(情報画面……ハンターノート……あった、<操作方法>……。)
何か久々にこの画面に触れる気がする。
女神さまに、新たな武器種の<操作方法>の習得は止めるように言われてから、すでに一ヶ月経ったのか。
ついに大型モンスター討伐を果たしたんだが、神様達はどんな反応だったんだろう。
……まぁいいや。そっちは本当に気にしなくて。
今は目の前に集中しよう。
なぜなら、尊敬する師匠と、今から斬り合うのだから。
……字面だけ見ると非常にクライマックスな感じがするが。
使用するのは木刀だ。だって無事にクエスト終わったのにケガするとかアホみたいじゃないですか。
教官の知的好奇心を満足させるための、まあエクストラみたいなもんだ。
うん、それぐらいの気持ちで臨もうか。
「教官!何をしましょう!」
「よぅし!まずは、私が剣撃を受けるだけにしよう!思いっきり打ち込んで来い!」
「わ、分かりました!」
と言われても。
<操作方法>を見る。以前見たときと同じ……いや、なんか増えてる!?
双剣は、主に通常時と鬼人化時の二つの状態で攻撃が変わる武器だ。
斬り払ったり、斬り上げたり、回転して斬ったり、それを二刀を駆使して連続してダメージを加えていく。
これが基本。
なのだが、項目に<鬼人化【獣】>や<空中回転乱舞>、<鉄蟲斬糸>に<???>などが追加されている。
後半二つはグレーになっていて選択できない……???って、そもそも何だろう……開放するのは……まずいんだよなぁ。止められているし。
「ソウジ君!どうした!何かまずいことでもあったのかな!?」
「いえ!すみません!じゃあ勢いのある鬼人突進連斬からいきます。」
「うむ!こい!」
鬼人化を行い、構える。
そして<操作方法>から<鬼人突進連斬>を選択する。
その直後。
まるで自分の体ではないような感覚に包まれる。
と、同時に。
低くなる姿勢。
体重移動をしながら、俺の足は滑らかに前に進む。急加速して細かく右左とステップを踏み、腰の捻転を加える。
そして勢いの乗った回転そのままに、教官の構える先に、木刀の切先が向かう。
当たる瞬間、脱力していた腕の力を一気に開放。
まるで鞭のようにしなった俺の双剣が、教官に何度もぶち当たった。
「ぬ!!ぬおおおおおおぉぉ!!!!!!」
剣撃にとっさに反応する教官。
実は鬼人突進連斬は、勢いはあるもののそこまでダメージは与えられない。
肝は、連撃を加えつつ相手との距離を詰められるその便利さにある。
はずなのだが。
<操作方法>参照の鬼人突進連斬は、俺が今まで練習してきたことを嘲笑うかのように、とんでもない一撃を教官にお見舞いした。
「フッ!!!!!」
三度目の回転で振りぬくと同時に。
教官が勢いを殺しきれず後ろに転げる。
そしてそのまま、休憩所のテントに激突した。
バキバキ!!ガシャガシャーン!!ベキベキ!!
テントが壊れた……!!
ていうか!ていうか……!!
「きょ、きょうかーん!!!!」
まさか。まさかだ。
俺が鍛えてきたからなのか。
以前<操作方法>を使用した時より、明らかにスピードもパワーも段違いだ。
だから見誤った。
まさかここまでとは。
「きょ、教官!無事ですか!!?」
「……。」
テントの布、カンバス生地の白が、破壊された骨組みの上でぺしゃんこになっている。
その上で尻をつきながら変な姿勢で倒れる教官。
呆然としている。
俺も、教官も。
「きょ、教官?」
「ふ……ははは……。」
「大丈夫ですか!?教官!?」
「ははは、ハーーーハッハッハッハッハッハッ!!!!」
笑い飛ばしている。
幸いケガなどは無いようだが。当たり所が悪かったのか……。
「素晴らしい!素晴らしいぞソウジ君!」
「……えっ?」
「ここまで完璧な剣撃!体重に遠心力を加え、さらに足の踏み込みも重ね、ここまでの威力を出すことができるとは!双剣の一発がここまでとは!恐れ入る!!」
「……無事そうで何よりです。」
よかった、生きていた。
というかピンピンしてらっしゃる。
「…さあ!ソウジ君!次は連続技だ!連撃で来たまえ!!」
「ええええ!?まだやるんですか!?」
「当たり前だ!ここまで来たら、全ての技を確認したい!!ハァハァ」
「もはやヤバい人にしか見えない!!」
ドMなのかこの人は。
マショルク教官に変な目を向けつつ、連続技をに向けて構える。
(鬼神化、突進連斬、逆手、2連、鬼神乱舞…………!)
「いきますよ!」
「あぁ!」
こうなったらヤケだ。
突進連斬を繰り出す。すでに自分の身がとんでもなく速く動いていることがわかる。
回転の遠心力、少しでもバランスを崩せば吹き飛びそうな勢いをこらえる。
勢いに乗った回転の乱舞は、しかし教官によって止められる。
「一度見た技だ!」
それでも俺は止まらない。というか止まれない。
一度プログラムされた連続技は、回避行動を挟まない限り続くのだ。
これは弱点にもなりうるので、やはり実践の経験は大事だと改めて思う。
「やぁぁあ!!!!」
逆手切り、踏み込む足で勢いに乗せ更に2連。
防ぎ切る教官。
だがまだだ。
「鬼神乱舞…………!」
目にも留まらぬ速さの剣戟を、自分が行っているという矛盾。
乱舞はもう止まらない。
双剣代わりの2つの木剣が、幾重にも教官に放たれる。
受け切る教官は何なんだすごいな!
最後に少し角度を変えるとその勢いをそのままに体を捻り、回し蹴りの様に頭の後ろから二刀を振り下ろす。
やはり刀身が当たるその刹那、力を開放して振り切る。
「ぐわ!!!」
教官が受けきれず、もろに食らった!
急所は避けたようだが、いいのが入った…………。
ハッと体に自分の意識が戻るような感覚。
「きょ、きょうかーーーん!」
「は、は、ははは。」
笑ってるよ!地面に転がりながら笑ってるよ!
「ハーハッハッハッハ!!!!」
「きょ、教官?」
「す、凄まじい連続技だったな!本気を出しても防ぎきれなんだ!素晴らしい!素晴らしいぞソウジ君!」
うん。自分でも驚いている。
恐ろしいまでの威力に。
そして、そこまでの力を出せる、このギフトに。
…………あれ?
教官?何か……。腕が…………!
「教官!腕が!変な方向に!曲がってはいけない方向に!」
「ん!?おお!これは折れているな!この装備にたかが木剣でここまでやるとはな!ハーハッハッハッ!」
「笑ってる場合かーーー!!!回復薬!回復薬!!」
* * * * * *
「骨が折れるぐらい、モンスター討伐では日常茶飯事だぞ!安心してくれ!」
「いやいやいやいや…………骨折れちゃダメでしょう!」
添え木をし、俺の服を破いて回復薬を染み込ませてから患部に当てる。
曲がっていた腕は、教官が「フンッ!」と言って元の形に戻していた。
死ぬほど痛い!見ているだけで痛いよ!
「なぁに、骨の位置は正確に戻した!あとは薬効で徐々に治っていく!」
確かに、回復薬の効き目は凄いもんな……。
とはいえ何だこの状況。
初クエストで大型を怪我なく仕留めた俺。
万一の為の教官は、骨折。
これ傍から見たら、完全に教官に寄生してクリアした新人みたいに映らないかな。
教官にそのへん訪ねてみたところ、「気球の観測班が、我々を見ていることだろう!心配はないさ!」とのこと。
うーん、不安しかない。
まぁ気にしても仕方はない。
こうして無事にやってきたネコタクに乗り、俺たちは帰路についたのだった。