モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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ギルド受付嬢、ハイビスさん目線です。
2話に分けてます。
時系列的に、教官の鬼講習の始まり頃から。


46ある受付嬢の話③

 

こんにちは、ハイビスです。

 

ソウジさんがこのワサドラにやってきてから、早いもので1ヶ月が経ちました。

 

 

その間、訓練の様子をちょくちょく見させてもらっています。

…………控えめに申し上げて、マショルクさん、ちょっと頭おかしいんじゃないかなって思います。

 

体力づくりの一貫だとは思うのですが、講習を行う修練場に来る前に、ソウジさんとマショルクさんはランニングをしてきます。

これがもうランニングってレベルじゃないんですよ!

もはやマラソンですよ!

 

ハンターにとって生命線である体力を鍛えるのは賛成なのですが……村の外周を10周とか、朝から殺しに来てます。

しかも二時間切らないと再スタートらしいです。

 

 

初めはソウジさん、吐きまくってましたね……。

 

 

さらに!

そこから講習が始まるんです!

 

はじめの頃こそ、岩山登りを何回かして、剣の訓練や道具の扱いといった基本的なことをされてましたが……。

 

ソウジさんも体力がついてくると、滝の方の岩登りとか、マショルクさんの本気の剣の振りを避けるとか始めました。

 

死にますって。

 

 

そして、何より驚かされるのはソウジさんです。

ついていくんです、このスパルタ講習に。

 

始めは無理でも、何度かやっていく内にコツがつかめるのか、3日も経てば慣れてくるんですよね……。

 

 

マショルクさんもそうですが、ソウジさんも大概化け物さんです…………。

 

 

おかげで?ソウジさん、見た目はあまり変わりないのですが、オーラというか纏う雰囲気がすごく変わりました。

ギルドにいると何度か話す機会はあるのですが、全然違うんです。

 

私が修練場を隠れて覗いているときに、ソウジさんと目があったことがあります。

私の隠れ方は完璧なので、ソウジさんの気配察知能力がかなり鋭敏になってきたのでしょうね。

 

…………その目があった瞬間、私に微笑んでくれたんです。

 

正直言いましょう。

ドキッとしました。

 

だってだって、弟みたいに頼りなくて可愛い感じの子だったのに、いつの間にやら引き締まり、かっこよくなっちゃって…………。

 

これはいけません。

受付嬢としてあるまじき醜態です。

ハンターの方に色目を使ったとなると、受付嬢は針のむしろです。主に受付嬢仲間に。

 

気をつけなければなりません。

 

…………先週も、先輩でこっそりイケメンハンターさんと付き合い始めた方がいますが、もうバレバレで、只今絶賛針のむしろ中です。

 

女って怖いですよね…………。

 

 

(少し気をつけないといけませんね…………)

 

 

とか何とか思っていたその時でした。

 

 

「ハイビス君!ハイビス君はいるかな!」

「ブフォ!はい!」

 

 

我がギルド一番の実力者であるマショルクさんから、大っきな声でお呼びがかかりました。

お茶を吹き出してしまいました……制服のクリーニングだってタダじゃないのに!

 

この方イケメンさんなんですが、全く人の話を聞かないところが玉に瑕です。

 

ついこの前も、「ソウジ君に新しい訓練道具を発注してもらいたい!」とかなんとか言って、すぐに去っていくというわけのわからないことをなさっていました。

なんとかしましたけども。

勘弁してほしいです。

 

しかもこの方、先輩達にも後輩達にもエラく人気なんですよね。

そりゃ傍から見ている分には、かっこいいし面白いし、生きる伝説ですし、みんな見ますよ。

 

でも、こっちは困ります。無下にも懇意にもできない、ちょうどいい塩梅の対応をしないといけません。

 

 

「マショルクさん!ギルド内部で大声を出されては困ります!」

「ハッハッハッ!すまない!すまないついでに、一つ頼みがあって来たのだ!」

 

 

また来ましたよ、無茶ぶりが!

 

ええ、聞きますよ!だってあなたの言うことはなるべく聞くようにと、ギルマスからの通達ですからね!

 

ていうかなんで私がマショルクさん担当みたいになっているんでしょうか!!

最近ギルドの女の子に少し人気のソウジさんの担当も私なんです。

おかげでやっかみの視線が辛い辛い。

 

 

……まぁ……多少はその視線も気持ちいいんですが…………ふふ。

 

 

いけないいけない。

 

で、そんなよろしくないことを考えていた私に、マショルクさんはとんでもないことを言い出したんです。

 

 

「この一番弟子、ソウジ君に、大型モンスター討伐のクエストを受けさせてはくれまいか!?」

「かしこまりまし…………えぇぇぇぇ!?」

「いやその反応になりますよね普通……。」

 

 

ソウジさん、すでに諦めの境地ですか!?

 

 

「ち、ちなみに具体的にどのようなクエストをお探しですか??」

「場所は岩山地帯!バサルモス討伐だ!」

 

 

え?

 

 

…………え?

 

 

何を言ってらっしゃるのこの人は。

 

 

 

「「できるかああぁぁぁあ!!」」

 

 

ソウジさんとハモりました!

 

 

「なに、問題はない!今のソウジ君ならいけると踏んだまでだ!と言う訳でハイビス君!ちょうどよいクエストなどはないだろうか!」

「お……お待ち下さいマショルクさん!まだソウジさんは、一月ほどしか訓練を行っておりません!いくらマショルクさんとパーティを組むとはいえ、流石に許可は―――」

「いや違う!ソウジ君一人で討伐するのだ!」

「………………へ?」

「師匠として保証する!彼は既に狩猟可能な領域にいる!私が言うのだから間違いないな!」

「つまりそれは……ハンター最終試験のことを仰っているのですか!?」

「ああ、それでよい!早すぎるかもしれないが、受けること自体に問題はないだろう!?」

 

 

問題は……問題しかありませんよ!!

 

ソウジさんを見ると、どこか諦観のような、覚悟を決めたような、そんな顔をしていました。

 

そうですよね、この方が言うのですから、返事は「はい」または「イエス」もしくは「喜んで」しか無いですよね。

 

 

……うーん。

 

少し考えましょう。

 

まず、バサルモス。

このモンスター、個体差は大きいですが、下位ハンターさんが討伐に苦戦することでおなじみの厄介なモンスターです。

攻撃が通らない、遅くて避けやすいものの当たるとかなり痛い一撃。そして光線のようなブレス。

双剣使いのソウジさんには、少しキツイでしょう。

 

ですがマショルクさんは、こう見えてもG級の中のG級ハンター。

古龍撃退スコアをもつ、生きる伝説さんです。

教官として働く前から、様々なハンターを見られてきたことでしょう。

 

そんな方が、「いける」と踏んでいるのです。

 

 

対して私は、プロとは言え、ギルドの受付嬢。

ハンターの方々の技量を測るのは、専門外。

 

……実力としては、本当にソウジさん、いけるのかもしれません。

 

 

ならば、私は。

ギルドの受付嬢として、ハンターの方々を支えるプロとして、今私ができることは何でしょうか。

 

 

……ソウジさんの覚悟を確認することでしょう。

 

 

実力があるからといって、過信して死んでいった先達が数多いる事実を。

一ヶ月そこらでバサルモスに挑むことが、どれだけ無謀な事かを。

その事をきちんとお話して。

 

 

改めて、ソウジさんに確認します。

 

 

「……バサルモス討伐一体。場所は岩山。制限時間は3日。試験監督としてマショルク教官が同行。こちらのクエストを……受けられますか?」

 

 

冷静に問います。

ソウジさんを、奮い立たせるでも、怖気づかせるでもなく、あくまで冷静に。

 

 

すると、ソウジさんは深呼吸をしてから、返事をしました。

 

 

「……受けさせてください、ハイビスさん。そのクエスト。」

「……かしこまりました。…………ソウジさん、ご武運を。」

 

 

ちょ……。

 

 

ちょっとカッコいいじゃないですか………!

 

 

悔しいですが、やられました。

 

……覚悟はバッチリのようですね。

 

 

 

そこからはとにかく急ぎました。

 

試験というからには、監督役のマショルクさんとは別に、観測班への連絡や移動手段の手配、依頼元への確認など、あらゆる仕事が絡んできます。

急ぎのクエストなどしょっちゅうの事とは言え、今回は異例中の異例。

何せ、見習いハンターが明日バサルモスを討伐しに行くというのですから。

 

……でも、なんとか押し通しましょう。

ソウジさんの期待に応えるのです。

 

ギルマスにも連絡です。

もし幸運にも試験が合格になったり、予想通り不合格になっても、さらなる不運につながったとしても、どう転んでもすぐ対処できるよう、上への連絡は絶対必要です。

 

それに、ソウジさんがクエストの確認に再度来ると思いますので、ギルドからは離れられませんね。

お夕飯は出前かなぁ……。

ケイさんのところに使いをやって、お弁当でも届けてもらいましょうか。

 

 

…………よしっ!やりましょう!

 

 

あぁ、忙しいです目が回ります頭をマルチにフル回転させます。

 

 

でもでも、がんばりますよ。

 

 

だって私は、ハンターさんを支えるプロ。

 

受付嬢ですから。

 

 

* * * * * *

 

 

「あー……疲れました…………。」

 

 

時は進んで、次の日の朝。

ソウジさんを無事に見送って、やっと自分の部屋に帰ってきました。

 

…………ソウジさんいつまで経ってもギルドに来ないんですから!

しょうがなく徹夜ですよ!まぁ仕事と並行してましたから、今日は休みを取れましたが!

 

 

でも、いい顔をして出発されましたね。

ハンターさんを村の出口で見送ることは、あまりありませんから。

手を振るソウジさんは、やっぱり、なんか弟みたいで、かわいかったです。

 

……がんばってと、祈るしかないですね。

 

 

そういえば、ガーグァ車乗り場に居る時。

ちょっとした事件がありました。

 

 

武具屋のセツヒトさんとマショルクさんが、何やらただならぬ関係にあったようで。

まさに一触即発、という状態になりました。

 

 

『孤高のソロハンター「百手」セツヒトと、生ける伝説「カホ・チータ」のヘビィボウガン使いマショルク、相対す!』

 

 

……うーん。

ゴシップ記事好きの方なら、飛びついてきそうな見出しです。

 

例の龍災のこと絡みでしょうか。

 

ミヨシ村壊滅の一件は、ギルドとしても絶対に忘れてはならない事件の一つ。

セツヒトさんが引退した理由の一つですし、マショルクさんも絡んでいたとは聞いてます。

 

ただ、伝え聞いている事実は知っていますが、お二人がどういう感情で、どういうお考えなのか。

 

そこまでは、流石にわかりません。

 

ギルマスも絡んでいるみたいですが、詳しいことは私もサッパリです。

 

 

…………難しいことを考えていたら、眠くなってきました…………。

 

 

ダメです寝ますおやすみなさい……。

 

 

ソウジさん……負けないでくださいね…………。

 

 

zzz

 

 

* * * * * *

 

 

 

次の日まで眠るとは。

 

まだまだ私も若いですね!

 

…………違う違う。

 

お休みを、ただただ寝て過ごしてしまった、この感情は何と言うんでしょう。

 

 

……時間の感覚があまりありませんが、既に日は昇っています。

とりあえず支度をしてギルドに向かいましょう。

 

 

 

ギルドに着くと、後輩が珍しく焦った顔をしていました。

ヒナタ、という子です。

 

黒髪のポニーテールと高めの身長。

目力が強く、一部のハンターさんの間で大人気の若手受付嬢です。

いつも冷静で、感情を表に出す姿はめったに見たことがありません。

 

でも私は知っています。

彼女が無類のアイルー好きだということを……!

 

私も、アイルーをはじめとした可愛いものが好きな方です。

元々彼女とは同郷で、仲はいい方でした。

ところがお酒の席で、可愛いもの好き同士として気が合ったんです。

 

そこからは……彼女の猫好き沼にどっぷりと引き込まれてしまいました。

もう今や、アイルーちゃん超かわいい!って感じです。

 

 

ですが、彼女、仕事はいたって真面目に行います。

ミスも少なく、この新人ハンター関係の部署では、一番信頼のおける後輩です。

 

 

そんな彼女が焦っている……珍しいこともある物ですね。

 

とりあえず話を聞いてみましょう。

 

 

「どうしたの?ヒナタ。」

「あ、ハイビスさん。おはようございます。」

「……珍しく焦った顔をしていたから。何かあったんでしょう?」

「……はい……実は……。」

 

 

ギルマスから無茶ぶりでも来たのでしょうか。

……あり得ます。ギルマスのシガイアさん、この子のことかなり認めていらっしゃいますし。

 

 

「実は、ハイビスさんが担当していた見習いハンターのソウジさんですが。」

「……ええ……何かあったの?」

 

 

思わず、唾を飲みます。

 

…………最悪のパターンかもしれない。

 

……そうなったら、私の責任です。

 

 

ソウジさん……私、何ということを……。

 

 

「昨日夕方に帰ってきました。」

「…………えっ。」

「試験のクエストを見事突破。ソロにてバサルモス狩猟を、達成です。」

「………えええええぇぇぇぇ!?」

「討伐時間は4時間半。平均狩猟時間を軽く上回っています。」

「よ、よじかんはん!??1日もかかっていないの!?観測班からの報告は!?」

「間違いないと。試験監督役の手も借りておらず、見事な狩猟だったと。」

 

 

ヒナタから、資料を受け取ると、全て確認します。

……うわぁ、本当だ。昨日帰ってきてる……。

しかも、バサルモスの銀冠クラス!?

 

グラビモス間近じゃないですか……。

 

 

モンスターにも、個体差というものがあります。

当たり前ですが、モンスターも成長しますし、基本的に大きい方が長く生きているので強いです。

 

ギルドではデータを元に、サイズが極端なものを金冠、銀冠と言って分けることがあります。

 

今回ソウジさんが仕留めてきたのは最大金冠の次にあたる、最大銀冠クラス。

バサルモスは、グラビモスという更に強くなった個体の幼体ですから、グラビモス間近、というわけです。

 

 

なんてことでしょう。

ハンター見習いがそんなにすぐに。

前代未聞です。

 

 

…………でも、無事に帰ってきて何よりです。

まずはそこが喜ばしいですね。

 

あの方ならやってくれるかも、とかそれどころじゃなかった訳ですが……。

 

とにかく、ギルマスに報告しましょう。

 

 

「ヒナタ、受付を任せてもいい?」

「はい、と言うよりハイビスさん、今日の午前は非番では?」

「取り消すわ。緊急事態だもの。いい方、の。……ギルドマスターのところへ行ってきます。」

「……かしこまりました。こちらはお任せください。」

「ふふ、ありがとう。」

 

 

頼りになる子です。

既に受付窓口の前には大量の新人ハンターたちが詰めかけています。

 

がんばって、ヒナタ!

すぐ戻るからね!

 

 

手を振ると私はギルドマスターの部屋に向かいました。

 

この喜ばしいのか何なのか、とにかくこの偉業を報告しに参りましょう。

 

ギルマス、いるといいけど。

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