目を覚ます。
どうやら新しい世界に着いたらしい。
先ほどまでいた湖の上ではない。
本当に生まれ変わったのだろうか。
とにかく急いで身を起こす。
なぜなら、サバイバルな世界と聞いたから。
俺のことをペロッと食べてしまうような奴らがいてもおかしくない。
起き上がった瞬間、横にあった岩陰に隠れた。ゆっくり顔を出して辺りを見渡す。
周囲は木々がまばらに生えた草原。
サバンナと言うには少しばかり肌寒い、でも過ごしやすそうな感じがする。
身を隠せる岩や大木もちらほらと見える。
……とりあえず脅威は何もなさそうだ。
「意外と、普通だな…。」
声の具合や耳の聞こえ具合を確認してみる。
大丈夫、健康そう。手も足も、口の中も、問題はないように感じる。
少し落ち着いて、自分の体を見つめてみると、全く体つきが違うことが分かる。
少々ビール腹になっていた、33歳のおっさんだったはずだが、今の体は明らかに若い。
大学生とか、下手したら高校生とかではないだろうか。
無駄なぜい肉はほとんどない、引き締まった肉体である。体が軽い。
服は、全身まるで忍者装束のようないで立ちだ。パーカーのフードのように、顔を隠すためであろう布が、首の後ろについている。
靴はやたら頑丈そうな素材でできているが、そこまで重くは感じない。よい品物なのかもしれない。
頭に何か、額当て?のようなものが巻き付いているので、ほどいてみた。
「よっと……。なんだ?この模様…忍者みたいな…。」
何かのシンボルマークなのか、4つの正三角形が重なってできた大きな一つの正三角形、そんな形の絵が彫ってある。
ひとまず頭に巻き直しておいた。
とりあえず、素っ裸で転生ということは無くて一安心だ。遠慮なく使わせて頂こう。
しかし、女神さまのギフトが何なのかが分からない。
若い肉体と持ち物だけかな?と思っていたら、腰にとんでもないものがあった。
ポーチだ。
ゆっくりそのポーチを開けてみると、急に頭の中に、
<アイテムポーチ>
<リストから調合>
<装備>
<クエスト情報>
……
その他色々な項目が浮かんできた。
……完全にゲーム画面だな!これ!
……ゲームなどはあまり詳しくない方だが、眼前に「アイテム」なんていう言葉が現れたら、ゲーム画面だとしか思えない。
よくできたVRゲームだと言われれば信じてしまいそうになる。
この画面は、自分以外からは見えるのか見えないのか。この画面を見る力は俺だけにもらったギフトなのか、それともこの世界の住人が共通して使えるものなのか…疑問は尽きない。
だが、この画面のことに詳しくなっておかないと、なんだかこの先生きのこれない気がする……。
「…うん、どのみち今やることなんて分からないし、色々いじってみよう。」
岩を背もたれにして、このゲーム画面とにらめっこを始めた。
まずはポーチを触ってみる。すると例のゲーム画面が開いた。
一番上の<アイテム>を見てみよう。
頭で(アイテムアイテムアイテム…)と念じてみると、アイテムの一覧のリストが開いた。
思うだけでいいのか、単純でよかった。
空中に指で操作とか、もし周りから見えていないのなら、ただの変人にしか思われなかっただろう。
携帯食料、応急薬、回復薬、毒消し、ウチケシの実、砥石、ピッケル、シビレ罠、……使い方は分からないが、とりあえずハンパ無い数のアイテムがあることが分かる。
そんなにたくさん入っているように見えないが、もしやドラ〇もんのポケット的なポーチなのかもしれない。試しに携帯食料を取ってみよう。
「出てこい携帯食料……おわっ!」
ポーチに手を入れて念じたら携帯食料を持つことができた。何て便利なポーチだ。
携帯食料は、つまるところおにぎりだった。この世界にも米があることが地味にうれしい。
食べてみると、塩味が効いていて、なかなかうまかった。
「どうやらアイテムはこの中にぎっしり入っているみたいだな……こうやって引っ張れば、取り出せるぞ。」
独り言を言いながら、いろんなアイテムを出したりしまったりしてみる。
……お?アイテム情報も見られるのか。
おにぎりを頬張りながら、アイテム一覧の右にある文字の羅列に注目する。
シビレ罠を意識すると、情報を見ることができた。
「シビレ罠は…モンスターの動きを止めることができる罠……捕獲に使用可能…か。」
よくわからないアイテムの使い方もこれをヒントに何とかできるかもしれない。
捕獲というからには、敵がいて、その敵を捕縛するための方法がある、ということだ。
その後は、一通り持っているアイテムの情報に目を通してみた。
次はやはり〈装備〉だ。
(装備装備…)と念じてみる。いけた。
やはり、自分の今の装備を確認したり変更したりできる項目のようだ。
何々……ミヨシ村装束一式……?見切りLv1、精霊の加護Lv2、防御Lv2……。
なるほど、わからん。
試しに装備を外してみようと<全解除>を選択してみたら、パンツとインナーのみになってしまった。
一瞬で着替えられるなんてすごいアイテムポーチだ……。
……感心している場合ではない。
早く装備しなくては、変態の仲間入りをしてしまう。
(ミヨシ村装束一式を装備…)と念じてみても、何も起きない。やばい、装備できないと本当に変態の仲間入りである。
「<装備>からさっきの装備を選択して……よし、着替えられた!」
どうやら装備を付けるときは、単に念じるだけではダメらしい。
しっかり<装備>から選ばないといけないようだ。
それだけでもすぐ着替えられるのですごいことだが。
そして気になるのは、やはりこの「見切り」や「精霊の加護」の部分。
発揮できる自分自身の力のことだと推測はできる。そしてLvはその強さを表しているのだろう。
もういちど、情報画面をよく見直してみた。
「お?<スキル>って項目があるじゃないか……これで情報は見られないかな……。おっ、いけた!」
<スキル>の項目で、先ほどの「見切り」などの説明が載っていた。
よかった……この情報画面、説明書のように使えるかもしれない。
「見切りは……会心率の上昇……Lv1で+5%……Lvは7まで上がるみたいだな。Lvが上がっても、どれだけ上昇するのかはわからないみたいだな。じゃあ次、精霊の加護は…。」
自分の持つスキルをこうして文字で確認できるなんて、新鮮だ。
前の世界なら俺のスキルはどんなのだったのだろうか。ふと気になった。
まあ多分大したものじゃないだろうが。
一通り、スキルの確認を終える。
今俺に発動しているスキルは
<見切り>
<精霊の加護>
<防御>
<砥石使用高速化>
の4つだ。
精霊の加護は、低確率で相手の攻撃を3割~5割ほど軽減するスキル。
防御は、そのまんま防御力が上がるみたいだし、砥石使用高速化もそのまんま、刀を研ぐのが速くなるスキルのようだ。
装備画面とスキル画面を見終わった。
すごいぞ、この情報画面。
少なくとも、全く何もない状態で投げ出されるより1億倍いい。
ありがとう女神様……!この情報画面で、俺、この世界を生きていきます……!!
「他の画面も確認してみるか……ん?」
…………今何か、足元が動いたような。
地震では……ないと思う。
……また揺れた。規則的に上下しているような感覚がある。
「まさか……この岩って……!」
背もたれにしていた岩。座っていた岩。妙に温かさを感じられるその岩。その先を目で追って、よーく見てみると……。
「これって……顔と翼ぁ!!??」
俺が初めて大型モンスターを出会っ(てしまっ)た瞬間だった。