「ほらっ、回復薬グレートだ!飲んだら、次に患部にすり付けてみるといい!」
「あ、ありがとうございます……。」
骨でも折れたんじゃないかと思うほどの痛みがあったのだが。
一応は痛みはひき、腫れていた右腕も次第に治っていく。
すごいなこの薬……。
「しばし休憩だ!10分後、次の訓練を再開する!」
「じ、10分!?」
「ああ!ある程度痛みが残っているまま行う!実践ではそんなこと、日常茶飯事だからな!」
「は、はいぃ。」
うへぇ、と声を漏らす。
教官は、隣で何か薬と液体を混ぜたかと思うと、一定の速度でかき混ぜていく。
10秒ほどでできたのは、先程もらった回復薬グレートというものだった。
「……よし!患部にすりつけるといい!」
「いや!先程もらいましたから!」
天然なのかこの人。
「そうか!ではこれは私が頂こう!」
「貰うんかい!」
「ちなみに、今のが回復薬グレートの作り方だ!覚えたかな!?」
「それも訓練だったんかい!休憩中ちゃうんか!!」
もはやボケとツッコミである。
マショルク教官は、赤と黒がベースカラーの重装備だ。
肩や腰にはトゲトゲがついていて非常に厳つく、怖かった。
だが、俺が怪我をした瞬間、この薬を出して介抱してくれた。
優しいのか厳しいのか全くわからん。
アメとムチしかない教育方針なのかもしれない。
もしくは……天然さんの可能性がある。
「しかしソウジ君には驚かされっばなしだぞ!ここまで私の連撃を避けたハンターはいなかったな!誇っていい!」
「あ、ありがとうございます。」
アメか?アメなのか!?
褒め言葉も、純粋に受け取っていいのか、よくわからなくなってしまう。
「君はどこかでハンターをしていたのかな!」
「い、いえ、全くの素人であります!」
だめだ、マショルク教官の口調に合わせると、完全に軍隊の答え方になってしまう!
なるようになれ!もうこの人の前ではこの口調でいいや!
「そうか!だが、身のこなしは相当なものだな!これからが楽しみで仕方がない!」
そう言うと教官は俺に木剣を二本差し出しさてきた。
「第二関門も合格とする!言うことは特にない!」
「えっ!この講習、終わりですか!?」
「ああ!今日の分はな!今君が口にした『先を読む』ということ。私の重心や動作、目線を読む力、感服だ!後は実践でいいだろう!」
「よ、良かったぁ……。」
とりあえずあの痛い思いは、もうしたくない。
「この剣を手に取るんだ!次の場所に移動する!」
「りょ、了解であります!」
ヤバい。
この口調に慣れたら、もう戻れない気がする。
* * * * * *
「次はここだ!」
やってきたのは、周りを岩山と滝に囲まれた場所。
ギルドの奥にこんな場所があるとは思わなかった。
よく見ると岩山のそこかしこに足場が見える。
あそこまでどうやって移動するんだろうか。
そして何より異様なのが、中央に鎮座する、一匹の蛙。
……のようなからくり?ロボット?
疑問が尽きない中、教官が岩山の奥にある歯車を回し始める。
ある程度勢いがついたところで、今度は滝にある水車の留め具を外した。
その途端、「ギギギ………」と音を立てて、中央のカエルが動き始める。
「これは<からくり蛙>という!非常に丈夫な作りになっているので、攻撃の練習にはもってこいだ!」
そう言うと、教官はからくり蛙に納刀のまま構えをとる。
やはり美しい。
何というか、構えが次の動作に向けて一番自然になっているというか、無駄が全く無い。
そう思っていると、教官は目にも留まらぬ速さで剣を振り抜いた。
「凄い………。」
人ってあんなに速く動けるのか……。
攻撃を受けた蛙はビクともしなかった。
だが、教官は止まらない。
斬り上げに続けて回転斬り、その後突きを連続でおこなって……あぁ、もう目で追うことができない。
まるで舞っているようだった。
すると、からくり蛙が「ガガッ」と音を立てて動かなくなった。
「このように、短時間に一定のダメージを与えると止まる仕組みになっている!」
「なるほど。」
「ようし、やってみろ!」
「できるかぁ!」
脊髄反射で突っ込んだ。
「なに!?まずはやってみなくては始まらないではないか!」
「たしかにそうですが!何かコツとかやり方のアドバイスは無いんですか!」
「うむ!確かに!」
「あと!訓練に見通しがほしいです!今日行う訓練はこれだけですか?」
そう、実はもうすぐ夕方、日が暮れる。
さらに言えば、全身疲れていて、満足に動けるかわからない。
「ようし!では、考えている訓練を伝える!心して聞くように、」
「サーイエッサー!」
疲れているんだな、俺。
ノリがよく分からなくなってきたぞ。
「まずは攻撃!モンスターを前にして、一定のダメージを与える!これをしなければ、大型モンスターを屠るなど夢のまた夢だ!」
「サーイエッサー!」
「また、並行して岩山を登る訓練を行う!コツをつかめば簡単だぞ!エリアの移動には必ず必要になるスキルだ!」
「さ、サーイエッサー!」
「更に!休憩時間を利用してアイテムの調合や罠の仕掛け方と言った、ハンターに必須のスキルを習得する!」
「さ、サーイエっ」
「そしてそして!訓練後は宿で筋トレと素振り、調合などの自主練を行ってもらう!毎日宿題として、私がその出来を確認する!」
「………サー………」
「こんなところだ!異存は無いかな!」
「……………。」
「ようし!沈黙は肯定とみなす!最後に!君に仮免許を渡し、最終試験の大型モンスター討伐を行ってもらう!そうすれば、免許皆伝だ!」
「………サーイエッサアアァァァァァ!!!」
講習会と聞いて、こんなスパルタ教育が待っていたとは。
誰も予想できないですよねそうですよね。
その後狂ったように双剣を振るった俺は、力尽きるように倒れたのだった。