モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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26武具の最終点検をお願いしましょう。

「セツヒトさん、いますかー?」

 

 

武具屋にやってきた。

ポーチの中身を補充するため、雑貨屋に寄った俺は、あらかた不足のアイテムを購入した。

 

そして最後に、セツヒトさんの店にやって来た。

ここで武器と防具を見てもらおうと考えたからだ。

 

と言っても、俺のポーチにはクリーンアップされるギフトが付いているので、見た目にはあまり問題はない。

だが念の為、というやつだ。

人事を尽くす。

 

 

実は教官とも、この店に何度か訪ねたことがあるのだが……。

 

 

「ソウジ君は手入れがよくできているからな!問題ないだろう!私は、さ、先の喫茶店で待っているから、見てくるといい!それでは!」

 

「お?今日は雑貨屋でセール中か!私はそっちを見てこよう!ソウジ君はゆっくりとしていくといい!それでは!」

 

 

とかなんとか言って、どこかに消えてしまうのだ。

 

せっかく武器や防具の種類や、手入れの仕方を教えてもらおうと思ったのだが。

おそらくセツヒトさんと、昔何かあったのではないかと思う。

 

なので、俺にとって武具関係の師匠は、実質セツヒトさんということになる。

 

 

「セツヒトさーん。入りますよー?」

 

 

一応断ってから店を開ける。

店なのだから、勝手に入ってもいいとは思うのだが。

ドアには「開いてるよん」って木札がかかってるし。

 

何だこの木札……裏には「おやすみなさーい」って書かれている。

 

……力が抜ける……。

 

 

「ごめん下さーい。武具の点検に来ましたー!」

「あーはいはーい。ちょっとまってねー。」

 

 

店の奥から声がした。良かった、いた。

この人、気分で店閉めちゃうから、不安だったのだ。

 

時刻は夕方。

「おなかすいたー」とかなんとか言って、閉められてもおかしくない時間だ。

 

 

「ソウジだー。なーんか久しぶりー。」

「お久しぶりです。何かやってました?忙しいならまた今度来ますが。」

「だいじょーぶ。今終わったからね。……何してたか気になるー?」

「いいえ、気になりません。」

「えー、ソウジ最近冷たいなー。おねーさん寂しいぞー?」

 

 

セツヒトさんはことあるごとに俺をいじってくる。

俺が女性に慣れてないのを分かってて、その辺をいじってくるので、質が悪い!

しかもドキドキしながら、いじられて多少喜んでいる自分が、なんとも情けない……

 

おっさんハートは純情なのだ。

 

……要件はさっさと済まそう!

 

 

「実は明日、クエストを受けることになりまして、武具の点検をしてほしいんです。」

「おー。ついにクエストだ。おめー。で?何系?採取?運搬?んー、小型の討伐もありうるかなー?」

「……バサルモスですよ。」

 

 

沈黙。

 

 

「……んー?なんて言った?」

「……バサルモスの討伐です。明日朝から三日間。教官は付きますが、ハンター試験と兼ねて、行ってきます。」

 

 

セツヒトさんは、珍しく両目とも開いたままだ。驚いている。

そりゃそうだ。

 

 

「……そかそか。ソウジは早いねー!もう大型かー!」

「そうなんです。自分でも驚いてますよ。なので、双剣の―――」

「教官は誰?」

「えっ?」

 

 

急に真顔にならんといてください。怖いっす。

 

 

「教官は、誰ー?」

「えー、えっと。」

「んー、いやねー?最近メキメキ力を付けていくソウジは、ホント嬉しくてねー?もう私としてはー?可愛い可愛い弟のようなのさー。でも、一ヶ月で、たった一ヶ月で大型モンスターの討伐に行かせるのは、ちょーっとどうかなーってね?せっちゃんさんは思うわけー。わかるー?」

 

 

アカン。

なんだか急にセツヒトさんの雰囲気が、恐ろしいものになった。

可愛がってくれるのはとても嬉しいのだが、このままではギルドに文句を言いに行きかねないぞ。

 

それにここで名前を出しては、教官もただでは済まない気がする。

 

 

「ま、待ってください、セツヒトさん―――」

「せっちゃん、でしょー?」

「せ、せっちゃんさん!俺は大変教官にはお世話になってましてですね。そのプライバシーと言いますか個人情報をおいそれと言うわけには―――」

「教官はー。…………だれ?」

 

 

そう言うや否や、セツヒトさんは顔を至近距離に近づけて目を離さない。

うわあめっちゃ美人!そして目で殺される……!!

 

 

…………すんませんマショルク教官。

 

 

この人に隠し事は無理です…………。

 

 

「まっ、……。」

「まー?」

 

 

天井を見上げて目を瞑り、覚悟する。

冷や汗が止まらない。

 

 

「マショルク教官です……!」

「…………んー?」

 

 

……。

 

 

沈黙。

 

 

 

「わーぉ…………。流石に予想外。」

 

 

セツヒトさんは俺から離れると、受付にあったイスにゆっくり腰掛ける。

そしてなにか考え事をするように、右手を顎にかけた。

 

 

「……お、お知り合いですか!?」

「んー、んんっとねー。説明が難しいんだけどー………敵?」

「……な、なるほどー。」

 

 

すんませんマショルク教官。

弟子は今、師匠を売ってしまいました。

目の前の銀髪美しい女性に。

 

お許し願いたい。

 

 

しかしどうやら、今から殴り込みに行こうとか、そんな剣呑な雰囲気ではなくなった。

 

 

「しかしアイツが教官ねー。どーゆー風の吹き回しー?…………まーでも、昔から見る目はあったからねー。」

「……えっと。せつひ――せっちゃんさん。」

「あー、ごめんねー。ソウジに何かしようってんじゃないから、安心してねー?武具の様子、見るから出してみー?」

 

 

いつもの口調に戻ったセツヒトさんは、俺から装備と双剣を預かると、点検を始めた。

おしゃべりが好きな人なのに、いたく真剣に武具の点検を進めていく。

 

俺はすることもなく、なんとも気まずい雰囲気の中、店の中の武器を眺めていた。

 

 

 

15分ほどして、セツヒトさんから声がかかった。

 

 

「おまたせー。いやー、ソウジはしっかり手入れしてるねー。新品みたいで言うことないわー。」

「あ、ありがとうございます。」

 

 

ほぼポーチのおかげなんだが。

 

 

「うんうん。おねーさん嬉しいぞー?大切にされている装備、愛を感じるね。」

「ははは……。きょ、教官の指導が良かったのかも?なーんて。」

「あはははは…………チッ。」

「……す、すごい嫌ってるんですね。」

 

 

こんなあからさまに態度に出す?

目が笑っていない。

 

舌打ちをかますところが教官と似ていますね、なんて。死んでも言えない。

ますます過去に何があったのか気になる。

 

でも今日は聞くのはやめておこう。

絶対ろくなことにならない気がする。

 

 

「……まー、切り替えてー。」

「は、はい。」

「とりあえず、このままクエストに行って問題なっしんぐー、ですよ。しいて言うなら、ちょーっと斬れ味がー、心もとないかなー?」

「この剣じゃ厳しいですかね?」

「んー。バサルモスはねー、とにかく固いのさ。だから、近接武器はあくまで陽動で、遠距離組が、こうバコバコーって削る感じ?」

「そこなんですよね。弱点の腹部は狙うにしても、刀がすぐダメになりそうで。あ、砥石はたくさん用意してます。」

 

 

双剣のよさは手数。教官にみっちり教え込まれた。

そして攻撃を行うと、武器の斬れ味が下がる。

つまり双剣は、斬れ味が悪くなりやすい武器と言える。

 

なので戦闘中、時には危険な中、何回も刀を研ぐ必要がある。

 

 

装備のスキルに<砥石使用高速化>があるとはいえ、攻撃が止まる機会はなるべく少なくしたい。

 

 

「んー。よぅくわかってるねー。やっぱりソウジはいいねー。」

「相手の特徴を知らないと、戦略は立てられませんからね。そう教えられました。」

「いい教官やってるなー、アイツ。むかつくけどー。」

「ははは……。」

 

 

いかんいかん、教官の話はしないようにしたかったが、俺の今のハンターとしての礎は、間違いなく教官の講習のおかげ。

どうしても、話に上がってしまう。

 

 

「じゃあさー、明日の朝だっけー?それまで、この武器預かっていーい?」

「えっ?……なにをなさるおつもりですか……?」

「んふふー。可愛い可愛いソウジのために―?おねーさんが一肌二肌脱いであげようかなってねー?」

「それは……。」

 

……。

 

いかんいかん!やらしいこと考えている場合か。

 

 

「お、何か別の意味で、期待してなーい?」

「し、してません!」

「うそつけー。お顔真っ赤にしてー。」

「はい嘘ですちょっと違う意味に捉えましたごめんなさい。」

「うわー。ソウジやらしーねー。」

「もう勘弁して……。」

 

 

今日も今日とてからかわれた。

 

 

「まー冗談は置いといてねー。明日の朝までに、武器の斬れ味上げておくよー。」

「えっ?可能なんですか!?」

「うん、かのーかのー。まあ料金は……結構いくけど。」

「ぐっ……でもそれは、しょうがないかも……。」

「まー後払いでもいいしー?それともー?体で払ってもらおうかなー?」

「後払いでお願いします。」

 

 

きっぱりと断ってから、おれはポーチをふれて残り所持金を確認する。

5000z。残り銀貨5枚ほどか。こりゃ無理だ、稼がなければ。

 

 

「それともソウジ、違う武器とか装備もってない―?」

「えっ、まあありますけど。」

「あるんだ。それ、買い取ってもいいよー?」

「ホントですか?」

「うん、流石に今持ってくるのは大変だろうから、クエストの後にでも持ってきてー。精算してあげるよー?」

「助かります!」

 

 

実はポーチの中にある大量の武器。

これが売ることができたら、少しはお金になるのでは、と思っていた。

 

今すぐ出したら不審に思われること間違いないので、次回に清算ならありがたい。

 

 

「じゃ、今日はゆっくり休んでおきなー?モンスターは寝かせてくれないぞー?」

「はい、ありがとうございます。お言葉に甘えます。」

「うんうん、よろしー。じゃ、明日朝車乗り場の前に持っていくねー?」

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

こうして、セツヒトさんは俺の双剣を手にすると、「まかせてー」と言って、奥の工房に入っていった。

俺も付き合いましょうか?とか言おうと思ったが、「そんなに私と一緒にいたいのかなー?んー?」とかなんとかからかわれそうなので、そっと店を出る。

 

 

日も沈みかけ、宿に戻ることにした。

 

 

「あっ。」

 

 

そういえば。

明日朝ガーグァ車乗り場の前って。

 

教官と鉢合わせになるんじゃ。

 

 

……。

 

 

よし決めた!

 

 

「スキル!なかったことに!」

 

 

こうして、何の解決にもならないスキルを発動した俺は、教官にそっと心の中で謝っておくのだった。

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