モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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29カミングアウトしましょう。

こちらが赤い信号弾を打ってから少しして。

 

ギルドの回収班が放ったと思われる青い信号弾が、南後方に上がった。

 

 

モンスターの亡骸は、即回収される。

小型モンスターが餌を貪りに来るからだ。すると必然、大型モンスターがそれを狙ってやってくる。

まだ狩猟者の気配が残っているうちに、ギルドの回収班がモンスターを解体し、ギルド支部まで持ち帰る。

ギルドにはそうした役割がいくつもあり、俺たちハンターはその恩恵を大いに受けている。

 

その費用の大部分は税金と寄付金、何よりこの大型モンスターの素材の代金で賄われている。

このシステムは画期的だと思う。

人々の暮らしは、正直言って前世よりも数世紀遅れている印象だが、ことハンターに関するシステムについては、よく考えられているな、と思わされる。

 

まぁ、自分の手元に残る素材はほんの少しなのだが、それを持ってもあまりある恩恵だと俺は感じている。

 

 

「さて!日もまだ高い!これなら今日中に村に帰れるぞ!素晴らしい狩猟スピードだったな!」

 

 

教官は先程から、今までで一番ではないかと思うほど褒めてくれている。

恥ずかしいし、なんだか照れくさい。

 

だが、心底嬉しい。

あの辛い講習の日々が、報われたのだから。

 

 

「これからそのアイルー……?のネコタクとやらに乗れば、夕方には間に合いますか?」

「あぁ!十分間に合うだろう!今夜は祝杯だな!私の奢りだぞ!」

「サーイエッサー!」

「よろしい!それでは初めのポイントまで私と競争だ!」

 

 

そう言って教官は、とんでもないスピードで最短ルートを進んでいった。

 

……お、追いつけるか!

 

仕方がないので、俺はマップを確認しながら、自分なりの最短ルートを突っ走ることにした。

 

 

「あの人に追いつくにはまだまだ特訓が必要だな……。」

 

 

* * * * * *

 

 

ネコタクが来るまでには、早くてもあと一時間はかかるらしい。

どういう仕組みかはよくわからなかったが、討伐完了を終えたハンターのいる休憩ポイントに、そのアイルーのネコタクがやってくるらしい。

 

あとはそのアイルーにネコタクチケットを渡せば、村まで連れて行ってくれるという。

 

……アイルーってすごく便利なんじゃないか?

帰ったら色々調べてみよう。

 

そんなことを考えていると、教官から声がかかった。

 

 

「さて!ソウジ君!無事公認のハンターになった君に、伝えておきたいことと聞きたいことがある!そこに座ってくれたまえ!」

「サーイエッサー!」

「もうその返事も必要ないぞ!これからは私と同格の、プロとして働くのだからな!」

 

 

それもそうか。

 

 

……そうなのだが、何だか心がそれを許してくれない。

 

 

「……教官は、俺にとっていつまでも教官です!いつか肩を並べられる時まで、このままでいようと思います。」

 

 

俺にハンターのイロハを叩き込んでくれた恩は、いくら感謝してもしきれない。

……俺にとっての教官は、マショルク教官、ただ一人だ。

 

 

「……うむ!そうか!ならば、好きにするがいいさ!」

 

 

見たこともないいい笑顔で答える教官。

その笑顔を見れて、改めてクエストをクリアしてよかったと思った。

 

 

「伝えることは2つ!まず1つ目!……君はこれから様々な大型モンスターと戦うことになる!だが、基本は同じことだ!相手を観察し、己のすべてを叩き込む!今回の様に、決して準備を怠るんじゃないぞ!」

「サーイエッサー!」

「良し!そしてもう1つ!……死なないことだ!命があれば、また戦える!例え無様でも卑怯でもいい!生きて帰るんだ!それが最も、ハンターとして大切な資質だ!」

「……サーイエッサー!」

 

 

これは確認に過ぎない。

だが改めて教えてくれる。

とても大切なことだから。

 

口を酸っぱくしてもなお、俺に言い続けてきたこと。

決して忘れない。

 

そして、そのことを改めてこの場で言うということは。

つまり。

 

 

「……私の講習は、以上だ!」

 

 

ここで、マショルク教官の教えは、終わりだということ。

 

 

「…………ありがとうございました!」

 

 

万感の思いを込めて、礼を言う。

感謝を忘れず、ハンターを極めていこう。

 

 

「いい顔だな!なに、また会うことがあれば、いつでも相談に乗る!迷ったら、また私を頼るといい!」

「サーイエッサー!」

 

 

寂しい。

けど、悲しくはない。

 

繋がりは切れない、講習は短い間だったが、まだまだ教官との付き合いはありそうだ。

 

 

「そして……聞きたいこと。これはソウジ君のプライベートに関わることだ。答えたくないなら、答えてくれなくてもいい。いいな!」

「さ、サーイエッサー!何でありますか!?」

 

 

勢いが少し弱まり、真面目トーンで話す教官。

こちらも構えてしまう。

 

 

「あー。なんだ。その……。」

 

 

教官らしくない。

そんなに聞きにくいことなのか。

 

 

「……教官?」

「うむ。……。」

 

 

沈黙が怖い。

何だろう、何かやらかしてしまったのか。

 

 

「……すまない!私は、このような性格だからな!単刀直入に聞こうと思う!不愉快なら、黙っていてくれて構わないぞ!」

「は、はい!」

 

 

もしやセツヒトさんとのこと?

……いや、それはどちらかというと、教官のプライベートだ。

 

 

だとしたら何だ。

 

 

「ソウジ君!君は……。」

 

 

思わず構える。

何を聞かれるのか。わからん。

 

 

 

 

「君は、何故…………実力を隠している?」

「……………………えっ?」

 

 

沈黙。

 

 

「…………いや、勘違いだったら本当に申し訳ない!ただ、なんと言えばいいのか!私の直感としか言えない!君は、君には、何か凄まじいまでの力を感じるのだ!」

「…………。」

「出会った時。最初に私の攻撃を避けた時。正直に言おう。……寒気がした!古龍を目の前にした時とはまた違う、得も言われぬ寒気が!」

 

 

教官は。

 

 

教官はもしかして。

 

 

 

無意識に、俺のギフトに気付いているのか?

 

 

 

百戦錬磨。一騎当千。

そんな、右に出る者はいないであろう達人の域にいるからこそ。

 

 

俺から、女神の恩恵を受けた俺から、その雰囲気を感じ取ったのでは。

 

 

「教官……。」

「ソウジ君。教えてはくれまいか?その凄まじいまでの実力を。セツヒトには言ってしまったが、おそらく君は、私やセツヒトよりも強い。そう確かに感じたのだ。」

 

 

……教官は、不器用なのだ。

 

恐ろしいほどに鈍感で天然。

だが、とても優しい。

 

 

今だって、俺を思って、苦手な気遣いをしてくれている。

 

 

俺はどうだ?

教官に感謝している。

恩を感じている。

 

俺は黙ったままか?

……それでは義理が無い。

 

 

 

 

…………教官には、すべてを話そう。

 

 

 

 

そう、決意した。

 

 

 

「……教官、ありがとうございます。気を使っていただいて。」

「なに、そこは問題ない!」

「…………教えます。俺の全てを。」

 

 

打ち明けよう。

教官は、俺の教官なのだから。

 

 

* * * * * *

 

 

「まずはじめに。俺は、この世界の人ではないです。」

「……な、なんと!」

 

 

俺は全てを打ち明けた。

この世界の人間ではないこと。

情報画面というギフトを、女神様からもらったこと。

実力をつけるために、敢えてそれを隠していたこと。

 

それら全てを、打ち明けた。

 

 

「と、いうわけなんです。」

「……ふむ。」

 

 

教官は、分かっているのか分かっていないのか、その中間の顔をしながら相槌を打つ。

 

 

 

「で、でも!実力をつけようとしたのは本当なんです。本当にズブの素人だった。でも、やろうと思えば調合もアイテム採取も簡単にできるこのギフトは、俺には余りあるもの。ギフトを使うと、何だか……味気なくて。」

「……剣技はどうなのだ?その……<操作方法>とやらを使えば、君は剣をかなり振るえるのだろう?」

「そこは、一切使ってません。誓って言えます。バサルモスを倒せたのは、教官が、1から俺にハンターのイロハを教えてくれたからです。」

「…………そうか!」

 

 

何だか、教官を騙していたような気分になる。

でも、嘘はない。

 

回復薬グレートを調合したときも、「何だか味気ないな」と思って、自分で頑張った。

だから作れるようになった。

 

その達成感がたまらなく嬉しくて。

 

だから、頑張ってきた、と思う。

 

 

……と言っても、モンスターの位置把握とか、弱点とか、その辺は頼ってしまったしなぁ…………。

 

胸を張って、「小細工一切なしです」なんて、とても言えない。

 

 

「だから、実力を隠しているわけではないんです。むしろ実力がないからこそ、頑張れたというか。……わ、わかります?」

 

 

……教官の眉間に、しわが幾重も出来ている。

がんばって考えてくれている……のかも知れない。

 

 

「……よし、分かった!ソウジ君!」

「……えっ?理解してくれたんですか!?」

「いや!異世界とか女神とか画面とか正直良くわからんし、どうでもよろしい!」

「いいのかよ!」

 

 

よくないだろ!

結構決心してカミングアウトしたつもりだったのに!

 

 

「その様々な情報とやらは、正直言って、調べればすぐわかるものだ!何らズルいとは、私は思わない!そんなことより、その剣技が気になる!」

「さ、さいですか。」

「さぁソウジ君!私にその『ぎふと』とやらの剣技で、打ち込んできたまえ!」

「…………えぇえ!?」

 

 

何と。

正直怒られると思っていた。そんなズルをしていたとは!みたいな。

 

なんでワクワクした目で俺を見つめるのですかマショルク教官。

 

 

「きょ、教官?怒らないんですか?私はズルをしていたようなものです。」

「ん?なぜだ!持ちうるものを最大限駆使して戦うのがハンターだ!それに先程の狩猟は、私が教えたことをしっかりと身に着けた、弟子として完璧なものだったぞ!これを褒めずして何が教官か!誇りこそすれど、怒りなど微塵もわかない!」

 

 

…………何だろう。

 

めっちゃ褒められてる。

 

嬉しくて照れる。

教官も照れてる。

 

 

いい年した男同士で照れている。

…………いやキモいわ!

 

 

「うむ!いい年した男同士照れあって!キモいな!」

「わざわざ口に出して言わないでください!」

「まぁよい!さぁソウジ君!君のその力とやら、見せてみたまえ!」

 

 

どうしよう。

 

この人本気なんだよなぁ…………。

 

…………仕方がない。教官が望んでいるんだ。

 

 

 

俺は、ポーチに触れ、情報画面を起動した。

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