モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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25決意表明をしましょう。

「クエストのスタートは、明日朝からです。期間は三日以内。それまでにバサルモスを討伐し、証明部位をお持ち帰りください。部位に関しては……。」

 

 

ハイビスさんから、懇切丁寧にクエストの内容についての説明を受ける。

確認は大事だと思うので、メモをしっかり取っておく。

 

 

「…………また、今回は試験を兼ねるため、教官としてマショルクさんが同行します。ただし、アドバイスや手助けは厳禁です。命の危機に遭った時のみ、手助けを許可します。マショルクさんが手出しをすれば、試験は不合格となります。」

 

 

ソロ討伐というからには、そういうことだろうな。

俺が一人で討伐することに意味がある。

教官を頼るようでは、半人前のままだ。

 

 

「説明は以上になります……ソウジさん、何かご質問はありますか?」

「いえ、また確認してわからないことがあれば聞きます。」

「ええ、そうして下さい。明日の朝までに準備を整える、こういうのも全て、試験内容に含まれますので。」

 

 

ということはアレかな?

準備段階で教官を頼るのもNGということか。

準備は入念にしなければ。

 

 

そのまま俺と教官はハイビスさんに礼を言って、ギルドを後にすることにした。

 

特例中の特例なのだろう、ハイビスさんは挨拶もそこそこに、忙しなくギルド内を回り始めた。

 

 

何とか頑張ろう。

教官にいつだか教えてもらった、「命あればこそ!」の教えは徹底して守る。

 

その上で、このクエスト。絶対にクリアしてみせる。

 

 

* * * * * *

 

 

準備から自分で行わなければならない。

 

いつもの様に昼食を「イシザキ亭」で取った俺たちは、宿の前で別れた。

「近くにいるとあれこれと教えそうでな!教えたことを思い出しながら、準備をするといい!」と言って、その場を去っていった。

 

待ち合わせは明日の朝、ガーグァ車乗り場の前で。

 

そこまでに、何とかしてみよう。

 

ポーチの中身を確認するため、俺は一旦宿に戻ることにした。

 

 

 

宿に戻ると、ドールと鉢合わせた。

 

今日はブラウンのパーカーに、デニム生地の七分丈のズボンを履いている。

いつもと違う時間帯に「ホエール」に帰ってきたため、不思議に思われたようだ。

 

 

「あれ?ソウジさん。早いね。」

「あぁ、今日はね。」

「今日は、って。明日は遅いみたいな言い方。」

「そうかもしれない。実は、大型モンスターの討伐クエストを受けることになった。」

「……えっ?」

「期間は三日間。だから、明日明後日帰ってこなくても、心配しないでくれ。」

「……も、もう大型モンスターの討伐に行くの!?」

「うん。今から準備をしないとなぁ。」

 

 

頭をポリポリ掻きながら、これからのことをさっと考える。

 

部屋に戻って、ポーチの中身を確認。

必要なものがあれば買い揃えるつもりだ。

セツヒトさんのいる武具屋は夕方には閉まるはずだ、少し急ぐか。

 

 

「それじゃ、ドール。これから準備をするから……ドール?」

 

 

ドールに話しかけるが、返事がない。

 

何か俺、失敗した?

 

 

「ど、ドール?大丈夫か??」

 

 

頭に手を伸ばした、その時だった。

 

 

「っ!」

 

 

バシンっ!

 

 

手を払われた。

 

痛い。

 

 

 

そのままドールは、宿の外に出て行ってしまった。

 

 

「…………えっ。」

 

 

突然の出来事に、呆然としてしまう。

 

…………。

 

 

……………思春期真っ只中の女の子の頭を気安く触ろうとするのは、良くなかった………………。

 

いかん。とんだセクハラ野郎だ!

相手は子どもだが、立派なレディ。

安易な俺を呪いたい…………!

 

 

どうしよう、心が痛い。

 

 

「ソウジさん、どうした?」

「のわっ!」

 

 

急に後ろから声をかけられてビックリした。

ホエールさんだった。あー驚いた。

 

 

「ホッホッホッ、わしの気配に気づかんとは。油断しておったな?」

「すみません、急に色々ありまして……。」

 

 

おたくの可愛い孫娘をセクハラしかけて、手を払われました。

なんて言ったら俺殺されるんじゃ……。

 

 

「まぁ、一部始終は見ておった。ソウジさん、大型モンスターの討伐に行くんじゃな?」

「見ていたんですね……。失礼しました。実は明日の朝から、バサルモスを討伐するクエストを受注しまして。」

 

 

見られていたらしい。

あぁショック。

我が人生第二の住まいと言っても過言ではないこの宿で、その店主と看板娘に嫌われてはもうやっていけないぞ。

 

 

「心配なさんな、ソウジさん。ドールがああなったのは、少しタイミングが悪かっただけじゃ。」

 

 

……タイミング?

俺が首を傾げていると、おじいさんが続けて言う。

 

 

「……少し来てくれるかの?」

「は、はい。わかりました。」

 

 

ホエールさんに付いていく。

そこは店の奥。二人の居住スペース兼事務所のようなところだった。

 

おじいさんは徐ろに、ブレスレットのような物を持ってきて、俺に見せてきた。

金属製のそれは、宝石のような青い石が数個くっついていて、女性がつけるには少し無骨な造りだった。

 

 

「これは……?」

 

 

すごい装飾品、というのが分かる。

放つ雰囲気が凄まじい。

何かしら曰く付きの一品なのかもしれない。

 

しばらく眺めていると、ホエールさんがゆっくりと話し始めた。

 

 

「これは、わしの倅の形見じゃ。」

 

 

倅ってことは、息子?

それってつまり……。

 

 

「……ドールの父親の形見、とも言えるの。」

「それは……。」

 

 

知らなかった。言葉が続かない。

ホエールさんが、重い口を開き始めた。

 

 

「……息子は、村で一番のハンターじゃった。ワサドラが、ここまで発展しておらんかった頃、まだまだモンスターはうようよと周りにおってのぅ……。そんなモンスター共を、息子はソロで何頭も仕留めてきおった。村の男たちが束になっても勝てないような、そんなモンスター共をな。」

 

 

おじいさんは、心底誇らしげに話す。

 

生息圏を賭けた、人間とモンスターの戦いということだろう。

開拓地は、ある意味モンスターとのせめぎあいで、恐ろしい数のクエストが舞い込むと、教官に聞いたことがある。

 

 

「バサルモスやイャンクック、テツカブラにアオアシラ。村のそばに現れた、と聞いたらすぐさま対処する。誇らしかったのう。そのうち結婚し、ドールが生まれた。そんな矢先じゃ………あの怪物が現れた。」

 

 

そう言うと、ホエールさんは戸棚から、ドス黒く鋭利で平たい石の様なものを取り出した。

 

 

「暴食竜、イビルジョー。この黒いのは、そやつの鱗での。」

「イビル、ジョー……。」

「……第一級災害指定種に指定されておる、正真正銘の化け物じゃ。」

「……息子さんは、そのイビルジョーに?」

「ああ、食われた……のかもしれん。確かかなことは何も分からん。ただおびただしい量の血と、装備品が見つかった。」

「…………。」

「観測班も確認はしておらん……ハンターズギルドに正式に登録されてもいない、村付きのハンターじゃ。こうした末路は、必然じゃったのかものぅ……。」

 

 

食われたのか、とは聞けなかった。

あまりに残酷すぎるから。

 

 

「明日は……倅の、ドールの父の、命日じゃ。」

「えっ……。」

「……色々考えてしまったんじゃろうの。」

 

 

奇妙ではあった。

二人だけで宿を経営する姿が。

 

どこか無意識に、聞かないように、知らないようにしていた。

藪をつついて蛇を出すようなことは、したくなかったから。

 

 

「ソウジさん、さっきも言ったがあまり気になさんな。ドールにも、わしから言っておく。」

「ホエールさん……。」

「……ドールは、お前さんのことを、慕っておる。まるで父のようにな。…………倅に頭を撫でられた記憶は、今も鮮明に残っておるそうじゃ。」

 

 

すまない、と謝るのは簡単だ。

 

でも、それは違う気がする。

 

俺だって、ドールに好意を向けられて嬉しかった。

男女のそれとは違う、家族のような好意。

 

温かく、それだけで辛い講習にも耐えられた。

 

 

知ってしまった。

ドールの悲しみを知ってしまったから。

 

 

俺は、負けられない。

 

 

「ホエールさん。」

「……なんじゃ?」

「おれ、負けません。強くなりました。胸を張って、ドールにただいまと、言ってやりますよ。」

 

 

俺なりの決意を口にする。

 

 

「ホッホッホッ!心配はいらんようじゃな!……すまんの、ソウジ君。お前さんなら、話しても良いと思った。まぁ、あのマショルクも一緒じゃろ?滅多なことにはなるまいて。」

「はい。でも、俺はソロでやり遂げるつもりです。」

「ふむ。……ええの、ソウジ君。頑張ってきなさい!」

「……はい!」

 

 

おじいさんに背を向けて、部屋を出る。

 

大きな決意を胸にして。

 

 

「俺は、絶対に負けない。」

 

 

口にすると同時に、改めて気合を入れ直した。

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