逆ですよ。こう、ギルドマスターにもなると、現場に居ることは少なくなりますからね。忙しくて疲れている時、ここでハンターの皆さんから元気をもらっているんですよ。」

「あー……なるほど。」

 

 

シガイアさんの言う現場というのは、多分受付とかのことだろう。

偉くなるというのも、大変だな。

 

 

「それに……ここでしか話せない話もできますからねぇ……ね、ミヤコ総務長。」

「シガイアさ〜ん……その名前は今は無しで!プライベートですから!」

「おわっ!!み、ミヤコさん!!居たんですか!?」

「さっき来たばかりよ!ソウジくん!」

「て、テンション高ぇ……。」

 

 

酔っているのか、やけに声が大きいミヤコさん。

後ろから俺に寄りかかるような形で現れた。

 

で、できあがっている。

……いかん、これ俺がお見送り&ドールにどやされるパターンだ。

そんな未来が見える……。

 

 

「ご主人様?どうしたんです?遠い目をしてますけど……。」

「あぁ……明日の朝飯なんだろうなってな……。」

「……?……変なご主人様。」

 

 

あ、そういやドールに今日夕飯いらないって伝えるのも忘れてた。

 

…………。

 

お願い、俺の明日の朝ご飯。

無事でいて。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

ミヤコさんはどうやらかなり溜まってらっしゃるご様子であった。

シガイアさんが、やたら度数が高そうな酒を飲みやすく割ってガンガン出してくるものだから、更にヒートアップ。

 

俺の朝食生存率は、もはや天文学的数値並に低くなっていた。

 

諦めるしか……無いのか……!?

 

 

「……でねぇ〜?ちょっと聞いてるソウジくん!?」

「あっはい。」

 

 

ムニュ。

 

 

ドールにそっくりのミヤコさんであるが、見分けるのは簡単である。

表情の豊かさで言えば、ミヤコさんは百面相の様に顔が変わる。対してドールはいつも冷静。

そしてミヤコさんは、お胸の辺りに主張激しいブツをお持ちだ。

スタイルと顔を比べれば、ドールとの違いはすぐにわかる。

 

ソレを俺の右腕にくっつけながら、妙に近い距離で話を続けるミヤコさん。

……心の中で感謝申し上げておこう。

ありがたやありがたや。

 

しかし、顔はドールなのでなんか変な感じである。

ミヤコさんの愚痴は続く。

 

 

「もう総務なんてねー、もうパシリなのよパシリ!」

「そ、そうなんですか?」

「そうよー!何よ!各支部との連絡をわざと遅らせてほしいとか、どこどこの支部長のアレがダメだコレがダメだとか聞いたり?しまいにゃ王族来るから甘いもの買ってこいとか……完全にパシリよ……。」

「おぉ……。」

 

 

もっとすごいお仕事されてるのかと思っていた。

いや、してるんだろうけど。

今言っているのは、多分やりたくない、めんどくさい部類の仕事だろう。

 

 

「これのどこがハンターのためになるってんのよ……もう。」

「まぁ……確かにそうですね。」

「でしょぉ!?わかる?さすがソウジくんね!」

 

 

俺だって元社会人。

売上につながるのかこれって言う仕事も腐るほどやってきた。

やり甲斐も何もなく、ただ言われたから遂行するだけ。

そういう時は……。

 

 

「もう飲むしかないわ!シガイアさん!おかわり!」

「はいはい。」

(……まぁ、気持ちはわかるわ。)

 

 

飲むしかないよな。うん。

 

シガイアさんはグラスを替えると、ミヤコさんに差し出した。

 

 

「はーい、いただきます…………ぷはぁ!これうまい!!ってお酒じゃないわねこれ!」

「ええ、柑橘系のカクテルジュースですよ。少し酔いを覚ましたほうがいい。」

「むぅ……。」

 

 

ナイスな気遣いを見せるシガイアさん。

ドールのご機嫌のためには、ミヤコさんが酔いつぶれては話にならない。

だけど飲みたい気持ちもわかるしなぁ。

難しいものである。

 

すると、シガイアさんから急に話がぶっこまれた。

 

 

「……ミヤコさん、中央は何と?」

「…………い、今しますか?その話。」

「内容にもよりますが、早い方がいい。首都の安全を考えると、尚更ですね。……ソウジさんに言いにくいのも分かりますが。」

「…………はい。」

 

 

観念したかのように天井を見上げたミヤコさん。

俺の方に向き直ったその顔は、完全に仕事モードの彼女であった。

 

俺も畏まってしまう。

 

 

「ソウジくん。」

「は、はい。」

「ショウコちゃん。」

「え、ウチも!?」

「……二人に話があるの。ちょっと聞いてくれる?」

 

 

真剣な顔で手招きをするミヤコさん。

顔を寄せろってことか?

まぁいいけど。

 

俺とショウコがミヤコさんの近くに寄る。

ミヤコさんがシガイアサンに目配せをすると、シガイアサンは周囲にそれとなく声をかけ、人払いを済ませた。

さりげない。

 

 

「シガイアさん、ありがとうございます。じゃあ……二人にお願いというのはね?」

「は、はい。」

「な、何でしょう。」

「……首都に来てほしいの。」

「「……えっ?」」

 

 

ショウコとハモってしまう。

……どゆこと?

 

俺とショウコが思案顔でいると、シガイアさんからフォローが入った。

 

 

「……ミヤコさん、言葉が足りませんよ。」

「そ、そうですね……。ごめんね、二人とも。話が長くなるんだけど、事情はちゃんと言うから。」

「は、はい。」

 

 

そう言うと、「ううん」と咳払いをして姿勢を正すミヤコさん。

仕事モードである。

しかし……あの様子だと、シガイアさんは知っているってことか。

なんだろう。

 

 

「……いい?驚かないで聞いて。……黒蝕竜ゴア・マガラは、確かに倒した。……でも、復活するの。」

「……はぁぁ!?」

「ちょっ!しー!ソウジくん!」

 

 

驚くなと言われたけど……いや無理だよ。

え!?復活!?

ど、どういうこと!?

 

 

「……大丈夫です。周りが騒がしくて助かりましたね。」

「す、すみません。シガイアさん。」

「驚くなって方が無理だったわね。……とりあえず、静かに聞いてちょうだいね。」

「……はい。」

 

 

ミヤコさんの話は続く。

俺はもう戸惑うばかりだ。

 

 

「……ここからは中央の調査と、シガイアさんからの情報提供から出した結論よ。確度は高いと思ってね。」

「は、はい。」

「……黒蝕竜ゴア・マガラ。あのモンスターの正体は、とある古龍の……幼体。」

「こ、古龍。」

「そう。これはシガイアさんからさっき聞いたホヤホヤの情報だけど……シガイアさん。」

「はい。……観測班と回収班が、ゴア・マガラの調査から戻ってきまして。……報告内容は、『ゴア・マガラの亡骸から、白く神々しいモンスターが出現。遠く南南西に飛行、追尾は不可能と判断し、ゴア・マガラの()()()、及び同モンスターの竜鱗を回収。』とのことでした。」

「……白いモンスター……。」

 

 

黒蝕竜ではない。

ゴア・マガラは真っ黒だった。

白とは、全く違う。

百戦錬磨の観測班が見間違えることなど考えられない。

 

つまり、報告をそのまま受け取ると。

復活……というか、成長した、ということか?

 

 

「……少し話が変わるんだけど……ソウジくん、ショウコちゃん、以前あなたたちが見つけた遺跡、覚えてる?」

「あぁ……ウチとご主人様とでラングロトラ討伐した時に……。」

「そう、その時の遺跡よ。……その遺跡を調査したのは中央だったんだけどね。壁画があったそうよ。」

「……ど、どんな壁画だったんですか?」

 

 

思わず聞いてしまう。

 

遺跡。

俺とショウコが以前、ラングロトラ狩猟の際に偶然見つけてしまった地下空洞。

その中にあったという、あれか。

見つけてお金もらえてラッキー、ぐらいに思っていたけど。

 

 

「……恐らく後世に残すために、分かりやすくイラストにしたんでしょうね。描かれてあったのは、一際大きな山。そしてそこに舞い降りる6つ脚に翼を持つ龍。そしてその山の周囲へと撒き散らされる黒い霧の絵。……山の周囲には暴れ回るモンスターと思われるものも描かれてあったそうよ。」

「…………。」

「周囲と比較して一際高い山。これは、この大陸の中で最も高いと言われるマシリキ山の事と推測されるわね。もう一つある、北方の霊峰カヒムの可能性もあるけど。」

「マシリキ山とする理由はーーー」

「ーーー首都西部、マシリキ山に近い村の先住民の話に、『悪しき風が山を蝕んだ。天から降りた神が山の生き物を懲らしめた。』という伝承が残っていた。更に、今回のモンスターが飛んでいった方角は、禁足地のあるマシリキ山。そして、今回見つかった竜鱗。先ほど見せてもらったけど……禁足地にあったかなり古い鱗と、形状も造りも瓜二つだった。」

「……マジっすか……。」

 

 

いろんな情報が出てきた。

ショウコも混乱している。

 

俺も頭の中を整理してみる。

まず、ゴア・マガラ。やつは倒したけど、倒していなかった。

むしろ成虫……成竜?として、復活した。

向かった先は、丘陵地帯から南南西。禁足地のあるマシリキ山方面。

首都からは西に位置する。

俺とショウコが見つけた遺跡には、この山から「悪しき風」とやら……まぁおそらくゴア・マガラが放つあの黒い霧のことだろう、それが描かれていた。

言い伝えにもそれが残っていた。

そして、今回たまたま見つかった鱗と、禁足地で見つかった古い鱗がどうやら同じモンスター由来のもの。

 

……あれ?でも……。

 

 

「……その、復活した白いヤツが古龍?っていうのは、どうしてですか?」

「そこは私がお答えしますよ、ソウジさん。」

「シガイアさん。」

「古龍は、通常のモンスターとは桁が違う。生態、その行動原理、出現する場所や時代まで……もう何から何まで謎です。何せ、数が少なすぎる。まぁ……あんなのがたくさんいたら、手に負えなすぎて笑えてしまいますがね。もはや天災ですから、天災。」

「…………。」

「話が逸れました。……そんな謎の古龍ですが、通常のモンスターとはまずもって形態が異なる。飛竜というのは基本後脚2本に2つの翼。だが、今回のモンスターは、脚が6つに翼……2つは翼を支える脚として見ても、正直生物として気味が悪い。それに、いつかもわからぬ遺跡のあった頃から存在していたモンスターを古龍と言わずして、何を古龍とするのでしょう。」

「た、確かに……。」

「……古龍、復活。ギルドとして、そう断定します。」

「……。」

 

 

言い切ったシガイアさん。

もう、間違いない。

俺が倒したゴア・マガラは、確かにもういない。

だが、どうやら復活した。

新たなモンスターとして。

 

 

「他にも様々な伝承や遺跡の調査から、この古龍の存在は何と無くわかってはいたのよ?でも、今回のことで確定。……ゴア・マガラが幾多の天を廻り、成長して脱皮、禁足地に舞い戻るということから……『天廻龍シャガルマガラ』と名付けたわ。」

「以前からその存在だけは注視されていました。ゴア・マガラも、その名前だけはギルド内にありましたから。」

「天廻龍……シャガルマガラ……。」

「……と、いうわけで!ソウジくんとショウコちゃんには、シャガルマガラ討伐のメンバーとして、首都に来てほしいの。……はぁ〜、ようやく話の最初に戻ったわね。」

 

 

ミヤコさんは喉が渇いたようで、カクテルジュースを口に運んでいる。

まるで名探偵みたいな口振りだった。

オンとオフの激しい人である。

 

そういえば……シガイアさんにゴア・マガラの名前を教えてもらった時、やたらスムーズだった。

その時は、ギルドでも未発見の存在なのに、すぐに名前が決まるもんだなと思ったが。

偉い人たちの中では、前々からその存在はわかっていたってことか。

 

 

……あれ?

だが。ということは。

シガイアさんはもしかして。

 

 

「シガイアさん。」

「はい、何でしょう。」

 

 

不思議に思ったことを、シガイアさんに尋ねる。

 

 

「シガイアさんは、ゴア・マガラが復活してシャガルマガラになるということを、予想してたんじゃ無いですか?」

「鋭いですね、ソウジさん。えぇ、その通りです。」

「そして、禁足地に向かうであろうことも、ご存じだったんですよね?」

「大方は。……予想は、していました。」

 

 

マジか。

やっぱすげぇなこの人。

 

シガイアさんが、その思惑を教えてくれた。

 

 

「ですが……復活したとして、どこに向かうかもわからない。もしソウジさんでさえ敵わなかったら。ワサドラが襲われでもしたら。……悪い予想ばかりしていましたよ。だが、伝承通り禁足地に向かっていった。そうすると、その狩猟の領分はどこになります?」

「そりゃあ、首都のギルド……です。」

「そう、そこです。そうすると、首都は古龍討伐に対して、経験的に最も有効なカードであるところのソウジさんを欲します。……そこで、ワサドラの事情に明るく、私やソウジさんと縁深いミヤコさんが派遣された。そういう流れでしょう。」

「……はーいその通りです〜。だから私がパシられたんです〜。」

「ソウジさんを動かすためには、こちらに頭を下げるしか無くなりますよねぇ。いやぁ、先手を次から次に打つことができて、私のギルドマスターとしての発言力も高まるばかりですよ。」

「「うっわぁ……。」」

 

 

非常に悪い顔をしているシガイアさん。

いや、顔には出ていないのだが、そんな風にもう見えてしまう。

またもショウコとハモってしまう。

そうだ。この人、こういう人だった。

 

 

「……まぁ、というのは半分冗談ですがね。」

「半分は本気なんですね……。」

「もちろんです。」

 

 

サラッと言える辺り、この人に敵は多そうだなーと思ってしまう。

 

 

「……ですが、中央もミヤコさんを派遣してくるとは流石に思いませんでした。ワサドラギルドのトップハンターの一人であるソウジさんを動かすのに、かなり本気と見えます。……ソウジさん。」

「あ、はい。」

「ギルド全体から、あなたへの個人依頼です。……シャガルマガラ討伐に、力を貸してほしい。黒蝕竜ゴア・マガラをも屠ったその腕を、存分に生かしてほしい。……いかがでしょうか。」

 

 

個人依頼。

ハンターランクが7になった時、俺個人に向けての依頼が増えるぞと、そんな話を聞いた。

ギルドだけでなく、街や国、そういう大きい単位の話になるから、と。

今回が、それか。

 

……返事なんて、決まっている。

 

 

「……わかりました。俺でよければ、行かせてください。」

「……素晴らしい。」

「ショウコも……ついてきてくれるか?」

「愚問ですよ、ご主人様!またウチが守ります!!」

「……そうならないように、一緒に特訓しような。」

 

 

アイツは、俺が倒しきれなかったモンスター。

周りがどう思うかは知らんが、俺の中では取り逃してしまったモンスター。

そういう認識だ。

だから、尻拭いはすべきである。

 

 

 

シガイアさんとミヤコさんを見つめ。

俺とショウコは、シャガルマガラ討伐の依頼を快諾したのだった。

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