モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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173続けましょう。(後日談③)

3年経っても、ワサドラギルドの構えは全く変わっていない。

外見の厳つさは、年数が経ってもなおそのまんま。

 

 

内装はかなりバージョンアップされたけど。

 

「使う人みんなが、不安にならないギルドづくり。」をモットーに、ハイビスさんがあれやこれやと改装した。

おかげで俺たちは多大に恩恵を受けたが、その時のハイビスさんの死にそうな顔は今でも忘れない。

 

「なんで私って自分を自分で追い込むんでしょうね……。」とはハイビスさんの談だ。

何度も飲んでは、セツヒトさんと二人で慰めたっけなぁ……。

 

 

でもギルドの厳つい外見はそのままだ。

俺が今やって来た修練場も、もちろんそのまま。

 

からくり蛙……切り立った岩の崖に滝……多数のギミック……。

うん、懐かしい。

教官との地獄の特訓が思い出される。

 

そんな中、ある声が聞こえる。

 

 

「はーい、ご苦労さまー。じゃー次はー……。」

「きょ、教官!ちょ、ちょっともう足が……!!」

「そーお?じゃー……今日は終わりー。」

「えぇ!?いや、極端すぎでは……。」

「えー?わがままだなー。」

「えぇぇ…………?」

 

 

…………。

 

のんびりした声で新米女性ハンターに特訓させているのは、セツヒトさんである。

そう。セツヒトさん。

 

何と、初心者講習の臨時教官になりました。

 

あんなに嫌がっていたのになぁ……。

相変わらず教えるのは苦手なようだが。

俺もコミュニケーションの齟齬から、セツヒトさんの特訓に疑問符が絶えなかった一人である。

 

あの新人ハンターさんの苦労が偲ばれる。

わかる、わかるぞ、そこの名も知らぬ君。

 

 

「じゃー調合でも教えるねー。」

「は、はいっ!!ぜひっ!!よろしくお願いします!!」

「んじゃーまずー、大タル爆弾Gでもー……。」

「そ、それ以外でお願いします!!」

「…………超猛毒の紫毒姫リオレイアの毒ビン―――」

「そ、それ以外で!!」

「えーーー。」

 

 

…………が、頑張れ!新人ハンターさん!!

ていうか何作らせようとしてんだあの人。

物騒な名前しか聞こえんかったぞ。

 

 

……ちなみに、講習の教官の依頼をしたのは誰かというと。

 

何と、マショルク教官である。

しかもセツヒトさん、まさかの二つ返事。

 

 

『セツヒト、教官をやってくれ!』

『……いーよー。』

 

 

こんな感じだった。

今でも信じられないが、そうだった。

あの時は知り合い中がざわつきまくった。

 

「私もやるときはやるよー?」とよくわからんやる気をみなぎらせるセツヒトさん。

その様子を見て、明日は空から大剣が降ってくると覚悟したものである。

 

そしてマショルク教官は教官で、その後マジで何の前触れもなく消えた。

 

 

「そしてさっきのハスガさんの話、か……。」

 

 

 

* * * * * * 

 

 

 

ギルドマスターの部屋で聞いた話は、ちょっと衝撃的で、よくわからないものだった。

 

 

「結論から言う。マショルクの痕跡が見つかった。」

「えっ!?」

「……ザキミーユの東支部からの報告で、な。」

「……いや、良かったじゃないですか。俺もずっと気になってましたし。」

 

 

教官は、2年前どこかに消えた。

本当に誰も何も聞いておらず、イシザキ亭のイシザキさんと飲んだのを最後に消息を絶った。

 

その後、なんにも手がかりもないまま月日が流れていたが。

欲しかった手がかりが見つかったなら……それは良かった。

 

だが、しかめっ面のままのハスガさん。

……ヤバい話か?

 

 

「……ここからなんだが。」

「は、はい。」

「見つかったのはボロボロの装備だったとよ。」

「……えっ?」

「首都東部の湿地帯にマショルクの装備と持ち物、それがボロボロ……モンスターからの傷だらけで見つかった、とよ。」

「……えぇぇぇぇ!?」

「いや、落ち着け。まだ死んだとかそういう確定の情報じゃねぇ。……ただ、消息を絶ったまま数年経ったヤツのモノが、そんな風に見つかったとあっちゃなぁ……。」

「…………。」

 

 

落ち着いて……いや、無理。

心臓が、嫌な感じに激しく動き出す。

 

 

「……それ以外の情報は?」

「アイテムポーチにはマショルクの名前。装備はアイツのもので間違いねぇ、らしい。ギルドが見間違えるとは思えねぇし……。」

「マジですか……。」

 

 

うん、確かに。

ハスガさんがしかめっ面になるのも分かる。

俺だって聞いた瞬間は心臓が跳ね上がった。

 

 

……うーん。

たしかに不安だけど。

 

でもなぁ……。

 

 

「でもよぉ……。」

「はい……。」

 

 

俺とハスガさんは、揃って眉をハの字のまま。

そして目を合わせて、同じような胸の内を明けた。

 

 

「アイツが死ぬわけねぇよなぁ……。」

「はい、そうですね。俺もそう思います。」

「な?希望的観測でもなんでもなく、なんていうか……。」

「教官は死んでも死なないですよ。うん、間違いない。」

「だよなぁ……よし、じゃあ逆に都合がいいわ。」

 

 

俺たち二人の認識はバッチリ一緒。

間違いなく、教官は生きている。

変な信頼がある。

 

……だって、あの教官だし?

死ぬわけない。

 

都合がいい、の意味がわからなかったけど。

 

 

「……というわけで、ソウジ。お前に頼みがある。」

「……ギルドナイトみたいな仕事は、正直お断りしたいんですが……。」

「シガイアさんからそういう扱いで構わないって聞いてるからな。すまんが、諦めろ。」

 

 

話が終わったと思ったら、これである。

もうこの人の無茶振りは今に始まったことではないが……俺は普通に一生懸命ハンターしたいだけなのに。

 

 

「ソウジ、お前はもうギルド内のことを知りすぎている。もうギルドナイトみてぇなもんだ。」

「いやそのりくつはおかしい。」

「すぐにでも首都に行って、マショルクを探してきてくれ。」

「えーーーーーーーーーー。」

「お、お前……一応俺、ギルドマスターだからな?……少しセツヒトに似てきたな……。」

 

 

やっぱり……そんなこったろうと思った……。

まぁ確かに教官の行方は気になるけど……。

 

うーん。

ぶっちゃけ断りたい。

だって、セツヒトさんの生活もあるし……ドールの飯からは離れたくないし……ショウコに抜かされたくないし……。

イシザキ亭での月例会もあるし……そこでハイビスさんの愚痴を定期的に聞かないとあの人爆発しそうだし……教官どうせ生きてるだろうし……。

 

 

「あーまぁ……それで……ついでに、セツヒトも連れて行ってやれ。」

「……へ?」

 

 

すると、ハスガさんが歯切れ悪く変なことを言い出した。

え?セツヒトさんも?

……なんで?

 

 

「だから……宿泊代とか旅費とか土産代とか観光費用とか、その辺は気にするな。ぶっちゃけ、適当でいい。2週間ぐらいかけてゆっくりだ。泊まるところは、ザキミーユの中央のロイヤルホテル。…………わ、分かるか?」

「……いや、わかりません。」

「えーっとな、だから、首都のこう、名所というか……そういうところをだな、二人で……」

「……首都ならハイビスさんやヒナタさんの方が、地理に明るいんじゃ……。」

「いやそれ一番ダメだろ!少しは察せよ!!……あぁ、だめだシガイアさん、俺にこういうのは……。」

 

 

??

何だ?

ハスガさんが何かうなだれている。

 

と思ったら、なんか諦めの表情で話し出した。

 

 

「とにかく、俺からの命令だ。行け。」

「……断ったら?」

「お前の有る事無い事ギルド職員とワサドラ中のハンターに言いふらして微妙に住みにくくしてやる。」

「顔と体格の割に陰湿!?」

「あぁぁぁうるせぇ!……もうとにかく、行け!ゴー!ハウス!」

 

 

行け、なのか。帰れ、なのか。

 

でもまぁ……教官のためだし……金はかからないみたいだし。

 

 

「セツヒトさんが納得するなら、良いです。」

「あぁ、安心しろ。教官の代理は既に都合をつけてるし……アイツは平気だろうよ。」

「へ?何でですか?」

「いやだってお前……も、もういいから。ほら、回れ右!」

 

 

グイグイ。

 

バタン。

 

 

…………。

 

部屋から出された。

無理やり。

 

 

『出発は明後日の朝だ!例の御者の御仁には話してある!!』

 

 

ドアの向こうから大きな声が聞こえた。

まじかよ、もう決定じゃないか。

 

あぁ……何だかシガイアさんが恋しくなってきた……。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

そして話は冒頭に戻る。

 

何なのか全くわからなかったが……。

とりあえず教官の手がかりをもとに、探せってことでいいんだよな?

期間は2週間ばかり。

 

……。

 

いや何の仕事だよ!!

俺探偵でも何でも無いんですけど!?

犬じゃあるまいし、そんなん分かるか!!

 

……あ、だからセツヒトさん連れて行けってことか?

勘とかそういう分野では、あの人はかなりすごい。

今朝だって簡単に俺の考え見破ってきたし。

 

……だからってなぁ……何で俺とセツヒトさんが……。

 

……まぁいいか。

色々タダらしいし。

気楽に行こう。

 

 

修練場の向こうには、仲睦まじく調合の仕方を教えるセツヒト教官の姿が。

 

 

「お、そーそー。筋いいじゃーん。」

「ほ、本当ですか!?」

「回復薬グレートってちょいとコツがねー。よしよーし、じゃあ次は大タル爆弾行こー。」

「どうしてそう物騒なものを!?」

 

 

がんばれ、名もなき新人ハンターさん。

その人、明後日からいないだろうけど。

 

くれぐれも調合ミスって爆発しませんように……。

 

 

「あ、火薬草多すぎたー。」

「ひいぃぃぃ!!!」

 

 

……が、がんばれー。

 

 

首都に行く話は後にしておこう……。

今日は月例会もあるし。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

喧騒の中、ワサドラの中央市場を歩く。

今日も今日とて、商売人の大きな声が響いている。

 

 

「おっ!ソウジさん!今日は休みか!」

「あ、そうなんです。たまには市場をブラブラしようかと。」

「おお、いいね!じゃ、これ買ってくか!?」

「ははは、また今度にします。」

 

 

ここの市場の人達とは、もう随分と仲良くなった。

最初はいいカモとして、だったけど。

街の危機を救ったハンターと認識されてからは、無理やり買わされることもなくなった。

俺もさっきみたいにあしらい方を覚えた。

 

おばちゃんたちからは、これ食べていきな、これドールちゃんとホエールさんに持っていって、と結構モテる。

……体の良いパシリと思われている可能性も大きくあるけど。

 

ポジティブに捉えておこう……。

 

 

「あれ、ソウジさん。今、帰り?」

「ん?あ、ドール。買い出しか?」

 

 

市場を歩いていたら、見知った顔を見かけた。

ドールであった。

 

大きい袋を両肘に抱えて、更に手には重そうな野菜の載ったザル。

 

 

「……荷物、持つよ。」

「え、いいよ。そんなに重くない。」

「飯、世話になってるし……よっと。」

「あっ……もう、私もう子どもじゃないよ。」

 

 

そう言いながら素直に荷物を預けるあたり、実はちょっと重かったんだろう。

うん……女の子にこれはキツイだろう。重いわ。

 

 

「そうやって、いろんな女の子に優しくしてると、セツヒトさんに怒られるよ?」

「む……いや、大丈夫だろ。気にしないって。」

「余裕だね……私も……。」

「ん?」

「ん、んーん。なんでも無い。」

 

 

ドールはなにか言いたげだが、あえて流した。

 

ドールは、大きくなった。

身体的な意味でも、精神的な意味でも。

背格好は、もう本当にミヤコさんそのまんまだ。

でも……何かこう、芯が通ったキリッとした感じになった。

 

大人になったな、と思う。

栗色の可愛かったショートヘアも、肩にかかるぐらいのセミロングになった。

ショウコに似合うと褒められてからは、ずっとこの髪型である。

 

 

「あ、そういえば。いきなりで申し訳ないんだけど、明後日から首都に向かうことになった。」

「わ。いきなりだね。……モンスター?」

「いや、人探しの仕事。よくわからないんだけどな。」

「……大変だね、ソウジさん。いっつも駆けずり回ってる。」

「慣れたよ。無茶振りは、そもそも俺の専売特許だ。」

「ふふ……でも、気をつけてね。体調とか。」

「あぁ。ありがとう。」

 

 

以前なら、もっと心配していただろうけど。

今のドールなら余裕のある笑顔で、行ってらっしゃいと言ってくれるだろう。

こういうところにも、成長を感じる。

 

まぁ今回は危険な討伐でもないしな。

 

 

 

……あ、そうだ。

大事なこと言うの忘れてた。

 

 

「聞いて驚いてくれ。ハンズが帰ってきてたぞ?」

「えっ!?ハンズさんが!?」

「あぁ。さっき会った。ホエールに泊まりたいって言ってたな。」

「わわ、早く帰って用意しなきゃ……!」

「……はは、嬉しそうだな、ドール。」

「もちろんだよ。嬉しい。……ふふ、どんな話しようかな。」

「…………。」

 

 

初めて会った時。

真顔のこの子の心の内が分からなかった。

ドールは、相手に踏み入れられないよう、自分の心の中に無意識に壁を作っていた。

 

それを無くしてくれたのは、俺だと教えてくれた。

俺に感謝していると、顔を真っ赤にして教えてくれた。

2年前の冬……だったっけな。

あの日のドールは、忘れない。

 

何か、かっこよかった。

 

 

「ソウジさん、早く行ける?」

「あぁ、走るか?」

「……うん!」

 

 

表情も前より豊かになったと思う。

ショウコみたいにコロコロと変わる感じではないけど、それは人それぞれであって。

これぐらいが、ドールにはぴったりだ。

 

それが俺のおかげなんて言われたら、そりゃ嬉しいってもんだ。

これからも、この子の笑顔が増え続けたらいいと思う。

 

 

俺たちは宿「ホエール」まで駆け出した。

 

時刻は昼下がり。

今日は本当にいい天気だ。

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