爆風は、本当に凄まじいものだった。
15mくらいは離れていたはずの俺が吹っ飛ばされたのだ。
「…………背中いってえ……指は…動く…頭も足も平気か……。」
思わず受け身を取ろうと体を丸めたのがよかったのか、背中に痛みがある程度で済んだ。
「……そんなことより、バサルモスは!?」
まだ煙と火薬の臭いが残る爆破跡に目を凝らす。
草原の風で、徐々に視界がよくなってきた。
バサルモスは、爆破跡の土の上に横たわっていた。
爆破の影響で翼がひしゃげている。モンスター情報の通り腹部が弱かったようだ、血が流れて大きな傷になっている。
「クオオオォォォ……!!」
苦悶の声を漏らしているバサルモスだが、立ち上がる様子は見られない。
まだまだ生命力にはあふれているようにみえるが、すぐに逃げた方がよさそうだった。
「すまん……これも俺が生きるため……!すまん!!」
心なしか憎々しげに俺を見つめてくるバサルモス。
相当のダメージを食らわせることができたと思うが、俺はもうこれ以上、こいつを傷つけることはできない気がした。
こっちが勝手に岩場と間違えたのだ。だからあっちはこっちの命を狙ってきた。
「喧嘩両成敗ってことで……許せ。」
そう言って俺は振り返り、全速力で駆け出した。
* * * * *
「はぁっ……はあっ…!!こ、ここまで来ればっ!!大丈夫だろっ!!」
とにかく一目散に逃げてきた。もはやバサルモスなどどこにいるかわからない。
ここに来る途中、遠目に小さなモンスターが見えたりしたのだが、スルーしてきた。
バサルモスと比べて小さいというだけで、子どもぐらいの大きさはありそうだったが。
「暗くなってきたし……何とかしのげるところは無いかな……?」
困ったときに役立ちそうな情報画面を確認してみる。
もはやドラ〇もんの四次元〇ケット状態である。
できたら休むことができそうな場所に行きたい。
あわよくば、村や町なんかの人の住む場所ならなおよし。
何か情報はないか、情報画面をくまなく探してみる。
「お?そういえば<マップ>があったような……。」
バサルモスと戦っている時は無我夢中でスルーしたが、<マップ>があった気がする。
この情報画面があれば、この見知らぬ世界でも何とかなりそうな気がしてきた。
マップの中を見てみる。
まず今自分がいるところ、現在地が赤くマップ上に点滅している。
<ザキミーユ平原>か。マップには大陸全体が写っているが、その南東部に位置している。
中央南から北東部にかけては火山地帯と山脈が連なり、平原は大きく山と海に囲まれているようだ。
近くに何か町は無いものか探してみる。
タブレット端末のごとく、頭の中でスワイプしてみるとマップが拡大して表示された。
一番近いところに<ワサドラ>という村があるようだ。
この地図の縮尺がよく分からないため確証は持てないが、そこの村を目指して歩いてみよう。
何せ現在地が分かるのだ、迷うことはないだろう。
* * * * * *
途中できれいな小川を見つけた。
なるべく上流の水を汲んで飲んでみる。
非常においしい。
生水はよくないのかもしれないが、四の五の言ってはいられない。
異世界に来たからには、腹に寄生虫の一匹や二匹、飼う覚悟でいなければ。
そもそもこの体はなんだか丈夫な気がする。
ポーチの中の携帯食料を手早く食べ、再び街を目指すことにした。
転生初日に、大岩モンスターのバサルモスから逃走してかなり疲れはあるが、今日中にワサドラとやらに着きたい。
俺は少し疲れた足に気合を入れて、歩き出すのだった。