モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

175 / 175
175終わりましょう。(後日談⑤)(終)

話がややこしくなってきた。

 

整理する。

 

 

俺は明後日から首都に仕事に向かう。

内容はマショルク教官探し。

ただ名探偵ショウコの推理から、それは口実で単なるご褒美旅行ではないかと推測された。

俺もそう思った。

なのでセツヒトさんをお誘いした。

快く了承をもらった。

セツヒトさんも旅行とお考えの様子。 

そしたら件の教官が帰ってきた。

 

かえって、きた……。

 

 

「おや!そこにいるのはショウコくんか!久しぶりだな!!」

「あ……お、お久し振りです。お元気、でしたか?」

「あぁ!全くもって元気だ!!少しばかり外の大陸にでかけていてな!!いや、世界は広いぞ!!」

「へ、へー!そうなんですね~……。(チラッ)」

 

 

 

 

ショウコが俺を見てくる。

……あぁ、ショウコ。分かってる。

お前が心配していること。

そして俺が今目茶苦茶不安なこと。

 

旅行が無しになるんじゃないかってことだ。

 

……仕事を口実にって……その捜索目標が今、目の前で大酒をかっ喰らっているのである。

行く理由が無いじゃない……。

 

 

混迷極まる俺の頭。

テンション最高潮のイシザキ亭。

 

そんな場とも知らず、再び鐘の音を鳴らしてドアが開いた。

 

 

カランカランカラン。

 

 

「どうもすみません……残業で遅れま……し……ぇぇえええ!?マショルクさん!?」

「おや!ハイビスくん!久しぶりだな!いや、ハイビス部長といえばいいのかな!?」

「え、えーっと……はい。いや、そうじゃなくて!!一体、今までどこに!?」

「今帰ってきた!!」

「…………ええぇぇ…………。(チラッ)」

 

 

ハイビスさんが俺を見る。

あ、この人、事情を知っているわ。

だって、俺を見る目が憐れみに満ちているもの。

 

 

「そ、ソウジさん……セツヒトさんにお話は……?」

 

 

ハイビスさんが、盛り上がる場を抜けて俺に近づいてきた。

 

 

「…………既に、旅行を兼ねた仕事……いや、仕事を兼ねた旅行と伝えております。」

「うわぁ……。」

「教官のことは伏せました。」

「うわぁ……。」

「……めちゃくちゃ、喜んでらっしゃいました。」

「……う、うわぁ……。」

 

 

いや、そんな顔しないでください。

元はと言えば、ギルドが持ってきた話じゃないですか。

 

俺に鎮火を任せる?

多分その時、俺はセツヒトさんの業火に焼かれるぞ。

 

 

「ハイビスさん。首都に二週間ほど行くような、長期且つ超簡単ほぼ旅行みたいなクエスト、ありませんか……?」

「そんなのあるわけないじゃ無いですか……私だってさっきギルマスから話を聞いて……えぇぇぇ……。」

 

 

マショルク教官を見て、ため息とも驚嘆とも取れない声を漏らすハイビスさん。

うん。

ハイビスさんの反応からして、ギルド……またはハスガさんが用意した旅行であることは確定。

そして、それがうまくいかなそうなこともまた、確定。

 

 

ギルドも全くもって予想外だろう。

教官はそもそもそういう生物であるけど。

想定外の塊。

 

 

「…………ハイビスさん。とりあえず残業、お疲れ様です。」

「ソウジさん……。」

「俺、逝ってきます。」

「えぇ!?ちょ、ちょっと!ソウジさん!一体何を!」

「いや、もう全部打ち明けようと……。」

「待ってください!まだ案は……あります!」

「……ほ、本当ですか!?」

 

 

藁にもすがる思い。

ハイビスさんの案とやらを、俺は聞いてみることにした。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

「なるほど……。」

「い、いけるかと思います!女性の立場からしても、これなら!」

「は、はい。……やってみます。」

 

 

ハイビスさんからの妙案。

とは言っても、結構普通のことだったが。

 

俺が冷静になれただけでもめっけもんである。

 

 

作戦はこうだ。

 

まずは、きちんと正直にセツヒトさんに打ち明ける。

「旅行の件ですが、実は内情これこれこういう感じだったんです。」と。

多分そこで、セツヒトさんはガッカリする。

もしくは不機嫌になられる。

 

だがしかし、もうそれはいい。

俺が、俺から、自分から「旅行に行きましょう。もうギルドとか抜きで。」と言うのだ。

セツヒトさんも修練場の仕事は休みと言っていたんだし、多分いける。

何なら、「俺が自発的にセツヒトさんを誘った」という事実が大切らしい。

ハイビスさんからのお墨付きである。

 

うーん……ナイスだぜ、ハイビスさん。

 

 

「よし……お二人の力になれるなら、何よりです!」

 

 

胸を張って、そう言うハイビスさん。

こういうところ……強くなったなぁと思う。

 

 

この方、俺とセツヒトさんと3人でよく飲みに行くのだが……正直すごい。

3年前、一段落して3人で飲みに行った時。

俺のことが好きだ、と言った。

セツヒトさんの目の前で。

これを打ち明ける時点で、もうかなりすごい。

さらには、セツヒトさんは私にとって、とても大切な人です、とも言った。

だから、お二人を全力で応援します、と。

ど、どんだけいい人なんだこの人。

なんて思ったりしたものである。

度々俺やセツヒトさんのいろんな相談に乗ってもらっている。

もちろんハイビスさんの様々な愚痴にも付き合っている。

ていうかそれがメイン。

 

そんな折。

 

数年前の回想。

 

 

『なんで私じゃ無いんですかー!ソウジさーん!!』

『えー?ハイビスちゃーん!それ私の前で言うー?』

『じゃー!わ、私は今までどーりソウジさんにアプローチしますよー!?』

『お、いーねーハイビスちゃーん!望むところー!!』

『よっしゃ言質取ったーーー!!!』

『……あ、あのー、お二人さーん?飲み過ぎですよー?』

『『ああん!?』』

『イエナンデモアリマセン。』

 

 

……回想終わり。

 

怖かった……あの時は怖かった。

あの2人が酔っ払ってタッグを組んだら、もう俺に太刀打ちできる手段はない。

 

 

「……ハイビスさん、何かすみません。色々と。」

「……言ったじゃ無いですか。私、お二人のことが大好きなんです。」

「……。」

「応援、していますよ?」

「は、はい。」

「8割は、ですけど。」

「お、おぉ……。」

 

 

残り2割は何ですか、とは、とても聞けない。

聞いちゃいけない。

察しろ、俺。

 

 

「……じゃ、行ってきます。」

「はい!……ご武運を!!」

 

 

かっこよく話すハイビスさん。

それは、ギルド受付嬢のお決まりの文句。

クエストに向かうハンターへの励ましとなってきたその言葉。

 

まぁ今回は全く状況が違うけど。

……行ってきます。

 

 

俺は勇気を出してセツヒトさんに突貫した。

 

作戦、実行!!

 

 

 

* * * * * * 

 

 

 

結論から言います。

 

……作戦成功しました。

 

 

「もー、お金使いたくないからー、マショルクもう一回行方不明になっちゃえばいいじゃーん。」

「はっはっは!!セツヒトは面白いことを言うな!!せっかくお前の兄貴分が帰ってきたというのに!!」

「本気だよー!ていうかー!だ・れ・が、兄貴だー!!」

 

 

セツヒトさんは色々な経緯を聞いた後、結局俺の旅行の提案に乗ってくれた。

よ、よかった……。

 

何か矛先が教官に行ってるけど。

まぁ仕事で完全にタダ、ってわけにはいかなくなったわけで。

 

 

……だがしかし!

俺には一応蓄えがある!!

ロイヤルなんとかだかなんだか知らんが、2週間の滞在ぐらい何だ。

任せろ!!

 

 

「しかしソウジ君も剛毅だな!あの様な高級な所に長期滞在とは!!」

「いや、どうせ行くならいいとこ行きたいじゃないですか。そもそもその予定でしたし。」

「ははははは!確かにな!!」

 

 

ちなみに俺の意を決した作戦遂行は、皆に注目されてしまった。

当たり前だけど。

まさか何処かの純情中学生のように、呼び出して告白するようなことでもないし。

公然の仲だし。

 

俺の話を聞いていた教官が、俺を剛毅だと言う。

そこまで高いのか。

だが心配はいらない!

結構な金持ちですからね!俺!

 

 

「ソウジさんもすごいわねぇ!いやぁ、トップハンターになるとやることが違うわぁ!」

「いや、それほどでも……。」

 

 

ケイさんも感心しきり。

そんなに褒められても困りますよ、と返事しようとしたら。

 

 

「だって一泊これぐらいよー?」

 

 

そう言って4本の指を立てるケイさん。

 

……4,000z?

い、いやいや高級な宿らしいし……。

一泊40,000zと言ったところか。

移動日抜いて、大体10日で……。

 

……ま、まぁまぁ!

それぐらいならいける!!全然!!

 

 

「うわわ、やっぱりすごいね。一泊でうちの2千倍。」

「あそこはね、とんでもないんだから!お付きの人は常に部屋に常駐。窓からの景色は、それはもう絶景らしいわよー?高級なお酒をグラスに注がれて……夕焼けに染まる街を見下ろしながら乾杯……いいわよねぇ!」

「うーん……うちも何とかかっこよくしようかな……。」

「いいのよ!『ホエール』には『ホエール』にしかない良さがあるもの!」

 

 

ドールがとんでもないことを言い出す。

しかしケイさんがナイスフォロー。

あそこを高級志向に変えるなど、とんでもないことである。

 

 

「そうだぞ、ドール。あそこはもう、何というか、完璧なんだ。俺にとっての家だ。そのままであってほしい。」

「そーそー。ドールちゃんのご飯がないとー、私も困るー。」

「……うん、ありがとう。みんな。……あのまま、みんなの安心できる場所にする。」

 

 

……かっこよく言い切るドールであった。

うん、本当に、大きくなったなぁ。

 

 

……ん?

ちょっとまて。

なんか引っかかる。

何だろう。

 

 

 

『うわわ、やっぱりすごいね。一泊でうちの2千倍。』

 

 

 

……。

……えーっと……。

 

 

 

「お待たせしましたにゃー!ビールの追加だにゃー!!」

「お、オスズさん。ちょうどよかった。ちょっと計算を頼んでいいですか?」

「ケイさんならそこにいるにゃ?」

「いや、そっちでなく。数字の方の。」

「なんだややこしいにゃ!おまかせにゃ!!」

 

 

ちょうどよくやってきたオスズ。

かなり不安になってきたところに、丁度この店のマスコット的存在がやってきた。

オスズは計算が得意なのだ。

 

え、えーっと……ドールのところの一泊は銀貨2枚で2000z……。

 

 

「一泊2,000zの宿があったとします。」

「ふむふむ。」

「2000回泊まったら―――」

「―――4,000,000zですにゃ!」

 

 

……………………………………えっ。

 

 

一泊で?

 

 

 

「それに10をかけると……?」

「40,000,000z、ですにゃ!!」

 

 

オスズが、元気に可愛く胸を張る。

あぁ、ヒナタさんなら今頃鼻血でも出してるんだろうな、とか思いながら。

 

俺は頭が真っ白になってしまったのであった。

 

 

い、家買えるやんけ……。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

2日後。

ガーグァ車乗り場前。

御者のおじさんが、二人分の荷物を荷台に載せていく。

 

 

「おぅ、おはようさん!しばらくよろしくな!」

「よ、よろしくお願いします……。」

「……どうしたソウジさん?元気ねぇなぁ……とりあえず俺はあいつらの様子見てくるからな!」

 

 

おじさんに心配されてしまった。

そのままガーグァたちの方へと向かっていく。

 

すると、後ろから低い声がかかった。

 

 

「よぉソウジ……。」

「あ、ハスガさん……。」

 

 

暗めの顔でやってきたのは、ハスガさん。

……すんごい申し訳無さそうな顔をしていらっしゃる。

 

 

「……ま、まだ間に合うぞ?シガイアさんに掛け合って、何とか無理矢理予約キャンセルってこともーーー」

「ーーーい、いえ。大丈夫です。流石にそういうお願いはちょっと……。」

「……すまねぇ……いっそこのままあのマショルク(バカヤロウ)をもう一回行方不明にして……。」

「本末転倒ですよ……。」

 

 

ハスガさんとは、昨日話した。

「教官が帰ってきました、話は変わりますが首都に旅行に行ってきます。」と言った辺りで全てを察したハスガさん。

金銭的な援助を申し出てくれたが、俺たちは完全な私用。

お断り申し上げた。

 

だってもうしょうがないじゃない。

 

 

「うっわー!ワクワクしてきたねー!ソウジー!!」

「は、はい、セツヒーーー」

「ーーーせっちゃんー!!」

「……せっちゃんさん。」

「うん!よろしー!!」

 

 

この人はもうご機嫌さんなのだから。

も超笑顔。

 

……好きな人の、この表情を見られるのだ。

く、悔いは無いぞ!!

 

 

 

……………………。

 

 

…………。

 

 

 

出発の時分が近づくと、なぜか知り合いが続々と集まってきた。

 

 

「ご主人様ー!お土産よろしくお願いしますねー!!」

「ショウコ……お前色々容赦ないなあ。」

「もう諦めてください!そしてウチにザキミーユ名物の高級マタタビ団子を!!」

「前向きに検討しつつ、善処します。」

「あー!絶対に買わんやつや!」

 

 

ショウコに適当に返事をしておく。

だって首都でどんな出費があるか分からないのだ。

 

聞いた話だと、食事代別なんですって。

 

…………ひぃぃ…………。

 

 

「ソウジさん!私はバックなんか欲しいです!」

「エプロンとか、首都のオシャレなやつをお願いしますニャ!!」

「そういうファッション系は自分で買ってくださいお二人共。」

 

 

ハイビスさんとオスズが、ショウコに続いてお土産ねだりをしてくる。

買うとか以前に、そういうセンスは俺には皆無である。

 

自分で買いなさい。

 

 

「私はお土産はいらないよ!!」

「け、ケイさん!」

「あーでも、お店で仕入れる首都名産のお酒……直接買えると安いんだけどねぇ……。」

「ケイさん……。」

 

 

もう欲望まみれである。

 

何なのこの人たち!!

俺に金があると分かってこんな寄ってたかって!!

いや、払えるんですけどね!それぐらいは蓄えありましたけど!

…………流石にちょっと桁が違いすぎる。

 

貯金がキレイに吹っ飛んだ。

 

 

「あ、ソウジさん……。」

「ドール。」

 

 

そこにやってきたのは、ドール。

やけに心配げな顔つき。

 

……あぁ、流石はドールだ。

きっと、俺が金を使いすぎていることを心配しているんだろう。

この子は、優しい子なのだ。

 

……きっと『気をつけて、行ってきてね。』といつも通りに言ってくれ―――

 

 

「私、宝石がいいな。」

「一番エグい要求!!?」

「できたら、ネックレス。紅玉の。」

「しかもめっちゃ具体的!!」

 

 

はい、ドールも欲まみれでした。

 

……チクショウ!

 

 

 

「よーし、出発するぞー!」

「あ、はい。」

「じゃーみんなー。いってきまーす!」

 

 

ヒラヒラ。

 

 

セツヒトさんが手を振る。

俺も、見送りのみんなに手を振った。

 

…………お土産は買ってこよう。

普通のやつを。

 

 

「…………ソウジー。」

「はい?」

 

 

セツヒトさんが、少し心配そうな顔で俺を見てくる。

 

 

「……ずっと言わないけどー……お金、やばいんでしょー?」

「…………いいえ、大丈夫です。」

「ほんとにー?」

「本当です。」

 

 

ニヤニヤと俺に笑いかけるセツヒトさん。

 

好きな女性の前では、少なくとも虚勢を張っていたい。

男の悲しい性である。

 

 

「…………まー、私と、一緒にいながらさー。」

「は、はい。」

 

 

ガラガラガラガラ。

 

 

後ろにワサドラの入り口が見える。

徐々に小さくなるそれを見つめながら、セツヒトさんに返事をした。

 

 

「一緒にー、稼いでいこっかー。ねー?」

「…………はい。」

「…………んー!よーし!じゃー、楽しもー!!」

「……はい!!」

 

 

まるで逆プロポーズみたいな言葉をかけられながら。

ごきげんなセツヒトさんを見つめた。

 

この人と、一緒に歩いて行こう。

この先も。

 

 

 

……今日も、いい天気だ。




後日談、以上で終わりになります。
蛇足にお付き合いいただき、感謝申し上げます。
それでは、またどこかでお会いしましょうm(_ _)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ロアルドロスに転生した話(作者:黒木箱 末宝)(原作:モンスターハンター)

ルドロスに転生した主人公が、チート無しで自身の力と知識と知恵で戦い生きるお話。▼主人公はやがてロアルドロスに成り、一人立ちのため追い出されて恐る恐る海を渡る。▼そうしてたどり着いた孤島──モガの森で、主人公は主人公なりに頑張って生きて行く。▼■完結しました。


総合評価:11437/評価:8.59/完結:46話/更新日時:2025年07月02日(水) 19:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>