モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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57大きい方を狩りましょう。

自分でも無茶を言っているのはわかる。

今日初見のモンスターを2体狩猟しようというのである。

 

1頭でさえ危険なのに、2頭の狩猟。

 

 

「ご主人さま、流石に無茶ですって!……本気で言ってます……?」

「本気も本気だ。2頭を連続で狩る。連続狩猟だ。」

 

 

流石にショウコも驚いている。

そうだよなぁ。

 

だが、この案。

実は、俺の中で現実的に可能ではないかと思っていたのだ。

 

 

「ショウコ、何も無茶を言っているわけではないんだ。」

「……あのハーレムモンスターに対して、頭にきとるわけやないですよね?」

「大半はそれだ。」

「ご主人さま……。」

「でもな、残りはイケると踏んだからだぞ。作戦はこうだ。」

「本気ですね……はい、聞きます。」

 

 

ショウコは、オトモとして、今までに何度も大型の狩猟に行っている。

クエストの経験値というか、大型モンスターの狩猟については、俺よりも上。

こう言う時は必ず相談する。

 

 

「まず、分断は必要だ。当たり前だが、2頭を完全に同時に相手する訳ではない。」

「そらそうですね……そんなんしたら、ご主人さまもウチも命いくらあっても足りません。」

 

 

教官はしたことがあるらしい。リオ夫婦相手に完全同時で。

……まぁそれぐらいの化け物技量がなければ、難しいということだ。

 

 

「で、だ。こいつを使う。」

「けむり玉……ですか?確かに目くらまし程度にはなりますけど……結局どちらにも気づかれてしまいますよ?」

「そこなんだよ。どうもけむり玉の有効な使い方を、みんなよくわかっていないような気がする。ショウコ、けむり玉ってどんなアイテムだ?」

「え?そら……白い煙がモクモク立ち込めて……モンスターからはこっち、あまり見えなくなる?って感じです。」

「だよな。」

 

 

ショウコは別に間違ってはいない。

けむり玉は、煙が立ち込めて、辺り一帯が霧がかかったように白くなるアイテムだ。

目くらましにはもってこいで、俺がこの世界にやってきたあの日、小型モンスターから逃れるために何度か使用した。

 

 

「俺の<情報画面>にも、こう書いてあるだけだ。」

 

 

そう言って、俺は自分の情報画面をショウコに読み上げた。

 

 

【名前】けむり玉

【レア度】2

【現在の相場】180z

【説明】着弾地点から、広い範囲に煙を発散する玉。

 

 

「……普通ですねえ。」

「ああ。だがな、俺が命からがらこの街にやって来るとき、このけむり玉を使ったことがある。実はこのけむり玉、相手がこっちを意識していないタイミングで使えば、全く気づかれることはない。」

「……えっ?」

「本当なんだ。なぜか分からんが、モンスターから見つかっていないまま、辺りに霧のような煙がかかれば、気づかれないままやり過ごすことができるんだよ。」

 

 

小型モンスター相手に何度も使ってきたからわかる。

敵の視界に入らない、気づかれないところで使えば、このアイテム、かなり有用だ。

 

 

「えっ!?で、でもご主人さま。ウチが以前使った時は、めちゃくちゃ気づかれましたよ?」

「既にこちらが認識していたり、目の前にいたり、触れられたり、何かしらハンターの音を聞いたり……。モンスターが気付かない基準みたいな事は正直わからない。……別モンスターの咆哮には全く反応しないし、何なんだろうな。」

「……そういえば、前使った時はめちゃくちゃ足音立ててしもうて……それが本当やとしたら……。」

「……先にけむり玉を仕掛けておいて、音をなるべく立てずに忍び寄れば、2体を1体ずつに分断することも可能かもしれない。そしたら、あとは一匹ずつ倒す。」

 

 

多分できる。はず。

分断に失敗したら、その時はその時だ。逃げまくろう。

 

 

「……分かりました。もし効果が本物であいつらを分断できるなら、可能かもしれません。」

「ああ、手順を確認するぞ。」

 

 

こうして、ロアルドロス殲滅会議を15分ほど行った。

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

「いました……まっすぐ前方、ロアルドロスです。やっぱり、少し離れて、2頭は近くにおります。」

「よし、マップどおりだな。じゃあ予定通りに行くぞ。」

「はい。」

 

 

俺のマップで確認もできたが、ショウコの目視も大切。

どうやら2体とも横たわってリラックスしている様子。

周囲のルドロスも同様だ。

 

しかしやはり、この二体おかしい……。

普通、野生の雄同士、お互いの縄張りを主張するものだと思うが。

張り合うって言葉もあるぐらいだし。

 

…………もしや兄弟なのか!?

アッチの意味でもコッチの意味でも兄弟なのか!?

 

 

「……ご主人さま。何か余計なこと、考えてます?」

「何を言う。そろそろ行くぞ。」

「不安や……。」

 

 

ショウコに俺の下ネタを見透かされながらも、狩猟を開始する。

 

 

「(あっち、多分こちらには気づいてません。)」

「(了解……けむり玉、出番だぞ……と。)」

 

 

俺とショウコは、ロアルドロスに気づかれないよう小声で話す。

けむり玉に着火、ロアルドロス2体の間に、転がすように投げ入れる。

すると、丁度いい位置に止まったけむり玉が、音も無くモクトクと煙を噴出する。

 

 

「(……よし。行くぞ。)」

「(はい……。)」

 

 

抜き足差し足忍び足。

 

ロアルドロス2頭とルドロスたちは、平然とのんびりしている。

けむり玉の煙が見えないのか?

 

ソロリソロリと一体の後ろに近づく。

狙うのは大きい方の個体だ。

こちらの体力がある内に、強そうな方をやってしまおうという作戦だ。

 

 

親指を上げて、ショウコに合図。

頷くショウコ。

 

 

(鬼人化……乱舞!)

 

 

ザシュザシュ!!ザザザザン!!!

 

 

「グアアアァァァ!!!」

 

 

乱舞をロアルドロスの頭に当てる。

凄まじいまでの咆哮。

思わず耳を塞ぐ。

だが。

 

 

「(やっ!)」

 

 

ショウコがいち早くロアルドロスの目に爪撃を当てる。

ショウコに音攻撃は効きにくい。

 

威力は無くとも急所を狙う攻撃。

気を引くには充分だ。

 

 

「グァっ!!!ガアァァァァア!!」

 

 

ロアルドロスが、ショウコ目掛けて前足を横に振るう。

 

 

「(はっ!)」

 

 

避けるショウコ。

回避が本当に巧みだ。

 

 

ロアルドロス(大)は、完全にこちらに臨戦態勢。

だが、もう一頭のロアルドロス(小)は、キョロキョロしていてこちらを認識していない。

あの大声聞こえないのかよ!!とツッコみたくなるが、とりあえず後回しだ。

 

 

「(いけるな!よしっ!そのまま行くぞ!パターン1!)」

「(はいっ!)」

 

 

小声ではショウコと連携が取りづらい。

なので、事前にハンドサインを決めておいた。

俺が「1」の指を立てれば、そのまま作戦の続行。パターン1。

 

ちなみに、両者に気づかれた場合は死にものぐるいで撤退。パターン2だ。

今回はどうやらうまく行きそうなので、このまま気を引いて、2体を引き離す。

 

 

「(こっちだ!)」

 

 

ショウコに意識が向いている間に、俺が腹部に痛撃を与える。

 

 

「グァァ!ガァァア!!」

 

 

今度は俺に顔を向けるロアルドロス(大)。

急に体を丸め出した。

痛そうな攻撃が来そうな予感……。

尻尾のなぎ払い!?

いや、反動をつけて……体当たりか!!

 

 

「(あぶねぇっ!!)」

 

 

すかさず後ろに跳ぶ。

直後ロアルドロス(大)は、俺がいた場所に体当たりをかましてきた。

 

 

「グルルルル…………。」

 

 

俺にダメージを与えられず、腹立たしげに呻くロアルドロス(大)。

 

 

「(やぁっ!!)」

 

 

すかさずショウコが爪撃を顔に当てる。

気がそちらに向くロアルドロス(大)。

 

後ろに避けるショウコ。

 

隙ができたら今度は俺が攻撃。

そして後退、ショウコにチェンジ。

 

ショウコが攻撃、後退、チェンジ、俺が攻撃、後退、チェンジ…………。

 

 

この流れを繰り返していく。

 

 

「グァっ!ガァァ!」

 

 

攻撃はすれども、中々当たらないことに苛立ってきたロアルドロス(大)。

 

気づけば、もう一体のロアルドロス(小)とかなり引き離すことに成功していた。

 

 

「(一応、もう一つ……)」

 

 

ロアルドロス(大)の後方に、念の為のけむり玉を、放っておく。

煙が切れれば、2頭同時に相手取る必要がある。

効果時間がよく分かっていないので、保険をかけておこう。

今度、時間を測っておくか。

 

 

…………。

 

 

気づけば、始めに居たエリアからだいぶ離れた。

けむり玉の有効範囲から抜け出たのだろう、視界を遮っていた霧のような煙も晴れている。

 

 

「グァァァ!!」

 

 

まだまだ元気なロアルドロス(大)。

 

 

「うぉっ!!」

 

 

噛みつき攻撃を紙一重で躱す。

 

 

「ショウコ!そろそろ行くぞ!」

「はい!」

 

 

かなり離れたし、声を出しても平気だろう。

ショウコに直接合図を出す。

 

 

「さぁさあ!ここから本領発揮や!!」

 

 

俺とショウコが、ロアルドロス(大)の側面を挟む形になる。

 

ここまでは、相手の気を引く必要があった為、どうしても正面から攻撃を受ける必要があった。

そのため、リスクは上がる。

何度か危ない場面もあったが、一応は無傷だ。

だが、ロアルドロス(大)にも、大したダメージは与えられていない。

 

しかし、ここからは違う。

もう一体のロアルドロス(小)に気を使う必要も無い。

 

 

「ショウコ!いつもどおりに!」

「はい!」

 

 

いつもどおり、とは、俺達のセオリーどおりに、という意味である。

 

ショウコも俺も、お互いに回避が主体の戦闘方法をとっている。

俺は双剣というガードができない武器のため、ショウコは身軽で抜きん出た身体能力を活かすため、同じような戦い方になる。

 

そのため、攻撃を食らうことはなるべく避ける。片方がダメージを与えている間は、片方は待機。

相手が攻撃をした際は、安全最優先で避ける。その間に片方は、隙を見て安全なところから攻撃を行う。

 

そうやって相手の気を引き合いながら、攻撃を行っていく。

リスクがだいぶ薄くなる側面方向から挟撃するのが、今の所の俺達の最適解になる。

 

たまにモンスターが周囲全体を薙ぎ払う攻撃を仕掛けてきたり、体液を撒き散らしてきたりするのだが……。

まぁ、もうその時はその時で対処するしかない。

 

 

「ご主人さま!そっち!」

「任しとけ!」

 

 

ショウコに気を取られ、ガラ空きになった側面を狙う。

斬るのは、ロアルドロスの特徴でもある、その鬣みたいな海綿状の首である。

 

 

「よっ!」

 

 

特訓の剣の振りを思い出しながら、隙だらけのそこを狙う。

 

 

「グアォッ!?」

「よしっ!」

 

 

いいのが入った!鬣に傷が入る。

特訓の成果が出ているな。

 

 

「グルルルル…………。」

 

 

ロアルドロス(大)の視線が俺と交わる。

ビシビシと俺に殺意を送る赤い瞳。

 

コイツ、本気モードだ……。

 

 

「ショウコ。」

「はい。」

「意識が完全に俺に向いている。でも陣形は崩さずに。回復が必要なときは言う。」

「……はいっ!」

 

 

ショウコは速い。

アイルーという特性上、とても俊敏で体力もかなりある。

 

だが致命的に足りないものがある。

それが火力だ。

 

俺とショウコが挟撃をしばらく続けると、モンスターの意識が完全に俺の方に向くようになる。

これは推測でしかないが、おそらくモンスターにとって痛い攻撃を繰り出した方に、より意識を向けやすいのだと思う。

ここまで誘い込むときは、わざと俺は手加減をしていた。

ショウコと俺、どちらにも意識が向くように。

 

だが、作戦が変わった今は違う。

こっちも全力だ。

ロアルドロス(大)の怒りや殺意は、完全に俺だけに向けられている。

 

それでも、陣形は崩さない。

言い換えれば、ショウコの攻撃できるチャンスでもあるから。

 

 

「……来いよ、ハーレム野郎。朝から変なもの見せやがって。」

「グルルルル……!」

「うちの子が変な趣味持ったらどうしてくれんじゃコラァ!!!」

「ガァァァ!!!」

 

 

俺とロアルドロス(大)の一騎打ちが始まった。

 

調子こいて挑発をしてみたが、効果は覿面。

完全に意識をこっちにしか見せていない。

 

回避を優先しつつ、傷がついた鬣を中心に狙っていく。

立ち回りは、モンスターを中心にして、基本時計回り。

ショウコはその動きを見ながら、挟撃の陣形を保ちつつ、すかさず攻撃をしている。

 

 

 

「……ガアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

突如、ロアルドロス(大)が叫びだす。

怒っているときに叫ぶのは……大技の予感!

 

 

すると、海老反りしたロアルドロスが、体をムチのようにしならせて、地面へ体を叩きつけようとする。

 

 

(ボディプレス!速っ!間に合わな―――)

 

 

ドガァッ!!!

 

 

「ぐあっ!」

「ご、ご主人さま!!」

 

 

しまった、モロに食らった!

 

……いってぇ…………けど、あまり痛く……ない?

 

 

「ご、ご主人さま!?平気ですか??」

「……あぁ!問題ない!」

「よかったぁ……。」

「すまんショウコ!陣形を直す!俺の対面へ!」

「はっ、はい!!」

 

 

体は……問題なく動く……。

防具を強化したおかげか?大したダメージになっていない。

痛いものは痛いが、このぐらいなら慣れっこだ。

 

 

「このまま斬り崩すぞ!」

「はいっ!」

 

 

お返しだ。

 

ロアルドロスの動きは大体掴んできた。

教官から教わった、観察を怠らない動きを行ってきたからな。

 

 

「ショウコ!突進むちゃくちゃ攻撃くるぞ!」

「はいっ!」

「その後ブレス!だと思う!射程外に避難!」

「はいっ!!」

 

 

予想通り水を吐きながら突進してきたロアルドロス(大)は、これまた予想通り、ブレスをかまそうと口を天に向けた。

だが俺は怯まない。

ブレスの時間は、双剣使いにとってはむしろチャンスタイムだ。

バサルモスで散々練習してきたからな。

 

 

「いよっ……と!」

「ご主人さま!?」

 

 

ショウコが驚きの声を上げるが、タイミングはここしか無いと思う。

 

わずかな時間でロアルドロス(大)の懐に飛び込む。

ブレスが来る瞬間、ギリギリで避ける。

 

目の前には、ガラ空きの首。

 

 

「くらえええええ!!!」

 

 

双剣は手数で勝負!!鬼人化……乱舞!!

 

 

ザシュ!!ザザザザザザザザザザザン!!!!!

 

 

「グルァァァァァァァ!!!!」

 

 

苦しげな声、これは効いているな。

 

 

「ぃよっと!」

 

 

鬼人化を解除、スタミナを回復させつつ距離をとる。

無理はしない。

 

 

「ご主人さまぁ!打ち合わせにない事せんといてくださいぃ!!心臓止まるか思いました!!」

「すまん、でも無理はしてないぞ。」

「目前でブレス避けるとか、無茶すぎます!」

「す、すまん。でも、いけたぞ。」

 

 

2人でロアルドロスを見る。

明らかに疲れている、しかも深い呼吸をしながらその場から動けない様子。

 

 

「チャンスタイムだ、ショウコ!」

「ガッテンです!」

 

 

ガッテンて。あの番組、母親が好きだったなぁ。

そんなしょうもないことを考えるぐらいには、余裕が出てきた。

 

だが油断はしない。

 

 

「ご主人さまぁ!最後まで、気を抜いたらあきませんよ!!」

「ああ!」

 

 

2人で猛攻撃を仕掛けた。

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