モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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28リベンジしましょう。

ガーグァ車に揺られること、1時間ほど。

 

俺とマショルク教官は、岩山地帯にたどり着いた。

 

御者のおじさんは俺たちを降ろした後、「ご武運を。」と渋い一言と共に、村に戻っていった。

 

これで、帰りのネコタクチケットを使うまで、基本的に村に戻る手段は無いということか。

 

乗り場の横は、簡易的なテントと休憩するスペースが用意されている。

ここは安全地帯なのだろうか。疲れたら休むこともできるらしい。

 

アイテムを入れるボックスも用意されており、中には簡単な道具類が入っていた。

まぁ結構な道具類を用意してきたので、必要はなさそうだが。

 

 

「ソウジ君!ここから私は一切の口出しができない!自分の力でモンスターを倒すのだ!」

「サーイエッサー!」

 

 

そう言うと教官は近くで一番高い岩山まで走って行ってしまった。

……速すぎるって。人間辞めてんなー、あの人。

 

まぁ気にしないことにする。

 

 

「落ち着いていこう。」

 

 

自分に言い聞かせるように、つぶやいた。

 

 

ようし、まずはバサルモスの姿を確認するか。

バサルモスは擬態が得意だ。

逆に言えば、岩がゴツンと飛び出ている、そんなオブジェをしらみつぶしに調べていけば、バサルモスにたどり着くことができるはずだ。

 

 

……そして正直に言おう。

情報画面のマップには、すでにバサルモスの位置が分かるようになっている。

 

 

自分の位置が赤く点滅しており、大型モンスターは緑色。

うーん、やはり恐ろしいぞこの情報画面。

クエストに来ると、その便利さ、もといおそろしさが分かる。

 

その他にも、<採取アイテム>というタブに合わせると、採取アイテムのある場所がピンク色で見える。

 

……このマップがあれば、金儲けとかすぐできるのではないか……?

 

と、とりあえず、教官に教えてもらった方法でバサルモスを探りながら、マップに表示されている表示に間違いはないか、確認してみよう。

 

 

「よし、出発!」

 

 

俺は周囲の警戒を怠らないようにしながら、進んでいった。

 

 

*  * * * * *

 

 

「……いた。」

 

 

バサルモスを発見した。

 

発見したのはいいのだが。

 

 

「バレバレやんけ……。」

 

 

隠れる気はあるのか、あのバサルモスは。

<モンスター情報>によると、バサルモスは地中に潜ったりビームを吐いたりと、意外と器用なモンスターらしいのだが……

 

なーんの岩山もない地帯で、一つだけポツンと背中の岩石を出しているとは。

 

緊張感に欠けるが……。

 

 

まぁいい!ここから講習の成果を教官に披露するときだ。

多分どこかで見ているはず。

 

 

バサルモスに近づく。

地面から露出した背中。その奥、出現してくるであろう部分にシビレ罠を設置。

背中の横に大タル爆弾も設置。

 

 

まずは大タル爆弾で、バサルモスを地中から出す!

 

 

「せーの!」

 

……ドガァァァン!!

 

 

石ころを思いっきりぶつけて起爆する。

大タルでこの威力。やはりあの時の「大タル爆弾G」は威力おかしかったんだな……。

 

 

すると、地中からのそり。

バサルモスが、姿を現した。

 

だがここでひるまない。

この後すぐバサルモスは罠にかかるであろう。

その隙に弱点である頭部にある程度ダメージを与える、という算段だ。

 

 

さーてここから双剣の出番だ!

 

バサルモスがシビレ罠にかかる。

 

 

「ウォォォォ……!!」

 

 

動けなくなるバサルモス。

前も見たけどこいつ顔厳ついよなあ……。

 

 

剣を抜いて、構える。

あの時とは違う。今はこの武器を手にしている。

 

 

「鬼人……乱舞!!」

 

 

何か中二病みたいなことを叫びながら、双剣の乱舞を、バサルモスの頭部に集中させる。

使わせてもらいます!セツヒトさん!

 

 

(『双剣は手数の武器!一太刀一太刀丁寧に素早く!回転を上げれば、他の武器を圧倒する性能がある!』)

 

 

あの時の教官の言葉を思い出す。

 

 

「うおおおおおおおお!!!!!!」

 

 

叫びながら、確実にダメージを削っていく。

 

(すごいぞ、この双剣……!固い敵なのに、弾かれることが全くない!!)

 

 

セツヒトさんが手渡してくれたハリケーンは、バサルモスの体に弾かれることなく、一太刀一太刀ダメージを与えられている。

これは助かる!

 

 

「ヴ…ヲオオオオオオオオオ!!!!!」

 

 

シビレ罠の効果が終わるや否や、咆哮を上げるバサルモス。

だが、その前の動作を見切った俺は、すぐさま離れて攻撃に備える。

 

 

「よっし!ふうううう……ここまでは順調!!」

 

 

むしろこれからだ。バサルモスが本格的に動き出す。

 

まずは…………突進攻撃だな!

ーーー遅い!教官の抜刀の方が、数百倍は速いぞ!

 

予備動作も大きく、難なく避けていく。

 

その間も目を離しはしない。

 

 

(『モンスターは必ず予備動作がある!初見のモンスターは、見極めることがすなわち攻略となる!目を離さない!』)

 

 

「サーイエッサ―!」

 

 

別に教官がすぐそばにいるわけではないのだが。

尋常ではないあの講習の日々が、今こうして生かされている。

それが、とても頼もしい。

 

続いて、バサルモスが全身を振り回して、薙ぎ払ってくる。

落ち着いて、()()()

薙ぎ払い攻撃は、振り回す方向を読めば、近くにいる方が避けやすい。

これは<モンスター情報>で確認済み。

 

 

中々攻撃が当たらない俺に業を煮やしたバサルモスは、ついに例の攻撃に移った。

そう、俺がトラウマになった、あの怪獣ビームだ。

 

あの時は、そのトンでも威力に度肝を抜かれてしまった。

 

だが今はどうか。

体力にも十分余裕がある。

斬れ味にも注意してみるが、まだ問題はない。

 

常々、あの攻撃にどう対処すればよいか考えていた。

試してみたい。

そう考えた俺は、あえて攻撃を誘導した。

 

赤くなるバサルモスの体。首が震える。

ここだ、このタイミング。

 

 

「グ…アアアァァァァァァァァ!!!!」

 

 

ついにビームが発射される。

その寸前。

俺は斜め前に転んで回避した。

 

 

「よっしゃ!成功!」

 

 

ずっと考えていたのだ。ビームと俺が形容してしまったのは何故か。

それは、ビームがまっすぐ飛ぶ光線だと、認識しているから。

ならば、ビームを出すタイミングで避けてしまえばいいのではないか。

 

予想は見事に的中した。

そしてそれはすなわち、

 

 

「隙ありぃぃ!」

 

 

ビーム攻撃中から攻撃後にかけて、がら空きになった腹部に、もう一度「鬼人乱舞」をぶちかます。

 

するとバサルモスは、まるで燃料切れのロボットのようにガタガタしたあと、腹部をさらして転がった。

 

 

(これは……チャンス?)

 

 

ここで一気に叩こうと考える。

しかし、またしても教官の声が、頭の中で響く。

 

 

(『双剣は、特に気を配るべき部分が多い武器だ!乱舞や回避で、スタミナは削られ、手数が多い分斬れ味も落ちやすい!常に確認を怠らないように!』)

 

 

「サーイエッサ―!」

 

 

よく見れば、双剣ハリケーンの青かった刀身は鈍色になり、俺自身も興奮して息も少し上がっている。

 

まだ狩猟は始まったばかりだ。

 

ここは……。

 

「離脱!」

 

 

俺は足早に、少し遠めの岩山の上に身を潜めた。

岩山を昇るのは、全く苦じゃない。

教官に、つるっつるの滝の壁を昇らされた時に比べれば、なんてことはない。

 

 

「グアアァァァァァァ!!!!」

 

 

「アイツどこ行ったんや!許さへんでえええ!」とでも言いたげな咆哮。

 

すまん。バサルモス。休戦休戦。

 

 

また油断してくれたら、狩猟再開するからさ。

 

 

* * * * * *

 

 

「ヤッ!ハァ!……よっと!」

「ガァ!グア……ガァァァ!!」

 

 

バサルモスの一撃一撃を避けながら、確実にダメージを重ねていく。

あちらはだいぶ疲れていると思う。

こっちはまだ余裕がある。でも油断はしてはいけない。

 

 

(『手痛いしっぺ返しは、討伐寸前に起こるものだ!決して最後まで、油断しない!常に慎重に!』)

 

 

「サーイエッサ―!」

 

 

絶対に油断しない。

とか何とかいいながら、実はさっき2回ほど、しっぽの振り回しに当たってしまっている。

動きが分からないまま突撃するからだ……教官。すみません。

 

しっぽが当たった腹と頬がめっちゃ痛い。

でも痛いのは慣れているんだ。

 

教官の腕の強さに比べれば、これぐらいの痛み、へっちゃらだ。

 

 

反省はすぐに生かす。

 

着実によけ、確実にダメージを稼ぐ!

 

 

「閃光玉!」

「グアァァ!!?」

 

 

閃光玉は、絶命の瞬間にとてつもなくまぶしく光る「光蟲」を使用したアイテムだ。

モンスターがひるみ、少しの間だけ視界を奪うことができる。

 

その隙に、「砥石」で斬れ味をもどしつつ、「携帯食料(おにぎり)」を「回復薬」でがぶ飲み。

うぇぇ……合わない!まずい!

まずいけど……耐える!

 

 

徐々に視界が戻っていくバサルモス。

だがその寸前に、奴の懐に潜り込む。

 

 

「くらえ!」

 

 

二刀の斬り下ろしからの振り上げ、回転切りの連続技をお見舞いする。

すると、ついに腹部の皮が破れ、赤い皮膚がむき出しになった。

 

 

「弱点!ここだ!」

 

 

狙いを一点に変え、集中して腹部を攻撃する。

たまらずひっくり返るバサルモス。隙だらけ。

 

 

斬れ味、よし。体力、よし。

いける!

 

 

「鬼人……乱っ舞ぅ!!!!」

 

 

鬼人乱舞を決める。終わった後も攻撃は止めない。

突進連斬からの斬り上げ、同時振り下ろし……と連続技を決めていく。

 

 

「グ……グオォォォォ……。」

 

 

ズゥン……。

 

 

「はあっ……はあっ……やった、のか?」

 

 

びくとも動かなくなったバサルモス。

念のため触ってみるが、何の反応もない。

 

 

「や、やったぁぁぁぁ…………!」

 

 

その場に座り込む。

 

バサルモス、討伐完了だ。

 

 

正直に言おう。

 

意外とイケた。自分がかなり強くなってることがわかった。

 

あの時と同じ敵だからこそ、思える。

俺は、力がついた。体力がついた。

剣の技術が、ハンターの技術がついた。

がんばったと、胸を張って言える。

 

だからこそ、嬉しい。自分の成長が。

 

 

そして。

 

 

「バサルモス。ごめんな。お前に罪はないよな。」

 

 

息絶えた目の前のバサルモスを見ながら、つぶやく。

 

モンスターは、ただそこに生きているだけ。

これは、人間が生息するための、ただそれだけのための狩猟だ。

 

 

「……お前を倒したこと。忘れない。そしてその命、無駄にはしない。」

 

 

証明部位である腹膜を剥ぎ取る。

普通はモンスターの耳やらしっぽやら爪やら、数が少ない部位をギルドに持ち帰ることになっている。

だが、バサルモスは固い。

唯一普通の刃でも通りそうな腹膜が、証明部位なのだそう。

 

 

喜びと、命を頂くその行為に、何とも微妙な気持ちでいた時。

 

後ろの岩山から、マショルク教官が飛び降りてきた。

 

 

「ソウジ君!!!よくやったな!!!!これで君も正式なハンターの一員だ!!!!」

「は、はい!ありがとうございます!」

「驚かされっぱなしだったぞ!討伐時間も4時間半!素晴らしい腕前だ!!」

「教官……教官、俺、感謝します。」

 

 

狩猟中浮かんできたのは、きつかった講習の日々で叩きこまれた、教官の教えだった。

あの言葉がなければ、狩猟成功は無かったかもしれない。

 

 

「感謝だと!それを言うのはまだ早いぞ!」

「えっ?」

「ギルドに報告し、5体満足で『ただいま』と家に帰る。ここまでがハンターのクエストだ!忘れてしまったのかな!?」

「……サーイエッサ―!申し訳ありません!」

 

 

そう、それも教官の教え。

いのちをだいじに、だ。

 

絶対に生きて帰る。無様でも、途中で投げ出してでも、命を持って、帰る。

もっともハンターに大事な資質だと、教えてくれた。

 

 

「うむ!それでは信号弾を打つんだ!あとは解体等をギルドがやってくれる!それまで、休憩だ!」

「サーイエッサ―!」

 

 

信号弾はまるで発煙筒のようになっていて、空に発砲すると赤い煙幕が空高く上がるようになっている。

空目がけて、信号弾を放つ。

 

それは、お祝いの花火のようにも、バサルモスの弔いの礼砲のようにも見えた。

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