「……うじさん?双治さん?」
(むにゃむにゃ、もう食べられないよう。)
「……。」
(はい起きますすみません。無言はやめてください。)
意識を失った。
そしたら例のきれいな湖の上に寝ていた。
だから、多分女神様に声をかけられる気がした。
ちょいと冗談をかましたら、フランクに無視されるとは。
仲良くなったものだ。
「仲良くはないです。」
(そんな。ショック。)
おそらく何かまた、新情報でも教えてくださるのだと思う。
女神様の声を、座して待つ。
「双治さん。実は今回、忠告しに来ました。」
(忠告……ですか?)
なんかまずいことをやらかしたのか。
声しか聞いたことないから分かる。いつもよりトーンが低い。
女神さまが続ける。
「双治さんは、気を失いました。」
(はい。)
「理由は、お分かりになりますか?」
(…………オーバーワーク?)
「はい、概ね正解です。」
双剣の<操作方法>が判明した瞬間、気を失った。
尋常じゃない頭痛だったしなぁ……とりあえずもうやりたくない。
「まさか一日に2回も、武器のマスタリングを行うとは予想外でした。先にお伝えしておくべきでした。」
「いえ、私こそ調子に乗ってすみませんでした。」
マスタリングとは、あの<操作方法>がわかる瞬間のことだろうか。
「マスタリングは、脳や体への負担がかなり大きいです。お体の方は問題ないようですが、頭への負荷が多すぎたのでしょう。」
「双剣は失敗ですか?」
「いえ、むしろ双治さん向きの武器かと。推奨します。技の方も、問題なく習得できております。」
双剣の<操作方法>の一覧が習得できなかったのでは?と心配していたが、問題ないようだ。
「安心しているところに申し訳ないのですが、現在マスタリング可能な武器種は片手剣と双剣のみです。」
(えっ?)
「これ以上のマスタリングは、双治さんの命に関わります。」
命、と聞いて、少し怖くなった。
「そもそも、片手剣と双剣のマスタリングに必要な第1技の習得がここまで早いとは、思いませんでした。少なくとも数ヶ月はかかるものです。次回は数年単位で、次のマスタリングはおやめください。」
(……。)
「よろしくおねがいします。」
有無を言わせぬ、そんな感じのトーンだった。
でも、少し無機質な話し方に心配の感情が混じっている気がして。
(わかりました。死にたくは、ないです。)
「よかったです。」
新しい武器を試したい気持ちはあるが。
そこまで器用な方でもない。1つ2つの武器を極める方が俺には向いている気がする。
女神様も公認の「推奨武器」らしいし。
「先程も申し上げましたが、双剣は最適解です。スタミナや鬼神化状態の維持など、気を配るべき部分は多いですが、素早さに特化したスタイルです。双治さんの肉体には、正解だと思われます。」
(それはよかったです。)
「むしろ、ノーヒントでそこまでたどり着いた双治さんに驚かされました。」
(色々考えましたよ。)
「ええ、見ておりました。」
見られていたのか。そりゃそうか、恥ずかしい。
「飲食店の女性に鼻を伸ばすところと同じぐらいバズりました。」
(ちょっと待て。)
えーっと?女神様??
どこまでSNSに上げてるの??
「それはもう、隅から隅まで、です。心は中年、体は青年。アンバランスさに戸惑うかわいい姿が、主にF1〜F3の主婦層にウケています。」
(ウケを狙っていたわけではないんですが!?ていうか神様の主婦層って何!?)
「まさかここに来て、新たな客層の獲得に成功するとは。私も良い意味で驚かされました。」
(私も驚きですよ!)
何かダメだ!この女神様ダメだ!
(女神様?私は今日一日で武器種2つの習得に成功しました。)
「ええ。」
(ギルドでハンター登録をした際、落ち込むこともありましたが、前向きに考え、新しい武器種の<操作方法>習得に励みました。)
「はい。」
(しかも、マスタリング?とやらはかなり難しいんですよね?そのへん頑張ったことへの反応とかは、無いんでしょうか!?)
「ええ、ありました。そこそこバズっております。」
そこそこ……一応死にかけたのに……。
「やはり、血の気の多い方々がフォロワーに多いのです。武器の扱いの習得というよりは、やはりその先の戦いを好まれるのでは無いか、と推測します。」
(なるほどー……。)
「……双治さんがフォロワーを意識し始めていることに、感銘を受けております。」
(意識してないわ!!畜生!)
さっきからもうタメ口だ。
もういいや、俺もフランクになろう。
「明日はいよいよハンター講習の初日ですね。おそらく苦労することはないかと思われます。どうぞ、思いのままに頑張る姿をお見せください。」
(……分かりました。とは言っても、私はフォロワーの神様方とか、その辺は意識しませんよ!)
「はい。」
(……私のやりたい様に、一生懸命やらせていただきますので!)
「はい、それこそフォロワーが望まれる姿です。よろしくおねがいします。」
だめだ。
結局俺は足掻くしかなくて、そしてその姿がウケているんだ。
「マスタリングは、当分おやめください。本当に。それでは失礼します。」
(お、お疲れさまでした……。)
大切な忠告と、割とどうでもいい神様SNSについての、2つのお話を聞いた。
(……忠告は甘んじて受ける。SNSについては、もう気にしないことにしよう……。)
薄れゆく意識の中で、そう誓う俺だった。