シャガルマガラと対峙して、もうかなりの時間が経ったと思う。
時間は分からない。
だって空暗いし、周りはシャガルマガラの鱗粉?のせいで薄明るいし。
体は疲れ果てている。
万全ではない。
ショウコを爆発からかばった時に、背中に傷も負った。
負った、と思う。
確証が持てないのは、背中は見えないから。
見えないからまぁいいやという謎理論を持ち出し、とりあえずなんとか気を保っている。
双剣の斬れ味も問題だ。
なんとか岩場に駆け込んでは、スキを見て砥石で研いでいるが……この戦法も、命がけである。
まぁそもそもが狩猟自体命懸けなわけだけど。
砥石使用高速化が無ければ、終わってた。スキルと防具……セツヒトさんに感謝だ。
というわけで、俺がシャガルマガラに敵う要素が割と少ない。
(…………でも、不思議と、なぁ、)
落ち着いている。
いつもみたいに、アドレナリンドバドバ状態ではない。
リラックス……とまでは言わないが、なんかいい感じに力が抜けている。
だからって、状況が好転するわけではないけど。
「グァァァァァァァ!!!」
「くっ……!!」
再び空に舞い上がり、大きな咆哮を上げるシャガルマガラ。
そのたびに身が竦み、狩りが仕切り直しとなる。
先程から、実は何回かカウンターを入れられている。
だが、その度にこう飛び上がられてはたまらない。
手数の武器である双剣は、リズムも大切。
やりにくいったらない。
それに、攻撃が効いている気が全くしない。
動きは相変わらず素早く、一撃一撃はとてつもなく重い。
不規則な地面の光攻撃と相まって、俺はかなり疲弊していた。
(あんだけ走りこんだんだけどなぁ。)
自分の体力の無さに、もっと鍛えておけばよかった、と後悔してきた。
いや、頑張ってきた、とも思うけど。
「…………グルルルルル…………。」
「……強いなぁ、お前。多分俺史上最強だよ。」
「…………ガァッ!!!」
「ぬぉぉっ!!?」
ドダッ、ドダッ、ドダッ!!
突進攻撃。
まだ食らってはないけど、あれ一撃でもかなり持っていかれる。
気をつけないと。
更に言えば……。
「グルァッ!!」
「こっちか!!」
ビュオォ!!
体を翻し、尻尾の勢いも付けて前脚で薙ぎ払う攻撃。
これは範囲も広く、注意が必要だ。
回った巨体の左の懐に突っ込んでいくと、案外無事であることは分かっている。
だが、当たったらタダでは済まない。
そして。
「グルァァァァ!!!」
「くっ……!!」
ブワッ……ドガァッ!ドガッ!ドガァッ!!
こっちがうまいこと足元に回避していると、すぐさまブレスを仕掛けてくる。
広範囲で威力の高いブレス。
おかげで行ったり来たりを繰り返している。
……そりゃぁ疲れるわけだ。
何ならこのブレス、時間差で爆発する。
こっちが「あれ?なにもない?」とか思っていると爆発するのだ。
おかげで既に数回吹き飛ばされている。
不規則な光の地面攻撃と似ているが、威力が違う。
これもこれ以上喰らえば、致命傷を免れない。
「グルルルルル…………。」
「…………。」
避けんなよコラ、とでも言わんばかりに、こちらをにらみつけるシャガルマガラ。
いや、あんたの攻撃大概強力ですから。
避けるよそりゃ。
(………………あぁ、でも。)
そういえば、と思い返す。
避けられては、いる。
不思議と。
いや、当たったらやばいんだけども。
背中の痛みと相まって、当たったらどうなるかなんて考えたくもないんだけども。
「グァァァ!!!」
「っ!!?またかよっ!!」
ドドドドドド、と迫りくる突進。
やっぱり避ける。
(まぁでも、ティガレックスの時よりはましか……アイツのときは足場が雪だったし、とんでもなくしつこかったし…………あぁ。)
思い出した。
思い出してきた。
俺は、ハンターになって、いろんな出会いがあった。
モンスターもまた、たくさん。
経験が、ある。
シャガルマガラの攻撃全てに、経験が。
「グァァ!!」
(爪撃……。)
ヒョイッ。
ドガァ!!
岩に突き刺さり、砕くほどの一撃。
威力こそ違うが、ジンオウガの前脚よりはまだ避けやすい。
アイツは動きから何からバランスが良かったからなぁ……かっこいいし。
シャガルマガラは……なんと言うか、ちょっとアンバランス。
「グァ……!!」
ヒュイイィ……!
(ブレスの前触れ……!)
シャガルマガラが苦しそうに、青黒い煙を口から漏らす。
ブレスします、と教えてくれる。
(初ブレス……というかビームは……あぁ、あいつだ。)
俺が初めてこの世界に来たときに戦った、あいつ。
そりゃ岩と間違えてくつろいだ俺が悪かったけどさ。
…………死ぬかと思った経験は、あのバサルモスが初めてだったなぁ…………。
ズドォ!!ズドォ!ズドォン!!
なんてことを考えていたら、その青紫のブレスが爆発した。
ブレスを避けるのは得意技……なんて言ったらショウコに怒られるけど……。
ま、まぁとにかく。
懐に潜ればいい。
スッ。
「……ふっ!!」
ザシュ!ザザン!ザン!!
「ギャァァァ!!」
(ラージャンのビームも、アレやばかったよなぁ……。)
斬りつけながら思い出すのは、金色の光線。
スーパーなサイ◯人さながらの、アニメでしか見ないようなあの光線だ。
(足元にスキができるのは、こいつも同じだ。)
冷静だ。
不思議と。
いや、不思議じゃないか。
シャガルマガラの動きは、今までの奴らを思い出せば、なんてことはない。
いや、当たると死ぬと思うんですけど。
…………どうにかなる気がする。
「ギャァァァ!!」
(飛び上がって……滑空、かな。)
これもラージャンのローリング物理法則無視アタック…………いや、リオレウスの滑空攻撃に近いかな?
ラージャンの方は当たる寸前に避けるのがミソだったけど……シャガルマガラの場合範囲が広い。
リオレウスの滑空も、範囲が広いからなぁ。
(横に避けるのは諦めて……ふっ!!)
当たる目前。寸前に。
飛び上がり、回転。
攻撃まで行うのは、ちょいとキツイ。
今回は回転しての回避のみ。
ギギン!!
「うおっとぉ……うん、うまくいった。」
「グァァァァ!!!」
回転回避。
相手の力を、そのままいなす、俺の技。
コツをつかんだのは、雪山だったな。
ゴシャハギさん……あの時はお世話になりました……!!
「グァァ!!グァァ!ギャァァァ!!!」
「ぬおっ!!ほっ!ふんっ!!」
上から振り下ろされた、シャガルマガラの前脚による連続攻撃。
だが、落ち着いて見切る。
(ゴシャハギさん……あなたの連続斬りには、遠く及びません!!避けられます!!)
いや、多分シャガルマガラの方が強烈だと思うけど。
故・ゴシャハギさんへの思い出補正は、俺の中でそれほどに強い。
実際、あの連続斬りはヤバかったし。
後にも先にも、モンスターにさん付けしたのはゴシャハギさんだけだと思う。
「…………グゥゥゥ…………!!」
(……雰囲気が、変わったな。)
緊張が、辺りを包む。
いい加減避けまくる俺に業を煮やしたのか。
シャガルマガラか、身を低くして構える。
(空気が、ピリピリする……ディノバルドを思い出すなぁ……。)
数々の、死ぬかと思った経験。
その中でも、段違いにやばいと思ったモンスター。
斬竜ディノバルド。
(尻尾を噛んで……あの溜める瞬間は、マジで怖かった。)
思い出す。
あの時の緊張感。
回避に失敗すれば、天国への直行コース。
「…………ガァァ!!!」
(…………っ!!)
刹那、前脚を振り上げて俺を切り裂きに来たシャガルマガラ。
間違いなく殺しに来ている、その一撃。
速度が、今までとは比較にならない。
でも。
(…………見える。)
ヒュン……。
ザシュ!!
ズザザザザザザザザザ!!!
「ギャァァァ!!?」
(空中回転…………乱舞っ!!!)
ズザザザザザザザザザン!
「グァァァァ……。」
ズゥン。
(……チャンス!!)
ピンチはチャンス。
ディノバルドで分かったこと。
アイツの尻尾は、最大の武器であり、最大の弱点。
狙って攻撃できるなら、むしろ最強の尻尾攻撃は最大のチャンスともなる。
まぁ狙ってカウンターばかり、なんてやってたら、死ぬけど。
(鬼人化!!)
ザン!!
ザシュ!!ヒュパッ……。
ズザザザザザザザザザザザザン!!
「ギャァ!?ギャァ!!グァァァァ!!」
「ふっ……ふん!!うらぁ!!」
倒れ伏せる相手を、タコ殴りにする。
……シャガルマガラには失礼ながら。
俺は頭のどこかで、これまでの敵を思い出していた。
バサルモス、ドス系、アオアシラ、プケプケ、ロアルドロスにルドロス……。
リオレウス、リオレイア、ディノバルド、オロミドロにタマミツネ……。
ジンオウガ、ティガレックス、ゴシャハギさん、ベリオロスにザボアザギル……。
アンジャナフ、そしてラージャン。さらに、ゴア・マガラ……こいつの前の形態。
強敵の数々。
…………今、相対するは、天廻龍シャガルマガラ。
こいつが、生まれ変わって何度となく俺の前に現れるとしたら。
さっきみたいに、また復活するとしたら。
俺は、その度にこいつを倒す。
天廻龍シャガルマガラ。
輪廻を巡り、また再び俺たちの前に現れるのかもしれない。
生き返って来る。
それが、コイツの生態であり、生き方。
ただ、命を全うするだけの、生き物。
それがお前だというのなら。
「……お前に罪なんか無いけどっ!なっ!」
ザン!ズザザザザザザン!
「人間の、俺たちの勝手な勝手なエゴだけどな!!」
ザシュッ!!ヒュパッ!!
ズザザザザン!!
「グァァァァ…………!」
連撃に加えた連撃の後。
苦しげに立ち上がったシャガルマガラは、まっすぐに俺を見据えた。
「…………大切なみんなが生きるために。俺が生きるために。お前を屠る。それが俺の生き方なんだ。モンスターハンター、なんだ。」
「グゥゥゥ…………。」
「…………また生き返るのがお前の使命なんだってんなら……。」
「…………ガァァァ!!!」
シャガルマガラが、両の前脚を持ち上げた。
体重を乗せた、攻撃が来る。
「……いつだって、俺は、お前を倒す!!!!!」
俺は、軽く跳び上がると、身体を捻った。
力は入れない。身体を溶かしに溶かしていく。
ヒュン……。
「…………うらぁ!!!」
「グルァァァァァァァァァ!!!」
グァッ!!
眼の前に迫る、シャガルマガラの爪。
寸前で、受け流し。
ヒュン!!
ザシュン!!
ズザザザザザザザザザザザザザザザザザン!!
相手の勢いに任せた、俺のカウンター。
回転は勢いを増し。
ザシュゥ!!ズザザザザン!!!
「グァ!!………………ァァァ………………。」
…………ズゥン…………。
シャガルマガラの体を引き裂いて。
「…………………………。」
「はぁっ……はあっ……。」
遂に、仕留めたのだった。