モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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19スパルタ教育を始めましょう。

ハンターズギルド入口に着いた。

 

昼も過ぎ、人はまばら。ハンター達は、すでにそこかしこでクエストを進めているのだろう。

 

そんな中俺ときたら。

 

……両頬をバチンと叩いて、気合いを入れ直す。

 

先程のセツヒトさんとの一件で、何だか心がユルユルになっております。

おっさんなのに。中身30過ぎのおっさんなのに。

 

気持ちを切り替えて、ギルドのドアを開いた。

 

 

前回の受付に行けばいいと言うことだったので、そこに向かう。

誰もいなかったが、一応待ってみよう。

 

5分ぐらい待つと、声をかけられた。

 

 

「ソウジさん……ですね?講習会参加の。」

「あ、こんにちは。お世話になります。」

「は、はい。お世話になります。」

 

 

思わず出てくる社会人の癖。

許して、社畜根性は早々消えないんです……。

話しかけてきたのは、前回の受付嬢のお姉さん。

首からかかった名札が今日は見える。ハイビスさん…というらしい。

 

 

「お待ちしてました。では案内しますので、こちらにどうぞ。」

 

 

ハイビスさんに着いていく。

何かチラチラと見られている気がする……気のせいか?

 

そんな微妙な空気のまま、案内されたのは屋外だった。

 

修練場という看板が見える。

ここで講習会が開かれるのだろうか。

 

 

「私はここまでです。ソウジさん……頑張ってくださいね。」

「は、はい!」

 

 

そう言って、ハイビスさんは去っていっ……去っていかない?

 

何してるんだあの人、見つからないと思っているのか、訓練場の入り口からこちらを覗いている。

 

万引きGメンみたいだな……。

 

ま、まぁいいや。気にしないことにする。

無かったことにするスキルは、社会人になってかなり鍛えられてきたんだ。

ここで役に立つとは思わなかったが。

 

 

* * * * * *

 

 

20分程は経った。

 

俺は直立不動のまま。

 

このままでいいのか、なんて思いながら、目だけを動かして周囲を確認する。

 

ハイビスさん、見えてますよ!

顔だけギリギリ出しているつもりでしょうが、ロングヘアーがバッチリはみ出てますよ!

 

もうすっごい気になる!

何なんだあの人!しかしやっぱり美人だな!

 

ち、ちがうちがう!無かったことにするスキル発動!

 

 

 

そんな邪念だらけの頭の中。

 

突如として、寒気が襲ってきた。

ほんの一瞬。

 

 

(えっ、何この感じ怖い)

 

 

そのまま立ち尽くすのはやばい気がして。

 

即座に俺は左に倒れ込むように転がった。

 

その瞬間だった。

 

 

ズドッ!

 

「……チッ。」

 

 

怖そうな人が、俺のいた場所に、木剣を振り落としていた。

 

 

「…………………えっ?」

 

 

沈黙。

 

 

しばし後。

 

 

その怖そうな人が、木剣を地面から引き抜き肩に乗せると、ゆっくりとこちらを振り向いた。

めっちゃいい笑顔で。

 

 

「やぁっ!君が新人のソウジ君だね!歓迎する!私の名はマショルク!今日から君を担当することになった教官役のハンターだ!」

「……えっ。」

「驚かせてしまってすまない!君を試すつもりが、多少強めになってしまったな!ハーハッハッハッハッハ!」

 

 

待て。

ちょっと待て。

 

今俺、かなりやばかったんじゃないか!?

 

 

「どうしたんだい?腰が抜けてしまったかい?手を貸してあげよう!」

「ちょっと待てぇぇえ!!!」

 

 

俺の声が、訓練場に木霊する。

 

 

「どうした?何か質問があるのかい?」

「違いますよ!危うく大怪我するところでしたよ!」

「いやいや、当てるつもりなど無かったさ!手加減の具合は間違えてしまったようだがね!すまない!」

「舌打ちしてたでしょう!明らかに殺る気満々だったでしょう!」

「ハーハッハッハ!」

「誤魔化してるぅ!」

 

 

外してからの舌打ちだったぞ。

しかも!地面にめり込む程の強さで!

 

 

「ハーハッハッハッ……おや、剣が折れてしまったな!」

「折れてんじゃねえか!」

 

 

もはやタメ口。

女神様と同レベルになったぞこの男。

 

いや女神様と同レベルって。ある意味神か。

 

 

「しかし、避けられるとは全く予想してなかったぞ!ソウジ君!なぜ避けられた!?」

「そりゃ……殺気を感じて気づいたら横に転げてました……。」

「うむ!第一関門は突破だな!立派立派!」

「第一関門?」

 

 

第一関門?なんだそりゃ。

 

 

「……モンスターは、急襲する。こちらの及びもつかないところで、動き、反撃する。しかも相手を殺すほどの勢いでな!だが人間ほど感情をコントロールできるわけではない!殺気を感じ取り、ここぞというときに避ける。これが、<緊急回避>だ!」

「緊急回避……。」

「うむ!対人間ではないハンターだからこそ、必要不可欠な技と言える。」

 

 

そういえば、先程の武具屋のセツヒトさんからも、強者の雰囲気を感じた。

あれは殺気というか、雰囲気だったが。

 

そこらへんの空気に、俺、敏感になっているのか。

 

 

「本当に驚いている!誇りたまえ、ソウジ君!次は第二関門だ!」

「早くない!?」

 

 

俺のツッコミは、全く通らないらしい。

教官……マショルクさんは、木剣を俺に向けた。

 

 

「続いては、先を読む訓練だ!多少スパルタで行くが、覚悟してくれ!」

「ちょっと待って下さい!説明を!説明をしてください!」

「避けろ!」

 

 

超シンプルな説明を終えると、教官は構える。

美しい。単純にそう思った。

 

そして、この後恐ろしい斬り筋が来るのも、なんとなくわかる。

だって、目が笑ってないんだよこの教官!

 

 

「ハァっ!」

「うぉあ!」

 

 

思わず飛び退く。鼻の数センチ先を、剣先が掠める。

 

 

「君は双剣使いの様だな!なら、防御を捨てろ!避けるんだ!痛みを覚えろ!慣れるんだ!」

「慣れるかってんだちくしょおおおおお!!」

 

 

教官が持つ木剣が、ものすごい速度で斬りかかってくる。

俺は無手。

背中の双剣を抜く暇もない。

 

というか、反撃はしてはいけないんだろう。

その為の訓練だ。

 

とにかく避けるしかないんだなチクショウ!

 

 

「ハッ!ハッ!ヤァ!!!」

「てっ!いうか!無理っ!………あだっ!!」

 

 

ついに肩に、剣先が当たってしまう。

 

それだけなのに。

それだけなのに、めっちゃ痛い。

 

 

「足は生きている!動きを止めない!」

「は、はいぃ!!」

 

 

迫りくる剣先を見つめることは、しない。

大体剣の長さは分かった。

 

だって当たってしまったから。

 

間合いが分かった。

太刀筋もわかりやすい。

 

教官がそういう風にしているのだろうが。

 

さっき教官は言った。「先を読む訓練」と。

 

とにかく見るんだ。

 

 

(足運び……重心……かぶり、予備動作……ここ!)

 

 

不思議だ。

怖い。

怖いんだが、何かワクワクする。

 

某戦闘民族みたいなことを考えていた。

 

 

「ハッ!ヤァ!セィ!タァァァ!」

(上……からの右!フェイント……突き……!)

 

 

避けまくる。

なんで避けられているのか、自分でもよくわからない。

 

 

「………フッ!」

(っ!!まるで予備動作がない!?抜刀術!!?)

 

 

ついに読みきれない一撃がきた。

剣を納めた体勢から、一気に横薙ぎをかましてきた。

 

正気かよこの人。

 

そんなことを思った瞬間、思わず腕でガードしてしまう。

 

木剣を。

 

腕で。

 

 

………。

 

 

…………。

 

 

数秒の沈黙後。

 

 

「いってええええええ!!!」

 

 

あまりの痛さに、俺は膝をついてしまった。

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