モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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40一人の訓練方法を考えましょう。

ショウコとドールと俺、3人での夕飯を終えた俺は、荷物を部屋に置いて、宿の庭にやってきた。

 

ちなみに、ショウコの荷物と言える荷物は大きなリュック一つだけだ。

あとは身につけているポーチとかぐらい。

大切なものなどは集落に置いて、鍵をかけてきたらしい。

 

ドールが部屋にベッドを用意してくれるとのことなので、その間、いつもの夜の訓練の時間に充てようと考えた。

ショウコは頑なにそのへんで寝るからベッドはいらないと言うのだが、俺とドールが何を言ってるんだとゴリ押し。

快適な生活なくして、満足な狩猟無し。

 

うん、名言ぽいけど真実である。

 

ショウコはいたく感激していたが、こちらとしてはますますアイルーへの扱いについて疑念が深まるばかりである。

 

 

気を取り直して。

 

庭で、俺はショウコと向き合った。

 

 

「基本的に、夕飯を摂ったら訓練を行っている。まぁ、時間によって風呂やご飯が前後するが、夕飯、訓練、風呂がいつもの流れだ。」

「はい!」

「……これから俺は訓練を行うが……ショウコ、その格好は何?」

 

 

ショウコは部屋でリュックを開け、なにかガサゴソしていたのだが……。

 

 

「これは、オトモ装備、です。ご主人様。」

「オトモ装備?」

「はい。オトモはハンターさんと同じように武具を装備して戦います。ご主人さまが特訓をすると聞いて、装備してきました!」

 

 

小さめのヘルムに胸当てやすね当てを素早く装着したショウコは、その傷だらけの装備を見せながら胸を張った。

 

お世辞にもきれいとは言えないが、よく手入れされていることがわかる。

そこかしこにある傷は、モンスターとの戦いの数々を物語っていた。

 

 

「なるほど、オトモも装備をするんだな。知らなかった。」

「はい、ご主人さまは装備はないのですか?」

 

 

うん、やはりその話になるよな。

俺の格好は、普段着にポーチ一つ。とても装備とは言えない格好だ。

 

ショウコは信頼が置けそうだし、ギフトの一端を見せておくか。

これから背中を預ける仲間なんだ。

 

 

「ショウコ、これから凄いことをするが、声を出さないで見ていてくれ。」

「は、はい!わかりました!」

 

 

返事を聞くとすぐ、俺はポーチを触って情報画面を起動する。

<装備>を選択。慣れ親しんだ「ミヨシ村装備」の一式を次々に選んでいく。

ポチッとな。

 

 

「えっ?……えっ!?……えぇぇ!?」

 

 

ショウコが驚きの声を上げる。

何とか小さい声で反応しているが、そりゃ驚くよな。

一瞬で目の前の人の装備が装着されていけわけだから。

 

 

「も、ものすごい早業や!うち、見えへんかった……。」

「さらに……」

 

 

続いて<武器装備>から双剣「ハリケーン」を選択。

 

 

「……や、やっぱり見えへん……ご主人様!こんなすごい技をお持ちやったんですか!?」

「あぁ、詳しくはまた説明するが、これが俺の特技みたいなもんだ。」

 

 

そう言いながら情報画面を見てみる。

……ん?項目が増えている……。

<オトモ装備><オトモ武器装備>の二つ。

 

これはつまり、ショウコの装備を変えられるということか?

何の気無しに、ショウコが身につけているであろう「どんぐりネコヘルム」「どんぐりネコメイル」を選択。

 

すると。

 

 

「えっ……にゃ、にゃあ!?」

「うわっ!!す、すまん!!」

 

 

しまった!装備を解除してしまった!

慌てて再び装備を選択し、戻した。

インナー姿に戻ったショウコが、また装備をつけた状態に戻る。

 

 

「ご、ご主人様は、人の装備も脱がせられるんや……ビックリしました……。」

「す、すまんな、ショウコ。そんなつもりはなかったんだが。」

「ぬ、脱がすなら脱がすって言うて下さい!ウチにも、心の準備というものがあります!」

「いや、本当にすまん。」

 

 

驚いた……まさか情報画面からオトモ装備を変えられるとは思わなんだ。

ショウコがジトッと俺を見つめる。

 

 

「まさか……ウチを裸一貫にするなんてことも……。」

「で、できないぞ!?そんな力はない!」

「ほ、ホンマですか!?ま、まぁご主人さまならまぁ……ってちゃいます!ホンマに止めてくださいね!」

「しないし、できないって!本当に!」

 

 

一度罪を犯した者の言い訳など、中々通るわけもなく。

その後、ショウコの説得に少し時間がかかってしまった。

 

 

* * * * * *

 

 

「えー……では気を取り直して。」

「はい……。」

 

 

何だか微妙な空気だが、強引に進めさせてもらおう。

 

 

「俺がここで行っているのは、筋トレと素振り。それだけだ。朝のランニングも始めるつもりだが、そこは付いてこなくてもいいぞ。」

「ウチもやります!」

「そ、そうか?じゃあ、頑張ってみようか。」

 

 

ランニングと言っても、教官仕込みのフル装備村周回マラソンなのだが。

一周2kmぐらいを10周、大体一時間で走り終える。

 

…………あれ?よく考えたらハーフマラソンをプロ並みの速さで走るってことだよな…………。

 

……い、いやー。俺も速くなったもんだ。うんうん。

 

深くは考えまい……こっちの世界の人間は、俺も含め化け物級の体力があるな……。

だって俺がすでにトップアスリートレベルなのだ。教官とかその辺は化け物と言わずして何と呼ぶ。

 

ショウコには、無理をさせないようにしよう……。

 

 

「それじゃ素振りだ。俺の武器は双剣、手数が命の身軽な武器。だから、この素振りの練習は欠かせないんだ。」

「ご主人様は双剣……了解しました!」

「それから少し試してみたいこともあるから、時間がかかるかもしれない。その時は先に風呂に行くなり部屋に戻るなりしていていいからな。」

「はい!」

 

 

ショウコに言い聞かせてから、俺は向きを変え、剣を構える。

まずは慣らし。二段斬りからの返し、車輪斬りを繰り返す。

 

 

「フッ……ハッ……ハッ!フッ……ハッ……ハッ!」

 

 

温まってきたところで、鬼神化を用いて、乱舞を混ぜた連続技を行う。

 

この辺りから集中が必要になってくる。

教官から教わったように、常に周囲に気を配ることも忘れてはならない。

かと言って剣が疎かになってもいけない。

この両立が難しく、特に神経をすり減らす。

 

百を越えたあたりで、かなりの汗が吹き出してきた。

はじめの頃は5回もすればゼイゼイ息も上がっていた。

こういった反復練習は嫌いじゃない。修正を繰り返しながら、己で己極める時間。

 

 

「ふぅー。……よし。」

 

 

一度、水筒を手にして水分補給をする。

冷たい水が喉に心地よい。

 

 

「はぁぁ……すごぉ……。」

 

 

ふとショウコを見ると、訓練の始めと場所も変えずにこちらを見ていた。

気にせず次へ。

 

教官の教えが無い今、正直練習の拠り所が無い。

そこで少し考えたのが、例の<操作方法>使用時の自分を真似するという練習法だ。

 

教官やシガイアさんに見てもらった時、俺は自分だけではまだ至れない剣の境地に達していた。と思う。

ただ、<操作方法>の一番の弱点は、プログラムされた動きしかできないという点だ。

仮に強敵が出てきて立ち向かうとなったら、これはかなりまずい。

 

相手モンスターが攻撃のモーションに入っても、避けないまま技を繰り出せばどうなるか。

間違いなく大きなダメージを食らうだろう。

 

では自在にこのレベルの剣を繰り出せるようになれば?

立ち回りを考えながら相手の動きに合わせて技を出せれば?

 

その為に、俺は俺を目指すことにした。

……言葉にすると何だかすんごいアホらしいが。

 

 

一つ一つの技を確認してみよう。

 

まずは二段斬り。すべての基本。

<操作方法>から選択。途端、自分で自分の体が動かせなくなるような感覚。

この状態を、憑依状態、と言う事にしよう。

 

すぐさま構えからとてつもない速度で繰り出される双剣。

 

 

ビュオン!!

 

 

これだ、この速さだ。

 

 

「えっ!?」

 

 

ショウコが声を上げる。

 

 

「今のは……!?」

「あぁ、うーんと……後で説明するよ。」

 

 

ちょいとややこしい部分があるので、ショウコには後で腹を割って話そう。

 

 

「今の動きを忘れないうちに……。」

 

 

同じ様に構える。

真似しろ……思い出せ……。

何せ憑依状態は感覚があまり無いのだ。これは難しいぞ……。

 

 

姿勢はかなり低かった。力も……ほとんど入ってなかったよな……。

 

構えて、今度は自分の感覚で二段斬りを行う。

 

 

ヒュン!

 

 

うん、速くはなったかな?でも力が無いような。

もう一度<操作方法>を選択。

 

 

ビュオン!

 

 

真似しながらの二段斬り。

 

 

ヒュオン!

 

 

もういっちょ。

 

 

ビュオン!

 

 

………………。

 

 

…………。

 

 

同じような練習を繰り返す。

百回は行ったと思う。

コツを掴みかけているようなそうでもないような。

瞬間の火力が足りないと思う。

なぜできるのだ?憑依状態の自分よ。

 

 

「ご、ご主人様!?」

「おっ。ショウコ、どうした?」

 

 

かなりの時間が経ったはずだが、ショウコは律儀にはじめの場所から動いていない様子。

 

 

「ご主人様は本当に新人ですか!?ありえない程の剣速でした!」

「あぁ、そうなんだよね。自分でもわからないんだ。」

「えっ!?」

「うーんと、簡単に言うと……」

 

 

俺はとりあえず、ギフトの武器操作のところについてかいつまんで説明した。

女神様や異世界人だと言うことについてはとりあえず伏せておく。

そのへんは少しずつでいい。ショウコがキャパオーバーを起こす気がする。

 

 

「はあぁぁ……ご主人様はやっぱりすごいんですね!」

「うーん、ところがいいことばかりでもなくてな。」

「え、どうしてです?その力があれば、強いモンスターとも戦えるってことに……。」

「……。気づいたか?」

「なるほど……一度始めたら止まらへん、つまり―――」

「あぁ、端的に言って、とんでもないことだ。」

 

 

大型モンスターが、リーチの短い俺の双剣を避けてしまったら?

一撃の強さに欠ける双剣を止めてしまったら?

 

手痛い反撃を食らうのは間違いない。

 

 

「とはいえ、この力を持て余すのももったいないよな。」

「じゃ、じゃあさっきの……あまり言いたくはないんですが、すごいのと普通の剣撃の繰り返しはつまり……。」

 

 

俺が憑依状態と通常の状態を繰り返した訓練のことだろう。

 

 

「あぁ、ギフトの力を真似して、自分の力にできないか、試してみたんだ。まぁ、まだまだ練習が必要だな」

「そうやったんですね……。でも、通常の方?でも、その辺の大型モンスターとかやったら、苦にならんと思います!」

「そうか?」

「はい!私、これでも結構な数のハンターさんを見てきました。はっきり言えます!」

「そうか、そう言ってもらえると嬉しいな。ありがとう、ショウコ。」

「えぇ……!!いやいやいやいや!ウチ、そんな褒められることなんて!!」

 

 

手をブンブン振ってくるショウコ。

嬉しいのか、白い尻尾がピンと立っている。

 

 

「よし、続けるとしよう。」

「がんばって下さい!」

「今のを1セットとして、今日は軽めに5セットぐらいにしとくか。」

「5セット……ですか!?」

「あぁ、軽くだからそんなもんだ。無理はいけないしな。その後は筋トレをして、クールダウンしてから風呂に行こう。」

「無理……してませんか?。」

「ん?いや、これぐらいは序の口だぞ?」

「ご主人様の感覚、ちょっとおかしい気がしてきました………。」

 

 

おかしいのか?

うーん、教官のせいか、こんなもの何とかなりそうな気もする。

 

そのまま予定通り5セット、憑依状態と通常の繰り返しを行い、筋トレを行った。

これを毎日続けていく。教官がいない今、俺ができる最善の訓練が、おそらくこれだから。

 

絶対、自分のものにしてみせるぞ。

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