モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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34女神様とお話しましょう。

朝になった。

頭が痛い。完全なる二日酔いである。

 

 

昨晩は、ケイさん気絶騒動の後にそそくさと店を変え、下ネタ連発の教官と飲み続けた。

ついに潰れた教官を宿まで連れていき、俺も宿に帰って倒れ込むように寝たのだった。

 

 

「なるほど、それで中々双治さんとお話ができなかったのですね。」

(…………。)

「酔った人間と意思疎通を図るのはなかなかに難しいのです。」

(…………。)

「双治さん?おはようございます。女神です。」

(…………。)

「双治さん?」

(…………。)

「…………仕方ありませんね、では先週双治さんが妄想していた食事処の女性とのあれやこれやをSNSで拡散―――」

(お、おはようございます女神様!)

「はい、おはようございます。お久しぶりです。」

 

 

危ない危ない。

 

頭も痛いしスルーしようかと企んだらこれだもの。

逆らえないです女神様には。

 

 

「約一ヶ月ぶりとなります。お元気でしたか?」

(はい、元気です。まぁ見ていらっしゃるならおわかりかと思いますが。)

 

 

女神様の綺麗な声が頭に響く。

二日酔いの頭にはちょいとキツイ。

 

………と思ったら、急になんだかスッキリした。

 

 

「遠隔操作でギフト内のアイテムを使わせていただきました。」

(えっ、頭がスッキリしましたよ?)

「はい、『毒消し』の効果です。勝手に使わせていただきました。申し訳ありません。」

(とんでもない、助かりました。)

「双治さんがおつらそうでしたので。お話、大丈夫でしょうか。」

 

 

なるほど、アセトアルデヒドを毒として捉えるなら、毒消しで効くのか。すごいな異世界。

 

女神様と話す?のは問題はない……もしかしたら急に誰か入ってくるなんてことがあるかもしれないが、傍目から見たらぼーっとしているようにしか見えないだろうし。

 

 

(……問題ないです。)

「よかったです。それではまず……双治さん、初めてのモンスターの狩猟。お疲れさまでした。」

(は、はい!ありがとうございます。)

「何か労いの報酬などをお渡ししたかったのですが、違う世界に干渉するのは中々に骨が折れまして。言葉だけですが、お疲れ様です、と。それに、感謝も申し上げます。」

 

 

感謝?

 

女神様が感謝するようなことなのかな?

 

 

(女神様に私、なにか貢献しましたか?)

「ええ、とても。まずはこちらをご覧ください。」

 

 

そう言うや否や、いきなり目の前に情報画面が展開する。

と同時に、グラフのようなものが現れた。これは……。

 

 

「双治さんのここ一ヶ月のトレンドの集計……要はどれだけ流行ったかを数値にしたものです。単につぶやかれたものだけでなく、検索語句や各SNSのハッシュタグ、動画の閲覧数なども集計した独自の数値になっています。」

 

 

マメだなあ!すごいじゃないかこのグラフ。

前世にあったら、テレビや雑誌などのメディアが欲しがりそうなものだが。

すでにあるのか?そのへんはよく分からん。

グラフを眺めてみる。

 

 

(……なるほど、昨日の狩猟直後の伸び率が異常ですね。)

「はい、前代未聞の数値です。」

(……そこまで凄いんですか?)

「はい。要因として、一ヶ月待たされての鮮やかな狩猟だったことが挙げられます。それまでの修行の成果を存分に発揮したことで、待たされ続けた古参のフォロワー達が大盛り上がりしたようです。」

 

 

例の血の気の多い神々の方々だな。

 

 

「また、ドールさんの挙動も、大変人気となっております。」

(え!?ドールが!?)

「はい。世界相互不干渉の規約、また、双治さんの精神に大きく影響することも鑑みて、詳しい理由は申し上げられませんが。」

(き、規約?精神?よく分からないんですが。)

「双治さんの心に強く影響してしまう恐れがありまして。」

(は、はぁ……。)

 

 

なぜドールの挙動を俺に伝えるといけないのか。

 

……まぁ女の子のプライベートに抵触するといけないとかそんなんだろう。

ドールに影響がないなら、俺から文句は無いが。

 

 

「影響のないギリギリの範囲でお伝えするのなら、『ドールちゃんファンクラブ』なるものが設立されました。」

(神様達何やってんの!?)

 

 

文句あるわアホか!!

ファンクラブって!てか「ドールちゃん」って!!

 

 

「『あまりに可愛すぎる』『守護神になりたい』『クンカクンカ』など、私も引いてしまうほどの人気です。」

(そうですね!俺も引いてるよ!)

「他にも『双治〇〇』『双治〇〇〇』『憎しみで〇〇を〇〇〇なら』など……おっといけません。これはお伝えしてはいけない内容でした。」

(すっごい気になるよ!何その伏せられたところ!!)

「自動で規制が入りました。よかったです。」

(よくねぇから!ねぇなんなの!?俺大丈夫!?)

 

 

神々って暇なの!?

つーかなんで俺にまで目が向けられてるの!?怖いわ!

 

 

「ついでに、こちらのデータもご覧ください。」

(スルーですかそうですか。)

 

 

俺の不安など華麗にスルーした女神様は、今度は新たなグラフを映し出した。

先程の総合的な数値を表した折れ線グラフとは別に、様々な折れ線グラフが色分けして表示されている。

 

 

「このグラフは、双治さんの周りの方々に関する数値を表したものです。赤はマショルクさん。青がドールさん。黄色、緑色、紫がそれぞれハイビスさん、セツヒトさん、ケイ=イシザキさんとなっています。」

(こんな集計まで作っていたんですね。)

 

 

うん、確定。

神様は暇だ。

 

 

「データを見て、どこにどの層が食いつきやすいか分析することで、効率のよい広告収入を狙えますので。」

(その収益って何に使われるんですかね。)

「……たとえば赤のマショルクさんと紫のケイ=イシザキさんを見てください。昨晩の打ち上げでかなりの伸びを見せています。」

(またスルーですかそうですか。)

 

 

気を取り直してグラフを見る。

ドールの伸びが著しい。特に一昨日から昨日にかけてのグラフの上がり方がすごい。

株価ならストップかかるレベルの右肩上がりだ。

そして女神様が言うように、教官とケイさんの伸びも、そこからグンと伸びている。

 

 

「ところが、こちらをご覧ください。」

 

 

別の画面を2つ表示する女神様。

忙しいな、まるで気合いの入った若手のプレゼンを見ているようだ。

新しい2画面、表題にはそれぞれ「マショルク」「ケイ=イシザキ」と書かれている。

 

 

(今新しく出た2画面は……なんの数値ですか?)

「フォロワーを年齢層・性別に分けて、その増減を数で簡単に表したものです。」

 

 

よく見ると、マショルク教官の「若い女性」の数値が激減している。その代わり、「若い男性」「おっさん」「おじさん」の数値はグンと伸びている。

おっさんおじさんはの定義はよくわからんが……。

男に人気だ。

イケメンなのに。なんで?

 

 

「マショルクさんは、不適切な発言がかなり見られ、若い女性層を中心にプチ炎上しました。」

「ぶふぉっ!!」

 

 

思わず吹き出してしまった。

不適切てあれか。下ネタ野郎に変身したからか。

酔いが回るにつれて、下ネタもだんだん直接的になっていったからなぁ。

 

 

(……いや、炎上して然るべきでしょう。)

「そうですね、その辺は同意いたします。しかしながら、男性からは熱い支持を受けていますし、表には表せませんが、小さい子どもの層からも人気のようです。」

(……あー、なるほど。)

「見ていて面白いのでしょう。その代わり、イケメン狙いの女性層からは落胆の声が上がりました。難しいものです。」

 

 

教官……よくわからないまま女性の神様たちに炎上されてなんか可哀想。

 

 

「ケイ=イシザキさんは、男性からも根強い人気がありましたが、今回のことで女性からの同情票が集まりました。」

(確かに、被害者だもん。完全に。)

「その影響で、胸をロマンとする男神vs男ってやーね女神のレスバトルが掲示板を中心に止まりません。罵り合ってます。」

(やってる場合か!ちゃんと神様しろよその方々!暇すぎるだろ!!)

「見ていて滑稽で笑えます。」

(この人止める気ないな!)

 

 

神様ってなんだろう。

もう今のところ、暇でしょうがないニートみたいなイメージしか湧かないよ!

 

 

「とまあこのように、分析を重ねているのです。そこで、双治さん。お願いがあります。」

 

 

干渉しないんじゃなかったんですかー。えーやだー。

 

 

「嫌というのなら、無理には申し上げません。……おや、こんなところに双治さんが以前セツヒトさんに顔を近づけられて息がかかってゾクゾクしたことが忘れられずに悶々と過ごした夜の独白過去ログがありますね。困りましたね。こちらSNSにて発信を―――」

「女神様、この私めにあなたの願いを叶えさせて下さい。」

「ありがとうございます。」

 

 

俺のプライベート筒抜けだよチクショウ!

なんだろなー。自由に人生謳歌してくださいって割にお願いが多いというか。

まぁいいや、ギフトの恩恵は大いにあるし。期待に応えたいとも思うし。

 

 

「お願いとは、新たなフォロワー増を狙った活動を増やしてほしいのです。私も何がウケるのか、何が炎上するのか、もはやよく分かりません。」

(…………また難しいお願いですね。)

「すみません。むしろ、SNSでどのようなものがバズるかなどは、現代日本に生きていらした双治さんの方が、よくお分かりでないかと。」

(……モンスターの狩猟は続けても?)

「むしろそちらはメインです。そこがブレたらいけません。」

(そりゃそうか。)

「今回、双治さんの周りの方々への反応が凄まじく、こうした脇を固めるのも大切だと実感したのです。」

 

 

とは言っても、サブネタとして面白そうなものかぁ……。

 

 

(あ。)

 

 

思いついた。

これなら老若男女問わず、人気がでるかもしれない。

 

女神様に今思いついたものを伝えると、

 

 

「…………。いけるかもしれません。感服しました。やはり双治さん、あなたは素晴らしいですね。」

(実は今回のクエストをやりながら、一度やってみようと思ってたんです。)

「では、そのように。」

 

 

女神様はすっと息を整えた。様に聞こえた。

 

 

「双治さん、何度もお願いして申し訳なく思います。」

(……気にしないでください。女神様のギフトは本当に役に立っています。恩返し、みたいなもの?です。)

「そう言っていただけると……私も気が楽になります。」

 

 

んー、やっぱり綺麗な声だなぁ。

こういうふとした時に漏らす本音が、ちょっと可愛い。

 

 

「心はダダ漏れですから、お気をつけください。恥ずかしいです。」

(わかってやってます。)

「……意地悪です。」

 

 

掛け合いも慣れてきたな。

 

 

「お一人で向かうクエストも増えることでしょう。どうか、命を大切に。」

(はい、その辺は抜かりなく。)

「……お気をつけください。それでは失礼します。」

 

 

会話が切れる。

目の前にあったたくさんのグラフとかの画面も消える。

 

……最後なんか意味深だったな……。

 

 

 

気をつけていこう。

俺は今日から一人前のハンターなのだ。

 

ヘマはするかもだが、このもらった命、大切にがんばろう。

改めて決意をするのだった。

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