モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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172続けましょう。(後日談②)

「いつぶりだっけ?」

「ソウジさんが首都に旅立つ時に、一緒に出ましたから……。」

「三年前か。……早いなぁ。」

 

 

時が経つのは早いものです。

あのおっちょこちょい女子大生風の子が、すっかり大人の女性に変貌しているのですから。

 

 

「……あれから、どうしてたんだ?」

 

 

数年の間、気になっていなかったわけではない。

ハンズは帰郷の後、ワサドラに戻ることは無かった。

ショウコやドールが文でやり取りしていたから、何となくの近況なんかは聞いていたけど……正式に本人の口から聞きたい。

 

 

「移動集落のゴタゴタが片付いてからは……ずっと、ハンターをしていました。」

「そうか。……ちょっと聞いた話だと、色んなところで狩猟しているって。」

「たまに、ですけどね。タオカカら辺にもう一度行ったり、遠いところだと西のブラツ港とか……自分の腕試しを兼ねて。」

「へぇ……。」

 

 

大陸を股にかけて……なんて言えばいいのかはわからんけど。

要は放浪のハンターである。

 

そういえばフットワークがやたらと軽い子であった。

 

 

「雪山でガムートとかザボアザギルにリベンジしてジンオウガを倒して……東の湿地では、タマミツネとオロミドロも。港のショウグンギザミは怖かったなあ……。」

「いや、凄いな。俺が知らないモンスターもいる。」

「世界は……広いです。思い知らされた3年でした。」

「へえぇ……。」

 

 

うーん……達観した顔をしている。

 

何だろうこの気持ち。

近所の年下の妹みたいな子が、社会人になって帰省して、世間の荒波に揉まれた顔つきになった、みたいな。

 

いや、そのまんまだが。

 

 

「……ソウジさんの、おかげです。」

「ん?俺の?」

 

 

俺たちが座るのは、ギルド内の酒場。

いつだかシガイアさんといた、例のバーカウンターだ。

 

すっかり大人になった素敵な女性と、二人でグラスをかたむけつつ。

まだ午前中だし、中身はジュースだけど。

 

そんな雰囲気たっぷりの中、ハンズが話を続ける。

 

 

「三年前のあの偉業を聞いて……私も奮い立ったといいますか。いつか、私もG級になって、肩を並べたいって……。そう思って、がんばれました。」

「おぉ……そうか。……ちなみに今はHRは?」

「えと……ろ、6です。」

「おぉ!……すごいなハンズ!!」

「ソウジさんにはまだまだ、ですけどね。がんばりました。つい最近昇格したばかり、です。……ふふ、やっとソウジさんに報告できました!」

 

 

パタパタ。

 

 

嬉しそうな様子。

尻尾をブンブン振り回しながら笑う姿は、昔のままで。

少し安心した。

 

いや、尻尾なんて見えないけども。

 

 

しかし数年、この若さでHR6って。

俺が言うのも何だけど、相当凄いのではないか?

 

 

「いい節目だと思ってワサドラに戻ってきたら、ソウジさんが、そ、その……セツヒトさんと抱き合ってて……。」

「すみませんでもあれは俺悪くないんです信じてください。」

「は、早口ですね。」

 

 

改めて言われると、本当にただのおバカップルである。

恥ずい……。

せめて俺からではないと伝えておく。

 

 

「……何だか複雑な気持ちでした。」

「複雑?」

「その、憧れのお二人が仲良くされているのを見て……嬉しい反面、こう、ドス黒い感情が。」

 

 

そういえば。

この子はかなりのセツヒトさんマニアであった。

ドス黒いって。

 

 

…………しかし、何だかからかいたくなってきた。

ちょっとおすまし美人さんみたいにしてるけど、俺の中でハンズはおっちょこちょいのワンコさんである。

 

……意地悪してやろう。

 

 

「今、一緒に暮らしてるんだ。」

「うっ!」

「3年間、一緒に。」

「はぅ!!」

「そして、さっきの抱擁はセツヒトさんからだ。」

「ぐはぁ!!!」

 

 

バタン。

 

 

カウンターに突っ伏すハンズ。

ノリがいい。

 

 

「私の心にクリーンヒット……砂糖吐きそう……い……いつからソウジさん、そんなドSさんに……。」

「周りがあんまりからかうもんでな……慣れた。」

「そ、そんな……あの頃のソウジさんはどこに……!?」

「ふっ……俺も成長したのだよ、ハンズくん。」

 

 

嘘です。

慣れるわけありません。

ただの強がりでございます。

 

……まぁオフザケはこの辺にして。

 

 

「……あんまり変わってないぞ。みんな。」

「え?」

「俺は相変わらずヘタレだし、セツヒトさんはのんびりだし、ショウコはちっちゃいし……あ、ドールは少し背が伸びて、大人っぽくなったぞ?でもホエールさんは本当にそのまんまだし……まぁ全部が全部あの時のままってわけじゃないが、そんなに変わらない。」

「あ…………。」

「だから……おかえり。ハンズ。」

「……はいっ!」

 

 

そう言って笑ったハンズは、三年前と全く変わらない明るさだった。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

それからいろんなことを話した後、ハンズはギルドを後にした。

今日は宿「ホエール」に泊まるという。

久々にドールと楽しく過ごしてくれればと思う。

 

ちなみに、お兄さんのハンザさん。

シスコンぶりは少し収まり、結婚もしたとか。

というか嫁さんが既に3人いるらしい。

……流石である。

 

まぁそういう立場にある人だし、あれだけ頼り甲斐のある人だ。

重婚、と聞いても全く驚かなかった。

 

これからも幸せになって欲しいと思う。

 

 

「さて……。」

 

 

今日ギルドにやってきたのは、クエストの為ではない。

ギルドマスターに呼び出しを食らっているのだ。

 

いつでも来ていいと言われて、余裕ぶっこいてこんな時間になってしまったけど。

まぁ大丈夫だろ。

あの人だし。

 

 

…………。

 

 

 

コンコン。

 

 

「ソウジです。来ました。」

「おぅ、入ってくれ。」

 

 

ガチャ。

 

 

相変わらずの重厚な石造りの室内。

そして……相変わらず書類が散乱している。

 

まぁ首都西支部の部屋も、そういえばこんな感じだった。

シガイアさんはきっちり整理整頓していた為、ギャップが凄い。

 

 

「おぅ、早かったな。まぁ座ってくれ。」

「はい……結構遅くなったつもりなんですが。」

「ん?そうか?……こんなもんだろ?」

 

 

既に時刻は早めの昼食をとっても差し支えないぐらいなのだが。

うん。やっぱり大丈夫だった。

 

 

「急げ急げと、ここの職員は優秀すぎるんだよ……シガイアさんの凄まじさを毎日味わっている。」

「ははは……やっぱり、慣れません?」

「あぁ、もう一年以上いるがな。まさか西支部が懐かしく思える日が来るとは思わなかった。」

 

 

隆々とした筋肉。

初めてあった人間は、威圧感に圧倒されること間違いなし。

 

ワサドラギルドマスター、ハスガさん。

 

 

まだ慣れないとは言うが、職員や街の方からはとても受けがいい。

第一印象こそアレだが、頼りがいのある、親分肌の人だ。

シガイアさんとは180度違う方向で、気配りもできる。

 

 

「あー……またクエスト行きたくなったきた……。」

「だめですよ。またハイビスさんに怒られますよ?」

「……もうアイツがギルドマスターになればいいんじゃねえか?」

「………………。」

「おい、黙るな。冗談だ。」

「本当に?」

「……5割は。」

 

 

おいおい。

半分本気かよ……。

 

 

そう、ハスガさんは、二刀流。

双剣使いとかそういう意味ではなく。

ギルマスとハンター、そのどっちもこなすという人間である。

 

当たり前ながら、シガイアさんには到底無理な芸当であって。

これがまぁ、ハンター連中から尊敬の念を集めている。

そもそもが半端ない実力を持っている伝説のハンター。

就任当初はハンターと職員の間で温度差が凄かったけど。

俺個人としては、非常によいギルドマスターだと思う。

 

ここに来て一年と少し。

前任のシガイアさんが偉大すぎてどうか、みたいな声を払拭し、非常にこの人らしくやってらっしゃると思う。

 

 

「…………人が良すぎるんですよ、ハスガさんは。」

「そうは言うがな、ソウジ。元はと言えばお前が…………いや、いいわ。もう言わねぇ。」

「ははは……。」

 

 

……その実績に本人の意欲が伴っているかと言われれば、微妙だ。

 

ちなみにシガイアさんは、首都ギルドの重役に昇進した。

手腕を発揮し、首都内部のギルドの横のつながりを強化。並行して、ハンター業とは関係ないような業務を片っ端から廃止、簡素化を進めている。

ギルド中央制度そのものを無くし、首都ハンターズギルドをきっちり4分割するのが最終目標らしい。

風通しをよくするという理念の基、改革に躍起になっている。

 

ここまでたった3年である。ギルド職員の若手にはウケはいい。

だが、急な改革に敵はつきもの。保守派や王族側からは本気で目の敵にされているとか。

近くに護衛を置いているけど……それだけ物騒ってことだよな……。

 

まぁつまり、シガイアさんは前世のドラマとか漫画でよくあったような話を、マジでやっている。

本当にかっこいいと思う。

 

 

そのあおりを食らったのはハスガさんだ。

このワサドラの街は大陸の地理的な中心であり、今尚発展著しい。

そんな場所にあるギルド、相当な人物にしか後任をお願いできない。

そこに白羽の矢が立ったのがハスガさんだ。

あんなに現役一本に戻りたがっていたハスガさんが、ワサドラのギルマスになると聞いた時は、驚いたものだ。

 

……そして、ワサドラに俺がいることも無関係ではないらしい。

トラブルメーカーだから、という。

申し訳ない限りである。

俺が「シャガルマガラは復活する」なんて事を言うものだから。

そして俺がワサドラでハンターをするとこだわるものだから。

「俺が近くにいたほうが色々やりやすいだろ。」と、すんなりギルマスに就任した。

 

……そういう意味で、ハスガさんには頭が上がらない。

 

 

閑話休題。

 

ハスガさんは一枚の紙を取り出した。

やけに小さく見えるその書類を手に、俺が座る革張りのソファの向かいに座る。

 

 

「…………気になる報告があった。」

「……気になる?」

「あぁ、ちょっと長いぞ。」

 

 

そう言うと、ハスガさんは本題を始めた。

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