モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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44シンパシーを感じましょう。

ギルドに着いたのは昼過ぎ頃。

 

腹が減った。だが、先に報告を済ませてしまいたい。

 

とりあえずショウコは先に宿に戻るように伝えておいた。

「うちもいますよ?」と言ってはくれたが、ドールたちに先に報告してほしいことと、ギルドマスター絡みの案件で時間がかかるかもしれない旨を伝えて、納得してもらった。

先に食べててもいいと言ったのだが、頑なに俺を待つと言うので、そこは折れた。

 

せっかく村に早く帰ってきたのだ。携帯食料じゃなくて、ちゃんとしたものを食べたい。

ショウコに悪いので、なるべく早く終わらせたいところではある。

 

だが、予想よりかなり早く終わってしまったため、ハイビスさんに何て報告したものか迷っている。

まぁそのまま伝えればいいか。

 

 

ギルド前、ハンターの数はまばらだ。

それもそうか、まだ昼だもんな。

ハンターズギルド内が混むのは朝と夕方。

逆に昼は、こうして閑散としていることがほとんどである。

 

 

ギルドを見渡す。いつもより人がいないので、ハイビスさんを見つけるのも簡単だろう。

 

 

………………。

 

 

…………。

 

 

 

あれ?

 

いないぞ?

どっかに隠れて……いやいや、どこの世界に勤務中にかくれんぼする者がいるのだ。

 

 

「どうかされましたか?」

 

 

アホな事を考えていたら、黒髪のポニーテールの女性が話しかけてきた。

どこかで見たことがあるような……。

スラリとした高めの身長、キリッとした目は力強さを感じさせる。

その女性は俺の顔をマジマジと見つめると、話を続けた。

 

 

「すみません。もしかして、ハイビス先輩の……。」

「あぁ、はい。あなたは新人受付にいた……。」

「はい、ヒナタと申します。」

 

 

わかった。

昨日朝、ギルマスに呼び出された際に受付にいた受付嬢だ。

あのときは座っていて、身長が高めなことに気づかなかった。

 

 

「すみません、先輩は今、お昼を……。」

「あ、あー。なるほど。そういう時間ですね。」

「ご要件をお伺いします。」

「えっと、はい。クエストクリアの報告に。」

「かしこまりました。……いまギルドは空いておりますので、私で良ければ、どうぞ。」

 

 

そう言って受付の椅子を手で示すヒナタさん。

 

いいのかな。まぁいっか。報告するだけだし。

席に着くと、ヒナタさんも向かいに座った。

 

 

「では確認します。HR3、ソウジさん。お間違い無いですか?」

「は、はい。」

 

 

すぐに名前を言われて驚いてしまう。

 

 

「現在届いているクエストクリアの報告は、こちらだけですから。」

「あ、ああ。なるほど。」

 

 

そうか、俺しかいないからか。

ビックリした、心でも読めるのかと思った。

 

 

「…………本クエストは、今朝受注されたもので、お間違い無いですか?」

「はい。ハイビスさんに。」

「…………討伐部位の提出を、お願いします。」

 

 

そう言われて、事前に出しておいた革袋を渡す。

血の匂いが結構するのだが、さすが受付嬢。眉一つ動かさず、後ろのテーブルで確認作業を進める。

非常に素早い手付きで、10分程で確認が終わったようだった。

 

 

「……はい、確認できました。報酬はこちらです。報酬部位はどうされますか。」

「ええと、ギルドで預かる形でよろしくおねがいします。」

「かしこまりました。大切に保管いたします。…………。」

「え、ええ。ありがとうございます。」

 

 

……なんだ!?

すっごく訝しげに、無言で資料を見つめるヒナタさん。

クール系だから、ちょっと怖い。

 

 

「……失礼しました。討伐時間がだいぶ早めだったもので。」

「あ、ああ、なるほど。」

「理由をお伺いしてもよろしいですか?」

 

 

しまったな。

ここでハイビスさんなら、「かくかくしかじか」で通るのだが。

まさか「実はギフトという力がございまして」なんて、本当のことは言えない。

ごまかせるかな。

 

 

「そうですね。着いたらすぐ声がしたので、岩山を越えてみようと。そしたら結構数が固まっていまして。素早い敵は得意なのと、経験豊富なアイルーが上手く誘導してくれました。」

「……大量発生ということではないですね?」

「うーん、まだ経験不足でそういったところは分かりかねますが。」

「いえ、大丈夫です。……そのままそこで20匹討伐を?」

 

 

うーん、真実を混ぜつつ誤魔化すのって難しいなぁ。

 

 

「いえ、そこでは4匹ほど。続いて南下していったら、何度も群れに遭遇した感じです。」

「なるほど。」

「ええ、運がいいのか悪いのか。」

 

 

多少脚色込みだが、まるっきり嘘ではない。

初めは4匹討伐した訳だし、そこからマップを見て南に群れがいくつか見つかったので、順に倒していったわけだ。

 

今回は運が良かった、で通るだろう。

 

 

「……ご報告ありがとうございます。」

「いえ、このぐらい。」

「……観測班の報告とも合致します。お早いクエストクリア、大変素晴らしいです。」

「いやいや。アイルーのおかげですよ。それに、俺の武器は小さくて素早いのには向いています。」

 

 

これも嘘ではない。

双剣は攻撃しながらも、高い移動速度を維持できる武器だ。

手数が命。一撃一撃は小さいが、小型モンスターの掃討には向いていると言える。

 

 

「また次回もよろしくおねがいします。お疲れ様でございました。」

「はい、お疲れさまです。」

 

 

よし、ごまかせたかな?

しかしクールな方だった。

まるでこちらを見透かすかのような視線。ヒヤヒヤしたぜ。

 

なんて安心したのも束の間。

 

 

「……すみません、ソウジさん。一つだけ。」

「えっ!?な、なんですか!?」

 

 

声がかかった。

 

なんだ!?もしやバレた!?

……いやいや、バレる要素はないと思うぞ。

むしろ報告と合致するというのなら、ギルド側も納得せざるを得ないわけだし。

 

 

「あの……。」

「は、はい……?」

 

 

何この間!?怖いよ!

 

 

「あの、その、あ、アイルーはいらっしゃらないのですか?」

「…………………………へ?」

 

 

アイルー?アイルーってショウコのことか?

…………なんで?

 

 

「あ、あぁ。ショウコなら先に宿に帰ってますが……。」

「えっ…………そ、そうでしたか……。」

 

 

なんか落ち込んでらっしゃる!?

分かりやすく眉毛がハの字になって「(´・ω・`)」って顔してる。

 

…………もしかして、ショウコに会いたいのか?

 

……い、いやいや。クール系お姉さんだし、その辺は違うだろ。

……違うよな。

 

 

「もしかして……会いたいとかですか。」

「…………。」

 

 

コクン。

 

 

まるで小さい子が遠慮しながらも頷くみたいに、首を縦に振るヒナタさん。

 

あ、この人、猫好きだわ。

 

同じ道を歩むものとして、シンパシーを感じてしまった。

 

 

「……だとしたら、すみません。あいにくショウコは―――」

「ご主人さまー!遅いですって!はよぅ昼ごはんに行きましょうよー?」

「めでたいにゃ!今日はお祝いにゃ!」

 

 

…………。

 

 

噂をすれば影。

 

ショウコが来ちゃったよ。

しかもなぜかオスズまで連れて。

 

 

「ショウコ!?宿に戻ったんじゃないのか!?」

「待ってました。でも我慢できひんと、来たんです。あ、オスズさんはそこで偶然会って、事情話したら大喜びで。一緒に昼食べよかって話になりまして……。」

「ソウジさん。いきなりすみませんにゃあ。あちしも、ご一緒できたらと思いまして。もちろん、あちしが奢りますにゃ!よろしくおねがいしますにゃ!」

 

 

たまたま偶然とはいえ、タイミングバッチリである。

 

チラリとヒナタさんに目を向けると、「ぱぁぁぁぁぁ!」みたいな音が聞こえそうな勢いで喜んでいる。

冷静そうな方がそんな風に喜ぶのを見るのは、何だか楽しい。

 

すっごくキラキラした目。猫好きって、傍から見たらこんな感じなのか。

 

……よし、俺は自重しよう。中身おっさんがキラキラしてもキモいだけだ。

 

 

「あー、タイミングバッチリだ、ショウコ。ちょうど今、終わったところだ。」

「ほんなら、行きましょ?うちお腹空いてお腹空いてもう背中とひっつきそうなんです。」

 

 

言いながら、お腹あたりをポンポンっと叩くショウコ。

その仕草はポイントが高い。

あ、ほら。ヒナタさんがグッと来てる。

 

 

「こら、人前で恥ずかしいことしにゃい。一人前のオトモは、ギルドでは大人しく待つことも大切にゃ。」

 

 

そう言いながら、めっ!って感じで人差し指を立てて注意をするオスズ。

うん、それもポイント高い。

小さいアイルーが頑張って背伸びしている感。いい。

……ヒナタさんが片手を顔の前で覆って、破顔した表情を一生懸命隠している。

分かる、分かるぞヒナタさんその気持ち。

 

 

「二人とも、こちらヒナタさん。担当の受付嬢が今いなくて、代理です。ショウコ、ご挨拶。」

「は、はい!失礼しました。ウチはショウコって言います。まだ半人前ですが、がんばりますので、よろしくお願いします!」

 

 

礼をするショウコ。

頭を下げるも、両の手を前ではなく後ろに広げている。

何だその仕草は。10点満点だ。

ヒナタさんは礼を返すも、「可愛すぎて何も言えねぇ!」って顔をしている。

うーん、根っからのアイルー好きだこの人。

クールな印象を崩さないように何とか体裁を保ってはいる。さすが受付嬢。

 

 

「アチシはアイルー集落の取りまとめ、オスズですにゃ。はじめまして、ですにゃ?以後、よろしくおねがいします、受付じょーさん!」

 

 

オスズはさすが、丁寧な礼を見せる。

だが、頭を下げた瞬間、尻尾がぴーんと天井を向く。

これは猫好きにはたまらん、ピンピン尻尾アピール!

オスズ、10点満点!

…………ヒナタさん、プルプルしながら両手を口の前で覆う。こらえきれないって感じだな!

 

 

「ヒナタさん……あなた、相当好きですね。」

「……な、何がでしょうか。」

 

 

ここに来て、キリッとした顔を作ってごまかされても。

俺にはわかるぞ。あなた、相当ですよ。

 

 

「ショウコ、すまん。お願いがあるんだが。」

「へ?ウチですか?何です?」

「……ヒナタさんに頭を撫でさせて貰えないか?」

「えっ!?またですか?」

「ああ。」

 

 

ヒナタさんの気持ちがよーーくわかる。夢を叶えさせたいと思うのは、同好の士として当然だろう。

 

 

「ま、まぁウチは構いませんけど。」

「……オスズさんも、よろしいですか?」

「へ?アチシもですかにゃ!?」

「お昼奢りますので。」

「お任せくださいにゃ!」

 

 

二つ返事。

飯に弱いのかこの人。覚えておこう。

 

 

二人が、受付から出てきたヒナタさんに近づく。

「えっ!?いいんですか!??こんな幸せなことあるんですか!?」って顔をするヒナタさん。

 

…………もうクールとかそんなん吹き飛んでる。

 

 

「そ、ソウジ様。よろしいのでしょうか。」

「二人はオッケーみたいですし。朝はハイビスさんが撫で回してました。大丈夫でしょう。」

 

 

「では……。」と言いながら、おずおずと二人の頭に手を伸ばすヒナタさん。

左手をショウコの頭へ。右手はオスズさんの頭へ。

 

ポン、ポン。

 

手を置くヒナタさん。

 

 

「「「………………。」」」

 

 

ナデナデ。

 

 

ナデナデ。ナデナデ。

 

 

お、ヒナタさんナイスグルーミング。

的確に頭の気持ちいいポイントを探って、優しく撫でていらっしゃる。

両方とも同時にそれを行うのは、我々の夢でもあると同時に、猫好き業界では高難度の技。

只者ではない。

 

 

「……。」

「…………にゃ、にゃあぁ。」

「…………う、ふぅぅ。」

 

 

喉を今にもゴロゴロ鳴らしそうな、二人のアイルー。

いいなー。俺も中身おっさんの男じゃなかったらやってみたい。

だが自重。

真の猫好きは、猫がキモいと思うことはしない!

 

 

「…………ありがとうございました。」

「ふにゃ?終わりかにゃ?」

「わぁぁ、ウチ、気持ちよかったです。眠るとこやった。」

 

 

短めのナデナデ。

ヒナタさんには幸福な時間だっただろう。

そして止め時も心得ているとは。

 

ナデナデは決して長い時間行ってはいけない。

気が移りやすい猫にとって、これは鉄則だ。

 

 

「…………ソウジ様も、ありがとうございました。」

「様、はいりませんよ。」

「いえ、そういうわけには。ソウジ様は、いやソウジ様ももしかして……。」

「……ええ、あなたと同じ……。」

「……なるほど。納得しました。」

 

 

見つめる俺たち。

無言でも伝わるシンパシー。

 

 

「……ソウジ様、これからもよろしくおねがい致します。」

「同士、ヒナタさん。よろしくおねがいします。」

 

 

互いに礼をして、俺はギルドを後にした。

 

 

「……?一体何やったんや……?」

「そんなことよりショウコ、ご飯ですにゃご飯。」

「せやった!はよぅ行きましょうよ、ご主人さま!」

「よし。じゃあ二人には、ご褒美としてとびきり旨い店を紹介しよう。」

「「いただきます!」」

 

 

二人を連れて、昼飯に向かう。

行くのはもちろんイシザキ亭だ。

今日はショウコが頑張った日、そして同好の士が見つかった記念日だ。

 

少しくらいの贅沢は許されるだろう。

 

 

 

この後、体格からは予想できないほどに食べるオスズに、財布の紐を緩くしたことを後悔する俺であった。

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