モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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38アイルー達の話を聞きましょう。

猫はある程度の高さまでなら、無傷で着地が可能だ。

これはどんな動物も可能かと言われれば、そんなことはない。

 

小学生の頃、飼育委員をしていた時、うさぎを抱っこしたことがある。

俺の持ち方が下手で、ジタバタしたうさぎがぴょんと飛び降りてしまい、委員会の先生から注意を受けた。

うさぎは高いところから飛び降りると骨を折ってしまうから、しっかり優しく座って抱いてあげる様にしましょう、と。

 

うさぎはよく跳ねるから大丈夫、などと勘違いしていた俺は、いたく反省した。

小さい頃の思い出である。

 

 

では、今目の前の獣人はどうか。

優しく受け止めようとしたら、不安定な俺の腕に見事に着地したのだ。しかも余裕で。

 

やっぱり猫ってすごい。

 

そんなことを考えながらキョトンとしているしかなかった。

オスズが目をまん丸くして、驚いている。

 

 

「こ、こらー!ショウコ!とりあえずそこから降りるにゃ!」

「あ、オスズさん!ウチ!ウチこの方のオトモになりたいです!」

「わ、わかったからにゃあ!ひとまず降りるんだにゃ!」

「え?…………わーーー!す、すんませーん!!」

 

 

腕を出したまま中腰というマヌケな体勢を維持していた俺から、ピョンと飛び降りる。

俺の腕にいることに気づいてなかったのだろうか、凄く申し訳無さそうにしている。

金髪のショートヘアーから飛び出す猫耳は白色。尻尾も白色。

下は動きやすそうな濃い茶色のハーフパンツ、上は白い半袖のTシャツなのだが、少し大きめなのか七分丈のようにも見える。

カジュアルな格好で、快活そうなイメージが見てとれる。

 

 

「まったく!ショウコ!受付サボってどこに行ってたにゃ!しかもハンターさんに何て失礼な!謝るにゃ!」

「え、えーっと……どっちを?」

「どっちも謝るんだにゃ!」

 

 

ギャーギャーワイワイちっちゃい獣人たちが言い争っているのだが。

正直言おう。

 

うん、可愛い。

 

なんだろう、どんなに凄んでも結局可愛いオスズとか、さっきからペコペコ謝っているショウコ?っていう子とか。

 

 

「ほ、ほら!ソウジさんがポカーンとしているにゃ……。ソウジさん、本当に申し訳ございませんにゃあ……。」

「す、すみませんでした……。」

「い、いやいや!気にしないで下さい!別に嫌じゃなかった……じゃなくて!特に怪我とかもしてませんし!腕も…………。」

 

 

そう言って腕を見る。

 

しっかり爪の傷が付き、そこから血が滲んでいた。

 

 

「あああ!!血が出てるにゃあ!しょ、ショウコオオオオ!!」

「わ、わーーー!!ご、ごめんなさああああぁぁぁい!!!!」

 

 

二人?二匹?はその後しばらくずっと謝りまくっていた。

 

 

* * * * * *

 

 

「…………お、落ち着きましたか?」

 

 

あのままでは日が暮れるまで謝っていそうなので、無理矢理先程座っていた机のあるところに戻らせ、二人を座らせた。

 

腕の方は回復薬をかけて包帯を巻いておく。

そんな深い傷でもないし、すぐ治るだろう。

大体こんな傷、教官との講習じゃ珍しくも無かった。

 

手早く処置を終わらせると、ようやく二人が落ち着いたようだった。

 

 

「……こ、こほん。ソウジさん、改めてショウコが失礼しましたにゃ……。重ねてお詫びしますにゃ。」

「う、ウチも、ごめんなさい。」

「……お二人とも。傷も大したことないですし、もう謝るのは終わりましょう。こんなのすぐ治りますよ。」

 

 

うん、謝るのを見るのはもう申し訳ないので、終わりにしよう。

オスズが口を開く。

 

 

「ソウジさん、あなたは神のようなお方にゃ……。オトモはハンターさんを守るもの!なのにショウコったら全く!」

「気にしないでくださいね。本当に無事です。」

「ソウジさんは敬語で私達に丁寧に人としてお話をして下さる……。ありがたいことですにゃあ。」

 

 

そうなの?

アイルーって冷遇されているのだろうか。

不安になってしまう。

 

 

「……そ、ソウジさん!」

「は、はい!」

 

 

急にショウコと呼ばれるアイルーに話しかけられる。

ショウコはオスズと同じで、獣人……のはずなのだが、語尾は普通だな。

関西弁のようなイントネーションが特徴的だ。

 

 

「さっき言ったことだけど、もう一度言います!ウチをオトモにして下さい!」

「ショウコ……何でお前はそんなに頑ななんだにゃ。」

 

 

そう、オスズの言う通り。

やたらそこにこだわってくる。

樹上から落ちてきてまで言いに来るんだから、何か大きな理由でもあるのか。

 

 

「大体、何でショウコは上にいたのにゃ?今日は受付をするよう言っていたはずにゃ。」

「い、いや〜、お昼を食べたあとで、すこーし眠くなりましてスヤスヤと……それで目を覚ましたら、ソウジさんが見えたんです?こう、直感で『あ!あの人や!』と。それでいても立ってもいられんなって…………ごめんなさい!」

 

 

直感……特に理由はなかった!

いや、何にそこまで惹かれたのかは分からんが。

ショウコさんのオトモアイルー的な部分に引っかかるものがあったのだろうか。

 

 

「お前は全く……!」

「ご、ごめんなさい!」

 

 

まるで母親と娘のようだな。

しかし寝てサボるとは中々大物なのかもしれない。

 

 

「ソウジさん、ここは隠さずに正直に言うにゃ。こいつ、ショウコは、オトモアイルー経験がありますにゃ。」

「そうなんですか?」

「はいにゃ。運動神経は言う事なし。ハンターさんと一緒に大型モンスターのオトモ討伐も何回も達成しておりますにゃ。まぁ素行に難がありますが、実力じゃウチでもかなり高いほうですにゃ。」

 

 

マジか。

本当ならすぐにでも雇用契約したいところ。

だが、と続けてオスズが言う。

 

 

「……何故か、オトモをするハンターさんが、連続して不幸なことに巻き込まれるということがありましてにゃ……。ついたあだ名が『招き猫』。もちろん、悪い意味で、ですにゃ。」

「おぉ……それは……本当なんですか?」

 

 

ショウコに向き直る。

 

 

「はい……受注したハズのクエストが破棄されていたり、ハンターさんがアイテムポーチを無くしたり……挙句の果てには、新人さんのクエストに付いていったら手に負えないモンスターに遭遇した、なんてこともありまして……。」

「……。クエストの破棄はギルドの手落ちだし、ポーチをなくすのはハンターの責任でしょう?予期せぬモンスターに出遭ってしまうなんてことも、まぁ珍しいことではないのではないですか?」

「……9回。」

「えっ?」

「モンスターに出遭ってしまった回数、です。前回はハンターさんが……死にかけました……。」

 

 

おぉぉ……。

……かける言葉が見当たらない。

運が相当悪い、としか言いようがない。

 

ゲンを担ぐハンターは多い。

勝負のクエストでは、そうやって運も味方につけようとするのだ。

 

その時に自分のオトモが「招き猫」なんて呼ばれてたら……。

 

 

「おかげで前回の契約から約半年。ショウコには全くお声がかからない状況が続いておりますにゃ。」

 

 

オスズが現状を教えてくれた。

半年は長いな……。

 

 

「幸い村の発展のおかげで、オトモ業以外の仕事も多くありますにゃ。器量もいいので試しに受付なんぞをやらせてみましたが……。」

 

 

チラリとショウコを見るオスズ。

ショウコは縮こまって気まずそうにしている。

 

 

「……はぁ。……と、いうわけなんですにゃ。」

 

 

大体の事情が飲み込めた。

不幸は不幸として仕方がない、と割り切れればいいのだろうが、それを気にするハンターが多いのも事実。

 

 

「……ウチは、やっぱりオトモがいいんです。このまま静かにこの集落で過ごすなんて、考えられへん……。」

「…………。」

「そんな時、ソウジさんが見えた時、この人や!って思ったんです。見る目には自信がある。」

「…………。」

「ソウジさん、オスズさん、お願いします!これが最後やと思って。お願いします!」

 

 

オスズさんが、俺を見る。

最終決定は、俺ということだろう。

 

 

もちろん答えは決まっている。

 

 

「いいですよ。俺で良ければ。」

「「えっ!?」」

「実力も経験も申し分ない。むしろ俺が教えてもらいたいぐらいです。ぜひ、お願いします。」

 

 

一生懸命にお願いしていた。

不名誉なあだ名のせいで、望まぬレッテルのせいで苦しんでいた。

 

同情の心が無いわけじゃない。

でも、頑張りたいと言っているんだ。

 

 

応援したいと思うのは、そりゃ当たり前だろう。

 

 

「ほ、本当ですかにゃ?あちしが言うのもなんですが、運の無さは折り紙付きですにゃ!」

「はい、本当です。二言はない。」

「……あ、ありがとうございます!精一杯、オトモさせていただきます!!」

「ソウジさん……やはりあなたはいい人ですにゃ。……ショウコ!頑張ってくるにゃ!不幸なことなんて無いって、証明してくるにゃ!」

「は、はい!!」

 

 

そこから二人にお礼を言われ続けながら、俺は契約を結ぶ用紙にサインをした。

 

これからオトモとして、俺のサポートをしてもらう、アイルー猫、ショウコ。

 

彼女は目をウルウルさせながら、また大きな声で、「よろしくおねがいします!」と言った。

 

 

不幸なことなんてない。

あっても跳ね返してやろう。

 

そして、ショウコの自信と名誉の回復ができたらいい。

俺も精一杯やろうと、心に誓うのだった。

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