モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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51圧迫面接(二回目)を切り抜けましょう。

「いきなりごめんね、ソウジくん。」

「い、いやいや。ちょっと混乱しちゃって。」

「いいのよ。当たり前よね。うん、説明するわ。」

 

 

ミヤコさんに、首都に興味はないか聞かれた。

理由がわからん。

 

ミヤコさんは、応接用の椅子に足を向けた。

膝の高さの大きな机は石造り。というかギルドマスターの部屋は、床もピカピカの石造りである。

コツコツと、ヒールの音が響くと、革張りのソファにゆっくりと座るミヤコさん。

続いて、シガイアさんがその横に。俺とショウコが対面に座った。

 

ショウコは靴を脱いで、なぜかソファに正座をしている。

 

 

「まずは、……下位ハンター、HR3、ソウジくん。」

「は、はい。」

 

 

急にかしこまった口調で話始めるミヤコさん。

 

 

「前代未聞の新人、いきなりのHR3クリア。1日1クエストというとてつもない依頼完了スピード、しかもその内6割強がタイム更新。……午前中に大型の討伐を終えて帰ることもしばしば。そして重症履歴は無し。」

「え、ええと―――」

「さらに言えば、納品されるアイテムの保全度。損傷も無く9割が完璧な状態。ワサドラでは、ソウジくんが採取したというだけで付加価値が付くようですね。シガイアさん合っていますか?」

 

 

え、そうなの?

シガイアさんを見る。

 

 

「……ええ、商人が直接私に話を持ち込むほどではありますね。」

「うん、そこも調査結果と変わらないわね……。」

 

 

そうなのか。知らんかった。

アイテムは基本、すぐにポーチに入れるしなぁ。そりゃキレイに持って帰れますよ。

運搬アイテムが何故ポーチに入らないのか、そこだけが疑問だが。

 

調合が必要なアイテムも、自分のギフトをお手本にするやり方で、かなり上手くなったし。

 

ミヤコさんが続ける。

 

 

「……そして最も驚嘆すべきは、大型モンスターの狩猟スピードではなく、その選択。周囲の生態系には慎重に注意を払っているギルドでさえ、大量発生や個体数の減少を把握しハンター達に周知するのに最低ニ週間はかかる。……にもかかわらず、ソウジくんの狩猟モンスター選択は、常に()()()。それだけモンスターを狩れば、生息数の歪みが出てもおかしくないのだけど……。この辺、シガイアさんが絡んでいると思っていますが、違いますか?」

「ええ、多少は。ですが、仰る通り、ギルドの調査部にも限界があります。」

「……では、ソウジくんのクエスト選択に、ギルドはほとんど関与していないと?」

「ええ、その通りです。」

 

 

……しまった。

俺のギフトのマップ上に現れるモンスターの点。

縮尺を変えれば、モンスターの生息数やアイテムの現存数が丸わかりなのだ。

 

生態系になるべく変化の無いよう、ハイビスさんやヒナタさん、シガイアさん達ギルドの方へ、負担にならない様気をつけてクエストを選んでいたのだが。

ここに来て裏目に出たか。

 

やりすぎてしまったのかも知れない。

シガイアさんも、まいったなと言う顔をしている。

嘘はつけそうにない。

 

 

「ソウジくん、今日はロアルドロスの討伐をするつもりだったのよね。」

「……はい。」

「……最新の調査では、このワサドラ近辺は、ロアルドロスは討伐は慎重を期すべきモンスター。前年の雨の量は、平年より少なかったため、個体数の減少が懸念されていますからね。……それを何故、今?」

「……。」

 

 

慎重に言葉を選ばなければならない。

おそらく、ミヤコさんは、俺を疑っている。

俺の過ぎた力を感じて、本部からやってきたのかもしれない。

 

教官はその豊富な経験と類まれな能力から、ハイビスさんやシガイアさんはその恐ろしいまでの観察眼と研ぎ澄まされた第六感から、俺の正体に迫った。

 

そしてミヤコさんは、データを集め、分析して、違和感を感じた。

俺の狩猟履歴は、おかしいと。

 

だから俺を探りに来たのか?

 

 

……ミヤコさんを信用していないわけじゃない。

ドールのお母さんだし、別に印象も悪くない。

 

だが、ここでギフトの話はするべきではない。

 

ごめんなさい、ミヤコさん。

俺の力があなたやギルド本部とやらに悪用されるかもと疑っているわけじゃない。

 

……ただこの過ぎた力は、知っている人が少ないほうがいい。

万が一にも、俺のせいでミヤコさんに危険が及んだら、ドールに顔向けできない。

 

ミヤコさんは、本部ギルドの人間。

少なくとも、このかしこまった口調のミヤコさんは、あちら側の人だ。

真実を隠して、事実を話そう。

 

 

「……以前、沼地で毒テングダケを採取した時、違和感を感じたんです。」

「違和感?どんな?」

「ルドロスを、よく見かけるなって。」

 

 

これは嘘ではない。

マップ上で、ルドロスの数が多かったのは事実だ。

それを侍らすロアルドロス達に苛ついたんだし。

 

 

「ロアルドロスも見かけて……そこまで深いエリアでは無かったので、よくいるモンスターなのかな、と。それで、討伐することにしました。」

「なるほど……シガイアさん。近々のロアルドロスの個体数はどうなっていますか?」

「……はい……通常と変わりないとの報告ですが、確かにハンター達の狩猟数は俄に増加してますね……。」

 

 

シガイアさんが何か資料を取り出し、確認している。

チラリと俺と目が合う。

「話すなよ?」ってことかな。

うん、大丈夫。言うつもりはない。

でも嘘をつくつもりもない。

 

 

「……そこに違和感を感じただけ、ってことかしら?」

「はい。ギルドの話だと、ロアルドロスって2、3頭のハーレムを作るって聞いていたんです。でも俺が見たときは、明らかにそのハーレムに10頭近く雌がいました。」

「そこでソウジくんは危機を感じて、狩猟を―――」

「あぁいや。違います。単にムカついたんです。」

「……へ?」

 

 

キョトンとするミヤコさん。

でもこれも事実だしなぁ。言っちゃえ。

 

 

「……そんな大人数のハーレム築くとか、ムカつきません?それで、やっちゃおう、と。」

「「…………。」」

 

 

黙りこくる二人。

 

 

「……ハハハハハ!」

 

 

シガイアさんが笑う。

 

 

「ソウジさん!その通りだ!確かに男として、そんな奴は制裁を加えたくもなるなぁ!ハハハハハ!」

「ですよね?しかも2、3頭ならまだしもですよ?そんな数、イラッとしますよね。」

「ハハハハハ!やはりソウジさん!君は素晴らしいな!」

 

 

爆笑のシガイアさん。

その横で呆れ顔のミヤコさん。

すんません、でも事実です。

 

 

「……まったくもう、男の人って……。」

「す、すみません。」

「……いいわ、何となく分かりました。ではソウジくんは、ギルドからの情報を元にしつつ、自分で判断して討伐するモンスターを選んでいたのね?」

「ええ、生態系とかよく分かりませんし、まずいなら誰か止めてくれるかなー、程度に考えていました。」

「…………ラッキーが続いただけ、と思えばいいのかしらね。」

 

 

ちょっとごまかした。

「少しは生態系のことを考えています。でもマップの精度が凄すぎて、調整が行き過ぎました。」が正解だ。

 

 

「……ふぅー。じゃあ、本題ね、ソウジくん。」

「あ、はい。」

 

 

なんとか誤魔化せたかな?

シガイアさんがウィンクしてくる。

オッケーです。うまくかわせました。

 

 

そして、ここからが本題。

 

 

「私は、ギルド本部の総務長をしています。もちろん人事関係の取りまとめも、私なの。だから、これはギルド本部の意向。ソウジくん一応、聞くわね。」

「はい。」

「……将来性に期待し、首都ザキミーユシティのハンターズギルドに招待するわ。HR3、ソウジさん。」

「……。」

「……一応付け足すけど、これは強制ではないわよ?もう一つ付け足すと……。」

「……付け足すと?」

「……母としては、ドールと離れてほしくは、無いかな?って。」

 

 

公私混同である。

だが、クスっと笑うミヤコさんは、とても魅力的ですらあった。

……うん、ミヤコさんってこういう人なんだろうな。

 

シガイアさんが突っ込む。

 

 

「……ミヤコさん、その発言は危ないですよ?」

「えー、いいじゃないですか。私、総務長である前に、一人の母親ですし?それにほら、ソウジくん。」

「は、はい。」

「あなた、この村。……好きでしょ?」

 

 

唐突な質問。

だが、答えなど、決まっている。

 

 

「ええ、勿論です。何の身寄りもない俺を、これ以上ないほどに優しくしてくれた。」

「…………。」

「俺の実力を買って、お誘いをしてくれるのは嬉しいです。でも、首都に行くつもりは無い。」

「…………ええ。」

「なので、申し訳ないですが、この話お断りします。」

 

 

行くわけがない。

右も左も分からない俺を、優しく受け止めてくれたこの村。

ホエールさんにドールさん、ハイビスさんやヒナタさん、シガイアさん、教官、セツヒトさん、ショウコやオスズ、そこに門番のおじさんや御者の渋いおじさんを加えて。

 

 

俺は、ここが、ワザドラが、好きだ。

その恩返しを、俺はまだしていない。

 

だから俺は、ワザドラを離れない。

 

 

ミヤコさんは微笑むと、断った俺に嫌な顔ひとつせずに話し始めた。

 

 

「……そうよねー!やっぱり、自分を受け入れてくれたトコロって、大切よね!」

「ええ。すみません、ミヤコさん。」

「いいのよ。……多分あなたがここを去ると、悲しむ人がいっぱいいるわ。別に死ぬわけでもないんでしょうけど。…………ハンターって、儚いから。」

 

 

……ミヤコさんが、遠い目をしている。

ミヤコさんも、旦那さんを亡くしているから。

 

別れる辛さは、多分誰よりもわかっているよな。

 

 

「……うん!難しい話は終わりにしましょう!……ソウジくん、最後に一つだけ。」

「はい。」

 

 

すっかり朝見た時の顔に戻ったミヤコさん。

チャーミングな笑顔が素敵だ。

 

 

「世界は、広いわ。あなたが未だ知らないモンスターが、群雄割拠して、熾烈な生存競争を繰り広げている。その中で私達人間は、か弱い存在……でも、生きなければならない。」

「…………。」

「優秀なハンターを、よりよい環境でより強く立派なハンターにして、各地に送り出す。人間がこの世界で生きるために。それがギルドの大きな目的の一つ。そういうギルド側の意図も少し汲んでくれると嬉しい。……あなたの活躍、期待してます。」

「…………はい、分かりました。」

「……うん!よろしい。」

 

 

ニコリと笑いかけてくるミヤコさん。

いかんいかん、思わずドキリとしてしまった。

 

 

「さーて!私は残りの仕事、とっとと片付けようかしら。」

 

 

そう言うと、ミヤコさんはショウコに向き直った。

 

 

「ショウコちゃん、ごめんね。ご主人さま、勝手にスカウトしちゃって。」

「え、エエですエエです。ウチ、ご主人さまがどこに行こうと付いてくだけですから!」

「ふふっ、そう?じゃあ仲直りのナデナデを―――」

「ふわっ!!にゃっ!」

 

 

サッと俺の後ろに隠れるショウコ。

 

 

「フーー!!」

「あらぁ、嫌われちゃったわねぇ……。」

 

 

ショックだろうよ……可愛いものに否定されるなんて……。

シガイアさんが笑う。

 

 

「さ、ミヤコさん。ビジネスの時間ですよ。」

「ええ、シガイアさん。じゃ、ソウジくん!また後でね!」

「はい。それでは失礼します。」

 

 

礼をして部屋を出る。

 

 

中から「遺跡の権益」とか「ルドロスの間引き」とか、色んな言葉が聞こえる。

聞こえないように早急に去ろう。

……ドアに耳を立てようとするショウコを引っ張って、俺はギルドを出ることにした。

 

 

「ご主人さま、今日はどうします?」

「うーん……。」

 

 

既に日も高々と上がろうかという時間。

……うん、決めた。

 

 

「ショウコ。」

「はい!」

「明日の休みを繰り上げよう。今日は休み。……また明日から頑張るか。」

「……はい!分かりました!」

 

 

いつものルーティンも崩れたし、今日はやめとこう。

 

沼地のハーレムモンスター、明日まで首を洗って待ってなさい。

 

そんなことを考えながら、これからどうするか算段を立て始めるのだった。

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