モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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21自主練を始めましょう

水をぶっかけられて目を覚ました俺は、すでに日の暮れかけた街をトボトボと歩いていた。

 

 

「明日は朝食後!ギルド受付に集合だ!」

「サーイエッサー!」

「よし!解散!」

 

 

きっちり明日の予定を押さえられ、全身筋肉痛の中宿に戻ってきた。

 

 

「あ、お帰りなさ……うわぁ、ボロボロだね。」

「た、ただいま帰りました……っ!」

 

 

ドールに出迎えられ、ホッとしたのも束の間、筋肉が悲鳴をあげる。

 

 

「待って、待って。疲れているときは、お風呂に行ったほうがいいよ。銭湯、案内してあげる。」

「お風呂?お風呂いいなぁ。」

「だ、大丈夫?歩ける?」

 

 

何とか歩ける。

というかお風呂があるなら、一刻も早く浸かりたい。

 

だって汗でビショビショだし、臭くてかなわない。

 

おじいさんに断りをいれた俺は、ドールに案内をお願いすることにした。

 

 

* * * * * *

 

 

「ここだよ。」

「おぉ……ここが銭湯かぁ。」

 

 

のれんが掛かった入り口。煙突から立ち上る煙。

かすかに開いた開き窓からは、湯気が出てきている。

 

ここや……日本人の心、銭湯や……。

 

疲れのあまり訳のわからないテンションになる。

 

この辺、前の世界とあんまり変わりないな、などと思っていたら、ドールがとんでもない事を言い出した。

 

 

「じ、自分で脱げる?」

「ん?そりゃあまぁ……。」

「私、手伝おうか?」

「あぁたの……んんん?」

 

 

何を言ってるんだこの子は。

それとも俺の耳がおかしくなったのか?

 

 

「いやいやいや。まずもって入れないだろ?男湯なんだし。」

「おとこゆ?」

「ん?だから、男女別で入るから、ドールは無理だろ?」

「よくわからないけど、みんな一緒に入るんだよ?銭湯。」

 

 

えっ。

何それ。

 

 

「待て待て待て!それはいけない……だろ!?なんかこう……だめじゃないか!?」

 

 

だめだ。

疲れて頭が回らん。

純粋な少女に教えられる程の語彙が、俺にはない。

 

 

「だって私、おじいちゃんと一緒によく入るよ?」

 

 

マジか。

何だこの世界。混浴OKなのか?

じゃ、じゃあこの暖簾の向こうには、マーベラスでファンタスティックでラグジュアリーな空間が広がっているのか!?

 

 

「それにソウジさん、か、体痛そうだし。脱ぐのも、た、大変じゃないかなって。」

 

 

いやいやいや。

 

……いやいやいやいやっぱりまずい。

 

それに混浴だった場合、他の女性とかいたとして。

鼻の下が伸びたおっさんの顔を、ドールに見られたくない!何となく!

 

 

 

 

「す、すまんドール、体少し触られるだけでも痛くてさ。気持ちは嬉しいけど、ゆっくり自分で脱ぐとするよ。」

「そう?……わ、私、別に嫌じゃないよ?」

「だ、大丈夫だから!大丈夫!じゃ!行ってきます!案内ありがとう!」

 

 

そう言うと、そそくさと銭湯に入っていく。

 

 

「……いってらっしゃい。」

 

 

何だかむくれ顔なのは気のせいでしょうか。

気のせいですよね。

 

よし、なら気にしないでおじさん体洗っちゃうぞー。

 

混浴かぁ……。

 

変な期待をしながら、銭湯に入っていく俺であった。

 

 

* * * * * *

 

 

「なるほど、納得した。」

 

 

銭湯から出てきた俺は、宿屋に向かって歩き出す。

 

火照った体に、風が心地良い。

 

「ああいう感じなら、混浴もできるわな。」

 

 

そう、先程向かった銭湯。

少し俺の認識とは違っていた。

 

初めは、男女一緒にスッポンポンになってキャッキャウフフする感じかと勝手に想像していたが。

 

フタを開けてみたらそんな事はなかった。

 

まずは男女別になった脱衣所で服を脱ぐ。

次に男女別の湯浴み場で体をきれいにする。

 

その後は湯浴み着に着替え、サウナで汗を流す。

このサウナだけ、男女一緒。

 

サウナ後はまた湯浴み場で汗を洗い流す。

 

以上。

 

 

 

……つまりまぁ、こちらの世界では、銭湯とは、サウナがメインのものなんだろう。

古代ローマの公衆浴場みたいな感じ。

知らんけど。

 

ちょっと安心した。いきなり女性の裸が目の前に来たらどうする。

 

のぼせて、また泡吹いて倒れたら洒落にならない。

 

そんなことを考えながら、村の大通りをゆっくり歩く。

疲労と温かさで、すぐ眠りにつきたいが、夕飯を食べて、自主練をしなければならない。

 

教官の宿題は「回復薬グレート」5つの作成だ。

 

それを念頭に置きながら、宿に歩みを進めた。

 

 

* * * * * *

 

 

夕飯を取り終えた俺は、早速調合に取り掛かる。

 

 

「まずは……<リストから調合>で試してみるか!」

 

 

教官からもらった「回復薬」と「ハチミツ」を手に持ち、リストの中の「回復薬グレート」を選択する。

 

すると、いつの間にやら回復薬を持った左手に、「回復薬グレート」が出来上がっていた。

 

 

「まじかよ……何か申し訳ないな……。」

 

 

一瞬で出来てしまった。

 

味気ない。

 

喜ばしいことではある。

だが、何とも空しい。

 

 

「……自分でもやってみるか!」

 

 

今度は、教官の見様見真似で2つの材料を混ぜ込んでみる。

宿のおじいさんから借りたスプーンを使って十秒ほど掻き混ぜ……ても何も変化なしか!

 

じゃあ回す速度をあげてみよう。幸い材料はたっぷりとある。

 

試行錯誤を繰り返すこと30分。

 

 

「で、できた!!」

 

 

ようやく一本!

達成感がある。

アイテム表示にはバッチリ「回復薬グレート」の文字が。

 

コツを掴んだ気がする。肝は、ハチミツを入れる速度だ。一定の量を、一定の掻き混ぜ速度で入れればいいわけだ。

 

 

「簡単には出来ないな……教官10秒ぐらいでできてたのに。」

 

 

そこからまた15分ほどかけて、ようやく回復薬グレート5本を作ることができた。

 

 

「せっかく教えてもらえるんだし、講習会期間中は、ギフトに頼らず自分でやってみるか。」

 

 

* * * * * *

 

 

次に庭にやってきた。

風呂に入った後にしたくはなかったが、これから筋トレと素振りだ。

 

 

「素振りはともかくとして、筋トレはギフトなんか使えないし。ここも真面目にやるとするか!」

 

 

ついた地力は、絶対に役に立つ。

 

 

最終試験である、大型モンスター討伐のために。

 

本気で頑張ることにした。

 

筋肉痛が辛いけど……!

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