モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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18さらにお礼を伝えましょう。

倒れた人間を運ぶ。

酔っぱらいの介抱をしたことのある御仁なら、その大変さがわかると思う。

 

まず、重い。

酔っ払いが女性ならまだいい。可愛い女の子なら、運ぶこっちもモチベーションは上がるというものだ。

 

ならおっさんはどうか。

 

重い、酒臭い、夏なら汗の匂いも追加される。

そんな人をタクシー乗り場まで運ぶ。

こっちも酔っているのだ、辛いったら無い。

 

 

 

では、目の前のお姉さんはどうか。

ケツ突き出して泡吹いて白目をむいた男性を、お姫様抱っこで部屋まで運んだというのだ。

 

信じられるだろうか。

 

ていうか何?俺は女性にお姫様抱っこで運ばれたということか?

 

 

死ぬほど恥ずかしい……。

 

 

「……と言うわけで、涙を浮かべたドールちゃんの要請の元、私は馳せ参じたわけ。そしたら……何と!」

「……。」

「泡吹いてオシリ突き出して白目をむいたお兄さんがいたってわけー!」

「………。」

「仕方がないから、ヒョイッと抱えて、部屋まで運んであげたわけですよー。あの宿、爺さんと女の子しかいないからねー。」

「……………。」

「いやー笑えたよー昨夜は。だってイケメンが白目向いて泡吹いてオシリをぷりって出してさー。流石に元ハンターの私も、笑いがこらえきれなくって………。」

「もうやめて!人の醜態ほじくり返さないで!というか何回も同じ話しないでぇ!」

「あははー!ごめんねー!君、ノリが良さそうだったし。」

 

 

お姉さんの発言を纏めると。

お姉さんは元ハンターで、俺を運ぶとか余裕で、むしろ現場を楽しんでいた、と。

 

うん、ヒドい。

だが、この場合アホなポーズで倒れた俺が一番ヒドい。

 

 

「きょ、今日は、そのお礼に参りました。」

「んー、いーよいーよ。元気ならそれだけでめっけもんだって。」

「助かりました、セツヒト……さん。」

「その名前、あんまり好きじゃないんだよねー。せっちゃんでいいよー?」

「せっちゃんさん、ありがとうございました。」

「うーん、何かかしこまりすぎな気もするけどー?まぁいいやー。」

 

 

とってもいい笑顔。ニコニコしながら俺を見つめてくる。

 

長い銀色のストレートの髪。

口は常ににやにやしている。

糸目で表情は読みにくいが、先程から笑顔は絶えてない。

 

そして、年齢が全くわからない。

現在の俺と同じ位?いやいや、そしたらハンターを引退して自分の店を構えるなんてできないだろう。

 

……いろいろ紆余曲折あったのだろう。深く考えないことにする。

 

女性のそういう部分は、邪推すると痛い目を見る。

これは前世でも経験済みです。

 

セツヒトさんの口調は、何だかマイペースでのんびりした感じだが、何というか隙がない。

やはり元ハンターということか、強いんだろうな、というのはよくわかった。

 

だって男の俺をひょいって、ひょいって……ハンターってすごい。

 

 

「まあ、でもさー。」

 

 

セツヒト……せっちゃんさんが続ける。

 

 

「心配かけちゃ、駄目だよー?」

 

 

糸目が片方若干開き、俺を見つめてくる。

目を逸らさず、答える。

 

 

「はい、もう二度と。」

「……うーん、よろしい。いいね君。気に入ったよー。」

「そ、それはどうも。」

 

 

怖っ。目開くの怖っ。

モンスターに見つめられたかと思ったわ!

この人めちゃくちゃ強いよ!絶対!

 

嫌な汗が何故か止まらない。

変なことは言わないように自重しつつ、武器について尋ねてみる。

 

 

「セツ……せっちゃんさんは、武具屋はお一人でやられているんですか?」

「お、何々ー。私に興味湧いてきた感じー?」

「いやいやいやいや!そんな失礼なことではなく!」

「なーんだ、期待しちゃったー。」

「はいぃ。」

 

 

だから、その目で見つめてくるのはやめてほしい。

心臓が止まりそうになる。

 

 

「うーん、武具屋を始めた理由は、何か楽しそうだったからかなー?キミみたいな新人君をイジってニヤニヤするの、楽しいよね〜。」

「イジってるって、自覚はあるんですね……。」

「そー。性格悪いよねー。でも、君、格別に面白いよー。うん。そそられるー……。」

 

 

値踏みされるように、じっと見つめられる。

いや、むしろ獲物を探す獣みたいな……?

 

いかん!視線に取り込まれる!

話題を本題に戻そう。

 

 

「その、俺まだハンター駆け出しでして。これからもしかしたらお世話になるかもしれないので、お礼と挨拶に来た次第で。」

「あー、なーるほどー。君かー、おとといこの村に来た新人ハンターさんってー。」

 

 

そ、そうですー。

いかんいかん、つられるな。

 

 

「そ、そうです。」

「ん、いーよ。そういうことなら。よろしくされてもー?袖振り合うも多生の縁ってね。いつでもおいでー?お姉さんが教えてあげるよー。」

「あ、ありがとうございます!」

「とりあえず、得意な武器だけ聞いといていいー?」

「片手剣と双剣、とりあえずこの2つです。」

「……へー、了解りょうかーい。」

 

 

今なんか変な間があったような……。

 

 

「うん、今日はちょーっと忙しいんだー。でも明日からなら、いつでもおいでよー。だい、かんげーい。」

 

 

そういうとセツヒトさん……せっちゃんさんは両手を広げて変なポーズをとった。

 

◯しざんまいの社長さんみたいだ……。

 

良かった、これでお礼を伝えることもできたし、武具屋と既知の仲になることができた。

 

 

「それでは、お忙しい中失礼しました!」

「えーっ?もう行っちゃうのー?」

「実はこのあとギルドに行くんです。講習会?というのに参加するので。」

「あー、そかそかー。なーる。」

 

 

のんびりとした口調に惑わされそうになる……でも、やっぱりこの人強いよ。隙がない。

いや、隙なんか探してどうするんだ俺。アホか。

 

 

「じゃー、気をつけていってらっしゃい?」

「はい!」

「あー。待って待って。」

 

 

そう言うと、セツヒトさんが近寄ってきて、何かを俺に手渡す。

ていうか並ぶと背が高いなこの人!スタイル良すぎだろ!顔近い!いい匂い!

 

 

「これー、お礼。」

「?」

「<初心の護石>。まー、先輩からの餞別ってやつー?」

「餞別って……使い方間違えてません?」

「硬いことは、いいからいいからー。昨日笑わせてくれた、おーれーいー。」

 

 

手をギュッと握って、<初心の護石>とやらを渡してくれた。

……普通こういうのは断るものだろうが、拒否するのも失礼な気がする。

 

 

「……ありがとうございます!大切にします!」

「んー、よろしい。やっぱり君、いいねー。」

「えっと、じゃ、じゃあ、行ってきます!」

 

 

何かとても恥ずかしい気持ちになって、逃げ出すように店を出ていく。

 

 

「がんばってね〜。」

 

 

後ろから声がしたが、振り返ることができなかった。

 

だって耳まで真っ赤になっていただろうから。

 

 

俺、おっさんなのに……女性への耐性は皆無のようです。

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