モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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160ザキミーユシティに入りましょう。

ワサドラを出立して五日目の昼。

俺達一行は、無事に首都ザキミーユシティにたどり着いた。

 

 

シティ。

街。

町ではなく、街。

……というか、もうバッチリ都。

首都、である。

 

 

「うお……人しかいない……。」

「ウチも初めて来ましたけど……あの高い建物!!あれやっぱり凄いです!!」

「ふふ、ショウコちゃん、あれは時計塔よ。」

「と、時計塔!?」

 

 

ショウコが驚くのも無理はない。

この世界ではなかなかお目にかかれない、高層の建物。

それが幾重にも続く街並み。

その中でも一際高い建物が、その時計塔であった。

 

前の世界のどこぞにあった、教会風の建物。

細長い直方体が垂直に立ち、その先は方錐形。

四面にはそれぞれ時計。

どこから見ても時間がわかるようになっているのか。

 

……おぉ、噴水とか久々に見たぞ。

この世界の建築技術の水準的に結構難しい技術なんじゃなかろうか。

 

首都ってすごいな……。

 

 

「あの時計塔の下に学院があって、私とヒナタの母校なんです。」

「あ、あそこか。」

「はい。あそこから縁あって、ワサドラの受付嬢に就職したんですよ?」

「はぁぁ……すごいわぁ。ウチ、驚いてばっかりや……。」

 

 

開いた口が塞がらないという感じのショウコ。

遠目の丘から見た首都の景色は圧巻だったけど……まさかこんなにこの時計塔がでかいとは。

 

 

「まぁ、こんなすごい街並みは中央ばかりなんですけどね。」

「そうなのか?」

「はい!他は、多分ワサドラと同じような感じですよ?東西南北、それぞれに市が立っていて、ギルドの支部があります。それぞれに特徴があって……」

 

 

鼻息荒く説明を続けるハイビスさん。

故郷に帰り、地元を案内する。

饒舌にもなるか。

 

 

しかし、ワサドラを出るときは、こんなに栄えているとは思わなかった。

いい意味で、とても驚いている。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

ワサドラを出る朝は、それはもう目まぐるしかった。

まぁその前の日から色々あって、俺自身落ち着いてなかったというのもあるが。

 

 

まずはしっかり、ドールお手製の朝ごはんを頂く。

しばらくは食べられないので、ゆっくり味わって食べたかった。

 

……だが、そうは問屋が卸さない。

そう。

暴走特急ミヤコ号がいつものごとくハッスルしたのである。

 

 

「ドールが愛おしくてやっぱり行きたくない」と駄々をこね始め。

始めはちょっと嬉しそうにしていたドールも、段々とボルテージを上げる。

そして、そこに気付かないのがミヤコ号の暴走特急たる由縁。

 

大噴火になるまで、そう時間はかからなかった。

 

 

「お母さん…………?」

「あ、あら?ドール……ちゃん?」

「いい加減にしないと……!!」

「わ、わわわ!ご、ごめんねドール!そ、ソウジくん!助けてぇ!!」

 

 

ムニュ。

 

 

おぉ。

ナイス感触。

右腕に素敵な柔らかいサプライズ。

 

 

「…………。」

「…………ど、ドールちゃん?」

「さっさと行きなさぁい!!」

「は、はいいい!!じゃ、じゃあソウジくん達!わ、私先に行くわね!!」

「は、はい。」

 

 

ピュー。

 

 

…………。

嵐が去った……。

 

 

「ドールちゃん、どんどんご飯うまくなるなぁ……おかわり!」

「あ!私ももらいます!」

 

 

ハンズとショウコは、いつものごとく飯をかっ食らう。

ミヤコさんの引き起こすこんな朝は日常茶飯事。

 

……慣れたな。

 

 

「……ドール、ホエールさん、そろそろ行きます。」

「ほっほっ、頑張ってきなさい。ショウコ殿も、どうかご武運を。」

「はいっ!」

「ショウコちゃん!ソウジさん!がんばってくださいね!」

「あぁ、ハンズも気をつけて帰れよ。」

「はい!」

 

 

パタパタ。

 

ハンズが尻尾を振る幻覚が見える。

犬……。

 

 

「……ソウジさん。」

「ん?」

「…………はい。」

 

 

ズイッ。

 

 

俺の前に立ち止まるドール。

…………いつものヤツですね。分かります。

 

 

「そ、それでは失礼して。」

「うん。」

「…………。」

 

 

ナデナデ。

 

 

「…………んっ。」

「よ、よし。じゃあ――」

「あ、まだ。」

「えっ!?あ、あぁ、わかった。」

「ん……。」

 

 

ナデナデ。

 

 

……な、なんだ!?

今日はやけに長い!!

 

 

「…………ん。」

「あ、はい。」

 

 

そろそろもう良いかというところで、ドールが離れる。

…………何かタイミング的に俺が名残惜しそうにしているようになってしまった。

恥ずい……。

 

そのままドールはショウコのところへ。

 

 

「ショウコちゃん……気をつけてね。」

「うん!まかしとき!」

「うん。…………やる?」

「えっ!?ええの!!?」

「うん。いいの。ショウコちゃんなら。」

「…………いただきます!!」

 

 

ショウコもドールを撫で始めた。

いただきますって、おい。

 

足をかがめて身長に合わせるドールが、非常に可愛らしい。

 

 

あれ?前は俺専用とか言って……。

 

い、いや!何を言ってるんだ俺は!

べ、別にいいんだぞ!?

 

あ、あれ!?なんで俺悔しがってんの!?

 

 

「…………はぁ、ごちそうさまでした!ドールちゃん!」

「う、うん。いっぱい撫でられた。」

「…………。」

 

 

よし、落ち着け、俺。

お前中身おっさんだろ?何も慌てることはない。

 

 

「……ご主人様、なんで悔しがっとるんですか?」

「何を言いますかショウコさんそんなことはありません。」

「めっちゃ早口!……ど、ドールちゃん!ご主人様が珍しく嫉妬しとるで!」

「ば、ばかやろう!さぁ!行くぞ!!」

「あぁ!そんな引っ張ってムキにならんと!」

 

 

恥ずかしくてとっとと出発。

 

 

「じゃあドール!ホエールさん!ハンズ!行ってきます!!」

「気をつけてね!」

 

 

慌ただしく宿を出た。

長く頭を撫でてたから、もう結構な時間である。

早足でガーグァ者乗り場に向かった。

 

 

…………。

 

 

 

車乗り場では、結構な人で賑わっていた。

数あるガーグァ車、どれも似たり寄ったりの外観。

 

だが、俺たちは一目で目的の車を見つけてしまった。

 

 

「うん!今日からよろしくね!!ガーちゃん!グーちゃん!」

「ガー。」

「グー。」

「「…………。」」

 

 

2頭のアホっぽい顔をしたガーグァ。

その頭を撫でる女性。

しかもギルドの受付嬢の制服を着ている。

 

こんなことをする人なんて、少なくとも俺は一人しか知らない。

 

 

「……お待たせしました、ハイビスさん。」

「あ!おはようございます、ソウジさん、ショウコちゃん。」

「おはようございます!」

 

 

ショウコが元気よく挨拶をする。

快活な様子が伝わってくる、ショウコらしい姿だ。

 

 

「すみません、出るのに手間取りまして。お待たせしました。」

「いえ、私も今、来たところです。ガーちゃんとグーちゃんに会うのは久々でしたので、つい。」

 

 

いつもの笑顔の3割増しで、ご機嫌なハイビスさん。

この方の愛は留まるところを知らない。

 

 

「お、ソウジさん!来たか!」

「あ、おじさん。今回もよろしくお願いいたします。」

「ははは!相変わらず礼儀正しいな!ああ、よろしくな!」

 

 

いつものおじさんも登場。

荷台の中を整理していたのか、太い二の腕を腕まくりしている。

 

 

「今回は遠出だからよ!久々に腕が鳴るぜぃ!」

「はい。本当に、頼りにしてます。おじさんにはいつも助けられてばかりです。」

「ははははは!そうお世辞まで言われちゃな!張り切っちまうよ!」

 

 

お世辞とおじさんは言うが、本音だ。

俺のこの方への尊敬ゲージは常にマックスである。

俺の大切な狩猟には、いつも付いてきてもらっている気がする。

今回も運び役として、俺がシガイアさんにゴリ押しした。

シガイアさんも「あの方なら。我々も非常に信頼しております。」と二つ返事。

 

一つの仕事を極めることに対して、俺は尊敬の念を抱かずには居られない。

 

 

「あー、ソウジさん。今回のことは、何となく聞いている。」

「……はい。」

「……まぁ、モンスターが相当凄えやつってことだから、コイツらがどこまでできるか分からんがな!精一杯やらせてもらうぜ!」

「…………はいっ!!」

 

 

いつも笑顔のおじさんの力強い言葉。

元気をもらえる。

 

かっこいいなぁ……。

 

 

「ハイビスさん……ご主人様ってやっぱり……。」

「ええ……それは私も危惧してるのよ……あり得るわよね……。」

「ハンザさんの件は、ウチも結構心配してて……。」

「分かるわ……で、でも、な、何なの、この気持ち……いっそこのまま突き進んでほしいような……期待しちゃいけないんだけど……。」

「き、期待しちゃあかんで!ハイビスさん!そ、そこは行っちゃあかん世界な気がしますから!戻ってきて!」

「はっ!……いけない!」

「……ウチら負けませんよ!」

「そ、そうね!」

 

 

ショウコとハイビスさんが何やらアホなことを話している気がした。

スルーしておこう。

 

二人から何か、女神様発の変態神達の雰囲気を感じる……。

 

 

「あらー!ソウジくん達!来たのね!」

「ミヤコさん。」

「……ドールは何か言ってたかしら?」

「は、はい。頑張ってきて、とのことでした。」

「……ふふ、あの子も素直じゃないからね!よし、お母さん頑張るわよー!!」

 

 

……どうやらミヤコさんの中で、朝の騒動は無かった事になっている様子。

こちらもスルーしておこう。

家族の問題は人それぞれであるからして。

 

 

…………。

 

 

そこからテントでの宿泊をはさみつつ、俺たちはかなり急ぎ目で首都に向かった。

ガーグー達の頑張りもあり、車はどんどん進んでいく。

 

 

「首都とワサドラを結ぶ道は、この大陸の輸送の要とも言えます。チダイ村を挟んでの一大販路で、公的資金だけでなく、豪商や豪農の私的な投資もありますから。」

「なるほど……道のそこかしこにある目印は……。」

「一里塚……ですね。大体4kmごとに建てられています。モンスター避けの強固な柵や香を設置しているのは、我々ハンターズギルドなんですよ?」

「なるほど……。」

 

 

道行く途中、ちょいちょい入るハイビスさんの補足。

これ系の話は大好きなため、俺も熱中している。

楽しいんだよなぁ、こういう地理的な話。

 

 

「はぁ……ショウコちゃんって柔らかいのねぇ……。」

「うわぁ……ミヤコさんの肩、こってますねぇ……。」

「…………年齢には勝てないのよ……。」

「……何か、すんません。」

「謝られると辛ぁい!!」

 

 

対してミヤコさんとショウコは超リラックスムード。

ショウコの小さい膝に頭を乗せてゴロゴロするミヤコさん。

この人本当に偉い人なのかな……。

 

二人とも、ハイビスさんの話はあまり興味はそそられないのか。

……常識レベルか。そりゃそうだ。

 

 

「あっ……す、すみませんソウジさん。私ばかり話してしまって……。」

「えっ?いやいや!いいんですよ!俺ほら、その辺の話、全く知らないですし!それに楽しいですよ?」

「ほ、本当ですか?ご迷惑でしたら……。」

「迷惑なんて。好きなんです、こういう話。」

「す、好き!?」

「あ、はい……そうです。」

「…………す、すみません。」

 

 

テンションがやたら高めのハイビスさん。

緊張感が全員ともあまり無いのはいかがなものか。

 

…………まぁいいか。今気張ってもしょうがない。

 

 

「ハイビスさん、そういえば。」

「はい!なんでしょう!?」

「ハイビスさんのご実家って、帰られるんですか?」

「……えっ?実家ですか?」

「は、はい。」

 

 

何か変なことを聞いただろうか。

故郷に帰るわけだし、至極自然な質問だと思うのだが。

 

 

「ま、まぁ……顔を出す時間が取れれば……。」

「は、はぁ。」

 

 

なんとも微妙な返事。

……あまり仲良くないのかな?

 

深く聞くのはやめておくか。

 

 

「ソウジくーん。ショウコちゃんマッサージ上手よ~……あー、そこそこ。」

「ふんっ!……わぁ、ここも固い……ふっ!!」

「あぁっ!いいわ!そこそこ!!」

「何してるんすか、ミヤコさん。」

 

 

ショウコにグリグリと肩を揉まれ、変な声を上げるミヤコさん。

ショウコもやたらと張り切っている。

 

 

「何って、マッサージよ〜……あぁ……光が見えるわ……。」

「ご主人様もハイビスさんも、次やってあげますね!ウチ、得意みたいです!」

「いや、多分ミヤコさんが肩こり過ぎなだけじゃ……。」

「あっ私やってもらいたいかも……。」

「じゃあハイビスさん!こっちへどうぞ!」

 

 

いそいそとショウコの元へ向かうハイビスさん。

そんなに肩がこっているのか。

まぁ完全なデスクワークだからなぁ、受付嬢って。

 

 

「あ……あぁぁぁあぁぁいいいぃぃぃ…………。」

「うわっ…………ミヤコさん以上や。」

「はぁぁぁ……気持ちいいですねぇ……。」

 

 

恍惚の表情を浮かべるハイビスさん。

……若いのに、大変なんだなぁ……。

 

 

「ハイビスちゃん……どうやらあなた、慢性的肩こりさんね!」

「は、はい、総務長。私、肩こりが酷くてですね……あ~~~~……。」

「ほら、ハイビスさん。動かんと、じっとしとってください。」

「あぁ……ごめんねショウコちゃん……あぁ、ここは天国……。」

 

 

いや、これから向かうのは天国どころか古龍なんだが。

 

ちなみに、俺とおじさんもやってもらったが。

 

 

「…………ご主人様の肩、柔らかくて面白うないです。」

「なぜ俺は責められてるんだ?」

「おじさんの肩は大っきくてもみにくいです。終わり。」

「も、もう終わりか!?何だ、せっかくショウコの嬢ちゃんが肩揉んでくれるって張り切ったんだがなぁ。」

 

 

俺とおじさんはもみ甲斐が無いと、ショウコは早々にやめてしまった。

いいことなんだが、気分は複雑であった。

 

 

何とも気の抜けた時間であった。

 

 

…………。

 

 

2日目の夕方にはチダイ村にたどり着いた。

そして、明朝にはすぐに出発することに。

 

何故かって、俺があまりこの村にいたく無いからである。

 

この村の雰囲気は全くもって問題ではない。

むしろ長閑な農村。

そこかしこに商店や宿は点在しているが、不思議と落ち着くところである。

広すぎる農地こそ前世の日本とは対極的だが、村の作りは素朴で愛着が湧く。

緑も多いし。

 

だがちょいと苦手な方が、ここには居るのだ。

 

 

「ソウジさん、やっぱり、わたくしの屋敷でお休みになられますか?」

「いやいや、せっかく取っていただいた宿ですので!こちらで!」

「そうですか……ふふ、ソウジさんはやっぱり謙虚な方ですね。素敵ですわ。」

「あ、ありがとうございます……。」

 

 

苦手な方。

そう、この一大農産地を取り仕切る女傑。

イパスさんである。

 

この方、見た目はものすごく女性らしく、農村の方とはとても思えなかった。

初対面では全くもって気づけなかった。

 

だが、中身はもう完全に治める側の人。

シガイアさんとか、その辺の種類の人間であった。

 

 

「お仲間さん達も、この宿でよろしかったでしょうか……何か不都合がございましたら、すぐにおっしゃってくださいね。使用人をここに置いておきますので。」

「えぇ!?いや、そこまでしていただかなくても。」

「……大変な狩猟を目の前にされているのですから。このぐらい、させてください。」

 

 

ニコッ。

 

綺麗なお顔。フワッとした深い茶色の髪。

丸渕メガネの奥にある、大きな青い瞳。

さぞおモテになるであろう。

その笑顔は破壊力抜群である。

 

だが俺はもう警戒心の塊。その笑顔さえちょっと怖い。

 

 

「それでは、短い間ですがゆっくりとお休みください。」

「は、はい。おやすみなさい。」

「はい。失礼いたします。」

 

 

スタスタスタ……。

 

 

宿から去るイパスさん。

あー緊張した……。

 

 

ガチャ。

 

近くの一室から顔を出す一人の人物。

御者のおじさんであった。

 

 

「い、行ったか?」

「行きましたよ……ひどいですよ、俺一人置いてみんな……。」

「いや、すまねぇな。妙に警戒しちまってよ……。」

「まぁ……そうですねぇ……。」

 

 

村に着いたら早々に屋敷の人間だという方々に歓迎され。

貸切の宿に向かい。

とても美味しい夕食をいただき。

なんならガーグァ達の面倒も見てもらい。

 

全員がもう完全に警戒心MAXになってしまった。

 

 

「……俺の部屋にはよ……これがあったわ。」

「……酒ですか。」

「これ高いやつだぞ……飲んでいいのか?」

 

 

随分と年季の入ったラベルが貼られた酒瓶。

まだ開けられていないそれは、セツヒトさんあたりが見たら泣いて喜びそうな逸品に見えた。

 

 

「まあ俺としちゃ、ガーグァたちを見てくれるし餌代もいらねぇって言うし酒もくれるし……あぁ、アイツらの名前から好物の餌までばっちりだったなぁ……。」

「……明日朝、すぐに出立しましょう。」

「おう。そうすっか。」

 

 

その酒、何か入ってたりして……。

 

その後、寝付けない俺を気遣ってくれたおじさんが「飲むか?」と誘ってくれた。

おじさんとちょっとばかしの酒盛りをしてから寝た。

 

単純なる厚意でこのような歓待を受けたと純粋に思えない自分がいる。

 

 

次の日の朝には、イパスさんに深々と礼をして、すぐに出立した。

「お帰りをお待ちしておりますわ。」という、ありがたいお言葉を頂きながら。

 

 

「はぁ……落ち着かん宿でした……マタタビ団子ようさん食べられて嬉しかったですけど……。」

「猫グッズだらけのお部屋で、なかなか楽しめましたが……。」

 

 

ショウコもハイビスさんも、どうやら手厚い歓待を受けた様子。

……まぁ、歓迎してくれたことは大変にありがたい。

警戒しすぎか、俺。

 

 

「あれ?私のお部屋には何もなかったわよ?」

 

 

ミヤコさんだけは、なぜかそういうわけでは無かったようであった。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

その後、ミヤコさんの若干の不機嫌を宥めつつ。

ようやく5日目の昼、ザキミーユシティにたどり着いたという次第である。

 

ミヤコさんとハイビスさんの話では、俺たちはこのまま西支部とやらに直行。

そこで今後のことについて話し合われるということであった。

 

ちなみに、車には乗ったままである。

街の大通りは、基本的に車道と歩道が別れている。

信号や横断歩道といったものは無かったが、ここまで整備された道を見たのはこの世界では初めてであった。

おじさんもそのまま、俺たちを運んでくれている。

 

 

「おじさん、そこを右に行ってもらえますか?」

「おうよ、ハイビスの嬢ちゃん!……あ、あれか!?」

「はい。あれが、西支部になります。」

 

 

ハイビスさんの指差す先。

周囲の住居よりは少し大きい程度の、3階建ての建物が見えた。

色の基調は白。そして木の色の茶。

基礎こそはワサドラのような石造りだが、1階の中段辺りから、壁は真っ白な漆喰で塗り固められている。

その白を支えるように、交差した柱が見える。

窓枠や屋根は木造、基礎は石、外壁は漆喰。

住居の建ち並ぶ周囲を邪魔しない、中々におしゃれな外観である。

 

ワサドラは主張激しいガッツリ石造りだからなあ。

荘厳というか厳ついというか。

見慣れたし、愛着も湧いてきたけど。

 

 

「裏手に車を停められますので、おじさん、そこに行きましょう。」

「おぅよ!安全運転で行くぜ!」

「ガァ。」

「グァ。」

 

 

ゆっくりとした歩みを進めるガーグァ達。

5日間走りっぱなしだったからなぁ……ゆっくり休めればいいけど。

 

 

ザキミーユギルド西支部。

もう「西支部」と一言で済ますことが多いらしい。

その裏手、車を停める大きなスペースの更に向こうには、大きい川が流れていた。

街の北部から入って、中心街のやたら大きな橋を渡ったときは感動したが……運河なのだろうか。

そういえば細かい水路もたくさんある。水運も発達してるんだな。

 

 

「北西から南東に街を横切る、ヨード川です。このま南のナニンチと繋がっているんですよ?」

「すごいな、こういうのはワサドラには無い。」

「はい。夏は川のおかげで涼しいですしね。私も小さい頃はよく泳ぎに来ていました!」

 

 

ハイビスさんが運河について補足をしてくれる。

なるほど、こうやって別の大陸側からの輸出入の物品を運んでいるのか。

栄えるわけである。

経済、政治の中心である首都ザキミーユシティ。

 

聞けば聞くほど、ちょっと面白いなと思った。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

コンコン。

 

 

 

「失礼します。」

 

 

ハイビスさんとミヤコさんに連れられ、俺たちはとある一室に向かった。

ギルドマスターの部屋か。支部ごとにいるのかな。

 

 

西支部の内部は、至って普通だった。

外観からさぞかしおしゃれな風を予想していたが、やはりハンターズギルド。

ごった返してはいなかったが、ハンターたちの出で立ちはワサドラと変わらない。

案内板や受付台も、ワサドラと造りが似ている。

 

見たことがあるような無いようなハンターもいたため、ちょっと落ち着くなぁ。

まぁ入った時はジロジロと見られたため、あまりいい気分ではしなかったけど。

気にしないことした。

 

 

『おぅ。入ってくれ。』

「はい。」

 

 

ガチャ。

 

 

部屋の中に入る。

ハイビスさんとミヤコさんが先行。続くように俺、後ろから隠れるように入るショウコ。

おじさんは先に休んでもらっている。

 

中は、圧迫感たっぷりのシガイアさんの部屋とは全く違っていた。

高そうな家具はなく、椅子も机も木製。

簡素な事務机の後ろには、棚の上に山と積まれた書類。

シガイアさんのところはきっちり整理整頓されていたため、ちょっと驚いた。

 

ミヤコさんがずいっと前に出て、話し始める。

 

 

「どうも、お元気?」

「お元気も何も、いつも通りだ。しかし、遅えぞ。そいつが、例のヤツか?」

「相変わらず失礼な物言いねー!せっかく休暇すっ飛ばして連れてきたっていうのに。」

「そんなもんは中央に言ってくれ。俺だって、急に対応しろなんて言われて困ってんだからよ……。」

「むしろ私そういう陳情を聞く側だし。」

「じゃあ自分で何とかしろ。」

 

 

ギルドマスターと思しき人物。

俺なんか軽々と持ち上げそうな太い腕、でかい体格。

顔にもぶっとい首にも無数の傷跡が見える。

引退した、歴戦のハンターさんかな……威圧感たっぷり。

 

部屋の奥に立てかけられたハンマーは自前だろうか。

……い、いや、でかすぎじゃない?

これ操れるのか……恐ろしい……。

 

そんな人とタメ口で軽口を叩きあえるミヤコさん。すごい。

 

……いかんいかん、自己紹介せねば。

 

 

「は、初めまして。ワサドラギルドより参りました、ソウジと言います。」

「おぉ、よろしく。話は聞いているぞ。……しかし本当に礼儀正しいな。マショルクの弟子ってんでどんなヤベェやつかと思ったが……普通じゃねぇか。」

「へ?」

「あぁいや、すまんな。こんな話し方しかできねぇ。気を悪くしないでほしい。」

「い、いや。俺は、全く」

 

 

教官の名前……知り合いってことか?

まぁあの人、ザキミーユに太いパイプがあるって、確かシガイアさんが言ってたけど……。

 

ふと横を見ると、ハイビスさんはまるで脳面のように無表情。

怒っている……?いや、緊張しているのか?こわばって見える。

どっちだ。

 

 

「お、そっちはハイビスさんか。優秀なギルド職員だってシガイアさんから聞いている。よろしくな。」

「は、はぃぃ!!よろしくお願いします!!」

 

 

あ、どうやら緊張していただけだなコレ。

テンパり具合が半端ないわ。実にハイビスさんらしい。

 

しかし、そんなに緊張せんでも。

 

 

「ははは、元気がいいな。……後ろのちっこいのは……。」

「しょ、ショウコ、です。」

「おぉ、ソウジの。そうか。献身的なオトモだってな。よろしく頼む。」

「は、はい。」

 

 

ショウコはショウコで、俺の後ろに隠れてしどろもどろ。

いつもの元気はどうした。

 

 

「さてソウジにショウコ。お前達には相当に期待している。黒蝕竜ゴア・マガラの討伐の話、聞いていて俺も燃えた。」

「そ、そうですか。」

「あぁ……なぁミヤコ、こいつらなんでこんなに緊張してんだ?」

「アンタが怖いからよ!まず自己紹介とかしたらどう?」

「お、おぉ。それを忘れてたな。」

 

 

ミヤコさん、ナイスツッコミ、

むしろ普通にタメ口で話せるあなたが、今日はとても頼もしく見えます。

だってめっちゃ怖いんだもんこの人。

 

 

「俺の名はハスガ。一応この西支部でギルドマスターっぽいことを嫌々やらされてる。」

「ちょっ……もうちょっといい言い方無いの?」

「事実だ。形だけでも頼むなんて言われちゃなぁ。……あぁ、すまん。俺のこと、わかるか?」

「……えぇと。」

 

 

ハスガさん。

ハスガ……。

思い出す。

確か、どこかで……。

 

あ。

 

 

「……あぁ!」

「お、知ってたか。俺も捨てたもんじゃないな。」

「むしろアンタを知らないハンターがいたら、お目にかかりたいもんね。」

 

 

セツヒトさんから聞いたことがある。

教官もいた、伝説のハンターチーム「カホ・チータ」。

そのリーダーっていうのが……。

 

 

「ハスガ……さん。」

「おう。得意な武器は……ハンマーと大剣だ。まだ現役で、な。」

 

 

うわ……。

西支部のギルドマスターにして現役のハンター。

 

剛腕ハスガ、その人が目の前にいた。

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