モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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22イシザキ亭に貢献しましょう。

「ランニングはすべての基本だ!スタミナは双剣使いの肝!とにかく走り込むんだ!」

「サーイエッサー!」

 

 

* * * * * *

 

 

「腕の筋肉ばかり使わない!全身で体重を支えて岩山を登るんだ!やればできるぞ!」

「サーイエッサー!」

 

 

* * * * * *

 

 

「スタミナがない時は肉を食べるんだ!」

「サーイエッサー!」

「食べながら、相手の動向から目を離さないように!自分の隙は敵には好機!ピンチを作らない!」

「(モグモグ)ふぁーいえっふぁー!」

 

 

* * * * * *

 

 

「双剣は手数の武器!一太刀一太刀丁寧に素早く!回転を上げれば、他の武器を圧倒する性能がある!」

「サーイエッサー!」

「手を止めない!」

「さ、サー!!」

 

 

* * * * * *

 

 

「チッ…………やるではないか!午前の講習はここまで!昼食にしよう!」

「今確実に舌打ちしましたよねぇ!」

「午後は立ち回りとモンスターの生態に関する勉強会を行うぞ!昼食は奢りだぞ!」

「サーイエッサー!」

 

 

講習会が始まって、1ヶ月が経過した。

 

マショルク教官によるシゴキ……もとい講習は続いていたが、なんとか俺も音を上げずに頑張っている。

 

マショルク教官は、本当にもうダメだ、というところを的確に見抜き、訓練内容を変えたり、内容を濃くしてくる。

教官として選ばれたのは、やはり伊達ではない。

たまに、本気で殺しにかかってくるんだが。

 

 

そして何よりもすごいのが、体力とスタミナ。

 

もう無尽蔵じゃないかと思うくらいだ。

疲れた様子を見たことがない。

 

このぐらいじゃなきゃ、第一線でモンスターを相手にするなどできないのだな、と思う。

 

 

「食事処までランニングで行こう!付いてくるんだ!」

「サーイエッサー!」

 

 

俺の弟子?っぷりもかなり板についてきた。

 

講習開始当初は、ドールや宿のおじいさんに心底心配された。

 

だが、日々のトレーニングを続ける内に体力・スタミナ共に付き始めてきた。

最近ようやく慣れてきたと思う。

 

まぁその辺を加味してよりキツイ講習に進化させていくのが、マショルク教官の怖いところ。

ギリギリぶっ倒れる前に終わるもんなぁ、毎日。

 

そうしてギルド奥の修練場から、ランニングで食事処に向かった。

 

 

* * * * * *

 

 

「またここですか。」

「うむ!ここは非常にうまい!」

 

 

やってきたのは「イシザキ亭」。

以前俺がキャバクラでのおっさんの気持ちが分かりかけたことでおなじみの店だ。

 

ちなみに女神さま情報では、初めて来たときの俺の反応がかわいくて、奥様のファン層をゲットするに至ったとか。

その辺はもう気にしないことにしている。

 

 

「たのもうっ!」

「あらっ、マショルクさんにソウジさん!いらっしゃい!」

 

 

昼時、混雑している店内に滑り込んだ俺たちは、何とかテーブルに着くことができた。

 

そう、何と「イシザキ亭」は今、ワサドラでちょっとしたブームになっている。

そして、なぜ俺たちがなじみ客のように扱われているのか。

その辺も含めて話しておこう。

 

 

* * * * * *

 

 

事の起こりは3週間ほど前。

ようやく、俺が昼食を吐かずに食べることができるようになってきたころ。

 

 

「ソウジ君!相談がある!」

「えっ!?珍しい。何でしょうか?」

 

 

マショルク教官が俺に相談してきたのだ。

 

 

「私はワサドラに来て日も浅い!教官としての日々もめまぐるしい!おかげで町のことは全くと言っていいほど分からない!」

「あ、教官は『町』派なんですね。」

 

 

どうやらワサドラを町と呼ぶか村と呼ぶか、住人が日々論争を繰り広げているとか。

ちなみに俺は断然「町」派だ。

 

閑話休題。

 

 

「日々がんばるソウジ君に何かねぎらおうと、昼食をご馳走したい!だが、店が分からないのだ!」

「そうですよね。でも教官?私も来てまだ一ヶ月経たないぐらい―――」

「そこでだ!ソウジ君!何処か美味な食事処を知っているなら教えてもらいたい!この通りだ!」

「話無視して頭下げられた!!」

 

 

という経緯で、俺が唯一知る店、「イシザキ亭」に案内したのだった。

 

 

そこから教官はいたく「イシザキ亭」が気に入ったようで、毎日昼をご馳走してくれた。

 

正直とても助かっている。

 

そして通い始めて1週間。

 

 

「ケイさん!お勘定をお願いしたい!」

「あーいよっ。いつもありがとね。これ、おまけのアメちゃんだよ!」

「ありがとうございます。」

 

 

いつものようにケイさんにドギマギしながら、アメをもらう。

ちなみに、お姉さんの名前は「ケイ=イシザキ」さんだった。

 

教官が名前を知りたいと言ったら、教えてくれた。

なので俺たちは、「ケイさん」と呼んでいる。

 

 

「時にケイさん!ここはいつも客がいないな!うまいのにもったいないぞ!」

「教官、ストレート過ぎです。」

「あはははは、事実だしねぇ。いや実はねぇ―――」

 

 

そう言ってケイさんは、大通りの方の大型の新しいレストランに、お客が取られていることを話した。

頷く教官。

「なるほど……。」などと、珍しく考え込んでいる。

 

 

そこまではよかった。

だがそこから教官が発した言葉に、俺はめまいがした。

 

 

「……よし!ソウジ君!」

「サーイエッサー!」

 

 

脊髄反射で返事をしてしまう。

 

 

「この店が売れるアイデアを、私と一緒に考えるんだ!」

「サーイエッサ……アァ?」

 

 

何言ってんだこの天然教官は。

 

とその時は思ったが。

今思えば、教官なりに、この絶品料理を出す店を繁盛させたかったのだろう。

 

 

「さぁ!ソウジ君!考えを述べてくれたまえ!」

「いきなり無茶な!」

「たしかにそうだな!ではスクワットをしながら5分待とう!はじめっ!!」

「サーイエッサ―!!」

 

 

畜生。体に鬼教官のかけ声が染みついてやがる。

 

こうして、教官は頭をひねらせながら、俺はスクワットをしながら、顧客獲得のアイデアを考えに考えていった。

 

 

5分後、俺が出したアイデアはこうだ。

 

 

「➀店の看板のインパクトが全くない。表にレストランと分かるような看板を作りましょう。

②入口前に、おしゃれな黒板スタンドを設置しましょう。今日のおすすめやシェフの一言をチョークできれいに書くと、お客も入りやすいです。大通りの方から誘導できるように、小さめの案内板を大通りからこちらに向けて設置していきましょう。

③ついでにメニューも、表に数冊出しましょう。メニュー表自体も字ばかりで見にくいので、挿絵を入れて見た目が分かりやすいようにしましょう。

④そのメニューに添える説明文は、簡潔に、そしておいしそうに。新鮮、おすすめ、人気No.1など、ポジティブな言葉を色んな料理にちりばめて、見る人の食欲をそそりましょう。

⑤内装は落ち着いていてとても良く、並んでいるスパイスの瓶はセンスを感じます。思い切ってオブジェとしてスパイス瓶を棚に並べましょう。カウンターに置いたらケイさんが見えなくなります。

⑥看板娘として、ケイさんを前面に押し出しましょう。美人さんはそれだけで宣伝効果が高いです。

⑦ポイントカードを作りましょう。初めは2回来たらドリンク無料から始め、次は5回、7回、10回……という風にしていき、リピート率を上げていきましょう。

⑧客が増えることを見越して、伝票システムを導入しましょう。後々の金銭処理も楽になります。注文を聞くときには……

…………」

 

 

そうして思いつく限りの案を提案をすると、ケイさんも教官も、何なら厨房から出てきたシェフのお兄さんまで、口を開けて驚いている顔だった。

 

そして、ケイさんが俺の手を握ってこう言った。

 

 

「……ソウジくん!」

「は、はい!」

「これ、いいじゃない!!これならお客さんが増えるかもしれないよ!」

「ほ、ホントですか?今思いついただけなんですが。」

 

 

前世での記憶を頼りに案を出しただけなのだが。

こっちでは一般的では無いのかな。

 

 

「素晴らしいぞ!ソウジ君!私も驚きすぎて話すのを忘れていた!」

 

 

教官がいつもより笑顔だ。目も笑っているような。

そしてシェフのお兄さん。腕組んで厳つい顔だが、大きくうなずいている。ご納得いただけたようなら何よりだ。

 

 

「しかし、私が看板娘かい!?そ、そればっかりはちょっとねぇ……。」

「何を仰る!ケイさんは美しいぞ!男がこぞって集まるだろうな!私が保証しよう!」

「ま、マショルクさんまで……。」

 

 

顔を真っ赤に染めるケイさん。

可愛いと思ったが、そこは胸の内に秘めておこう。

 

 

「しかし、私は何をすればいいんだい?ちょいと年を考えると、あの大型レストランの店員さんみたいなのはちょっとねえ……。」

 

 

そうなのだ。

大通りにオープンした店、店員さんが異様にレベルが高いし、若い。

しかも格好が、神◯屋のパンを売る従業員さんみたいな制服なのだ。

ミニスカートだし。

 

おかげで男性客が溢れ返っている模様。

 

 

「いや、逆です。何もせず、いつも通りに接客をしてください。」

「えっ?」

「先程も言いましたが、この店は落ち着いた雰囲気と一流の料理の店。奥まっていますし、入りにくいなぁ、と思う人もいるでしょう。そこを逆手に取ります。」

「つ、つまりどうするんだい?」

「メニュー表を見て、意外とお手頃な値段設定であることをアピールし、美人のケイさんの温かで明るい接客でハートをキャッチ。あとは料理を口にすれば、もうその人はこの店の虜になります。隠れた名店を見つけた気分。これは間違いないです。」

 

 

変に気取る必要はない。

入りやすい、でもいい雰囲気。

気さくなお姉さんとちょっと無骨だけど味は確かなシェフ。

更にこの立地。

 

この組み合わせ、絶対いける。

 

 

* * * * * *

 

 

そうして現在。

この繁盛ぶりである。

 

 

「こうしてみると、少し前までお客さんがいなかったのが、嘘みたいですね。」

「うむ!これはかなりうれしいぞ!繁盛しているようで何よりだ!」

 

 

正直に言うと、ケイさんはただいるだけで男の客が寄ってくるだろう。

だがこの店はレストランであり、何よりも美味いのだ。

 

ここを一番の推しにして、ケイさん笑顔と接客、入りやすくて良い雰囲気で脇を固めた方がいいと考えたが、見事にハマったようだ。

 

 

「ここまでの成果を出すとは!ソウジ君!第4関門突破だ!」

「その関門システムには疑問しか湧かないのですが、ありがとうございます。」

 

 

教官は何も考えていないのではと思うかもしれないが、実は教官も教官で動いてくれていた。

知り合いという知り合いに、声をかけるという、最も初歩的かつ即効性の高い営業を行っていたのだ。

 

ギルドの幹部とか首都の重役とか来たときは、コネクションの強さに驚かされたものだが。

 

それも相まって、この現状。

下手したら一番貢献してくれたのかもしれない。

 

 

かくして俺は、講習第4関門(?)を無事通過したのだった。

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