モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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17お礼を伝えましょう。

目が覚める。

 

ここは……。

 

「見慣れた天井だ。」

 

2日しか寝泊まりしていないのに、見慣れたも何もないのだが、一応お決まりのセリフを発してみる。

 

日は既に昇っていて、外からは人の声や生活音が聞こえてきた。

 

コンコン。

 

ノックの音が。

 

「はいはい、おります。」

 

まだ頭痛が残る体を無理やり起こして、ドアを開ける。

 

いや、開けようとしたら、向こうが勝手に開けてきた。

 

 

「ソウジさん!」

「おわっと。」

 

 

ドアを開こうとしたらグイッと開いたので、バランスを崩しかけた。

つんのめった先は、心優しき従業員さん。

 

ドールだ。

 

 

「あぁ、良かった……。起きたんだね。」

 

 

目に涙を浮かべた少女が、安堵の顔で笑いかけてくれた。

おそらくは、俺を部屋まで運んでくれたのだろう。

心配をかけてしまった。

 

 

「すまん、世話をかけてしまって……。」

「……。もう、ビックリしたんだよ?」

 

 

いつもの淡々とした口調に戻ったドール。

 

 

「えーっと……。本当に、ごめん。心配かけた。」

「ううん。大丈夫。でも、心配はしたよ。」

 

 

もう一度謝ったあと、ドールは椅子に座らせて、俺はベッドに腰掛けて、色々と聞いた。

 

俺が意識を失ったとき、ドールは俺の部屋にいたらしい。

体を拭く桶の回収に来たが、俺がいないと気づいて、宿を何となく探していると、庭から大きな声がした。

 

ただ事ではない様子に慌てて庭に行くと、尻を突き出し、口から泡を吹いて白目で倒れる俺を発見。

 

最初は何かの冗談かと思ったとか。

 

でも様子がおかしいことに気が付き、慌てて宿のおじいさんに連絡。

2件隣の武具屋の人の手を借りて、とりあえず俺を部屋まで運んだらしい。

 

 

「夜中も何回か見に来たんだ。でもソウジさん、目を覚まさないから。」

「……重ね重ね、すみませんでした!」

 

 

まさか女神様に会ってました、なんて言えるわけもない。

夢みたいなものだし。

 

「ドールは一晩中診ていてくれたのか?」

「そのつもりだったんだけどね。セツヒトさん……近所の武具屋の人なんだけど、容態が悪いわけではなさそうだし、疲労が溜まっだけだろうから、心配はいらないだろうって。だから私も休んだよ。」

「何にせよ助かったよ……。感謝してる。」

「いいよ。お客さんだしね。それにーーー」

 

 

なにか言いたげなドールだったが、遮るように部屋にノックの音が響いた。

 

 

「お、気が付いたかの?よかったよかった。」

 

 

宿のおじいさんだった。

 

 

「驚いたよ、まさか倒れているなんてのぉ。元気そうで何より。」

「ご心配とご迷惑をおかけしまして、申し訳ありません。」

 

 

深々と頭を下げる。当然だ。

 

 

「気にしなさんな。お客さんだからの。礼ならドールと、セツヒトに言っておくれ。部屋まで運んでくれたんじゃ。」

 

 

おじいさんもおじいさんで本当にいい人だ。

この宿に決めて、心から良かったと思う。

 

 

「あー、セツヒトというのはのぅ……。」

「私から説明したよ、おじいちゃん。」

「そうかい、そりゃ良かった。アイツがいなきゃ、部屋まで運ぶこともできなかったろうしの。」

「後で必ずお礼に行きます!」

 

 

まだ会ったこともない人だが、恩を仇で返すわけにはいかない。いずれ装備は新調したい。今から挨拶に行こう。

 

 

「あ。」

 

 

しまった。

講習会のことをすっかり忘れていた!

 

 

「すみません!今日ギルドにまた行かなくてはいけないんです!今の時間は……!?」

「お昼にはまだなっておらん。初心者講習会のことだろう?まだ時間はあるさ。」

 

 

よかった。

テンパっても仕方がないが、初日ドタキャンなんて洒落にならん。

 

 

「じゃあ、まずはご飯を食べよう。ドール、用意してきてくれるかい?」

「うん、わかった。ソウジさん、準備してくるから、ゆっくり降りてきて。食べる場所は食堂でいい?」

「ありがとう!大丈夫だ。」

 

 

そう言うと、二人は部屋を出ていった。

 

 

「よかったのぅ、ドール。」

「もう、おじいちゃん…っ!…。」

 

 

ドア越しに二人が何か言っているが、とにかく急いで準備をしよう。

ポーチを手に取り、<装備><武器装備>から一式装備と双剣を選択する。

一瞬で着替えられた。

 

 

「準備終わっちゃったよ……。」

 

 

ドールに、ゆっくり、と言われた手前、あんまり早く行きすぎても仕方がない。

ベッドに寝転んで、しばらくボーッとすることにした。

 

 

* * * * * *

 

 

遅めの朝食、いや早めの昼食を取ったあと、もう一度二人にお礼を言った。

ついでに宿の予約を3日分ほどしておいた。

銀貨6枚を渡すと、

 

 

「武具屋に行くなら、わしの名前、ホエールを伝えるといい。まあお前さんの顔は覚えられてると思うがの。」

 

 

と笑われた。

 

 

「行ってきます!」

「いってらっしゃい。無理しちゃ、だめだよ?」

 

 

優しい送り出しに、心が温まった。

 

 

武具屋にはすぐ着いた。

本当に近所だ。

看板に「武具屋セツヒト」と、無骨に書かれてある。

レストランのイシザキ亭でも思ったが、商売っ気のない感じが伺える。

武具屋の、俺を運べるほどの力を持つ人。

厳つそうだ……怖い人ではないことを祈ろう。

 

 

「ごめんください!」

 

 

ドアの前で呼びかけてみる。

 

 

…………反応なし。

 

 

「……失礼します!」

 

 

思い切ってドアを開ける。

店の中は、宿の部屋ぐらいの広さだった。

 

両壁にあらゆる武器や装備が並んでいる。

目の玉が飛び出るほど高いものや、「値段応相談」という恐ろしいものまで。双剣や片手剣も、それなりにあった。

 

正面の受付の横には、「強化受け付けます。」「鎧玉買い取り要相談」など、何かよくわからない貼り紙が並んでいた。

 

 

「ごめんくださーい……ホエールさんの紹介で、お礼に参りました……。」

「あぁー、はいはい。」

 

 

奥から女性の声が聞こえる。

 

「はいはい、お待たせー。お客さん、何かご所望?」

「いえっ、私はですねーーー」

「おー?その顔はもしかしてー!?」

 

 

ん?

 

 

「えっと、ホエールさんの紹介で参りました……もしかして、セツヒトさん……ですか?」

「そうだよー、私、セツヒト。やっぱり昨日のぶっ倒れたお兄さんじゃなーい。やっほー、元気??」

 

 

お、女の人かーい。

 

驚きの中、よくわからないツッコミが俺の頭の中にこだました。

 

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