モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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ドール視点です。
愛が止まらず、こんなに長くなるとは思わず……2話に分けています。


156ある宿の看板娘の話②

私はドール。

 

宿「ホエール」で働いている。

毎日毎日、部屋の掃除と食事の用意、その買い出しと、色々やっている。

たくさんやることがあるけど、大変だと思ったことはない……かな。

 

こういうの、私、好きみたい。

それに……。

 

 

「今日は……撫でていかないの?」

「あ、いや。はい。失礼します。」

 

 

この目の前の男の人、ソウジさん。

密かに慕っている。

宿にやって来た時は、あんなに頼りなかったのに

どんどん強くなっていって、筋肉の付き方とか顔つきとか……どんどんかっこよくなって。

 

正直、毎日毎日ドキドキしている。

 

 

お友達も少ないから、それを相談できる相手もいなくて。

よくショウコちゃんに聞いてもらったり、お母さんに手紙を送ったりしてる。

 

そのことをお母さんにからかわれてからは、なるべく書かないようにしてるけど……。

お母さん、口が軽いから。

 

 

お母さんは、首都ザキミーユギルドの偉い人……らしい。

一度中央から来たというギルドの職員さんが言ってた。

「ミヤコ総務長の……娘さん……!?」と言われ、頭を下げられた時は、ビックリした。

 

私が偉いわけじゃないのに。

 

でも、お母さんが年に一回返ってくるのは……実はちょっとだけ嬉しい。

一緒に寝て、ご飯作ってあげて。

まぁ、たまにダメな時はご飯抜きにしちゃうこともあるけど。

お母さんと一緒にいると、楽しいから。

 

でも、私の心配をし過ぎで……スキンシップが過剰なんだ。

一度ザキミーユに再び仕事で戻る時は、もうこねくり回されて大変だった。

とりあえずあしらったら、トボトボ出ていったなぁ。

……また帰ってきたら、優しくしようっと。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

ソウジさんは、冬の時期に北の山にある村に遠征した。

お母さんと一緒に居なくなったから……ちょっと寂しかった。

 

 

「ウチも付いてった方が良かったんかなぁ……。」

「ショウコちゃんも、いなくなったら……私、寂しいな。」

「……もう!ドールちゃんかわええ!!」

「う、うわっ!」

「いなくならんで!ウチはこの宿大好きやから!」

「う、うん……ありがとう……。」

 

 

ショウコちゃんとは、とても仲良くなった。

急に抱きつかれても、嬉しいと思える程には。

 

すごく仲良くなったきっかけは、やっぱりあの時。

ソウジさんが、でぃのばるど?っていう、とても強いモンスターにやられて帰ってきて。

私も心配で、お母さんとお見舞いに行った。

生きていて、嬉しくて、でも怖くて、泣いちゃって。

ソウジさんに逆に心配された。

お母さんも謝ってたなぁ。

 

その晩。

ショウコちゃんがとても落ち込んでいて。

心配で、一緒に寝たんだ。

 

 

「ウチ……もう……うっ……うぅっ……。」

「……大丈夫だよ。ショウコちゃん、頑張ったよ。」

「うぅ……ドールちゃん……。」

 

 

狩猟の事なんて、これっぽっちもわからないけど。

ショウコちゃんが落ち込んでいたから。

頭をなでて、一緒のベッドで一晩過ごした。

 

 

だから、すぐに立ち直った時は、安心したな。

良かった。

 

ソウジさんもすぐに退院して。

ハンターさんもオトモさんも強いなって、心から思った。

 

 

ソウジさんがすぐに治るように、私は身の回りのお世話をがんばった。

やりすぎて、ソウジさんは戸惑ってたけど。

背中流したり、あーんするぐらい、いいよね?

ショウコちゃんが「ウチと交替制で!」なんて言うから、あんまりできなかったけど。

 

むぅ。

 

 

そんなこんなで。

 

 

ソウジさんが居なかった冬の間は、少しだけ退屈で。

でも、ショウコちゃんと商店街をデートしたり、宿の備品をまとめて買いだしたり、帳簿をつけ直したり……。

なんだかんだ、平穏……なのかな。

そういう日々だった。

 

でも、遠くにいると寂しいなって。

そう、実感しちゃった。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

ソウジさんが冬山から帰ってきた。

いきなりだったから、びっくり。

 

しかも、宿の出口のドアを開けようとしたら目の前に居て。

 

抱きしめられた。

 

 

 

「うわっ。」

「えっ……。」

「あ、あああ、わ、悪い!ドール!わざとではないんだ!」

「そ、そそそそソウジさん!?」

 

 

急にくっつかれたから。

心臓が、飛び出るかと思ったよ。

 

 

「…………い、いきなりごめん、ドール。」

「…………う、うん。」

「……え、えーっと……た、ただいま帰りました。」

「う、うん。おかえりなさい、ソウジさん。」

 

 

何とか落ち着いて、お帰りが言えたけど。

ドキドキして、もう落ち着かなくて。

コーヒーを入れながら、とにかく深呼吸をした。

 

いきなりすぎるよ……もう。

 

 

その晩、おじいちゃんにも許可をもらって。

初めて、夜のお店にでかけた。

飲み会っていうのかな。

 

ソウジさんが、いろいろ優しくしてくれて、嬉しかった。

 

セツヒトさんもいて、ハイビスさんも合流して、ショウコちゃんもいて。

楽しかったんだ。とても。

 

 

「んでもさー、ドールー。何か違うことしたいとかー、無いのー?」

「え?違うこと?」

「そーそー。例えばー、やってみたいこととかー、就きたい仕事とかー……そういうのー?」

「…………考えたこと、無かった。」

 

 

私の、やりたいこと。

今まで、考えたこともなかった。

 

お父さんが死んで、お母さんも忙しくて、宿も忙しくて。

毎日が目まぐるしかったから。

セツヒトさんの質問に、ちょっとだけドキッとした。

 

 

「ドールは何かしたいとか、無いのー?」

「そうだね…………あ、あった。」

「お、なになにー?」

「えっとね。笑わない?」

「笑わないよー。そういう夢を語るのもー、飲み会の醍醐味ー?」

「じゃ、じゃあ……。」

 

 

一つだけ。

思いつくものを、そのまま話すことにした。

 

 

「えっとね……お嫁さん。」

「…………ふぇ?」

「お嫁さん……宿のお仕事、私嫌いじゃないし……お料理も好きだよ?だから、それを続けながらやるなら、お嫁さんかなあって。」

「…………お、おおお。」

「わー!素敵な夢や!ええな!ドールちゃん!」

「そ、そうかな。」

「女の子の憧れやー!」

「ハイビスちゃん……私は汚れてしまったんだねー……。」

「セツヒトさん……私も自分が何だか恥ずかしくなってしまって……。」

 

 

唯一、思いつくのは、やっぱりこれ。

やりたいことって、難しい。

 

宿も続けられて、生活のお世話をして。

ただ漠然と、これかなって。

 

 

「……と、というか、ドールちゃん?その、お、お相手はいるのかしら?」

「お相手?」

「ほ、ほら、お嫁さんということは、旦那さんもいるわけであってね?」

「……あ……そ、そういえばそうだね。考えて、無かった。」

「あ、そ、そうなの!いいのよ?そんな無理して考えなくて!」

「そ、そーそー!そういうのはー、頑張って探すものでもないしねー!」

 

 

顔が、熱くなった。

だって、お嫁さんって。

誰かの奥さんになるってことだから。

 

でも……誰かのお嫁さんになるって言うなら。

 

やっぱり、ソウジさんだよね。

うん。

 

 

「あ、でも……。」

「で、でも!?」

「……そうなったらいいな、っていう人なら……いるよ?」

「え、えええええええっと!?それは今言ってもいいのかしらいやよくないかしら!!」

「落ち着いてーハイビスちゃーん!ていうか言わせちゃダメな気がするよー!」

「うん。言わない方がいいよね。」

「「ホッ……」」

「今はまだ。」

「「まだぁ!?」」

 

 

この気持ちは、大切にしたいなって思う。

ソウジさんを、困らせたくないから。

 

隣に座るソウジさんに、話しかけた。

 

 

「……飲み会って、楽しいね。」

「……あぁ、そう思ってくれたなら、今日連れてきてよかったよ。」

「うん。よかった。」

「あぁ。」

 

 

私の初めての飲み会は、とても楽しい思い出になった。

お酒の匂いがキツくて、フラフラになっちゃったけど。

その晩は、ショウコちゃんが一緒に寝てくれた。

 

 

「ドールちゃん……お嫁さんって、ええなぁ。」

「ショウコちゃん……。」

「……あの時言ってたお相手って……。」

「あ……う、うん。」

「……やっぱりそうや……ホンマ、ウチのご主人さまは罪な男や……。」

「…………ショウコちゃんもでしょ?」

「なぁっ!?……あー……ま、まぁなぁ……。」

「…………ふふっ……私達、おんなじだね。」

「……こ、この余裕……セツヒトさんにハイビスさん、こら強敵やで……。」

「?」

 

 

ショウコちゃんが何言ってるか分からなかったけど。

もっともっと、ショウコちゃんと仲良くなれた気がする。

 

 

おかえりなさい、ソウジさん。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

ソウジさんは、みるみる忙しくなってきた。

 

ハンターランクというのが上がって、舞い込むクエストも強敵ばかりみたい。

怪我をして帰ってくる事もあった。

 

私にできることなんて、料理とかお掃除とか。

 

だから、ソウジさんが好きな魚料理は、うんと勉強した。

ソウジさんは少しずつ記憶が戻ってきているみたいで。

知らない料理をたくさん教えてくれた。

 

キレアジのヒラキ、というのは中々に大変だった。

でも、料理の幅が広がると、夜の宿の料理もレパートリーが増えるわけだし。

頑張ったんだ、私。

 

 

「うめぇ……うめぇよ……。」

「そ、そうかな。」

 

 

ソウジさんが料理を褒めてくれると、もう本当に嬉しくて、嬉しくて。

やる気が、たくさん湧いてくる。

ソウジさんが来る前は、こんなことなかったから。

 

ソウジさんには、色んな意味で感謝してるんだ。

 

 

でも、ソウジさんの記憶が戻ったら。

他の街の、もしかしたら違うところに行っちゃうのかなって。

 

……そう思うと、胸が苦しい。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

私とソウジさんの間には、一つ約束がある。

それは、頭を撫でてもらうこと。

 

狩猟の前とか、お仕事に行くとき。

決まって私の頭を撫でてもらう。

心から落ち着く、ソウジさんの手。

お父さんみたいに大きくて……たまに雑な時とかあるけど。

 

ソウジさんも始めは照れていたけど。

というか、私なんて今でも恥ずかしくて、かなりドキドキするんだけど。

 

おまじないみたいなものかなって考えてる。

ソウジさんも、いつだか「ご利益……。」なんてつぶやきながら撫でていた。

ちょっと失礼だなって思ったけど……。

でも、好きな人に頭なでてもらうって、嬉しい。

 

だから、日課としてやってもらっている。

 

……らーじゃんというモンスターを狩猟する時は、特に丁寧に撫でてもらった。

だって、皆が「とても強いモンスター」って言ってたし。

私も「みんなが無事でいますように、ソウジさんが無事でいますように。」って、目を瞑って祈ったんだ。

 

なんだか、私の思いまで背負って戦ってくれいるって思うと、少しだけ嬉しい。

 

 

狩りで助けられることなんて、私には無いから。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

ソウジさんがそのらーじゃんの狩猟から帰ってきた日。

いつものように市場で買い出しをしていたら、慌てた様子のハンズさんにいきなり引き止められた。

 

ハンズさんは、最近うちの宿に泊まりだしたハンターさんで、ちょっとおっちょこちょいさん。

でもとってもいい人で、お料理とか裁縫がとても上手。

髪の色も似ていて、なんだかお姉さんみたいな人。

 

そのハンズさんがただならぬ様子でいたから、私はドキッとした。

 

 

「ド、ドールちゃん!大変なの!!」

「は、ハンズさん!?どうしたの?」

「実は……さっき、セツヒトさんとソウジさん達が帰ってきて……怪我をして……。」

「えっ……。」

「わ、私、今からセツヒトさんのいる医務室に行こうと思って……そしたら、ドールちゃんが見えて……!!」

「…………!!」

「ど、ドールちゃん!?」

 

 

途中まで聞いて、駆け出してしまった。

とりあえず、荷物を置いて。

おじいちゃんに留守を頼んで……。

ギルドに行かなきゃ……!!

 

 

「おじいちゃん!ソウジさんとセツヒトさんが怪我した……って…………。」

「………………。」

「…………あれ?ソウジさんとショウコちゃん…………。」

「…………た、ただいま、ドール。」

「…………ソウジさん、怪我は……?」

「ん?いや、痛かったけど……まぁ大丈夫だぞ?」

「…………よ、良かったぁ…………。」

 

 

宿に着いたら、ソウジさんとショウコちゃんが居た。

とても普通に。ご飯を食べながら。

 

普通っぽい……。

…………良かったぁ…………。

 

 

「す、すまん。心配かけて。先にギルドに行ったものだから、帰りが遅れて……。」

「……う、ううん……ごめんね、慌てちゃって。」

「い、いや。いいぞ。うん……その、何だ。」

「……うん。」

「…………ただ今、帰りました。」

「……うん、おかえり。ソウジさん、ショウコちゃん。」

 

 

何だか、照れちゃう。

いつもみたいにお帰りっていうだけなのに。

……慌ててたところを見られたからかな?

 

恥ずかしい……。

 

 

「流石や……ドールちゃんの正妻力は半端ないでぇ……。」

 

 

ショウコちゃんがよくわからないことを言っていた。

制裁力?

 

 

とにかく、みんなが生きていて良かった。

セツヒトさんは、怪我をしたみたい。

ソウジさんを庇って怪我をしたって聞いたけど……。

 

セツヒトさんって、とっても強いハンターさんって聞いていたから、驚いた。

 

 

ちなみに、その日のお夕飯は、お茶漬け。

だって……メインの食材が無くなったんだもん。

おじいちゃんが、ソウジさんたちの昼ごはんに使い切ってしまったみたい。

それを分かっていて止めなかったソウジさんもショウコちゃんも、同罪。

ハンズさんも、同罪です。

 

おじいちゃんはこういうどんぶり勘定なところがあるから、やっぱり私がしっかりしないとね。

 

おじいちゃんは、ワサドラの村長代理として結構偉い立場にあるはずなんだけど。

私にとっては、大切な家族で……ちょっぴり抜けてるおじいちゃんだから。

 

私も心配したんだから、ソウジさんたちには反省してもらうことにした。

 

もちろん、次の日の夕飯は豪勢なものしたけど。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

ソウジさんはすぐに回復した。

 

人よりすごく回復が早いから、毎回驚かされるけど……もう慣れちゃった。

お世話とかしてあげたいのに、すぐ治っちゃうんだよね。

 

いいことなんだけど。

 

 

そしたら、すぐにまた狩猟に行くということだった。

二人が、何だか少しだけ落ち込んで宿に帰ってきて。

ちょっとだけ、気になったんだ。

 

 

「あ、おかえりなさい。……ご飯、まだだよね。」

「あ、ただいま、ドール。」

「今帰りましたー!」

 

 

いつもみたいに元気に挨拶するショウコちゃん。

でも、何だかいつもと違う。

 

無理、してる……?

 

 

「……ショウコちゃん、何かあった?」

「うえっ!?えぇと、いやぁ―――」

「明日、というか夜中、クエストに行くんだ。」

「えっ、すごいね。そんなに早く。」

「あぁ。ちょっと……危ないモンスターだ。気をつけて、行ってくる。」

「…………うん。わかった。…………お夕飯、用意するね。」

「あぁ。」

 

 

何時ものように、お夕飯を作った。

すぐに休むって聞いたから、消化の良いものにした。

 

何だか、とても嫌な予感がした。

 

次の朝起きたら、ソウジさんたちはもういなくて。

「頭、撫でられてないな。」なんて考えちゃったら、余計に不安になった。

 

……大丈夫だよね。

 

ソウジさん……ショウコちゃん……。

 

 

 

 

そんな不安は、やっぱり当たるもので。

翌日、ワサドラが大変なことになってるって、分かった。

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