モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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165古龍討伐を開始しましょう。

俺達が禁足地にたどり着くまでに、ガーグー達に異変が起きた。

 

正確にはガーちゃんの方がおかしくなった。

落ち着きなく首を振り、進むことが難しくなった。

苦しげに呻きながらも走る姿に、心配した。

 

無理もない。

辺り一帯、黒い霧。

申し訳程度の感染対策では、ただの付け焼き刃。

こうなることは、目に見えていた。

 

 

「どうっ!どうっ!!」

 

 

おじさんが巧みな綱さばきでガーちゃんを宥めつつ、何とか禁足地の麓までやってきた。

……ここからは、流石に歩くことにした。

 

 

「……おじさん。」

「…………すまねえ。限界みたいだ。」

「いいんです。本当に……ありがとうございました。」

「気にしねぇでくれ!もらった薬、試してみるからよ!幸いもう一匹は変わらねぇ!一旦戻るとするわ!」

「はい。……お気をつけて。」

 

 

おじさんにそう言葉をかけると、いつものように軽口が飛んできた。

 

 

「ははははは!!そりゃ俺のセリフだ!!ギルド風に言えば、ご武運を、ってな!……ショウコの嬢ちゃん!」

「はいっ!」

「ソウジさんを、よろしく頼む!」

「……お任せください!」

「あぁ!……ソウジさん。」

「はい。」

「……霧が晴れたら、また迎えに来る。いや、何が何でも、絶対に俺達が迎えに来るからよ。だから……頑張ってこいよ!!」

「……はい!!」

 

 

ガラガラガラガラ…………。

 

 

少しずつ遠ざかる、おじさん達。

黒い霧のせいもあって、すぐに見えなくなった。

 

ありがとう、おじさん。

ガーグー、がんばったな。

ありがとう。

 

行ってきます。

 

 

「……ショウコ、行こう。体調は?」

「はいっ!!問題なし!です!」

「……よしっ!」

 

 

その返事を皮切りに、俺達は禁足地のてっぺんに向けて、歩みを進め始めた。

頂上からは、ゆっくりと下ってくる黒い霧。

まぁなんとも分かりやすい手がかりである。

 

隠れる気とか無いな、シャガルマガラは。

 

 

「索敵とかその辺、気にせんでええから楽ですね。」

「ははは。確かにな。」

 

 

ショウコが同じことを思ったようだ。

その言い方に、心が少し軽くなる。

 

やっぱりショウコは、俺の最高の相棒だ。

 

 

頼りにしてるぜ。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

禁足地。

 

名前の通り、足を踏み入れてはならない場所。

大陸に入植が始まる前から、そう呼ばれていたらしい。

 

古龍……まぁつまり相当な昔から生きているモンスターがここにいて、いつしか先住民から禁足地と呼ばれるようになった……ということなんだろう。

 

 

だが、頂上近辺にたどり着いたら少し驚いた。

 

 

「……こんな場所にも、スタートキャンプがあるんだな。」

「キャンプっていうよりも、掘っ立て小屋があるだけですけどね。」

 

 

禁足地だと言うからてっきり何の人工物もないところだと想像していた。

だが、小屋が一つ。

その周囲には、岩に結ばれた縄やその縄にくくりつけられた様々な紋様の布など。

 

山を登りながら強風に煽られていたが、不思議とこの近辺は寒くない。

風はある程度は強いが、凌げそうな場所ではある。

 

 

「昔の人が作ったんですかね?」

「……だろうな。そしてあの先……多分シャガルマガラがいる。」

 

 

もう、霧を頼りにしなくても分かる。

明らかに放たれる、禍々しい空気。

それが、頂上へ向かう道から漏れ出ていた。

 

その周囲には、古く色褪せた無数ののぼりが立っていた。

まるでお祭りの飾りのようだが、風雨に晒されてボロボロになった布は、どこか不気味ですらある。

 

 

「『この先禁忌の地。立ち入るべからず。』……か。」

「……ご主人さま、あれ読めるんですか?」

「えっ、読めないのか?ショウコ。」

「は、はい。ウチは知らん文字です。」

 

 

のぼりに書かれた文字。

いつも使っている文字とはかなり違うが……俺は何故か読める。

ショウコが読めないってことは、俺にまだギフトの力が残ってるんだろう。

 

女神様も、見てくれているのかな。

 

……行ってきます。

 

 

「よし。最終確認。」

「装備……アイテム、問題なしです!」

「よし、今日も基本は手数で勝負。挟撃で行くけど……まぁ行き当たりばったりだ。」

「はい!いつも通りですね!」

「あぁ。目標は……シャガルマガラ討伐。そして、ワサドラに帰ることだ。」

「異存無し!です!」

「よし!……行こう!」

「はいっ!」

 

 

元気なショウコの声。

心が軽くなり、元気が湧く。

 

 

この子は死んではいけない。

もちろん、俺も。

 

ショウコだけじゃない。

 

二人で。

 

 

生きて帰る。

 

 

…………。

 

 

……。

 

 

 

「…………久しぶり。……で合ってるのか?これ。」

「………………。」

 

 

狩り場に入っですぐ。

中央には、待ち構えていたかのようにシャガルマガラがいた。

 

叫ぶでもなく、かと言って座り込んでいるわけでもなく。

ただ悠然と立ち上がり、俺を見つめる。

 

待っていた、ってことか?

まぁそれならそれで。

 

 

「生まれ変わる前は、まぁお互いボッコボコになったけどさ。」

「…………グゥゥ…………。」

「……今日こそは、きっちり狩らせてもらう。その命。……よろしく。」

「ガァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

響き渡る咆哮。

地面が震え、身体がすくみ上がる。

 

生物的な本能が告げている。

早く逃げろ、と。

 

だが、それを理性で抑える。

俺は引けない。

引くわけには、いかない。

 

 

ジャキン!

 

 

双剣を取り出した。

だが、シャガルマガラは再び叫ぶ。

 

 

「…………ガァァァァァァ!!!!」

「っ……。」

 

 

二度目の咆哮。

うん。うるさい。

 

でかいな、コイツ。

そして……ちょっと気持ち悪い。

翼、そこに爪はあるのに……しっかりと四本脚で立っている。

 

体色は、翼が金色、体は青白く、灰が交った奇妙な色も見える。

翼を広げれば、相当に大きい。

更には、口から漏れ出る濃い青紫の煙。

その色にも立派な角にも、ゴア・マガラの面影は残っているが……。

 

 

「完っ全に別物じゃん……。」

「ガァァァ!!!」

 

 

バッ!!

 

 

俺の発言に怒りを覚えたのかどうかは知らないが。

シャガルマガラは初撃をはやらず、バックステップで俺と距離を取った。

 

 

「…………ふっ!!」

「ギャァ!!」

 

 

離されないように付いていった。

その瞬間。

 

 

ビュオ!!

 

 

かなりの速さで繰り出される左前脚。

通常ならその攻撃をいなし、次に備えるところ。

 

だが、俺は構わず突っ込んだ。

 

 

「おぉぉぉぉ!!!」

 

 

ヒュン!

ズザザザザン!!

ヒュパッ!!!

 

 

「グァァァァァ!!」

(……成功!)

 

 

宙に浮きながら、技が入ったことを確認。

回避攻撃が綺麗に決まった。

 

 

(懐に入るには……思い切りと度胸!!)

 

 

大型のモンスターは、逆にその懐にスキがある。

入り込むには、とても勇気がいるけど。

リターンはでかい。

もちろん、リスクも。

 

 

クルッ。

 

ヒュパ!!

ザシュ!!

 

 

「ギャァァ!?」

「っと……。」

 

 

足で踏ん張り、そのまま横一閃。

そのデカい翼に斬撃をくれてやる。

 

固くはない。

刀もいい斬れ味だ。

 

感謝します、セツヒトさん。

 

 

「ショウコ!!」

「はいっ!!」

 

 

技後硬直。狙われやすい大きな隙。

そこを完璧なタイミングで、ショウコが背後から斬りつける。

 

 

ザザザザザ!

ザン!

 

 

「こっちや!!」

「グアァァァァ!!」

 

 

ブン!

 

 

挟撃の形。

 

戦いに入る前の段階で、ショウコには背後に回ってもらっていた。

気づいていたのかは知らんけど。

とりあえずは、うまくいった。

 

ショウコの方を振り向くシャガルマガラ。

 

 

「……背中ががら空きだ!」

 

 

ダン!

 

ヒュオ……。

ズザザザザザザン!

ザシュ!!

 

 

「ギャアアァァ!?」

「ぬおらっ……!!」

 

 

ザザザザザ!!

 

 

空中回転乱舞。

ティガレックスで極めた、この技。

ちゃんと、俺のものになっている。

 

隙だらけの背中に、斬撃をお見舞いした。

 

 

「ご主人さま!!」

「あぁ!わかってる!!」

 

 

タタン!

 

 

ショウコと俺、それぞれがバックステップで離れ、安全な距離を取る。

調子に乗って攻撃を喰らう……なんてことは一番避けたい。

 

ショウコに怒られてしまうからな。

 

 

「初撃はうまく………!?」

 

 

攻撃が入っていることに多少安心したのも束の間。

 

向こうに見えるショウコの足元から、イヤな予感がした。

 

 

「ショウコ!!飛び退けぇ!!!」

「は、はい!!」

 

 

ヒュイイィィィィ……。

ドガァ!

 

 

(爆発!?)

 

 

ただ、驚くしかなかった。

ショウコが飛び退いた直後。

 

地面が青紫色に光り、そして爆発。

白い破片のようなものが、周囲に散らばった。

 

 

「ショウコ!!」

「無事です!!これ気ぃ付けて下さい!……相当強いですし……ふわっ!?」

 

 

ドガァ!!

 

 

「ーーーどこに出てくるか、分かりません!!」

「……了解!!」

 

 

新たな光が発生する。

だが、さすがはショウコ。

光の爆発を、見た瞬間に避けている。

この反射速度。俺は到底敵わない。

 

しかし、厄介な攻撃だなアレ。

 

 

(となると……。)

「ガァァァァァァ!!!」

 

 

ギュオン!!

ドガッ!ドガッ!ドガッ!!

…………。

 

 

猛り狂ったかのように、気持ちの悪い四つ脚を動かして俺に突進してきたシャガルマガラ。

俺は思考をつづけながらも、それを横っ飛びで回避する。

 

 

「グゥゥゥゥゥ……。」

(……発光した瞬間に対応するしか無い……。)

 

 

地面が発光してから爆発するまでのタイムラグ。

一秒にも満たない程の時間で、回避する。

それしか無い。

 

だがもし、攻撃や回避の最中に地面が光ったら……。

 

 

(その時は……食らうの覚悟で、行くだけだな。)

 

 

もとより無事で済む等、これっぽっちも思っちゃいない。

死を受け入れてはいない。

ただ、怪我をしないで帰れるほど、甘い相手でもない。

 

 

「ギャアアアアア!!!」

「来い!!」

 

 

決めていた覚悟を再確認できた。

やるしか、ないんだ。

 

 

「グゥゥゥ……ァァ!!」

 

 

俺に体を向けたシャガルマガラ。

一瞬で距離を詰めたと思ったら。

 

 

グワァ……!

ズドォォォ!!!

 

 

「うっわ……!!」

 

 

両前脚を振り上げ、その体を地面に打ち下ろしてきた。

信じられないほどの地響き。

いや、もはや立っていられないほどの地震のようだ。

 

ふらついてしまう。

 

 

「……くっ!!」

「グァァァァァ!!!」

 

 

動けない俺を見て、シャガルマガラは好機と判断。

右前脚を振り上げた。

 

 

(抉ら……避……無理……!!)

 

 

態勢を崩されて、うまく動けない体。

迫る攻撃。

なので俺は。

 

ふらつく体を、()()()()()()()ことにした。

 

 

「ガァァァァ!!」

(……集中……!!)

 

 

コンマ数秒の世界。

ゆっくりと動き出す、周囲の様子。

集中に集中を高める。

 

諦めたといっても、攻撃をそのまま受け入れる訳では無い。

揺れ動く自分に逆らわずに、自身の体幹を捉える。

体の軸を、見つける。

 

 

(……あった……このタイミング……!!)

 

 

ギュルン!!

ヒュオッ!!

 

 

ズガァ!!

 

 

「ご……ご主人さまぁ!!!!」

「……………無事だ!!態勢を変えるな!!」

「は、はい!!……よかったぁ……。」

 

 

ショウコの声が響く。

大丈夫だぞ、俺は生きてる。

 

……シャガルマガラの反撃。

ふらつく俺は、格好の餌食であったはずだ。

絶対に、一撃で仕留めに来ると思った。

 

だから、俺は()()()回避した。

極限まで脱力して、ただただ体の軸……独楽の中心を捉えて。

 

 

(回転回避……ラージャンには外したけどな。)

 

 

ラージャン戦。

その怪力に、自慢の回転回避が為す術なく破られてしまった。

あの時は、体がこわばっていた。

それでは、強敵には敵わない。

 

体をどろどろに溶かして、まるで液体のようになった自分をイメージして。

攻撃を、受け流す。

 

何とか成功した。

一か八か、だったけど。

 

 

「よっ……と。」

 

 

バッ。

 

 

バックステップで、再び距離を取る。

 

先程から、博打のような狩猟が続く。

さっきの回避も、そう何回もできるわけではない。

ギリギリの狩猟。

 

できることをすべてぶつけてもなお、コイツには足りない気がする。

だが、今までやってきたことを全てぶつける。

それしか無い。

 

自分を、ショウコを、信じろ。

 

 

「……ショウコ!!」

「はい!!」

「霧の方はどうだ!?」

「問題ないです!!」

「よし!!何かあったらーーー」

「ーーーすぐ言います!!」

 

 

すぐの返事。

よし。今のところ、シャガルマガラの鱗粉の影響は無さそうだ。

俺もショウコも。

 

いいことだが、油断は禁物だ。

 

 

「やぁぁぁぁぁ!!」

「グァァァァァ!!!」

 

 

ザザザザ!!

ザシュ!!

 

ドガァ!

 

 

ショウコが巧みに避けながら、後ろ脚を斬りつけ続けている。

シャガルマガラには多少は効いているようだが、大きなダメージにはなっていない。

 

だが、それでいい。

少しずつ、少しずつ削る。

こんな最強生物たる古龍に大技なんかしたら、痛いしっぺ返しがやってくる。

 

それに、その間少しでもコイツが俺から集中をそらしてくれれば、最高だ。

攻撃する隙ができるのだから。

 

 

「……いいぞ!ショウコ!!挟撃続行!!」

「はい!」

 

 

シャガルマガラを前後、または左右で挟む。

 

 

「ガァァァァアァァァ!!」

 

 

シャガルマガラは、頭の先を中心として扇形に90度角度を変え、態勢を整えてくる。

だが、挟み撃ちの形は崩さない。

 

俺とショウコの、黄金のチームワークだ。

逃がさないからな。

 

 

「うぉぉぉぉ!!!」

 

 

ヒュッ……ザシュ!

ズザザザザン!

 

ヒュパッ!

ギン!

 

 

「グァァァァ!!」

 

 

空中回転乱舞ではなく、しっかりと地に足をつけた斬撃を入れる。

おそらく弱点であろう頭部へ。

硬い角に刃が逸らされたが、いいのが入った。

 

 

シャガルマガラは先程から、俺とショウコのどちらに狙いを定めるか迷っている様子が見られる。

できるなら、俺にターゲットを絞ってほしい。

 

こっちを見ることで、俺たちのいつものスタイルが確立するから。

 

そのためには……。

 

 

「こい!シャガルマガラ!!」

「ガァァァァァァァァ!!!」

 

 

ズァッ……!!

ズン!…………。

 

 

俺の声に反応したのか、それとも先程の斬撃が効いたのか。

シャガルマガラは俺を正面に捉える。

 

殺気が、俺の体に纏わりつく。

おぉ……すごい。

身体が勝手に震える。

 

絶対的強者のプレッシャー。

やっぱり半端ない。

 

 

(……まぁ、だからって怖気づくわけにはいかないけど。)

 

 

もっともっと未熟な頃から。

敵わなそうな敵に立ち向かってきた。

 

圧倒的な力の差なんて、山ほど感じてきたんだ。

 

 

「…………負けねぇ!」

「ギャァァァァァ!!」

 

 

ブォン!!

 

 

シャガルマガラが、大きく左前脚を上げる。

力を溜める様子。

それを視認した瞬間、恐ろしいほどの速さで腕が振り下ろされる。

 

 

(…………懐っ!)

 

 

俺が選んだのは、灯台の下。

下暗し、シャガルマガラの巨体の下。

 

 

ズガァッッ!!!

 

 

地を抉る音が響く。

シャガルマガラ渾身の一撃を回避できた。

 

今いるのは、ヤツの腹の下。

 

 

(チャンス!!)

 

 

ヒュン!

ズザザザザザザザン!!

ザザシュ!!

 

 

「グァァァァ!!」

「まだまだ!!」

 

 

腹部に連撃を入れていく。

自分の体の下、死角から攻撃されるのは、どういう気持ちなんだろう。

……まぁ想像したくはない。

 

 

なんて、再びの攻撃を繰り返していた時。

 

 

「ガァァァ!!」

「っ!?」

 

 

ダダッ。

 

 

急に突進するシャガルマガラ。

懐にいた俺は、後ろ脚に引っかかり。

 

 

ドガァ!!

 

 

「ぐわっ!?」

 

 

ゴロゴロゴロゴロ…………!

 

 

「…………ってぇ…………。」

 

 

弾き飛ばされてしまった。

……そういう攻撃の仕方もあるのか。

やはり、大型モンスターの真下は、リスクもでかい。

 

 

「ご主人さま!!」

「平気だ!そこまでダメージはない!」

 

 

ショウコが心配する言葉をかけてくる。

正面にいたわけでは無いので、大きなダメージはない。

 

まぁ痛いもんは痛いけど。

 

 

(懐には、入れて3、4秒……。)

 

 

頭に入れておく。

巨体の下からの攻撃が、有効であることに違いはない。

ギリギリを見極めなければ。

 

 

ヒュイイイィ……!

 

 

「……!?やべぇ!!」

 

 

バッ!!

 

 

ズドォン!!

 

 

「……っぐぅ!」

 

 

爆風に煽られる。

地面が光ったと思ったら、爆発。

……思ったより早いな。

 

上方修正。爆発まで一秒もない。

 

 

(これを避けながら……いや、考えるな。)

 

 

爆発を起こす青白い光は、周囲に無数に現れている。

おそらく、出現のパターンなどはない。

それを、反射的に避ける。

 

喰らうなら、もう仕方ない。

そういうレベルの話。

 

避けてばかりいては、おそらく狩猟は失敗する。

勇気をもって、突っ込む時は突っ込む。

 

 

(できたら喰らいたくはないけどな……。)

 

 

あの爆発。相当な威力だ。

自分の反応を、信じるしかない。

 

 

「……ガァァァァァァ!!」

 

 

一瞬の間を開けて、両前脚を上げるシャガルマガラ。

何かを吸い込……ブレス!?

 

 

「何か来ます!」

「あぁ!!」

 

 

予想する。

シャガルマガラの口元には青紫の煙。

何かを放とうとしているのは分かる。

 

問題はその性質。

ラージャンやバサルモスの様な直線的なビーム。

それなら寧ろチャンス。

左右に避けて懐に入って、数秒の隙を手に入れられる。

 

だが、ジンオウガやフルフルのように辺り一帯を攻撃するものだったら。

距離を離して様子を見る。これが正解となる。

 

 

……情報も経験も足りない!

 

ここは……。

 

 

ザッ!

 

 

瞬間の思考の後。

俺は大きく後ろに飛び退いた。

 

大げさなほどに、距離を開ける。

 

 

 

「…………グァァ!!!」

 

 

グォン……ドォォン!!

ドン!

ドォォン!!

 

 

「うひぃ……。」

 

 

シャガルマガラは、全く予想外の攻撃を行った。

放たれた青紫の煙は、直進することなく。

 

ただ中空に漂っただけ。

 

しかし、その直後。

 

シャガルマガラを中心として、ハの字の形に煙が地を這い、爆発。

まるで連鎖しているかのように連続して弾けていく。

 

遠く離れたため、その様子がよく分かった。

……突っ込んでいたらと思うと……。

 

 

(幸運だった……。)

 

 

もし、いつものように「ブレスはむしろ大きな隙!」と得意げに突っ込んでいたら。

多分、弾け飛んでいた。

俺の体が。

 

予想外の動きに、距離を開けて様子見して正解。

 

無茶しなくて良かった……。

 

 

「……グァァァァ……。」

「…………。」

 

 

なんでお前逃げるんだよ、と言いたげなシャガルマガラ。

 

いや逃げるわ。アホか。

お前強すぎなんだよ。

 

 

「さて……!!」

「ギィャァァァァァァア!!」

 

 

距離が離れた俺とシャガルマガラ。

多分俺と距離を詰めてくる、と予想した瞬間。

愚直にも、ヤツは突っ込んできた。

 

突進。

 

でもな、シャガルマガラ。

それ俺、得意なんだ。

避けるの。

 

 

「……ふっ!!」

 

 

ヒュッ……クルッ。

 

ズザザザザ!!

 

 

「ガァァァ!?」

 

 

突進を、いなす。

体を回転させ、相手の角を、牙を、爪を受け流しつつ。

双剣の刃を立て、カウンターを入れていく。

 

俺の、十八番だ。

 

 

「ガァァァ……!」

 

 

ズドォ…………。

 

 

きれいに入った俺のカウンター。

シャガルマガラが転げて、地に伏せた。

これは……チャンス!!

 

 

「ショウコ!」

「はいっ!」

 

 

付かず離れずの距離でいたショウコに呼びかけ。

一斉に攻撃を開始。

 

俺は頭部。ショウコは翼と尻尾。

二人で、シャガルマガラへ攻撃を入れた。

 

 

「うぁぁぁ!!」

「やぁぁぁ!!」

 

 

自然と雄叫びを上げる。

偶然にも、ショウコとハモった。

 

 

ザザン!

ズザシュ!ヒュパッ!

ズザザザザザザザザザザン!

 

 

反撃の術も無く、ただ俺たちの攻撃を受けながらのたうち回るシャガルマガラ。

ここで、少しでもダメージを稼ぐ!!

 

 

「…………ご主人さま!!」

「あぁ!!」

 

 

バッ。

 

 

「ガァァァ…………。」

 

 

ムクリと体を上げ、再びその四足で立ち上がったシャガルマガラ。

どれほどのダメージが入ったか。

 

見た目は全く効いているように見えない。

さすが古龍。

強い。

 

 

「…………ガアッ!」

 

 

グググ…………。

バッ!!

 

 

「……何や!?」

「ショウコ!警戒!!」

「は、はいっ!!」

 

 

俺たちの猛攻に耐え、起き上がったシャガルマガラ。

体に力を入れ、急に空に飛び立った。

 

7mほどの高さ。

そこで翼を広げた。

 

空を飛んだからには、何か理由があるはず。

俺もショウコも、その何かに備える。

 

―――と、身構えた瞬間。

 

 

「…………ギィャァァァァァァア!!!!!」

「くぅっ…………!!!」

 

 

途轍もない咆哮。

体が思わずすくみ上がる。

 

 

ズゥン……!

 

 

そのまま降り立ったシャガルマガラは、悠然と俺に視線を向ける。

俺もそのまま、戦闘の姿勢をとる。

 

 

(……異様な姿……。)

 

 

空に浮かび上がったシャガルマガラ。

全身をよく見ると、その異質さが良くわかった。

 

見た目は、龍といえば龍。

ただ翼の他にある四つ足。

それが、他の生物とは一線を画していた。

 

翼を広げた姿は、もはや神々しさすら感じた。

だが、コイツも自然に生きる者。

 

 

「…………もう一度!攻めるぞ!ショウコ!!」

「はいっ!!」

 

 

狩りが順調なのかは分からない。

その様子からは、全くダメージを食らった様子は見受けられない。

 

だが、やることは同じ。

 

 

繰り返し、削りに削っていく。

コツコツと。

 

 

ジャキン!!

 

 

 

俺は再び、双剣を構えた。

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